2010年7月16日金曜日

「豊かな死」1位は英国 日本は23位、医療費高で

2010年7月15日 提供:共同通信社

 【シンガポール共同】世界で最も「豊かな死」を迎えられるのは英国-。英調査会社が14日、終末医療の現状などを基準にした40カ国・地域の「死の質ランキング」を発表。日本は高額な医療費と医療に従事する人員の不足がたたり、23位と低い評価だった。
 調査したのは、ロンドンが拠点のエコノミスト・インテリジェンス・ユニット。終末医療や苦痛を和らげる緩和医療について各国の医療関係者に聞き取りを行い、普及状況や質、医療費など複数の観点から評価した。
 トップは英国で、ホスピス普及率の高さに加え、専門家養成の環境が整備されていることなどが評価された。2位以下はオーストラリア、ニュージーランドが続いた。
 高齢化が著しい日本について、調査に当たったトニー・ナッシュ氏は「医療システムは高度だが、在宅医療など患者や家族に寄り添うケアが難しいようだ」と分析した。
 施設の整備度が評価される一方、医療保険の不備が問題視された米国は9位。中国(37位)、ブラジル(38位)など新興国は軒並み評価が低く、人口増大に医療普及が追いつかないと指摘されたインドは最下位だった。

2010年7月13日火曜日

参議院議員選挙2010

参院選の医師候補ら厳しく、37人中26人が落選
第22回参議院議員選挙の開票結果、医療関係候補者の当落まとめ(2010/7/12、2010/7/13 訂正)
2010年7月12日 星 良孝(m3.com編集部)


第22回参議院議員選挙が7月11日に投開票され、自民党が51議席を獲得し改選第1党となり、民主党を含む与党が過半数割れする結果となった。今回の選挙では、医師や薬剤師などの医療者、元厚労省幹部、患者団体の非営利組織(NPO)役員などを含めると、37人の医療関係者が立候補したが、26人が落選するという厳しい結果に終わった。新人医師候補に限ると、14人中13人が落選した。選挙区で新人医師の当選なし


 まず選挙区を見ると、民主党公認候補のうち当選したのは、宮城県選挙区(定数2)の現職、政策審議会会長で医師の桜井充候補、大分選挙区(定数1)の現職、厚生労働省政務官で医師の足立信也候補の二人に限られた。
 医療関係の新人候補は軒並み落選を強いられた。福島県選挙区(定数2)では、医師の新人、岡部光規候補が次点で落選したほか、鳥取選挙区(定数1)から同じく医師の新人、坂野真理候補が自民候補との事実上の一騎打ちで敗れた。医師以外の候補でも、埼玉選挙区(定数3)において、歯科医師の現職、島田智哉子候補が落選したほか、兵庫県選挙区(定数2)において、元厚労省職員の新人、三橋真記候補が落選し、広島県選挙区(定数2)で、非営利団体の「乳がん患者友の会きらら」世話人代表の中川圭候補が落選した。徳島選挙区(定数1)では薬剤師の吉田益子候補が競り負けた。
 選挙区と比例区を合わせて10議席を獲得したみんなの党は、医療関係者3人を新人候補として擁立していたが、いずれも落選した。選挙区で落選したのは、愛知県選挙区(定数3)の薬師寺道代候補、三重選挙区(定数1)の矢原由佳子候補のほか、熊本選挙区(定数1)の薬剤師、本田顕子候補である。新党改革の医師候補も落選した。千葉選挙区(定数3)の新人、古閑比佐志候補、大阪府選挙区(定数3)の新人、山分ネルソン祥興候補だ。千葉選挙区では、新人で薬剤師の清水哲候補も落選した。
 議席数を大幅に増やした自民党において選挙区の医療関係者は2人で、埼玉県選挙区(定数3)では関口昌一候補がトップ当選し、山形県選挙区(定数1)の現職、元厚労相副大臣の岸宏一候補が激戦を制した。
 共産党では、オピニオンリーダーとしてメディア露出の多かった現職の党幹事長で医師の小池晃候補(東京都選挙区)が接戦の末に敗れたことが大きい。


医療界の声、届ける難しさ
 比例区を見ると、民主党の医療関連候補は、現職の小林正夫候補(厚生委員会理事)、同じく現職の津田弥太郎(厚生委員会理事)、新人の歯科医師西村正美候補は当選したが、ほかの候補は当選がかなわなかった。日本医師連盟の推薦を受けた病院理事長で新人の安藤高夫候補が落選したほか、現職で医師の土田博和候補、現職で元決算委員会委員長、元薬害エイズ被害者原告代表の家西悟候補も落選した。
 自民党でも、医療関係の候補は厳しい結果となった。元日本看護協会で、新人の高階恵美子候補、元参院議員で元厚生政務官の藤井基之候補、新人で医療団体役員の赤石清美候補は当選したが、現職の元政治倫理公職選挙法特別委員会理事で医師の西島英利候補が、日医の支援を受けていたものの落選したほか、衆議院議員からの鞍替え組としては、元厚労相副大臣の木村義雄候補が落選した。
 そのほかの党では、公明党から、新人で医学博士の秋野公造候補が当選したほかは軒並み苦戦。国民新党からは、新人で医療法人理事長の後藤俊秀候補が落選。共産党からは、新人で医療法人役員の森正明候補が落選、みんなの党からは、元衆議院議員で日医の支援を受けた、医師の清水鴻一郎候補が落選した。新党改革では、新人で自衛隊医官の中村幸嗣候補が落選した。
 今回の選挙においては、日医が民主党推薦の方針を打ち出したことのほか、新党の結党の流れもあり、医療関係の候補者が幅広い党から出馬した。だが、いずれも苦戦。医療界が政治の場に自らの要望を届けることの難しさが浮き彫りになった。

医師の過労自殺裁判で、最高裁が異例の和解勧告

2010年07月08日  「最高裁から、より良い医療の実現のためには、本件は和解により解決するのが妥当であるという考えが示され、弁護団もそのような最高裁の意向に賛同したこと、そして和解の前提として、病院側が、中原利郎氏の死亡が新宿労働基準監督署長により労災認定された事実を真摯に受け止め、弁護団も病院のそのような姿勢を評価したことから、和解に至った」  7月8日、小児科医だった中原利郎氏(当時44歳)が1999年8月に過労自殺、遺族が病院側に損害賠償を求めた裁判で、最高裁で和解が成立、午後5時半から記者会見に臨んだ川人博・弁護士らによる弁護団はこう説明しました。和解額は700万円です。
労災認定を求める行政訴訟では2007年3月の東京地裁判決で遺族側が勝訴、うつ病の発症が過重労働によることが認められました(国は控訴せず確定)。
 民事訴訟では、
(1)病院での業務が過重であったか、それによって自殺の原因となったうつ病が発症したか、
(2)うつ病の発症に関して、使用者である病院の安全配慮義務違反および注意義務違反が認められるか、の2点争点でした(『「医師の過重労働の放置につながる判決」、小児科医の過労死裁判』を参照)。
一審では、(1)と(2)ともに否定され、二審の2009年3月の東京高裁判決では、(1)が認められたものの、(2)は否定され、原告敗訴。  遺族側は判決を不服として最高裁に上告受理の申立を行いました。上告受理、高裁判決の破棄差し戻しには至らなかったものの、最高裁のあっせん趣旨を踏まえて和解に応じることにしたとのこと。  
川人弁護士によると、2008年の司法統計によれば、最高裁に上告申立・上告受理申立がされた民事・行政事件は約4500件で、うち最高裁で和解になったのはわすか延べ8件。原判決が破棄されたのは、56件にすぎないそうです。こうした中での和解勧告について、川人弁護士は、「今回の事件が単に一個人の問題にとどまらず、社会的な事件だというとらえ方を最高裁はしたのだろう」とみています。  遺族側の記者会見の様子も併せ、詳報は改めて医療維新でお伝えします。
【最高裁の和解条項】 申立人らは、亡中原利郎医師の遺志を受け継ぎ、小児科医の過重な勤務条件の改善を希求するとともに、労働基準法等の法規を遵守した職場の確立、医師の心身の健康が守られる保健体制の整備を希求して、本件訴訟を提起したのに対し、相手方は、相手方病院の勤務体制下においては、中原医師の死亡について具体的原因を発見し、防止措置を執ることは容易ではなかったという立場で本件訴訟に対応してきたところ、裁判所は、我が国におけるより良い医療を実現するとの観点から、当事者双方に和解による解決を勧告した。  当事者双方は、原判決が認定した中原医師の勤務状況(相手方病院の措置、対応を含む)を改めて確認するとともに、医師不足や医師の過重負担を生じさせないことが国民の健康を守るために不可欠であることを相互に確認して、以下の内容で和解し、本件訴訟を終了させる。
1.相手方は、中原医師の死亡が新宿労働基準監督署長により労災認定された事実を真摯に受け止め、同医師の死亡に深く哀悼の意を表する。
2.相手方は、申立人らに対し、本件和解金として、労災保険給付金とは別に、合計金700万円の支払義務があることを認め、これを本日、本和解の席上で支払い、申立人らはこれを受領した。
3.申立人らは、その余の請求を放棄する。
4.当事者双方は、今後、本件事案並びにこの和解の経過および結果を公表する場合には、原判決認定事実(原判決が引用する第1審の認定事実を含む)を前提としてこれを行い、相手方病院を含む我が国の医療現場におけるより良い医療を実現することを希求するという本和解の趣旨を十分に尊重し、相手方当事者を誹謗中傷しないことを相互に確約する。
5.当事者双方は、申立人らと相手方との間には、本和解条項に定めるほか、何らかの債権債務がないことを相互に確認する。
6.訴訟の総費用は、各自の負担とする。