2026年2月20日金曜日

ジャーナリズムは偏向から逃れられない

  現代のような複雑な世界で、ジャーナリズムや科学が、客観的でバランスのとれた、中立的な報道や命題を提出できるという考え方が、ある意味では傲慢と言わねばならない。
主観の偏向から可能なかぎり自由であろうとすることは必要なことでもあるし、むしろ当然のことなのだが、そのことと、そのような偏向から自由になりうると考えることの間には大きな相違がある。
良心的であればこのような偏向から自由になりうると考えることが、その良心とは裏腹な傲慢を帰結しかねないのである。 それはジャーナリズムや科学の役割と可能性を過大評価することになるからである。
それに対して、このような偏向からまず逃れられないという考えは、むしろ、ジャーナリズムや科学を本質的にいかがわしいものとみなすことであり、わたしには、この方がはるかに健全な態度に見えるのだ。

現代民主主義の病理―戦後日本をどう見るか
佐伯 啓思 (著)
日本放送出版協会 (1997/01)
P144

現代民主主義の病理 戦後日本をどう見るか (NHKブックス)

現代民主主義の病理 戦後日本をどう見るか (NHKブックス)

  • 作者: 佐伯 啓思
  • 出版社/メーカー: NHK出版
  • 発売日: 1997/01/01
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)

 その点、日本の新聞に「客観報道」という”神話”が息づいていることは不思議でならない。日本の新聞は言葉遣いや文法がきっちり決まっており、まるで同一人物が書いているかのような記事ばかりだ。
自分の名前を出して記事を書く主筆や編集委員、論説委員など一部を除いて、記者が導き出した判断を前面に押し出す記事はほとんど掲載されない。
 公正な報道を実現するために、異なる立場の識者のコメントを両論併記するのは重要だ。
だが、無理やりバランスを取ろうとする必要はない。取材を重ねたうえで右、左、どちらかの結論に至ったのであれば、記者の署名入りで堂々と記事を書けばいい。
いくら新聞が「客観報道」を追求したところで、究極的には報道とは主観の産物でしかないのだ。

「本当のこと」を伝えない日本の新聞
マーティン・ファクラー (著)
双葉社 (2012/7/4)
P116

「本当のこと」を伝えない日本の新聞 (双葉新書)

「本当のこと」を伝えない日本の新聞 (双葉新書)

  • 作者: マーティン・ファクラー
  • 出版社/メーカー: 双葉社
  • 発売日: 2012/07/04
  • メディア: 新書

高知県 四万十川

天然色には及ばない

あらゆる画家をはじめ、布や紙の製造者、壁紙の着色工、その他もろもろの人々の色彩感覚が、秋の彩りによってどれだけ鍛えられていることか!
文具屋に行けば色とりどりの封筒が並んでいるかもしれないが、それでも、たった一本の木に繁る葉の色合いほど多彩ではない。―「秋の色合い」

ソロー語録
ヘンリー・デイヴィッド・ソロー(著), 岩政 伸治 (翻訳)
文遊社 (2009/10)
P17

ソロー語録

ソロー語録

  • 出版社/メーカー: 文遊社
  • 発売日: 2009/10/01
  • メディア: 単行本

 

高知県 四万十川

リスクを理解する能力


 個人の命運はどれくらいリスクを理解しているかで決まる.社会におけるその人の立場も,周囲からリスクを理解する能力があるとみなされるかどうかに左右される.

リスク 不確実性の中での意思決定
Baruch Fischhoff (著), John Kadvany (著),中谷内 一也 (翻訳)
丸善出版 (2015/4/26)
P132

リスク 不確実性の中での意思決定 (サイエンス・パレット)

リスク 不確実性の中での意思決定 (サイエンス・パレット)

  • 出版社/メーカー: 丸善出版
  • 発売日: 2015/04/26
  • メディア: 新書

 

高知県 四万十川

その問題は本当に解決すべき問題なのか

  突如としてビジネス問題があなたのデスク上に不時着、それを解決せよと指令が下る、なんてことがあるかもしれない。
まあ、いいだろう。しかし、いずれかの方向めがけて走り出す前に、本当にその問題が解決すべき問題なのか、はっきりさせなければならない。

解決すべきは、与えられた問題ではないかもしれないのだ。

イーサン・M・ラジエル (著), 嶋本 恵美 (翻訳)
マッキンゼー式 世界最強の仕事術
ソフトバンククリエイティブ (2006/9/22)
P41

マッキンゼー式 世界最強の仕事術

マッキンゼー式 世界最強の仕事術

  • 出版社/メーカー: 英治出版
  • 発売日: 2015/02/24
  • メディア: Kindle版

 

 常に「意思決定は必要か」を検討しなければならない。何もしないことを決定するのも、一つの決定である。

マネジメント[エッセンシャル版] - 基本と原則
ピーター・F・ドラッカー (著), 上田 惇生 (翻訳)
ダイヤモンド社; エッセンシャル版 (2001/12/14)
P153

マネジメント[エッセンシャル版] - 基本と原則

マネジメント[エッセンシャル版] - 基本と原則

  • 出版社/メーカー: ダイヤモンド社
  • 発売日: 2001/12/14
  • メディア: 単行本

 

高知県 四万十川

刀は「カタナ」以上でもなく、以下でもない

「このごろ、自分は兵法者であるという触れこみで世を渡っている者があるが、実は彼らのいう兵法とは剣術のことだけである。~略~」
~中略~
鹿島・香取の社人が「兵法伝授」のことばのもとに剣術を教え、それが世渡り術の一種となってゆくとき、兵法がふくむべき多くの課題は剣一本に閉じ込められることになった。
これは兵法の矮小化であり、同時に、要するに道具であるにすぎない一本の剣に、あたかも兵法のすべてがこめられているというような過大評価をする盲目の精神主義ともなる。
この両面を見事に彼は衝(つ)いた。

 物を大事にすることと執着するのとでは、まったく意味がちがう。おそらく武蔵は、剣そのものにさえさほど執着する気持ちになったことはないのだろう。

奈良本 辰也 (著)
宮本武蔵 五輪書入門
学習研究社 (2002/11)
P49

宮本武蔵 五輪書入門 (学研M文庫)

宮本武蔵 五輪書入門 (学研M文庫)

  • 作者: 奈良本 辰也
  • 出版社/メーカー: 学研プラス
  • 発売日: 2022/04/04
  • メディア: 文庫

 

高知県 海洋堂ホビー館四万十

芸術家

P99
われわれは芸術によって最も確実に俗世間を避けることができる。同時に芸術によって最も確実に俗世間と結びつくことができる。
(「親和力」第二部第五章から)

P101
形作れ!芸術家よ!語るな!
ただ一つの息吹きだにも汝の詩たれかし。
(詩集の「芸術」の部にかかげられたモットー、一八一五年作)

P102
最高の幸福の瞬間にも極度な逆境の瞬間にも、われわれは芸術家を必要とする。
(「親和力」第二部第五章から)

P112
われわれ(詩人)は女のようなものだ。女はお産をする時は、もう二度と男の側に寝まいと誓う。しかもいつの間にか、また身ごもっている。

(エッカーマン「ゲーテとの対話」一八二九年二月二〇日、から) 

ゲーテ格言集
ゲーテ (著), 高橋 健二 (翻訳)
新潮社; 改版 (1952/6/27)

ゲーテ格言集(新潮文庫)

ゲーテ格言集(新潮文庫)

  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 2016/04/22
  • メディア: Kindle版

 




 

高知県 海洋堂ホビー館四万十

「サラリーマン」という職業

 大工さんには大工さんの金言がある。その職業技術の血統が、何百年をかけて生んだ経験と叡智の珠玉なのだ。植木職でも陶工の世界でも同じことがいえよう。
 さて、サラリーマンの場合である。いったい、そんなものがあるだろうか。私は考えこんでしまった。どうやらこの職業の伝統にはそうしたものはなさそうなのである。
 ないということは、この職業の本質そのものに関係がありそうな気がする。~中略~
 じつにサラリーマンたるや、きょうは営業課員であっても、あすは庶務課員もしくは厚生寮カントク員と名乗らねばならぬかもしれぬ宿命をもっている。「職業」がへんてんとしてかわるのだ。二十四歳で庶務課員となり三十年ひとすじに同業を貫徹いたしましたなぞは、この社会ででは尊敬をうけないのである。
しぜん、他の職業ほどには、職業そのものに関する金言名句が少ないのお無理はない。あるとすれば、職業そのものよりも、サラリーマンという悲しくもまた楽しい人生者としての処世の警句ぐらいのものであろう。
 私は、この本で日本のサラリーマンの原型をサムライにもとめた。そのサムライも発生から数百年間、サラリーマンではなかった。戦闘技術者という、レッキとした、末川さん(住人注;末川博 博士)のいう職業人であったのだ。~中略~
 ところが、徳川幕府の平和政策は、いちように彼らをサラリーマン化してしまったのである。もはや、刀槍をふりまあす殺人家としての金言は要らない。が、彼らのブッソウなキバは抜いてしまったものの、平凡な俸禄生活者としての公務員に甘んじさせるために何らかの”サラリーマン哲学”が要った。
 これが儒教というやつである。

司馬遼太郎が考えたこと〈1〉エッセイ1953.10~1961.10
司馬遼太郎 (著)
新潮社 (2004/12/22)
P65

 

司馬遼太郎が考えたこと〈1〉エッセイ1953.10~1961.10 (新潮文庫)

司馬遼太郎が考えたこと〈1〉エッセイ1953.10~1961.10 (新潮文庫)

  • 作者: 遼太郎, 司馬
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 2004/12/22
  • メディア: 文庫
高知 四万十川

道具を駆使すべき

 「武士というものは大将でも兵卒でも二本の刀を腰につけるものだ。(略)
この二刀の効用を悟らせるためにこそ、わが流を二刀一流というのである。
わが流においては、初心者のうちから太刀と刀を両手に持って修行する。これが二刀流の真髄である。生命をかけて闘うとき、持っている道具のすべてを駆使すべきであろう。役に立てず、腰に納めたまま敗死するようなことは正しくない。
~略~
(この一流を二刀流と名づけること)

奈良本 辰也 (著)
宮本武蔵 五輪書入門
学習研究社 (2002/11)
P86

宮本武蔵 五輪書入門 (学研M文庫)

宮本武蔵 五輪書入門 (学研M文庫)

  • 作者: 奈良本 辰也
  • 出版社/メーカー: 学研プラス
  • 発売日: 2022/04/04
  • メディア: 文庫

 

高知県 四万十川

私生活

 私生活というのは、飯を食ったり、排泄したりすることの総和ではない。そんなのが私生活なら犬でもカイコでも私生活はある。
私生活とは、チャンとした考え方、それを大きくは人生観、小さくは処世法とでもいおう、そうしたものによって、キチンと律せられた生活を私生活というのだ。
二十年勤続の銀行員が、無味乾燥な一日のつとめを終えて、家の小さな庭でボンサイを楽しんだり、同好を誘って句会に出かける。
それが私生活だ。魂の安らぎをもとめて静かに聖典を誦し永遠へ思索を参入させる。 これもすぐれた私生活だし、享楽を人生の目的としている人物が、暮夜ひそかに走ってバーの扉を押し、キャバレーで乱痴気さわぎをするのも、厳然たる私生活である。

司馬遼太郎が考えたこと〈1〉エッセイ1953.10~1961.10
司馬遼太郎 (著)
新潮社 (2004/12/22)
P58

司馬遼太郎が考えたこと〈1〉エッセイ1953.10~1961.10 (新潮文庫)

司馬遼太郎が考えたこと〈1〉エッセイ1953.10~1961.10 (新潮文庫)

  • 作者: 遼太郎, 司馬
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 2004/12/22
  • メディア: 文庫

 

高知県 四万十川

人生にイエスと言う

P72
(住人注;生きる)意味は三つの主要な方向で実現されることができます。人生を意味のあるものにできるのは、第一に、何かを行なうこと、活動したり創造したりすること、自分の仕事を実現することによってです。
第二に、なにかを体験すること、自然、芸術、人間を愛することによっても意味を実現できます。
第三に、第一の方向でも第二の方向でも人生を価値あるものにする可能性がなくても、まだ生きる意味を見いだすことができます。自分の可能性が制約されているということが、どうしようもない運命であり、避けられず逃げられない事実であっても、その事実に対してどんな態度をとるか、その事実にどう適応し、その事実に対してどうふるまうか、その運命を自分に課せられた「十字架」としてどう引き受けるかに、生きる意味を見いだすことができるのです。

 ところで、人間は生きていくなかで、そのときそのときの「時機に突きつけられる要求」に応じて、いつでも、意味実現の方向を変える用意がなければなりません(突然方向を変えなければならないこともよくありますが)。
というのも、これまでにも指摘したように、人生の意味は具体的なものでしかありえないからです。
ひとりひとりの人間という点でもそうですし、そのときそのときの時機という点でもそうです。人生が出す問題は人によっても異なりますし、状況によっても異なります。

P162
人生はそれ自体意味があるわけですから、どんな状況でも人生にイエスという意味があります。
そればかりか、どんな状況でも人生にイエスと言うことができるのです。

それでも人生にイエスと言う
V.E. フランクル (著), 山田 邦男 (翻訳), 松田 美佳 (翻訳)
春秋社 (1993/12/25)

それでも人生にイエスと言う

それでも人生にイエスと言う

  • 出版社/メーカー: 春秋社
  • 発売日: 2014/12/25
  • メディア: Kindle版

 

高知県 四万十川