P77
玄侑 禅には「風流ならざるところもまた風流」という言葉がありますが、どこかにぶつかろうと歯が痛かろうと、全体としては成長に向かっているんだということが信じられれば、もっとひどい災難に遭っても、それは風流なんですね。
鈴木 そうですね。自分の身に起こることは、すべて偶然ではなくて、意味があって起きるっていいますけれど、その考え方がいまの風流かもしれないですね。だから人生に無駄もないし、回り道もないわけですね。
P78
人生で起きるいろいろなバカバカしいことを、それが人生だと達観して、いまが最高なんだといまこの時間を喜び、こうして生かされてある命のありがたさを実感しながら、心安らかに生きて生きたい。
また、それができるのが年を重ねていく特権ではないかと思います。
鈴木秀子
P80
玄侑 だから自分の人生に自分で物語をつけて不自由にすることはないと思うんです。
自分には「既にすべてが与えられている」ということ、そして「すべてのことは自分が何かを学び、深まるために起こる」ということを自覚して、常にどう変わるか分らないいまを尊く生きることが人生の大切なテーマだと思います。
~中略~
人生の中ではいろんなことがありますけど、もしいやなことがあった時には、あぁ、これもきっと意味があって起こったんだ、どんな意味があるかいまは分らないけれど、いつかそれが分る時が楽しみだと、そんな聖なる諦めをもつことが大切ですね。
鈴木秀子
玄侑 宗久 (著)
多生の縁―玄侑宗久対談集
文藝春秋 (2007/1/10)
多生の縁 玄侑宗久対談集
- 作者: 玄侑 宗久
- 出版社/メーカー: 文藝春秋
- 発売日: 2004/03/24
- メディア: 単行本
英語では普通「Day by day,it's a good day」と訳される。
来る日も来る日も、佳(よ)い日だというわけだが、むろん毎日天気がいいというわけでもないし毎日ラッキーなことが起こりつづけるわけでもない。そんなことなら、べつに悟らなくても思うことだ。
ここで言われるgoodは、決してbadの反対語ではないことに注意しなくてはならない。いわば絶対的なgoodなのである。
つまり雨の日も、嵐の日も、「佳い雨の日」「佳い雪の日」「佳い嵐の日」なのである。
もっと言えば、大雨で床下浸水したり、大雪で会社に行けなかったり、嵐で電車が停まったりするわけだが、それも「佳い床下浸水の日」であり、「佳い出勤できない日」であり、「佳い電車が停まった日」でなくてはならない。
禅的生活
玄侑 宗久
(著)
筑摩書房 (2003/12/9)
P131
禅的生活 (ちくま新書)
- 作者: 玄侑宗久
- 出版社/メーカー: 筑摩書房
- 発売日: 2013/08/02
- メディア: Kindle版
P53
大阪では、ことあるごとに、「生きているだけで丸儲け」と言うそうだ。特に、落ち込みそうになったり、心が折れそうになった時には、声高に「生きているだけで丸儲け」と言う。
元気で生きていれば、それ以上言うことはない。こうした考えを基本にすれば、老いへの不安も一掃されるだろう。
医者というのもつらい仕事で、毎日のようにたくさんの死に遭遇する。なかには、まだいといけない子どももいれば、花を咲かせないまましんでいく若い命もある。そうした死を見つめた後は、いきていることだけで心の底から感謝の念が湧いてくる。
朝、目が覚める。今日も生きていることを、ありがたいと天に感謝する。一日が終われば、無事に今日一日を生きられたことを「丸儲け」とありがたいと感謝する。
P54
お小水がでることさえも幸せに感じられる。こうして日常のなんでもないことにも幸せを感じられる人は、脳の働きがよくなることが証明されている。
感謝する。満足する。いい気分になる。幸せだなあと感じると、幸福ホルモンと呼ばれるアナンダマイトというホルモンが盛んに分泌されるのである。
アナンダマイトは大脳の前頭葉を刺激し、その働きを最高レベルまで高める。前頭葉は脳のコントロールタワーとでもいうべき働きをしている部位だから、ここが活発に働き、指令を出すことによって、大脳皮質がフル稼働を始める。その結果、思考能力が活性化し、創造力も高まるという。
前向きの精神状態は交感神経を刺激するから、やる気をうながすノルアドレナリンの分泌も盛んになる。よい意味でのノーテンキは、ストレスのない幸せな日々に導くカギになるのである。
精神科医が教える50歳からの人生を楽しむ老後術
保坂 隆 (著)
大和書房 (2011/6/10)

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