2026年6月29日月曜日

ヒトは快楽を求めて生きている

人間がもし快楽よりも苦痛を好むとしたら、人類はとうの昔に滅亡していただろう
(人間の絆」四十五章、一九一五年)

モーム語録
行方 昭夫 (編集)
岩波書店 (2010/4/17)
P21

モーム語録 (岩波現代文庫) (岩波現代文庫 文芸 163)

モーム語録 (岩波現代文庫) (岩波現代文庫 文芸 163)

  • 出版社/メーカー: 岩波書店
  • 発売日: 2010/04/17
  • メディア: 文庫

有名な心理学者のB・F・スキナーは、かつてこう言いました。
人間の行動はすべて、個人の欲求か、種の欲求か、社会全体のルールに適応したものになる、と。
ただし、これら三つの要素はぶつかり合うことが多く、そのために強い緊張が生じます。

20歳のときに知っておきたかったこと スタンフォード大学集中講義
ティナ・シーリグ (著), Tina Seelig (原著), 高遠 裕子 (翻訳)
CCCメディアハウス (2010/3/10)
P46

20歳のときに知っておきたかったこと スタンフォード大学集中講義

20歳のときに知っておきたかったこと スタンフォード大学集中講義

  • 出版社/メーカー: CCCメディアハウス
  • 発売日: 2010/03/10
  • メディア: ハードカバー

「マズローの5段階欲求」とは、人間の欲求は5段階のピラミッドのように構成されていて、低階層の欲求が満たされると、より高次の階層の欲求を欲するというものです。
その「5段階」とは次の通りです。
①生存の欲求
②安心・安全の欲求
③所属と愛の欲求
④承認の欲求
⑤自己実現の欲求

たった5つの感情でお客さまは動き出す!!―売り込まなくても結果が出る“感情集客術"
佐々 妙美 (著)
Clover出版 (2016/3/8)
P136

たった5つの感情でお客さまは動き出す!!―売り込まなくても結果が出る“感情集客術

たった5つの感情でお客さまは動き出す!!―売り込まなくても結果が出る“感情集客術"

  • 作者: 佐々 妙美
  • 出版社/メーカー: Clover出版
  • 発売日: 2022/10/15
  • メディア: Kindle版

赤提灯でぶっちゃけ(打ち明け)


昔の日本はアメリカと違って、カウンセラーやセラピストをあまり必要としない社会でした。あまり化にはない人間関係の文化が定着していたからです。
 それはいわゆる「飲みニケーション」にほかなりません。「赤提灯文化」といってもいいでしょう。
以前の日本では、一日の仕事を終えたあと、会社の同僚などの親しい仲間と赤提灯で一杯やるのが日常的な風景でした。
 アメリカ人は、これをほとんどやりません。その背景には、男同士で飲み屋に入るとホモだと思われるのが怖いという事情(これも「ホモ・フォビア)(ホモ恐怖症)」の一種といえるでしょう)もあったのですが、それはともかく、アメリカの「飲みニケーション」はパーティが中心です。
パーティは基本的に社交の場なので、愚痴や弱音などの本音を口にできません。
 そのせいもあって、アメリカ社会では昔からカウンセラーやセラピストのところに通うのが当たり前の習慣として根づいていました。
アメリカの場合、家庭に帰っても、奥さんに「愛してるよ」などと建前をいわなければいけないので、本音をいえる場所が、ほかにあまりないのでしょう。
 それに対して、日本のビジネスマンは赤提灯でいくらでも本音を聞いてもらうことができました。そういう場があったのは、男性サラリーマンでけではありません。学生や主婦なども、それぞれ仲の良い友達と喫茶店や井戸端で本音をいい合う機会があったのでしょう。
アメリカのパーティは夫婦同伴が基本なので、家庭の愚痴などこぼせませんが、日本人の場合、ダンナはダンナ同士、主婦は主婦同士で集まることが多いので、「うちのダンナときたら・・・」といったボヤキを聞いてもらえるわけです。

自分が「自分」でいられる コフート心理学入門
和田 秀樹
(著)
青春出版社 (2015/4/16)
P92

自分が「自分」でいられる コフート心理学入門 (青春新書インテリジェンス)

自分が「自分」でいられる コフート心理学入門 (青春新書インテリジェンス)

  • 作者: 和田 秀樹
  • 出版社/メーカー: 青春出版社
  • 発売日: 2015/04/16
  • メディア: 新書

好きか嫌いかで決まる


むかし弥子瑕(びしか)は衛の君に愛せられていた。衛国のおきてで、君の車にかってに乗ったものの罰は足切りであった。
そのうち弥子の母親が病気になった。それを聞き夜中にいって知らせたひとがあった。
弥子は君の仰せといつわり君の車に乗って宮中を出た。君はそえを聞いて、ほめちぎった、「じつに孝行だな。母のためには、足を切られることも気にかけないとは」。
また君と果樹園をあるいていたとき、弥子は一つの桃をとって食べたが甘かったので、食べてしまわないで君にさしあげた。君は「わしがほんとうにすきなのだな。自分の口は忘れてもわしを思うてくれる」と言った。弥子の容色は衰えて寵愛もうすれたのち、主君のきげんをそこねたことがあった。
君は「そやつはわしの車にかってに乗り、それにまたわしに桃の食いのこしを食べさせた奴だ」と言った。
もともと弥子のおこないが初めとあとで変ったのではない。前にはほめられ、後では罪を獲たのは、愛と憎しみのちがいの大きさであった。
老子・韓非列伝 第三

史記列伝1
小川環樹 今鷹真 福島吉彦 訳
岩波書店 (1975/6/16)
P31

史記列伝1 (岩波文庫 青214-1)

史記列伝1 (岩波文庫 青214-1)

  • 出版社/メーカー: 岩波書店
  • 発売日: 1975/06/16
  • メディア: 文庫


 言い換えるならば、人は好きな人については「同じところ探し」をより積極的に行い、嫌いな人、自分と違う人については「違うところ探し」をより積極的にするということです。
 ですから、人にとって、好きな人はより好きに、嫌いな人はより嫌いになるのが自然な流れなのです。

イラッとしない思考術
安藤 俊介 (著)
ベストセラーズ (2014/11/26)
P020

イラッとしない思考術

イラッとしない思考術

  • 作者: 安藤 俊介
  • 出版社/メーカー: ベストセラーズ
  • 発売日: 2014/11/26
  • メディア: 単行本

P49
「好き」という感情になってもらうことが、実は、集客にしてもセールスにしても、最大のポイントです。
「好き」という感情を抱いてもらったあとに、理性にアプローチする。まずは「好き」になってもらって、そのあとで、メリットやベネフィットを伝えていく。それがいちばん無理のないやり方なんです。
 あなたのことを「好き」になってもらえたら、そのお客様は「生涯顧客」の候補になります。

P99
「良い相性」なんて、実は作るのはカンタンなんです。
~中略~
 まずは「安心」できる状態を作り、次に「繋がり」を感じることができるようにし、関係の土台作りをします。~中略~
 そして、つぎに「認められたい」感情を満たせばバッチリです。

P126
 オーストリア出身でアメリカで活躍した社会心理学者であるフリッツ・ハイダーは、ある事象の原因を何に求めるかという帰属過程がどのように行われるのかを理論化した「帰属理論」を提唱しました。
 それによると、人の行動は、能力や意思などその人自身の内側の要素と、状況や偶発性などの外側の要素の2つに帰属する、とされています。内側の要素を「内的帰属」、外側の要素を「外敵帰属」と定義しています。
  何か偶然が起きたとき、人はつい、どうしてこんな偶然が起こったんだろうと原因を探してしまいます。
 たとえば、出会ったその相手と、出身地が同じだった、誕生日が近かった、何人兄弟か、兄弟の数が同じだった、好きな食べ物が同じだった―のようにいくつもの偶然が重なったりするとこれはもう、偶然ではなくて必然だ、いや、運命だ!なんて思ってしまうんですね、外的要因に原因を求めるようになっていくと。
 逆に言えば、共通点を次々と積み重ねていけば、偶然から必然に、さらには運命だと思わせることができるんですね。
「出会ったことは運命かもしれない」
共通点を積み重ねて、そこに意識をフォーカスさせていくと、そう思わせることだって可能なんです。
 共通点がもたらす安心感は、そんな魔法さえ呼び寄せてしまうんです。

たった5つの感情でお客さまは動き出す!!―売り込まなくても結果が出る“感情集客術"
佐々 妙美 (著)
Clover出版 (2016/3/8)

たった5つの感情でお客さまは動き出す!!―売り込まなくても結果が出る“感情集客術

たった5つの感情でお客さまは動き出す!!―売り込まなくても結果が出る“感情集客術"

  • 作者: 佐々 妙美
  • 出版社/メーカー: Clover出版
  • 発売日: 2022/10/15
  • メディア: Kindle版

 




京都市

過去の栄光にすがるな

P112 
この道はただ花が能の命なるを、花の失するをも知らず、もとの名望ばかりを頼まん事、古き為手の、返すがえす誤りなり。
物数をば似せたりとも、花のあるようを知らざらんは、花咲かぬ時の草木を集めて見んがごとし。

能の世界ではただ芸の魅力こそが最重要であるのに、その魅力がなくなってしまうのも認識せずに、昔の名声ばかりに頼ろうとすることは、古株の役者の、甚だしい誤りである。
数々の演目をこなしても、芸の魅力の見せ方を知らない役者の能は、花の咲かぬ季節の草木を集めて鑑賞するようなものだ。

世阿弥 (著), 竹本 幹夫 (翻訳)
風姿花伝・三道 現代語訳付き (角川ソフィア文庫)
角川学芸出版 (2009/9/25)

 

風姿花伝・三道 現代語訳付き (角川ソフィア文庫)

風姿花伝・三道 現代語訳付き (角川ソフィア文庫)

  • 出版社/メーカー: KADOKAWA
  • 発売日: 2013/09/26
  • メディア: Kindle版

 いまの日本でもっとも頭が固いのは、団塊の世代の男性です。
高度成長期からバブルにかけて甘い汁を吸ってきた彼らは、いまだに過去の自分が正しかったと考えています。
経済がよかったのは自分たちのおかげだと考え、若い才能や新しい価値観を認めようとしません。
そしてこのスピード化の時代に、相変わらず「根回しが大切だ」などといっているのです。
自分の価値観を柔軟に変えられる男性は、そう多くはありません。

北原 茂実 (著)
「病院」がトヨタを超える日 医療は日本を救う輸出産業になる!
講談社 (2011/1/21)
P189

「病院」がトヨタを超える日 医療は日本を救う輸出産業になる! (講談社プラスアルファ新書)

「病院」がトヨタを超える日 医療は日本を救う輸出産業になる! (講談社プラスアルファ新書)

  • 作者: 北原 茂実
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2011/01/21
  • メディア: 新書

 過去の栄光にすがってしまうのは、もちろん現状に満足できていないことの裏返しだ。
自分の現状に満足していて、周りも一目置いてくれていたら、誰も過去の自慢話などはしない。
今の自分に満足できずイライラして、自分はこんなもんじゃないんだという、自分自身と周りへの示威行為として自慢話をしてしまうのだ。

人は「感情」から老化する―前頭葉の若さを保つ習慣術
和田 秀樹 (著)
祥伝社 (2006/10)
P96
人は「感情」から老化する: 前頭葉の若さを保つ習慣術 (祥伝社新書 52)

人は「感情」から老化する: 前頭葉の若さを保つ習慣術 (祥伝社新書 52)

  • 作者: 和田 秀樹
  • 出版社/メーカー: 祥伝社
  • 発売日: 2006/10/01
  • メディア: 新書

 成功は甘美だけれど、移ろいやすいものであることも父が教えてくれました。影響力や権威、力のある立場に立てば、おおきな恩恵も受けられます。ところが、その地位を去った途端に、そうした特権は消滅してしまいます。
「力」は地位に由来します。その地位を外れた途端に、すべてがなくなってしまうのです。だから、自分自身をいまの地位と結びつけてはいけないし、周りの評価も鵜呑みにしてはいけません。
脚光を浴びたときは大いに楽しめばいいけれど、時機が来たら、主役を譲る覚悟がなければいけません。

20歳のときに知っておきたかったこと スタンフォード大学集中講義
ティナ・シーリグ (著), Tina Seelig (原著), 高遠 裕子 (翻訳)
CCCメディアハウス (2010/3/10)
P212

20歳のときに知っておきたかったこと スタンフォード大学集中講義

20歳のときに知っておきたかったこと スタンフォード大学集中講義

  • 出版社/メーカー: CCCメディアハウス
  • 発売日: 2010/03/10
  • メディア: ハードカバー

太師は(住人注;魯の太師の金)さらに次のように語る。
「水上を行くには船を用いるにこしたことはなく、陸上を行くには車を用いるにこしたことはない。舟が水上を行くことができないからといって、それを陸上で推して進ませようとするならば、一生かかっても、わずかな距離しか動かせないだろう。昔と今は水と陸のようなものではないか。
周と魯は船と車のようなものではないか。昔の周の政治制度を今の魯で行おうとするのは、舟を陸上で推して進ませるようなものだ」
 政治は時代に応じて変化するものであるという趣旨は、法家の韓非も著「韓非子」にも見られる。
「五蠹(ごと)」中の「守株」の話が一例で、宗の農夫が、たまたま木の切り株にぶつかって死んだウサギを手に入れたため、それから耕作をやめ、もっぱら切り株を見張って、再びウサギを得ようと願ったが、ついに得られず、国中の笑いものとなったという話だ。「先王の政を以て当世の民を治めようとするのは、みな守株の類である」と韓非は指摘している。

老荘思想の心理学
叢 小榕 (著)
新潮社 (2013/02)
P65

老荘思想の心理学 (新潮新書 509)

老荘思想の心理学 (新潮新書 509)

  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 2013/02/01
  • メディア: 単行本

福田美術館  嵐山

システムの崩壊

 戦後の日本は、そういう伝統的なシステムをことごとく破壊してきました。
しかし破壊の後により良いシステムが生まれなければ、破壊の意味はありません。
戦後六十年経っても、まだそれに代わる新しいものが生まれていないということならば、過去においてこういう完成されたシステムがあったという事実は再評価されねばなりません。

岡崎 久彦 (著)
教養のすすめ
青春出版社 (2005/6/22)
P83

教養のすすめ

教養のすすめ

  • 作者: 岡崎 久彦
  • 出版社/メーカー: 青春出版社
  • 発売日: 2005/06/22
  • メディア: 単行本

P177
澤口 今の日本の社会は、そういう群れ社会の共生戦略的なメリットがことごとくなくなっているんですよね。
だから、教育としつけの義務は両親の肩だけにずっしりとのしかかっている。それではヒト本来、サル本来の普通の子育て環境とはとてもいえません。

 今、問題になっている子どもたちっていうのは、そういう「ヒトとして普通でない」社会で育ってきたんです。
核家族化が進んでいくなかで、父親も母親もそれを「いいことなんだ」と信じている。
そういう環境で育ってきたのが、オヤジ狩りのの中学生とかヤマンバギャルなわけでしょう。今の15~25歳の子どもたち、いわゆる団塊の世代の子どもですよね、やっぱり。

伸坊 そうです、まさにそうですね。僕なんかの世代からですね。
澤口 団塊の世代というのは、日本の伝統はよくない、欧米的生活を目指そうというのをいちばん極端にやっちゃった人たちですよね。まさにモンゴロイドの進化を逆行してコーカソイドの真似を、それも間違った方向でしてしまったいう。
~中略~

澤口 食事まで否定してしまいましたからね。脳にはそれがいちばん直接的な打撃だったかもしれません。

P179
澤口 もちろんアメリカでも核家族化や少子化の問題はあります。一番問題だったのは離婚が多かったことで、両親がいないため情緒的に不安定になったり、社会的に問題行動を起こす人が増えた。これは統計的事実です。

 あの国の場合は、いろいろな生活環境の人がいる。私がいうまでもなく、みなさんご存知だと思いますけど、上下層の生活レベルの差が大きいでしょ。いまはその差がさらに大きく、両極端になっていると思います。核家族化を反省して社会的な問題をなんとかなくそうとしているけれど、それがなかなかできない層も現実にある。離婚や貧困が蔓延しているギスギスした社会っていうのが現実にあるんですね。
アメリカの社会病理みたいなものの多くはそういう層の、とくに都会で起こっているんです。いちばん顕著なのはチャイルド・アビューズ(幼児虐待)です。
10年以上前から大問題になっています。

 今の日本の問題っていうのは、そういうアメリカの暗い側面の、しかも10年~20年前の現象をなぞり始めているように見えるんですね。

P50
伸坊 となりの芝生は青い、って言いますが、そのお隣りっていうのが、TVはある、冷蔵庫はある、掃除機はあるっていう「理想の生活」をしていると、戦後の日本人には映ったんですね。
ぜんぶ揃えてみたら、なんか昔のほうがよかったような気がする、って思っている人多いかもしれません。
生活だけでなく、子育ても、アメリカ式が「進歩的」だった。あの頃進歩的は無条件に善でしたからね。

平然と車内で化粧する脳
澤口 俊之 (著), 南 伸坊 (著)
扶桑社 (2000/09)

平然と車内で化粧する脳

平然と車内で化粧する脳

  • 出版社/メーカー: 扶桑社
  • 発売日: 2000/09/01
  • メディア: 単行本

P37
 へんな言い方になってしまうけど、「逃げる」ということをシステマティックに考えていたことでかえってまずいことになったケースもあったんだと思う。
「想定外」の事態に対しては、事前に「想定」していた避難のシステムなんて、ちっとも役に立たないわけでしょう。
てんでんばらばらに、自分の本能に従って逃げたことで助かった人がいた一方で、冷静にシステマティックに考えた人はむしろ助からなかった。そんな面もあったのではないか。
池田 清彦

P138
いくら安全なシステムにするといっても、絶対安全なシステムなんて、絶対にないんだよ。
なぜなら、人工的なシステムの特徴は、必ず壊れるということなんだ。むしろそれは人工的なシステムの定義といってもよい。
だから、システムを作ってそのシステムに頼るのではなくて、むしろ、システムが壊れたときにどうするかを考えないと、知的怠慢だよね。
池田 清彦

P139
池田 やっぱり、人間が刹那的になったということはいえるよね。自分さえよければいい、自分が生きているときだけよければいいとなると、過去のことも未来のことも考えなくなるでしょう。

江戸時代の人は、先祖の墓を守ることで過去を考え、自分の世継ぎが大事だと思うことで未来のことを考えていた。

養老 持続的によくできていた。

池田 将来がどうなるかということを自分の生きているうちに考えなければいけない仕組みになっていたのですね。
現代人はそうではない。
自分の子孫のことですら、子どもの人生は子供の人生ですとか、子供と親は別人格です、とか言って、つまる自分が死んだらあとはもう関係ないという傾向が強くなっている。

 官僚はもっと刹那的で、自分の在任中に問題が起きなければ、あとはしったこっちゃない。
担当が替わったり、辞めてしまったあとには、責任をとらないわけだから。

 そう考えると、江戸時代の世継ぎの仕組みのほうが持続性も系統性もあったといえるかもしれないね。

ほんとうの復興
池田 清彦 (著), 養老 孟司 (著)
新潮社 (2011/06)

ほんとうの復興

ほんとうの復興

  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 2011/12/09
  • メディア: Kindle版

P166
現代の日本人には「鏡」(住人注;母親的愛情、共感)「理想化」(住人注;尊敬できる対象)「双子」(住人注;仲間と一体であるという安心感)という三つの自己対象がいずれも不足していると私は思います。
そのために心のコンディションを崩し、病気にまではならないものの、漠然とした不安や疎外感を抱えながら暮らしている人が大勢いるのではないでしょうか。
 まず「鏡自己対象」に関していえば、そもそも親の愛情を十分に受けずに育つ子供が昔より確実に増えています。
コフート自身が言明しているように、世界的に見ても、かつては親の過保護に起因する心の問題がメインでしたが、現在は愛情不足による病理が目立つ傾向があるのです。
 その背景には、働く女性が増えたこともあるでしょう。~中略~
 また、これは女性の社会進出とは別の問題ですが、親自身の自己愛が未熟なために、子供に十分な愛情を注ぐことができず、ひどい場合は虐待に走ってしまう人も増えている印象です。
 その結果、子供は成長しても自己愛が成熟せず、世の中を恨むようになったり、人間関係上の軋轢で苦しむ人が増えているのではないかと思います。
 さらに学校教育の現場でも、子供たちが先生に褒められることで自己愛を満たされる体験が、昔よりも減りました。「キミはすごいね」と子供を褒めるのは、とうぜん「あなたは他人より優れている」と認めることにほかなりません。
しかし、いまの教育現場は、平等意識が強いあまり、生徒に差をつけることを嫌います。

P170
 しかも現代社会は、自信を失った人たちに安心感や生きる方向性を与えてくれる「理想化自己対象」も不足しているように見えます。
 昔の社会には、誰からも尊敬される人物が身近なところにいました。たとえば学校の先生が「村いちばんのインテリ」だった時代は、そんなに遠い過去の話ではありません。
大学に進学する人が少なかった時代は、師範学校を出た先生のことを地域の大人も子供も素直に尊敬していました。
 ところが、大学に行くのが当たり前の時代になると、そうはいきません。「教師にでもなるか」「教師ぐらいにしかなれない」という「デモシカ教師」が増えてきたこともあって、もはや学校の先生に権威を感じる人はあまりいないでしょう。
~中略~
 昔の学校の先生は、良くも悪くも権威があったので、保護者が文句をいえる相手ではありませんでした。むしろ「うちの子が悪さをしたら遠慮なくぶん殴ってやってください」」とお願いするような存在だったのです。
 また、家庭における父親の権威も、おしなべて昔のほうが高かったといえるでしょう。
昔の子供たちにとって、父親は「何をしているかよくわからないけど偉い人」でした。
~中略~
 しかも、母親は「お父さんにいいつけるわよ」と夫の権威を利用するのではなく、逆に「そんなことしていると、お父さんみたいになっちゃうわよ」と夫の権威を踏みにじるようなことを平気でいうようになりました。
これでは、失敗して落ち込んでいるときに「大丈夫だ」と励ましてくれる理想化自己対象にはなないでしょう。
 さらに、会社の上司もずいぶん変わりました。昔は「オレについて来い」的な親分肌の上司がいたものですが、いまはそういうタイプがあまりウケません。
~中略~
 人々の身近にそういう理想化自己対象がいないことは、社会全体にとってもあまり良くありません。  人間は弱い生き物なので、「理想の極」を満たしてくれる存在なしでは、安心して生きることができないでしょう。
それが身近に見当たらない人が多ければ、強くて頼りがいがありそうな政治家や宗教家などが人気を集めることになるのです。

P175
 現代の日本人にとって、心の健康をもっとも脅かすのは、もうひとつの自己対象である「双子」の欠如だと私は見ています。
すでに述べたとおり、引きこもりや依存症などの心の不調の多くが、他人に「わかってもらえない」ことから来る疎外感に起因していると考えるからです。
~中略~
 自分の価値観をはじめとする主観世界にリアリティが持てないがゆえに、周囲の人たちに合わせてしまう人が多くなっていることは、本書でもすでに何度か指摘して来ました。
それによって「みんなと同じ人間だ」といいう安心感は得られるのでしょうが、そこで共有されている価値観は「建前」にすぎません。
 そうやって疎外感をまぎらわす人ばかりが増えれば、ますます建前論が力を持ち、人々の本音が抑制されます。
表面的には誰もが他人と仲良く暮らし、孤独ではないように見えるでしょうが、心の深い部分では疎外感が膨らみ、「自分らしさ」を感じられない人が増えるでしょう。~中略~
 今の世の中、教育現場では「個性重視」が謳われ、「価値観は人それぞれ」などと多様性の大切さを口にする人はたくさんいますが、現実には決してそうはなっていません。 たとえば「ゆるキャラ」にしても、各地方にたくさんいるにもかかわらず、「くまモン」と「ふなっしー」が人気を二分しているじょうたいです。
~中略~
自分の本音がどこにあるのかわからず、「みんなが投票する候補者に投票する」ような有権者ばかりになったら、どうなるでしょう。
実は誰も面白いと思っていないギャグが流行語になるのと同じように、実は誰も求めていない党派が権力を握り、社会の意思決定を行っていくことになる可能性だって、ないわけではありません。

自分が「自分」でいられる コフート心理学入門
和田 秀樹 (著)
青春出版社 (2015/4/16)

自分が「自分」でいられる コフート心理学入門 (青春新書インテリジェンス)

自分が「自分」でいられる コフート心理学入門 (青春新書インテリジェンス)

  • 作者: 和田 秀樹
  • 出版社/メーカー: 青春出版社
  • 発売日: 2015/04/16
  • メディア: 新書

P15
自分はサービスを受ける消費者であり、デパートやホテルの客と同じである。ちゃんと医療費も払っている。なのに、なんだこの扱いは。デパートの売り場で、ホテルの受付で、怒鳴っている客をみかけるのはしょっちゅうであろう。
同じことは、医療現場も起っているということは、今更私が言うほどのことでもない。~中略~
ただ、過剰な、もしくは誤った権利意識を弱者に与えても、何にもならないどころか有害である。人間性とはそういうものではないかという、極めて当然のことを提示しているのに過ぎない。
 救急などの例外を除き、診療において医者として私が最初にしなければならないことは、患者の信頼を得ることである。
あなたは、自分より立場が弱い、身分の低い、ぺこぺこ頭を下げるものを信頼して、身体を任せることができるのか。信用できないからまた怒鳴ったりひっぱたいたりすることにもなるのではないか。まだそれでも医者は、伝統的な「権威」に多少とも守られているからよい。看護婦や、病院事務職員に対する一部患者の態度は、目を覆うばかりである。
私は、自分の子供や身内が、医者や看護職につきたいと言ったら、やめろと言うことにしている。理不尽な要求にさらされ、感謝もされず、挙句何かミスしたら刑事罰に問われるような割に合わない仕事に、進んで就くことはない。 P18

仮に百人の医者のうち、一人がとんでもない奴だとする。あなたが患者として出会う医者は、普通一人、せいぜい二、三人、そうすると、二人の医者に会ってそのうち一人がモンスターである確率は約二パーセントである。
一方、医者は常に百人や二百人の患者を診ている。うち同様に一パーセントがモンスターだとすると、大多数の医者は、また看護婦は、病院事務職員は、連日モンスターに出くわす。そういうのが一人でもいると、いかにストレスになるか、容易にお分かりいただけると思う。
~中略~
間違った権利意識が問題行動に、さらにはシステムの崩壊につながることは、教育を見れば分かる。生徒と教師を同格同権という立場においたために、何が起こったか。そもそも「教わる」側は、それは金を出して教えてもらうにしたって、「教えてくれる」側への尊敬がなくて、何が身につくものか。
また、「教える」側の目的が、「教わる」側からの報酬のみ、になったとき、その職業倫理は保たれると考える方が不思議であろう。かくして教育が崩壊したのだから、その結果出てくる人間の質が低下すると、さらに「おだてられるとつけあがる」人間が多くなり、他のシステム崩壊に拍車のかかることは自明である。

偽善の医療
里見 清一 (著)
新潮社 (2009/03)

偽善の医療 (新潮新書 306)

偽善の医療 (新潮新書 306)

  • 作者: 里見 清一
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 2009/03/01
  • メディア: 新書

「世の中というのは、これ、生きものだよ」
と良運さん(住人注;藩の御殿医小山家惣領息子(そうりょうむすこ)小山良運。適塾にまなび、数年して長崎に遊学した。単に医学だけでなく、蘭書を通じてヨーロッパ情勢や兵学、物理学、法律、経済に通じている)はいった。
良運さんのいう世の中とは、社会という意味だろう。社会というのは生きもので、それを生かしめているのは、制度、法律、習慣、道徳の四つである。
「人間はえらそうな顔をして手前(てめえ)で生きているつもりだろうが、世の中に生かされているだけの生きものだよ」
「だから、どうなのだ」
継之助は言った。
「だからうかうか世の中を改革しようと思っちゃ、いけねえということだ。世の中の制度や習慣をうかつに触って弄(なぶ)っては、そこに住む人間が狂うか、死ぬ。人間どもはそうされまいと思って気ちがい沙汰の抵抗をするよ」

峠 (中巻)
司馬 遼太郎(著)
新潮社; 改版 (2003/10)
P180

峠(中) (新潮文庫)

峠(中) (新潮文庫)

  • 作者: 司馬 遼太郎
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 2003/10/25
  • メディア: 文庫
嵐山

2026年6月25日木曜日

確実に安らげる時間と場所を作れ

「成功するかわからない」という不安な時期には、日々の生活の一部を「そのときだけは確実に安らげる時間」にしておくといい。
私たちの場合、それはランチだった。私たちはいつも同じ場所でランチをとり、いつも同じメニューを注文し、いつも同じように過ごした。私たちにとって、そこは回転する宇宙の中で唯一静止している場所であり、一日に秩序をもたらしてくれる 場所だった。

魂を売らずに成功する-伝説のビジネス誌編集長が選んだ 飛躍のルール52
アラン・M・ウェバー (著), 市川裕康 (翻訳)
英治出版 (2010/2/25)
P190
魂を売らずに成功する-伝説のビジネス誌編集長が選んだ 飛躍のルール52

魂を売らずに成功する-伝説のビジネス誌編集長が選んだ 飛躍のルール52

  • 出版社/メーカー: 英治出版
  • 発売日: 2010/02/25
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)

 

仕事から離れて、リラックスする時間を取ることは良いことだ。
というのは、ふたたび仕事に戻ってきたときに、よりよい判断ができるからだ。
[レオナルド・ダ・ヴィンチ]

怠け者は休息を楽しむ術を知らない。
[ジョン・ルボック]イギリスの銀行家・科学者 |1834‐1913

人生はワンチャンス! ―「仕事」も「遊び」も楽しくなる65の方法 水野敬也 (著), 長沼直樹 (著)
文響社 (2012/12/11)
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人生はワンチャンス!- 「仕事」も「遊び」も楽しくなる65の方法 人生は~シリーズ

人生はワンチャンス!- 「仕事」も「遊び」も楽しくなる65の方法 人生は~シリーズ

  • 出版社/メーカー: ミズノオフィス
  • 発売日: 2013/07/05
  • メディア: Kindle版


 近年、ドイツで発表された論文の中で、店員や客室乗務員など生活のために笑顔をつくらなければならない職業の人は、うつ症状やストレスに悩まされたり、心循環器系の障害や高血圧などの症状を起こしたりしやすいことが報告されています。~中略~
 このようなストレスに対処するには、心理学者のブライアン・リトルがいう「本来の自分にもどる時間」をもつことです。「本来の自分にもどる時間」」とは、信頼する友人に気持ちを語ったり、心に浮かぶあらゆることを日記に書きつけたり、ただ単に自分の部屋でひとりで過ごしたりする時間のことです。

ハーバードの人生を変える授業
タル・ベン・シャハー(著), 成瀬 まゆみ (翻訳)
大和書房 (2015/1/10)
P141

ハーバードの人生を変える授業

ハーバードの人生を変える授業

  • 出版社/メーカー: 大和書房
  • 発売日: 2014/03/07
  • メディア: Kindle版
島根県 出雲大社

笑顔は万国共通

P168
  ちなみに、(住人注;イヌが)シッポを振るのは喜んでいるのではなくて、ある種の緊張状態で生じる反射的な行動です。人でいうところの「貧乏ゆすり」などと似ていて、無意識でオートマティックな」動作です。
~中略~
笑いは、言語があるからこそ生まれたと考える人もいます。でも、言語がなくても笑いが人間に備わっているのは、赤ちゃんが笑顔を作ることができることを見ればわかります。ただ、あの笑いが面白くて笑っているのではないことは、ほぼ確実です。
あの笑顔は、<シグナル>として存在しているのだと思います。

P169
 このように私は、笑顔の最初の原型は、相手に、「自分は今申し分ない状態にあります」ということを伝えるためにできたのではないか、と思い至るようになって、普段から他人の笑顔をしばらく観察してみました。
~中略~
 笑顔は万国共通です。アメリカ人の笑顔も、日本人の笑顔も似ています。古代壁画を見ても、笑顔の形は今と同じです。
つまり、顔の表情は地域や時代を超えて一致しています。

脳はなにかと言い訳する―人は幸せになるようにできていた!?
池谷 裕二 (著)
祥伝社 (2006/09)  

 

脳はなにかと言い訳する―人は幸せになるようにできていた!? (新潮文庫)

脳はなにかと言い訳する―人は幸せになるようにできていた!? (新潮文庫)

  • 作者: 裕二, 池谷
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 2010/05/28
  • メディア: 文庫

「でも私たちイタリア人は皆ニコニコして、すばらしかった、面白かった、と日本の人たちに言うわ。それは礼儀であり、半分お世辞よね。だって笑顔はタダだから。そういうこと、日本でもあるでしょう?でもあの日本の人たち、わかっていなみたいね」
~中略~
そうだ、日本では私たちもお世辞を言うではないか。日本人同士なら「あ、この人、お世辞を言っている」と子供でも分かるはずなのに、なぜかヨーロッパの人々が言うことは言葉通り通りに受けとってしまうようだ。自分の国では、お世辞と本音を見抜くことができる日本人が、なぜ外国人、特に欧米人の言葉は額面以上に受けとめてしまうのか。
 その原因は、こちらの人々の笑顔かもしれない。見知らぬ人にとびきり笑顔で接するのは、あまり日本ではないことだから。
 ヨーロッパの人々は知らない人同士でも顔が会うとニコッと笑う。なんのためかといえば「私は、あなたを警戒してませんよ」という合図。ただそれだけなのだ。しっかり覚えておいてください。マリアが言うように「笑顔はタダ」なのです。
 最近あまり聞かれなくなったが、「ジャパニーズ・スマイル」という言葉がある。日本人があいまいに笑うことが指すが、ヨーロッパの人々の笑いには意味があることを忘れてはいけない。
 ヨーロッパのひとの笑顔に過大評価は禁物です。

一度も植民地になったことがない日本
デュラン れい子 (著)
講談社 (2007/7/20)
P200

一度も植民地になったことがない日本 (講談社+α新書)

一度も植民地になったことがない日本 (講談社+α新書)

  • 作者: デュラン れい子
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2007/07/20
  • メディア: 新書

P41
 人がなにを感じ、なにを考えているかは、そのしぐさや表情からだいたい読み取れる。悲しいときはなく。うれしいときは微笑む。賛成のときはうなずく。それは不思議なことではない。
だが、”固有反射心理学”と呼ばれる研究分野では、同じことが逆方向にも働くと考えられている。人にある行動をとらせると、ある種の感情や考えが呼び起こされるというのだ。
~中略~
 まったく同じことが、幸福感にも言える。人はうれしいと微笑むが、微笑むことでうれしくもなる。そして自分の笑顔を意識しなくても、この効果は働くようだ。

P43
 あなたの日常にすぐにでも取り込めるしあわせは、沢山ある。なかでもだいじなのが、”笑う”こと。ただし、感情のこもらない一瞬で消える笑いではない。笑顔を十五秒から三十秒続ける。ほんものの笑顔を引き出すような場面―友だちからおかしなジョークを聞いたとか、来るはずだった姑が結局こなくなったとか―を思い描きながら、できるだけ楽しい表情を浮かべる。そして、くり返し笑顔を浮かべるための合図を考える。時計やパソコン、携帯電話などに笑う時間をセットしたり、あるいはもっと大まかに、電話が鳴ったらにっこりするというふうに決めておくのだ。

P44
 ビーレフェルト大学のペーター・ボルクナウ教授の研究によると、しあわせな人は、ふしあわせな人と行動の仕方がちがう。この結果を応用して、しあわせそうにふるまうと、幸福感を高めることができる。つぎのことをお勧めしたい。
歩くときは肩の力を抜き、いつもより腕を大きく振り、足どりを軽くする。~後略

その科学が成功を決める
リチャード ワイズマン (著), Richard Wiseman (原著), 木村 博江 (翻訳)
文藝春秋 (2012/9/4)

その科学が成功を決める (文春文庫 S 10-1)

その科学が成功を決める (文春文庫 S 10-1)

  • 出版社/メーカー: 文藝春秋
  • 発売日: 2012/09/04
  • メディア: 文庫

P63
認知能力の低下した人でもそうでない人でも、外国人であっても、その相手と視線があった瞬間ニコッと笑顔を作ってあげると、ほとんどの場合に笑顔が返ってきます。
今までの経験では、文化的差の認められない普遍的な「反射」です。この反射が重要なのは、ウィリアム・ジェームスが指摘しているように、表情筋の運動、たとえば笑顔をつくることによって「たのしい」「うれしい」などの情動が誘起される事実があるからです。

P65
 ひとつ警告しておきます。この貴重な「情動誘起」の試みは認知能力の低下した高齢者に対しては、まず一〇〇パーセント適用できます。いくつかの途上国でも子どもたちの輝くような笑顔に感激させられました。アメリカでも、老若男女を問わず非常に高率で有効でした。
しかし、認知能力は落ちていないとうぬぼれているらしい若い日本人女性には、時として禁忌であるのは残念です。孤立した不安な魂は、見知らぬ人からの刺激を反射的に「ハラスメント」と即断する傾向があるからです。

「痴呆老人」は何を見ているか
大井 玄 (著)
新潮社 (2008/01)

「痴呆老人」は何を見ているか (新潮新書 248)

「痴呆老人」は何を見ているか (新潮新書 248)

  • 作者: 大井 玄
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 2008/01/15
  • メディア: 新書

足立山 北九州市

過去にしばられる必要はない

P140
  アドラーはトラウマは必ずしもトラウマである必要はない、と考えています(「人生の意味の心理学」一五頁)。
アドラーはいかなる経験もそれ自身では成功の、あるいは失敗の原因ではなく経験からショックを受けることもない、私たちは経験によって決定されるのではなく経験に与えた意味によって自分を決めるのである、といっています。
 ですからある経験をトラウマであると見なせばその経験がトラウマになるというにすぎないのです。
ある経験によって人が必ず同じ影響を受けるのであれば、それ以外のあり方をとりえないのであれば、今とは違うあり方へと導くことである教育、育児、治療はそもそも不可能であるといわざるを得ません。

P141
原因論に立たないアドラー心理学の立場では、何かの出来事があって、それを体験するということが原因となって人が問題を起こすとは考えません。むしろそれまで隠されていたライフスタイルが、何らかの体験、たとえば、学校に入ることによって明らかになるというふうに考えるのです。
 また、思春期について、思春期が子どもを変えるのではなく、思春期は過去に形成された性格を明らかにする「新しい状況」である、とアドラーはいっています(「子どもの教育」一八六頁)。
 同じ環境に育ったからといって、二人の子どもが同じになることはありません。

アドラー心理学入門―よりよい人間関係のために
岸見 一郎 (著)
KKベストセラーズ (1999/09) 

アドラー心理学入門―よりよい人間関係のために (ベスト新書)

アドラー心理学入門―よりよい人間関係のために (ベスト新書)

  • 作者: 岸見 一郎
  • 出版社/メーカー: ベストセラーズ
  • 発売日: 1999/09/15
  • メディア: 新書

 過去の不愉快なことを思い出している時は、あなたの心が過去にとらわれている時。
当然、「今」という大切な一瞬に生きることができません。貴重な時間を過去に乗っ取られているのと同じです。
 過去のことは過去のこと。さっさと手放してしまいましょう。
 幕末・明治期に活躍した原坦山(はらたんざん)という禅僧が、こんな逸話を残しています。
 連れの禅僧と二人で修業の旅をしていた坦山が、ある川の前に来た時のこと。その川には橋がなく、若い女性が渡るに渡れず立ち往生していました。坦山は、「私が渡してあげよう」と、何のためらいもなく女性を抱き上げ向こうの岸までわたりました。そして、礼を言う女性と別れて、何事もなかったかのように再び歩き始めました。
 しばらくすると、連れの僧が坦山に向かって突然怒り始めました。
 「修業の身でありながら、女を抱き抱えるなどけしからん」
 すると、坦山は驚いて「お前は、まだ女を抱いていたのか、私は川を渡った時に降ろしてきたのに」と大笑いしたそうです。
 このようにさらりと過去を手放せば、楽に生きられそうですね。

怒らない 禅の作法
枡野 俊明 (著)
河出書房新社 (2016/4/6)
P174

怒らない 禅の作法 (河出文庫 ま 14-2)

怒らない 禅の作法 (河出文庫 ま 14-2)

  • 作者: 枡野 俊明
  • 出版社/メーカー: 河出書房新社
  • 発売日: 2016/04/06
  • メディア: 文庫

 あの人は、わたしを罵った、わたしを否定した、わたしに勝利した、わたしは奪われた、と思いつづける人は、(記憶に反応して怒りつづけているのだから)怨みが止むことはない。
                                 ―ダンマパダ〈ひと組の詩〉の章

P114
 もしイヤな記憶がよみがえったら、その記憶への「自分の反応」を見てください。
相手と別れてもなお腹が立って止まらないときは、「これはただの記憶」「反応している自分がいる(相手は関係ない)」と冷静に理解して、感情を静めるよう心がけましょう。

反応しない練習 あらゆる悩みが消えていくブッダの超・合理的な「考え方」
草薙龍瞬 (著)
KADOKAWA/中経出版 (2015/7/31)
P113

 石井(住人注;石井毅)氏の報告した「仮想現実症候群」でも、阿保(住人注;阿保順子)氏が観察した「痴呆老人の創造する世界」でも、そこに住む人々は、過去の経験に基づいた世界を生きていました。なぜ未来でなく、現在でもなく、過去の世界であるかという疑問が生ずるかもしれません。
それには、スティーブン・コスリンが「脳は過去の記憶に基づいて現実を構成している」という、逃れるすべのない過去の呪縛が用意されています。

「痴呆老人」は何を見ているか
大井 玄 (著)
新潮社 (2008/01)
P143

「痴呆老人」は何を見ているか (新潮新書 248)

「痴呆老人」は何を見ているか (新潮新書 248)

  • 作者: 大井 玄
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 2008/01/15
  • メディア: 新書

渇愛

P26
人間が抱える不満や物足りなさの「理由」について、ブッダはこう語っています。
 苦しみが何ゆえに起こるのかを、理解するがよい。
 苦しみをもたらしているものは、快(喜び)を求めてやまない”求める心”なのだ。
                          ―初転法輪経 サンユッタ・ニカーヤ ブッダが発見した”求める心”tanhâ(タンハー)とは、いわば「反応しつづける心のエネルギー」のこと。人の心の底に、生きている間ずっと流れている意識のことです。
”求める心”は、発生後”七つの欲求”に枝分かれします。現代心理学の知識を借りると、7つの欲求とは、①生存欲(生きたい)、②睡眠欲(眠りたい)、③食欲(食べたい)、④性欲(交わりたい)、⑤怠惰欲(ラクをしたい)、⑥歓楽欲(音やビジュアルなど感覚の快楽を味わいたい)、そして、⑦承認欲(認められたい)です。

P27
”求める心”のことを、仏教の世界では「渇愛」と表現してきました。
「求めつづけて、いつまでも渇いている、満たされない心」のことです。

反応しない練習 あらゆる悩みが消えていくブッダの超・合理的な「考え方」
草薙龍瞬 (著)
KADOKAWA/中経出版 (2015/7/31)
P26