2010年11月30日火曜日

診断めぐり遺族が逆転敗訴 「当直医に専門判断は酷」

診断めぐり遺族が逆転敗訴 「当直医に専門判断は酷」2010年11月29日 提供:共同通信社

 大分県宇佐市の佐藤第一病院を受診した男性会社員=当時(42)=が帰宅途中に急性心筋梗塞(こうそく)で急死したのは診断ミスが原因として、遺族が同病院を経営する医療法人明徳会(宇佐市)に損害賠償を求めた訴訟の控訴審判決で、福岡高裁は26日、約5100万円の支払いを命じた一審大分地裁中津支部判決を取り消し、請求を棄却した。

 広田民生(ひろた・たみお)裁判長は判決理由で、男性を診断した当直医の専門が一般内科で、急性心筋梗塞の治療に携わった経験がないと指摘。「循環器専門医と同等の判断を要求するのは酷で、心電図で急性心筋梗塞の疑いを見逃したことはやむを得ない」と遺族の主張を退けた。

 一審判決は「心電図が急性心筋梗塞の所見を示しており、当直医が見落とした」として、病院側の過失を認めていた。

 判決によると、男性は2005年11月18日夕、胸の痛みを訴えて佐藤第一病院を受診。当直医が心電図検査で逆流性食道炎の疑いがあると診断し、男性を帰らせた。男性は帰宅中に倒れ、別の病院に搬送されたが、急性心筋梗塞で死亡した。

2010年11月29日月曜日

自覚症状ないまま進行 歯周病

2010年11月22日 提供:毎日新聞社
あなたの処方せん:/34 歯周病/1 自覚症状ないまま進行

 国民の半数以上がかかっているとも言われる歯周病。自覚症状がないまま進行し、最終的に歯が抜けてしまう病気だ。だが日々の手入れで進行を遅らせることは可能。できるだけ長く歯を保つための知恵を紹介する。

 歯周病の原因となるのは、歯周病菌と呼ばれる細菌だが、誰もが口の中に持っており、それだけでは病気にはならない。だが、口の中に食べかすなどが残っていると、そこに細菌が集まって塊となり、「プラーク(歯垢(しこう))」になる。プラークは、きちんと歯磨きをすれば取り除くことができるが、歯と歯茎の間など、磨き残しの部分があると、徐々に蓄積されていく。
 プラークは黄色がかった白色で、歯の色と区別がつきにくい。だが指で触るとぬるっとしている。大阪大医学部付属病院の歯科衛生士、森川友貴さん(30)は「食べ残しと思う人も多いが、8割方は細菌に置き換わっている。食べ物がだんだん腐って生ゴミになるようなもので、口臭のもとにもなる」。

 プラークがたまると歯茎が炎症反応を起こして腫れるため、歯と歯茎のすき間に「歯周ポケット」が形成されていく。これが歯周病への第一歩だ。歯茎の内部で細菌から体を守ろうと白血球が集まってくる。歯磨きの時に歯茎から血が出やすくなるのはこのためだ。
 この状態が長く続くと、プラークがさらにたまってカルシウムやリンなどを蓄えて歯石になり、炎症反応によって歯を支えている歯根膜や歯槽骨などの歯周組織が破壊され始める。さらに進むと、歯周組織の破壊とともに歯周ポケットはさらに深くなり、歯を支えることができなくなる。こうなると末期症状で、最終的に歯が奪われてしまう。(野田武、林田七恵が担当します)=つづく

菌が体内侵入、多様な病気の引き金に 歯周病

2010年11月23日 提供:毎日新聞社
あなたの処方せん:/35 歯周病/2 菌が体内侵入、多様な病気の引き金に

 歯周病が怖いのは、歯が奪われるだけでなく、体のさまざまな場所で病気などの引き金となる点だ。
 歯周病の原因となるプラーク(歯垢(しこう))は、歯と歯茎の間の歯周ポケットに蓄積され、歯周病菌が塊になった「バイオフィルム」という状態で存在している。バイオフィルムは、外部から糖類などの栄養源を取り込んで徐々に大きくなっていく。抗菌薬などへの耐性も強いため、歯磨きなど物理的な方法でないと除去が難しい。

 こうして増えた歯周病菌が、血液や唾液(だえき)などとともに侵入すると、さまざまな悪影響を及ぼす。まず気を付けたいのが、高齢者などに多い「誤嚥(ごえん)性肺炎」だ。唾液に含まれる歯周病菌が気道に入り、感染防御機能が落ちているため感染症を起こしてしまうのだ。

 東京歯科大(千葉市)の奥田克爾(かつじ)名誉教授(微生物学)によると、歯周病菌は就寝中に口から気道へと流れ込むことが多いといい、「寝る前に歯を磨いて、できるだけ口の中を清潔にしておくのが予防のために大事」と指摘する。

 一方、動脈硬化などによって起きる心筋梗塞(こうそく)にも、歯周病菌がかかわっていることが近年わかってきた。奥田名誉教授らは、動脈硬化によって詰まった心臓の周囲の冠状動脈に存在する細菌の遺伝子が、歯周病菌の遺伝子と一致することを発見し、04年に論文発表した。
 また妊娠中の女性にとっては、歯周病が早産や低体重児出産などのリスクともなる。96年に米国の研究者が関連性を初めて報告。その後も同様の報告が相次ぎ、07年には、歯周病菌が早産した妊婦のうち3割の人の羊水中から検出されたとの内容の論文も出ている。
 歯周病菌が早産などを引き起こす仕組みは解明されていないが、血流に乗った歯周病菌が胎盤まで達し、陣痛促進剤にも含まれるプロスタグランジンなどの炎症性物質が作られて、早産につながるのではないかと考えられている。=つづく

喫煙が環境面で最大の危険因子 歯周病

2010年11月24日 提供:毎日新聞社
あなたの処方せん:/36 歯周病/3 喫煙が環境面で最大の危険因子

 歯周病には、生活習慣やストレスなどの環境も影響することが知られている。中でも最大の危険因子とされるのが喫煙だ。NPO法人・日本歯周病学会(東京都豊島区)によると、たばこを吸う人が歯周病になるリスクは、吸わない人の2~8倍で、吸う本数が多い程危険も増える。

 同学会禁煙推進委員長の上田雅俊・大阪歯科大教授(歯周病学)によると、喫煙は、歯周病の症状を進行させる面と、早期発見を妨げる面がある。
 たばこに含まれるニコチンや、煙の成分の一酸化炭素には、歯茎内の毛細血管を収縮させたり、酸素の運搬を邪魔する働きがある。そのため、煙を吸うと歯茎や歯を支える歯槽骨に栄養や酸素が行き届かず、炎症を起こしやすくなる。またニコチンは白血球を傷つけるなどして、免疫機能を低下させる。本来歯茎内に存在して、傷ついた組織の修復を助ける線維芽細胞も、ニコチンにさらされると成長を妨げられる。
 また、喫煙による血管の収縮が、歯周病の早期発見をも妨げる。歯周病は自覚しにくいが、歯茎からの出血がそのサインとなる。だが血管の収縮によって出血が抑えられてしまい、気付かない間に重症化することもあるのだ。

 禁煙すると5~10年で歯周病になるリスクは非喫煙者並みに下がる。歯茎の血流は数日~数週間で正常に戻るため、既に歯周病にかかっている場合は一時的に出血したり赤くなることもあるが、炎症そのものの悪化ではない。
 上田教授は「たばこが怖いのは、本人だけでなく、他人のたばこの煙を吸い込む『受動喫煙』で、周囲まで歯周病になるリスクが増大することだ」と警告する。=つづく

歯磨きで進行を防ぐ 歯周病

2010年11月25日 提供:毎日新聞社
あなたの処方せん:/37 歯周病/4 歯磨きで進行を防ぐ

 歯周病は自覚症状がないまま少しずつ進行し、歯がぐらぐらするなどの症状が出た時には、既に相当悪化した状態だ。しかし症状が出る前でも、歯磨きなどで口の中を常に清潔にすることで、進行を防ぐ、あるいは遅らせることができる。日ごろの心がけ次第で、症状が大きく左右される病気でもあるのだ。大阪大医学部付属病院の歯科衛生士、森川友貴さん(30)に教えてもらった方法を、2回に分けて紹介する。

 まずは歯ブラシの選び方。「毛先が柔らかく、毛の束が3列ほどで幅が狭めのものがお勧め」という。毛先が硬いと、歯茎が必要以上に強い力で磨かれて、だんだんすり減ってしまう。また幅が広いと、歯周病の原因となるプラーク(歯垢(しこう))がたまりやすい歯と歯茎の間に毛先を当てにくく、奥歯も磨きにくい。

 注意がいるのは、歯と歯のすき間が広くて磨きにくい奥歯だ。ここは毛先の角の部分を歯のすき間に埋め込むようにすると効率がよいという。「消しゴムで字を消すのに、角を使うと力が小さくて済むのと同じ感覚です。毛先を歯のすき間に埋めたら、大きく動かさなくても、そのまま毛先を小刻みに震わせる程度で磨けます」

 また同じように磨きにくい前歯の裏側は、歯ブラシを縦にすると毛先が当たりやすい。こうして1本ずつ順番に磨くように歯ブラシをかければ、磨き残しが少なくて済むという。=つづく

歯間ブラシやフロスを使って

2010年11月26日 提供:毎日新聞社
あなたの処方せん:/38 歯周病/5止 歯間ブラシやフロスを使って

 歯周病の進行を防ぐには、口の中を常に清潔にしておくことが重要だ。そのためには日々の手入れが欠かせない。前回に引き続き、大阪大医学部付属病院の歯科衛生士、森川友貴さん(30)に教わったポイントをまとめた。

 前回は歯ブラシの選び方や、歯磨きのコツを紹介した。磨き残しがあるかどうかは、舌で歯を触ってみると分かる。「歯の表面は、ガラスのようにつるつるしているのが本来の姿。舌で触ってざらざらしているのは、汚れている証拠です」
 だが、どれだけ歯磨きを徹底しても、取ることのできる口の中の汚れは60~70%と言われる。これを補うのが歯間ブラシだ。歯と歯のすき間の大きさに合わせて、さまざまな太さのものがあり、いずれも薬局やドラッグストアで購入できる。
 また、歯の表面に付いた汚れをふき取る「フロス」という糸状の道具もある。歯間ブラシが入らないような、狭いすき間でも使うことができ、「歯と歯茎の間に糸を当てて汚れを取ることを意識して」とアドバイスする。

 さまざまな道具で歯や歯茎に付いたプラーク(歯垢(しこう))を取ることで、歯周病の進行は防げる。さらに森川さんは「半年から1年に1度ほど、歯科で歯の清掃を受けてほしい」と勧める。歯痛でもないのに歯科に行くのは抵抗があるかもしれないが、「歯の掃除をしてほしいと頼んでもらえれば。磨き残しの部分も指摘してもらえる」と話している。
=おわり(野田武、林田七恵が担当しました。29日からは「白内障」です)

「患者が治療中断」5割 経済的理由背景に 埼玉県保険医協医師アンケート

2010年11月26日 提供:毎日新聞社
県保険医協医師アンケ:「患者が治療中断」5割 経済的理由背景に /埼玉

 ◇未収金も7千万円超
 県保険医協会(青山邦夫理事長)が会員を対象にしたアンケートで、回答した医師の半数がここ半年の間、患者の経済的な理由で診療や治療を中断せざるを得なかったケースがある、と答えていたことが分かった。また未収金があると回答した医師が半年に支払われていない診療費は計7069万4485円に上る。同会は「経済的な格差により医療機関にかかれない患者が相当数いる。国に患者の窓口負担軽減を求めたい」と話している。【西田真季子】

 アンケートは8~10月に、同会が会員の開業医ら3481人を対象に実施した。病床20床以上の「病院」、19床以下の「医科診療所」、歯科診療所の医師758人から回答があった。
 このうち、48%にあたる365人から「(治療を)中断された経験がある」との答えがあった。理由としては「会社をクビになり保険証がなくなってしまうので、検査を待ってほしいと必要な検査を拒否された」「糖尿病は症状が出にくいので治療しなくていいと言われ治療できなかった」など。苦しい経済状況のため患者が医療費を切りつめる実態が分かった。

 治療中断した病名で最も多かったのは糖尿病や高血圧など慢性的疾患で、同会の山崎利彦理事は「初めは軽くても、症状が出た時には治療が大変になる病気」と懸念する。高血圧治療を中断したため脳出血となり、半身マヒの後遺症が残った患者もいたという。
 また、こうした患者の経済状況の悪化で医療機関への未払い金の影響も大きい。
 回答した医師のうち、この半年に患者に支払われていない負担金があるとの回答が36%に上った。中でも「病院」での未収が935件計5257万5630円と高額となっている。

2型糖尿病、新薬に光 インスリン抑制のたんぱく質発見 京大研

2010年11月26日 提供:毎日新聞社
2型糖尿病:新薬に光 インスリン抑制のたんぱく質発見--京大研

 京都大ウイルス研究所の増谷弘准教授らの研究グループは、糖尿病患者の大半を占める2型糖尿病でインスリンの分泌や効きやすさの鍵を握るたんぱく質を突き止め、英科学誌「ネイチャー・コミュニケーションズ」電子版に発表した。新たな治療薬の開発が期待されるという。
 2型糖尿病は、糖に対するインスリンの分泌が足りず、効き方も悪いのが特徴。しばしば肥満を伴う。
 研究グループは、糖や脂質の代謝調整に関与するたんぱく質「TBP-2」に注目。これを持たないマウスと糖尿病の肥満マウスを交配した。この結果、生まれてきたTBP-2を持たないマウスは、太っているのに血糖値は健康なマウスとほぼ同じで、TBP-2がないと血糖値が改善される関係がうかがえた。
 そこで研究グループは遺伝子を分析。TBP-2がない場合、インスリンを働かせる遺伝子が筋肉内で増加して効きやすくなり、すい臓でのインスリンの分泌も多いことを突き止めた。【広瀬登】

子供を守りたいお母さん、おとうさんへ 子供のからだと、感染症

肺炎球菌について
細菌性髄膜炎について

http://haienkyukin.jp/

花粉症、来春増える花粉に注意を

2010年11月26日 提供:毎日新聞社
花粉症:来春増える花粉に注意を

 来春は、花粉症の人にとって憂うつな季節になりそうだ。気象情報会社などが発表した、来春のスギ・ヒノキの花粉飛散予測によると、今年より飛散量がかなり多くなりそうだからだ。「日本人の3割が花粉症」とのデータもあり、多くの人が花粉飛散に備える必要があるが、本格的な飛散前の対策がポイントといえそうだ。【永山悦子】
 ◇今年の10倍予想も
 今春のスギ・ヒノキの花粉飛散量は全国的に少なく、花粉症の人には過ごしやすいシーズンだった。ところが、来春は一転して増加するとの予測が出ている。気象情報会社「ウェザーニューズ」は、全国平均で今年の5倍(関東7-8倍、近畿10倍)、日本気象協会も「全国で今春のおよそ2-10倍になる」と予想する。
 花粉飛散予測に詳しい佐橋紀男・東邦大理学部訪問教授(花粉学)は「7月の日照時間が長いと、花芽(かが)がたくさんできる。今年の夏は猛暑だったため花芽が多く、今春の飛散量を上回るのは間違いない」と話す。一方、猛暑が長引いた結果、一部の花芽が枯れるなど成長に遅れが見られるという。「飛散量は、過去10年で最多の05年春より少なく、例年並みかやや多い程度。飛散開始も例年並みかやや遅いのではないか」と分析する。
 ◇発症者増える恐れ
 佐橋さんも参加するNPO花粉情報協会の全国調査によると、スギ・ヒノキの花粉飛散量は過去10年、増加傾向が続く。全国の耳鼻咽喉(いんこう)科医と家族を対象にした調査では、花粉症の人が過去10年で1・5倍の3割に増えた。今井透・東京慈恵会医大柏病院耳鼻咽喉科診療部長は「飛散量が多くなる年には、新たな発症者が増えることが分かっている。これまで症状のない人も、花粉に触れる機会が多ければ発症する恐れがある」と注意を促す。
 ◇黄砂の刺激で症状悪化
 最近は黄砂の影響も指摘される。今年は、5年ぶりに11月に黄砂の飛来が各地で観測された。福井大の研究チームが今年、花粉症患者約150人の日記を分析したところ、黄砂が飛来した日に症状が悪化する傾向が明らかになった。黄砂に含まれる化学物質の刺激が加わって症状が悪化するとみられ、花粉症の人は、黄砂対策も必要になりそうだ。
 ◇初期療法が重要 症状に合った薬選びも
 「鼻アレルギー診療ガイドライン(2009年版)」によると、花粉症対策の大前提は「抗原回避」だ。「抗原」とはアレルギーを起こすもと、つまり「花粉」のことだ。
 さらに花粉症の治療では、症状が出る前やごく軽い時期の「初期療法」が、重症化するかどうかを左右する。初期療法は、花粉飛散の初観測日から本格飛散が始まるまでの間の治療をいい、毎年強い症状が出る花粉症患者に勧められる。完全に症状を止めることは難しいものの、花粉症の症状を起こす炎症の進行を遅らせ、重症化が抑えられるという。
 初観測日は地域によって1-3月と異なり、例年では関東地方など早いところで1月初旬。本格飛散は、関東以西で主に2月中旬から、東北以北で3月以降とされる。
 診療ガイドラインによると、初期療法では抗ヒスタミン剤など5種類の薬のうち一つを服用する。これらには保険が適用される。服用開始時期は、飛散開始予測日か少しでも症状が出た時から飲むものや、予測日の1-2週間前から飲むものなどがある。
 症状に合った薬選びも大切だ。大久保公裕・日本医大教授(耳鼻咽喉科)は「鼻水やくしゃみを抑えるのに適した薬、鼻づまりを起こしにくくする薬など、薬には『得意分野』がある。患者一人一人が、どの症状を改善したいかを正確に医師に伝えることが必要」と話す。
 また、大久保教授らは現在、花粉症の新治療法の臨床試験に、東京都とともに取り組んでいる。スギ花粉エキスを染み込ませた食パンを舌の下に置き、アレルギーの原因物質を取り込んで、症状が出ない体質に改善する「減感作療法」だ。これまでの試験で約7割の症状が改善した。大久保教授は「13年には承認申請が可能だろう」と話す。
 一方、正常な免疫機能や鼻粘膜の状態を保つため、日ごろからストレスや睡眠不足、酒の飲み過ぎを避け、喫煙を控えるなど、生活習慣を見直すことも大切だ。