2010年6月28日月曜日

イレッサで生存期間2倍に 肺がん治療、指針見直しへ

2010年6月24日 提供:共同通信社

 特定遺伝子が変異している肺がん患者に治療薬イレッサ(一般名ゲフィチニブ)を使うと、従来の抗がん剤治療に比べ、生存期間を2倍に延ばせるとする臨床研究の結果を貫和敏博(ぬきわ・としひろ)東北大教授(呼吸器内科学)らのチームがまとめ、24日付の米医学誌に発表した。
 イレッサは間質性肺炎の副作用があり、日本肺癌(がん)学会は抗がん剤投与を優先するよう治療指針で求めているが、チームの弦間昭彦(げんま・あきひこ)日本医大教授は「最初からイレッサを投与する方が効果の高い患者のいることが示された。初回投与を認める方向で、学会内で指針見直しが進んでいる」と話している。
 チームは、進行した非小細胞肺がん患者のうち「EGF受容体」の遺伝子が変異した患者230人を2グループに分け、治療成績を比較した。
 最初からイレッサを使ったグループは、抗がん剤を投与したグループより、がんが悪化するまでの期間が2倍に延びた。
 イレッサを投与したグループの平均生存期間は約2年半で、抗がん剤治療だけだったこれまでの実績の約1年2カ月と比べ2倍に。もう片方の抗がん剤のグループも途中でイレッサに切り替えると、生存期間は約2年となった。日本人にはこの遺伝子変異が多く、イレッサがよく効くとする説を裏付けた。
 副作用については、6人に間質性肺炎がみられ1人が死亡。ただ、チームは全般的に抗がん剤より重い副作用は少なく、生活の質も高く保てたとしている。
 ※米医学誌はニューイングランド・ジャーナル・オブ・メディシン

深い眠り導くタンパク質 働き解明、新薬開発に期待

2010年6月23日 提供:共同通信社

 眠りの深い「ノンレム睡眠」に導く新たなタンパク質の働きを解明したと、自然科学研究機構生理学研究所(愛知県岡崎市)の山中章弘(やまなか・あきひろ)准教授(神経生理学)らの研究チームが22日、発表した。米国専門誌「SLEEP」の電子版に掲載された。

 これまでの睡眠薬は脳の神経活動全体を抑制していたが、このタンパク質は眠りを促す神経を選んで作用するため、少量で質の高い眠りを促す睡眠薬の開発につながる可能性があるという。

 研究チームは、タンパク質「ニューロペプチドB」(NPB)をマウスの頭部に投与した結果、夜行性のマウスが夜になっても眠り続けることを確認。その上で、マウスの脳波と筋電図を同時に記録する装置を使い、NPB投与マウスの睡眠状態を調べると、脳も体も休んだ状態のノンレム睡眠であることが分かった。
 NPBは研究チームが2002年に人の脳内にあるのを発見、詳しい機能は未解明だった。

注射より効く「塗るワクチン」用素材を開発

2010年6月21日 提供:読売新聞

 インフルエンザウイルスのように鼻やのどの粘膜から感染する病原体を防ぐため、粘膜の免疫力を高める「塗るワクチン」として利用できる素材を、東京大や大阪府立大などの研究チームが開発した。
 21日発行の科学誌「ネイチャー・マテリアルズ」に掲載された。

 ワクチンを注射すると、抗体が血液中にできるが、インフルエンザウイルスは血管から離れた粘膜表面で増殖するため、効果が弱い。粘膜で働く抗体を作るには、粘膜の表面にウイルスや細菌の断片を長期間、付着させる必要があるが、鼻水などですぐに流されてしまうのが課題だった。
 東大の清野宏教授らは粘膜がマイナスの電気を帯びていることに着目し、グルコースなどから、プラスの電気を帯びたゼリー状の物質を合成。この物質に毒性を無くしたボツリヌス菌や破傷風菌の破片を混ぜてマウスの鼻の中に塗ると、粘膜に10時間以上残り、粘膜と血液中の両方に、菌を退治する抗体ができた。

 塗るワクチンは各国で研究が進められているが、ウイルス感染や副作用のおそれがあると指摘される。清野教授は「効果が高く副作用の少ない次世代のワクチンとして期待できる」と話している。

2010年6月19日土曜日

39%で負担重く治療中断 保団連の医療機関調査

2010年6月18日 提供:共同通信社

 全国保険医団体連合会(保団連)は17日、医療機関の39%が半年以内に、治療費負担が重いなどの患者側の理由で治療を中断したことがあるとの調査結果を公表した。保団連は「原則3割の窓口負担が高すぎるので、軽減するべきだ」としている。

 調査は5月中旬以降に全国で実施。茨城、福岡など7都府県の病院や医科診療所、歯科診療所の2829施設分を中間集計した。

 患者の経済的理由で治療が中断した例があったと回答したのは1097施設(39%)。歯科診療所は、ほぼ半数が「あった」とした。

 患者が検査や治療、投薬を断った事例を経験した医療機関は43%。患者が窓口で支払う治療費の未収金があるとしたのは45%に上った。

 保団連によると、治療を中断した疾病は高血圧、糖尿病、歯周疾患などの慢性疾患が中心で、患者が断ったのは血液検査や内視鏡、心電図、エックス線検査などが目立ったという。

 「年金や給料が出るまで受診を延ばす」「所持金の範囲内での治療を希望する」などの例も多く、患者の受診回数自体が減少したとの指摘も多くみられた。