2009年5月28日木曜日

日本の医療をどうしたいですか?

社会保障費抑制の方針継続求める…財政審の建議原案
2009年5月27日 提供:読売新聞

 財政制度等審議会(財務相の諮問機関)が6月初旬にまとめる、2010年度予算編成に向けた建議(意見書)の原案が26日、明らかになった。原案は、与党内でも方針撤回を求める意見が根強い、社会保障費の伸びを毎年2200億円ずつ抑制する方針について、「歳出改革の基本的方向性は維持する」とし、抑制を続けていくことを求めた。
 一方、国と地方の基礎的財政収支(プライマリーバランス)を11年度に黒字化するとした政府の財政再建目標について、目標達成は「困難になったと言わざるをえない」と指摘。ただ、目標自体は撤回せず、引き続き「プライマリーバランスの黒字化に向け、その道筋を示しつつ、その早期実現を図ることが必要」との見解を盛り込んだ。
 長期的には、国内総生産(GDP)に対する国と地方の債務残高の比率を引き下げる重要性を訴えた。
 財務省には、建議を通じて他省庁や与党からの歳出圧力をけん制する狙いがあり、提言内容を09年度の「経済財政改革の基本方針」(骨太の方針)に反映するよう求めていく考えだ。だが、次期衆院選などをにらみ、与党内からは今後、社会保障費の抑制方針の撤回などを迫る声が上がりそうだ。
 ◆財政審建議原案の要旨◆
 ▼景気後退に伴う税収減と一連の景気対策により、財政悪化が見込まれ財政は危機的な状況
 ▼2011年度までの国・地方のプライマリーバランスの黒字化目標の達成は困難になったと言わざるを得ない
 ▼財政の持続可能性を確保する上で、国・地方の債務残高対GDP比の発散を止め、安定的な引き下げが必要不可欠。まずプライマリーバランスの黒字化に向け、その道筋を示しつつ、早期実現を図ることが必要
 ▼10年度予算編成は、経済状況に応じて弾力的に対応しつつ、「骨太の方針2006」の考え方を踏まえ、歳出改革を維持していくことが必要
 ▼医師確保対策等必要な対応を行う必要はあるが、社会保障分野も「骨太の方針2006」等に示されている歳出改革の基本的方向性は維持する必要がある

歯科の保険制度崩壊の危機

東京新聞から、みんなの歯科ネットワークが取材を受け「こちら特報部」というコーナーで「歯科の保険制度崩壊の危機」(仮)という特集記事が5/31(日)東京新聞に掲載されます。
歯科の問題を丁寧に取材しています。みなさんぜひご覧下さい。 
概要は以下です。※あくまで取材時の概要であり、紙面では多少の変更もあります。

歯科においては保険でまじめにやればやるほど経営は苦しくなる。 その上、保険ではビジネスモデルが成立せず、また高得点での指導などもあり「保険で経営努力は事実上ムリ」と歯科医は保険をサボタージュし、患者さんへの最良の治療の提供の為、そして経営を考え自費に逃避する。 結果、保険は形骸化し、ますます歯科医は保険治療をしたがらなくなる。そうなればイギリスなどの例にあるように高額な治療費が払えない人は、自分で自分の歯の治療をするなど異常事態となる。

歯の疾患は全身に及ぼすものも多く、歯科の保険が崩壊してしまった場合どうなってしまうのか。 保険は公共財すなわち国民のものである。「歯科医はワーキンプア」などと興味本位で見ているのではなく、保険の低点数は国民の不利益になることを認識し改革をしていかねばならない。
※また、このような歯科医院経営の圧迫のしわ寄せを最も受けているのが技工士であり、その過酷さから7割以上の離職者が出ているということも同時掲載の予定です。

http://www.minnanoshika.net/

http://www.minnanoshika.net/wiki/index.php?%B0%E5%CE%C5%A4%CB%A4%AA%A4%A4%A4%C6%A5%D3%A5%B8%A5%CD%A5%B9%A5%E2%A5%C7%A5%EB%A4%CF%C0%AE%CE%A9%A4%B7%A4%CA%A4%A4

http://www.minnanoshika.net/wiki/index.php?plugin=attach&refer=%B0%E5%CE%C5%A4%CB%A4%AA%A4%A4%A4%C6%A5%D3%A5%B8%A5%CD%A5%B9%A5%E2%A5%C7%A5%EB%A4%CF%C0%AE%CE%A9%A4%B7%A4%CA%A4%A4&openfile=%B0%E5%CE%C5%A4%CB%A4%AA%A4%A4%A4%C6%A5%D3%A5%B8%A5%CD%A5%B9%A5%E2%A5%C7%A5%EB%A4%CF%C0%AE%CE%A9%A4%B7%A4%CA%A4%A4%20.pdf

より引用
PDFをコピーしたので段組が崩れています。
リンクが壊れてなければ上のリンクからどうぞ

◇ ◆ ◇ 医療においてビジネスモデルは成立しない ◇ ◆ ◇
保険医療において「ビジネスモデル」は成立しません。健康保険のルールは頻繁に、突然に、通達も無く、遡って変わります。役人が、末端の役人ですら、ルールを変更でき、遡って適応できます。100 円バーガー。10 円饅頭。350 円の牛肉料理、牛丼。これらの「ビジネスモデル」は、大量仕入れやコストカット、効率的な調理システムなど簡単にマネが出来ないシステムを構築しました。これらのモデルが出たときには世間の注目を集めました。
医療において、こうした創意工夫が可能でしょうか。ビジネスモデルが成り立つでしょうか。たとえば、歯科医療で入れ歯に特化、他の歯科治療は行わないというシステムを作ります。保険治療では、価格は公定価格ですから変えられません。一般的な入れ歯では出来上がるまで3~4 週間かかりますが、これを3 日で作ります。スピードが売りです。「早く」というニーズはありますから集客が見込めます。一定価格なので、集客で利益を上げるビジネスモデルです。
指導料を集中的に請求するモデルも考えられます。歯科医師は削る、詰める、入れ歯を作るだけではなく、病気を良くするために生活上の留意点や食事内容の注意や指導を行うことができます。この指導に専念するビジネスモデルです。システムの構築にそれなりの手間がかかりますが収益が見込めます。
しかし、どちらも数ヶ月、遅くとも1 年以内に終焉するでしょう。保険指導という名目の規制がかかります。「入れ歯だけということはありえない」「指導だけを行うことはありえない」「平均から突出している」こういう指導に対して、特化した「ビジネスモデル」だという言い訳は通用しません。ビジネスモデルが成立する条件は何でしょうか。いろいろな要件があるでしょうが、ルールが変わらないこと、見通しが立つことが必須です。ルールが変わったとき、牛丼屋は売る物がなくなり閉店を余儀なくされました。狂牛病の牛肉輸入禁止です。ルールの変更がビジネスモデルを壊しました。
制度上、請求しやすい点数があったとして、多くの歯科医師が請求しました。不正をするわけではありません。ルールブックに書いてある通りに行いました。数ヶ月で請求できなくなります。実際、今回の改正でも大臣告示によるルールが、単なる事務連絡で変更されました。大元の大臣告示が書き換えられたわけではなく、「認めない」と事務連絡が出ただけです。どういう根拠があるのか、なぜ、そんなことが可能なのか分かりません。この事務連絡も医療機関に直接に送られてくるわけではありません。「なぜか」と国会議員が国会で聞いても、言語明瞭・意味不明な返答しか帰ってきません。一定のルールがあり、この中で創意工夫をします。このルールが一方的に、片方のプレイヤーの都合で変えられたら試合は行えるでしょうか?3ストライクでアウト、4ボールで出塁というルールの野球が、今日は観客が多いから、打者凡退が続いているから、1 ストライクでアウト、即チェンジ、さっさと9 回を終わらせろと途中で言われたら、プレイヤーはどうすべきでしょうか。そして見に来た観客はどうすればいいでしょうか。ホームベースを踏んだ人数が多い方が勝ちというルール以外は、適時、変更ありというルールならば、勝敗がつけることが出来ます。次の回が1 アウトでチェンジなのか、10 アウトでチェンジなのか分からないけど、とにかく点の多い方が勝ちならば、まだやりようがあります。変更が遡って適応されるとしたら勝負は可能でしょうか。9 回になって、1 回のホームランは認めないとされたら。後出しジャンケンで、どっちが勝つかの解釈もルールも遡って変えられる、そんなゲームに誰が参加するでしょうか。
保険医療ではこうしたルール変更が頻繁に行われています。ルールを変えるルールは闇の中、いえ、無いのかもしれません。国会で厚生労働大臣が「おかしいから正す」と答弁しても、正されるのはほんの1 ヶ月間だけで、翌月には元のおかしい状態に戻ります。急に変更するのは合理性がないそうです。大臣までがおかしいと認めたルールも、遡って変更されたルールで生じた違反も「不正」とされます。
数年後に予定されているレセプトオンライン化により、機械的に「平均から逸脱→不正」と判定されるでしょう。不正と判定されたら、自殺者まででている「指導」が待っています。いくらでもいやがらせが可能な制度が待っています。理不尽なルールであろうと従わざるを得ない現実があります。このレセプトオンライン化は、保険医療のさらなる経済的抑制、受けられる医療の縮小、個人情報の漏洩、医療崩壊の促進などいろいろな危険性が指摘されています。今日、力の限りを尽くした治療を、ルール通り請求して大丈夫でしょうか。分かりません。ルールがいつ変わるのか。分かりません。私は不正をしたのでしょうか。分かりません。誰が不正か否か知っているのでしょうか。誰も知りません。「俺がルールだ」「保険治療は医学的に行うのではなくルールに則ってやるものだ」と言う役人が正しいのでしょうか。
保険医療ルールとはその程度のものでしょうか。保険医療現場でも創意工夫は可能です。でも、経営的には成立しません。
結局、国は何がしたいのでしょうか。ある役人が言いました「それを許すと、蔵を立てる医者が出てくる」ユニクロの社長は豪邸に住んでいます。イチローは数億円もらっています。能力がある人が大金を稼ぐ。資本主義ですから、正しい行為です。医療において、特に、保険制度においては、経済行為---お金を稼ぐこと---は悪とされています。医者は「かくあらん」なんて精神論・倫理観ではなく、国の方針です。そして特化すること、狭い範囲の専門家、すなわちスペシャリストとして保険医療を行うことも事実上、認めていません。「狭い分野だけに特化するなんてありえない」そうです。
どんな職種であれ、人ひとりを派遣して1 時間労働させる。移動の交通費、移動時間の拘束、勤務コスト、作業時間中の勤務コスト。1 日3~5 件まわるとして、労働者のフィー、雇用元のフィー、その他の材料コストを考えると最低でも1 日3~5 万円のチャージが必要です。介護保険だと1 件当たり数千円~2 万円程度の報酬。移動の時間ロスがあるので、どんなに回れても10 件以下。件数を回ろうとすれば単価が下がる。単価を上げようとすると保険の規制がかかる。1 日分のチャージを稼げない。あげくに同じ行為は「十分に普及したため」単価が下がります。このしわ寄せが現場に、末端の労働者にいきます。これが介護の現場から人が立ち去っている理由です。
道路工事はもう十分に普及した技術なので単価をうんと下げてもおかしくないのですが下がりません。歯科医療の現場でも、人が立ち去りつつあります。歯科医療者の養成学校の大部分が定員割れをし、閉校も相次いでいます。国家医療資格を得た人たちが現場から立ち去っています。現場から立ち去らないでも、保険医療から立ち去っています。深い不信と絶望のもとに。「一度入れたクラウンには、2 年間お金を出せません。その間に再治療の必要が生じたときには、国の制度では面倒を見れません」「リハビリは90 日間しか行えません。90 日を過ぎてリハビリの効果がない方の面倒は見れません」
----
なぜですか「%$+!☆¥(国会答弁)」
こんな意味不明な答弁ではなく、「お金がありません」「もっとお金を出してください。現場には予算が必要です」「財源はどのようにしたら良いと思いますか。増税、赤字国債、他の予算を削る、どうしたらいいですか」「どのぐらいの予算が必要ですか。それだけ出すと何ができますか」「どのようなルールならば、皆が納得できますか」継続できるシステム。必要なことを必要なだけ行える制度。創意工夫が認められる制度。経営が成り立つ報酬制度。こうした当たり前の事が今の保健医療には認められていません。したがって、ビジネスモデルなんて成立しえません。
ビジネスが成立しないところから人が立ち去るのは当たり前のことです。持続可能な保険医療システムがないと、元気に年老いて、ころりと逝けるような世の中にはなりません。
ミサイルでも落ちて来いなんて叫ばずに済ませられる世の中にしたいですね。
May23, 2009 / Asahai wrote