2025年11月29日土曜日

贈与と互酬の関係

P241
 この世間を読み解くうえで重要なキーワードは、贈与と互酬の関係である。(阿部謹也「近代化と世間」)。
つまり、贈られたら、贈り返すという贈答儀礼を通じて、互いの縁を結ぶ関係である。

江戸時代は次第に貨幣経済に進展しつつあったが、人間の結びつきにおいてはまだ贈与・互酬の関係が重要な意味をもち、この関係を通じて縁を結び、維持させていた。

P242
進物をうけるぐらいよいではないか、と軽く考えてはいけない。進物(義理)を受ければ、お返し(義理)をせねばならなくなるし、贈与・互酬の関係を認めればそこに私的な縁が生まれる。
縁は重いものであり、現世だけのことではないので、安易にはうけられない。これが世間の習いである。
~中略~

 公界における関係でしかない表向きの母と子の間では、日常での私的な縁を結ぶ必要はない、とする世間の考え方のもとでの接し方であった。将軍家御台所の江への贈答はその立場に相応のものを贈る必要があるため、江としても形だけの娘に負担をかけたくない、という思いも逆にあっただろう。

 

福田 千鶴 1961年(昭和36年)、福岡県に生まれる。九州大学大学院文学研究科博士後期課程中途退学。博士(文学、九州大学)。専攻、日本近世政治史。東京都立大学人文学部助教授などを経て、九州産業大学国際文化学部教授

福田 千鶴 (著)
江の生涯―徳川将軍家御台所の役割
中央公論新社 (2010/11)

江の生涯―徳川将軍家御台所の役割 (中公新書)

江の生涯―徳川将軍家御台所の役割 (中公新書)

  • 作者: 福田 千鶴
  • 出版社/メーカー: 中央公論新社
  • 発売日: 2010/11/01
  • メディア: 単行本

 

  助ける側に大きな努力が必要だったりすると、受け手はその好意にどう報いればいいか戸惑い、負担を感じる。
つまり、最初にあまり多くあたえすぎると、相手を面倒な立場に追い込んでしまう。相互性の法則にしたがえば、お返しはさらに大きなものになるからだ。
恩恵をほどこすときの動機も重要である。恩恵を受けた側が、自分が助けられたのは、能力がないと思われたからだと考えたり、相手の好意にはなにか裏があると考えたりして、自尊心を傷つけられることも多い。

その科学が成功を決める
リチャード ワイズマン (著), Richard Wiseman (原著), 木村 博江 (翻訳)
文藝春秋 (2012/9/4)
P84

 

その科学が成功を決める (文春文庫)

その科学が成功を決める (文春文庫)

  • 出版社/メーカー: 文藝春秋
  • 発売日: 2012/09/04
  • メディア: 文庫

 

顔に出たら負け

P252
  ビジネスでは、相手の手の内を読めるか否かが成功の鍵だ。
 自分の感情や表情を隠すことのできない人は、できる人の手玉に取られる。ほかのすべての条件が対等のときでさえそうなのだから、相手が凄腕の場合など、さらに勝ち目はない。
~中略~

政治家ボーリングブルックル卿も著書のなかで、次のように書いている。
 人を欺くために感情を隠すのは、短剣をふりかざすようなもので、好ましくない行為であるばかりでなく、不法行為でもある。短剣を使用したら最後、いかなる正当化も言い訳も通用しない。
 一方、手の内を読まれないように感情を隠すのは、楯を持つようなもの、機密を保持するのは、甲冑をつけるようなものだ。
~中略~

 心のなかでどんなに感情の嵐が吹きすさんでも、それを顔や言葉に表さないよう、完全に自分の感情を隠せるよう努力しなさい。
大変なことだが、できないことではない。

P267
 実社会は意地悪、憎しみ、恨み、嫉妬などが渦巻いているところだ。努力家よりは数が少ないが、実だけ摘み取ってゆく、ずる賢い人間もいる。
また浮き沈みも激しい。今日浮かんだと思ったら、明日にはもう沈んでいる。こんななかでは、礼儀正しさや物腰の柔らかさなど、実質とはあまり関係ない装備を身につけなければ、生き残ることは難しい。

 

味方だって、いつ敵になるかわからないし、敵だって、いつ味方になるかわからない。
だからこそ、心で憎みながら表面はにこやかに接し、愛しながら、慎重になることが必要なのだ。

父から若き息子へ贈る「実りある人生の鍵」45章
フィリップ・チェスターフィールド (著), 竹内 均 (翻訳)
三笠書房 (2011/3/22)

父から若き息子へ贈る「実りある人生の鍵」45章 (知的生きかた文庫)

父から若き息子へ贈る「実りある人生の鍵」45章 (知的生きかた文庫)

  • 出版社/メーカー: 三笠書房
  • 発売日: 2011/03/22
  • メディア: 文庫

 

 どんなふうに笑うか、どんな場合に笑うか、そこには人間性がはからずとも表れている。
~中略~
 さらに、笑い声の響き方に、その人の本性が漏れ出ている。
「漂泊者とその影」

超訳 ニーチェの言葉
白取 春彦 (翻訳)
ディスカヴァー・トゥエンティワン (2010/1/12)
129

 

超訳ニーチェの言葉

超訳ニーチェの言葉

  • 出版社/メーカー: ディスカヴァー・トゥエンティワン
  • 発売日: 2012/10/18
  • メディア: Kindle版

 

 

大人になるということは、せめて表裏くらい作れるということだ。大人になっても態度に、正当な理由のある裏表もないような人間は、成熟していないのである。
「ぶっ殺してやりたい」と思っても、実行しないのが、まともな大人ということだ。煮えくり返るほどの怒りがあってもそれを抑える。それが態度に裏表を持つすばらしさなのである。
 和という字は、色紙に書かれていたり、和菓子の菓子器のデザインにさえ使われるが、私はこの字が恐ろしくてたまらない。
和を実現するには、生涯にわたる恨みや、はらわたの煮えくり返るような怒りを、抑え浄化し、別のエネルギーに換える高度の心理的操作が必要なのだが、私はたいていの場合うまくいっていないからである。

人生の原則
曾野 綾子 (著)
河出書房新社 (2013/1/9)
P109

人生の原則 (河出文庫 そ 1-5)

人生の原則 (河出文庫 そ 1-5)

  • 作者: 曾野 綾子
  • 出版社/メーカー: 河出書房新社
  • 発売日: 2016/02/08
  • メディア: 文庫

 

誰か知る 松柏後凋(こうちょう)の心

獄中の作


苦冤( くえん ) 洗ひがたく 恨み禁じがたし


俯( ふ )すれば即ち悲痛 仰げば即ち吟ず


誰か知る 松柏後凋 ( こうちょう )の心

 

P219
わが藩公(春嶽)の無実を晴らすこともできず、痛恨まことに禁じがたいものがあり、獄中に俯仰して、ただ悲痛沈吟するだけである。 さて昨夜、江戸の町に霜が降りたが、霜にあたっても凋(しぼ)むことのない松柏の節操を、今の世に知っているものがいるであろうか。 まことに幕府の威におののいて、みな今までの主張を変えてしまう、卑怯な人間ばかりが多いことである。

啓発録
  橋本 左内 (著)
  講談社 (1982/7/7)
   P218

啓発録: 付 書簡・意見書・漢詩 (講談社学術文庫 568)

啓発録: 付 書簡・意見書・漢詩 (講談社学術文庫 568)

  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 1982/07/07
  • メディア: 文庫

 

佐賀県 慧洲園

見る人は見ている

見る人は見ている。
何気ない挨拶、食事の仕方、電話の応対・・・
小さなことであればあるほど、正体が現れる。
小さなことが満足に出来なくて、
大きなことができる人はいない。

丸山 敏秋 (著), 倫理研究所
幸せになる法則を発見した人 丸山敏雄伝
近代出版社 (2001/11)
P70

幸せになる法則を発見した人 丸山敏雄伝

幸せになる法則を発見した人 丸山敏雄伝

  • 作者: 丸山 敏秋
  • 出版社/メーカー: 近代出版社
  • 発売日: 2001/11
  • メディア: 単行本


DSC_2879 (Small).JPG丸山敏雄生家

 

人は厳しい環境の中で磨かれる。努力は必ず誰かが見ているものだ。
あなたが目の色を変えれば、周囲も見る目を変える。

若松 義人 (著)
トヨタの上司は現場で何を伝えているのか
PHP研究所 (2007/3/16)
P125

 

トヨタの上司は現場で何を伝えているのか (PHP新書)

トヨタの上司は現場で何を伝えているのか (PHP新書)

  • 作者: 若松 義人
  • 出版社/メーカー: PHP研究所
  • 発売日: 2007/03/16
  • メディア: 新書




 

 ばたばたとはじめると、待ったとやられた。「はたきの房を短くしたのは何の為だ。軽いのは何の為だ。第一おまえの目はどこを見ている。埃はどこにある、はたきのどこが障子のどこへあたるのだ。
それにあの音は何だ。学校には音楽の時間があるだろう、いい声で唱うばかりが能じゃない、いやな音を無くすことも大事なのだ。あんなにばたばたやって見ろ、意地の悪い姑さんなら敵討(かたきうち)がはじまったよって駆け出すかもしれない。
はたきをかけるのに広告はいらない。物事は何でもいつの間にこのしごとができたかというように際立たないのがいい。」

幸田 文 (著), 青木 玉 (編集)
幸田文しつけ帖
平凡社 (2009/2/5)
P38


幸田文しつけ帖

幸田文しつけ帖

  • 作者: 幸田 文
  • 出版社/メーカー: 平凡社
  • 発売日: 2009/02/05
  • メディア: 単行本



お客様のところから帰るときには、相手は必ず自分の背中を見るということを意識すべきでしょう。
 特に男性はひざ裏が盲点ですね。お客様を訪問する際には、できるだけシワができないように移動するなどの心づかいは欲しいものです。あと大切なものに靴があります。足元を見られる、という言い方がありますが、これは値踏みされるという意味ですね。
つまり靴底やかかとの状態、さらに靴ずみなどの手入れの良さなどで、その人となりを判断するということです。その人の生き様が、そういうちょっとしたところに出てしまうものなのです。

リッツ・カールトン - 「型」から入る仕事術
高野 登 (著)
中央公論新社 (2014/3/7)
P130

リッツ・カールトン 「型」から入る仕事術 (中公新書ラクレ)

リッツ・カールトン 「型」から入る仕事術 (中公新書ラクレ)

  • 作者: 高野登
  • 出版社/メーカー: 中央公論新社
  • 発売日: 2014/06/13
  • メディア: Kindle版

 

薬師寺 奈良県 >

過酸化脂質

 オリーブオイルは、液体の油でありながら、比較的変性しにくいと言われていますが、脂質は変性することで毒性が強くなっていきます。
 その典型が酸化した「過酸化脂質」です。発がん物質と考えられており、酸化LDLをつくり、動脈硬化の原因となります。
過酸化脂質は私たちの体内でもつくられますし、食品にも含まれています。とくに、油で調理して時間が経過した食べ物に大量に含まれます。
 スーパーやコンビニで売られている揚げ物は、調理後ずいぶん時間が経っています。揚げ物を食べたいなら、とんかつ屋などで揚げたてを食べるようにしましょう。
 青魚に含まれるDHA・EPAは酸化しやすいのが欠点で、アジの干物なども過酸化脂質が多く含まれます。

医者が教える食事術 最強の教科書――20万人を診てわかった医学的に正しい食べ方68
牧田 善二 (著)
ダイヤモンド社 (2017/9/22)
P243

医者が教える食事術 最強の教科書――20万人を診てわかった医学的に正しい食べ方68

医者が教える食事術 最強の教科書――20万人を診てわかった医学的に正しい食べ方68

  • 作者: 牧田 善二
  • 出版社/メーカー: ダイヤモンド社
  • 発売日: 2017/09/22
  • メディア: Kindle版

宮崎県 チキン南蛮

中毒財

 P114
たばこ、ギャンブル、お酒というのは、どれも依存症になりやすいという意味で共通している。つまり、「わかちゃいるけど、やめられない」のだ。経済学ではこうした財のことを中毒財と呼ぶ。

中毒財の特徴は、中毒財を今消費することからの満足度は、過去に中毒財をより多く消費しているほど大きくなることにある。
このことを池田氏(住人注;池田新介教授)は「過去の喫煙量が多いほど今日の一本はうまく、同様に今日の一本は明日以降のたばこをさらにおいしくする」と説明している。したがって、何らかのきっかけで、たばこやギャンブルをはじめてしまうと、そこから抜け出すことは至難の業になってしまう。
 特に、もともと後回し行動をとるタイプの人は、中毒財から抜け出すことが難しい。

P116
中毒財の販売を禁止してしまうことの利点は、中毒財を消費する機会そのものをなくすことができることだ。~中略~
逆に言えば、カジノを規制すればその分犯罪が減ることになる。もちろん、既成を守らせるための監視費用が高くつくという問題はある。しかし、少なくともパチンコのCMや駅前のパチンコを規制することは簡単だ。
同時に、パチンコの課税を強化することも一つである。最近、韓国・台湾ではパチンコが法的に禁止されたそうだ。たばこやギャンブルに対する課税や規制を強めることで、人々が幸福になるのなら真剣に検討すべきではないだろうか。

競争と公平感―市場経済の本当のメリット
大竹 文雄 (著)
中央公論新社 (2010/3/1)

競争と公平感: 市場経済の本当のメリット (中公新書 2045)

競争と公平感: 市場経済の本当のメリット (中公新書 2045)

  • 作者: 大竹 文雄
  • 出版社/メーカー: 中央公論新社
  • 発売日: 2010/03/25
  • メディア: 新書

上高地 長野県

2025年11月28日金曜日

一流に学べ

一流を目指す一番の近道は、一流に触れることが大切です。
一流の働き方、生き方をしている人と交わり、その思想に触れることで自分に足りないものや、目指す姿が見えてくるのです。


リッツ・カールトン - 「型」から入る仕事術
高野 登 (著)
中央公論新社 (2014/3/7)
P138

 

リッツ・カールトン - 「型」から入る仕事術 (中公新書ラクレ)

リッツ・カールトン - 「型」から入る仕事術 (中公新書ラクレ)

  • 作者: 高野 登
  • 出版社/メーカー: 中央公論新社
  • 発売日: 2014/03/07
  • メディア: 新書


奈良県 室生寺

自由と我儘との界

 学問をするには分限を知ること肝要なり。
人の天然生まれ附きは、繋がれず縛られず、一人前の男は男、一人前の女は女にて、自由自在なる者なれども、
ただ自由自在とのみ唱えて分限を知らざれば我儘放蕩に陥ること多し。

即ちその分限とは、天の道理に基づき人の情に従い、他人の妨げをなさずして我一身の自由を達することなり。
自由と我儘との界は、他人の妨げをなすとなさざるとの間にあり。

福沢 諭吉 (著)
学問のすすめ
岩波書店; 改版版 (1978/01)
P14 学問のすゝめ 初編

学問のすゝめ (岩波文庫)

学問のすゝめ (岩波文庫)

  • 作者: 福沢 諭吉
  • 出版社/メーカー: 岩波書店
  • 発売日: 1978/01/01
  • メディア: 文庫


当たり前のことだが、自由と孤独は仲良しである。
水無田気流「黒山もこもこ、抜けたら荒野」

大山 くまお (著)
名言力 人生を変えるためのすごい言葉 
ソフトバンククリエイティブ (2009/6/16)
P94

 


名言力 人生を変えるためのすごい言葉 (SB新書)

名言力 人生を変えるためのすごい言葉 (SB新書)

  • 作者: 大山 くまお
  • 出版社/メーカー: SBクリエイティブ
  • 発売日: 2009/06/16
  • メディア: 新書


 

  自由とは、言葉の意味としては、他から制約を受けず、思うままに行動すること、であろう。
 だったら、自由は実は、いつも他からの制約とセットになっているはずである。
 無人島で暮らす人は他からの制約をあまりうけない(と言っても、実は自然から大いに制約をうけているのだが)が、だからといってその人を自由でうらやましい
とは思わないものである。

 普通の場合、人は社会の中に生きているから、社会から制約を受ける。人のものを盗んではいけないとか、自分で産んだ子は育てなきゃいけないとか、授業中に騒いではいけないとか。
 それに対して、そんなこと知るもんか、おれは勝手に好きなようにする、というのは言葉の意味としては自由だが、認められている自由ではない。
 自由というのはそういうふうに、一方に制約があって、それに対して時代ごとに、社会状況ごとに、どこまでは勝手を認めるか、という形ででてくるものである。
~中略~

 自由というのは、どうもそういうものらしい。先に、人間には社会的なルールがあり、制約があって、してはいけないことがたくさん決まっているのだ。そして次のステップとして、不要な面まで人を制約することはないんだから、これぐらいは勝手を認めるか、という形で自由が与えられる。もしくは民衆が勝ち取る。

もっとどうころんでも社会科
清水 義範 (著),西原 理恵子 (イラスト)
講談社 (1999/12)
P87

 

もっとどうころんでも社会科

もっとどうころんでも社会科

  • 作者: 清水 義範
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 1999/12
  • メディア: 単行本


乗鞍岳

芸は身を助ける

その間に日清戦争があり、日本は大勝を博し、台湾を領土にした。一しょに仕事をしていた仲間が台湾へいってみようではないかというので、妻子を郷里へかえし、台湾へわたる事にした。そうして門司から船にのった。乗客は台湾で一旗あげようというもので一ぱいであった。
 そのころまで芸人たちは船賃はただであった。そのかわり船の中で芸を見せなければならなかった。
昔は遊芸の徒の放浪は実に多かった。それは船がすべてただ乗りできた上に、木賃宿もたいていはただでとめたからである。だからいたって気らくであって、いわゆる食いつめる事はなかったし、また多少の遊芸の心得があれば、食いつめたら芸人になればよかった。だから「芸は身を助ける」といわれた。
芸さえ知っておれば餓える事もおいてけぼりにされる事もなかった。台湾へわたる船の中でも、そうした芸人たちが歌ったりおどったり手妻(手品)をして見せてくれるので退屈どころか、いつキールンへついたかわからぬほどだった。


忘れられた日本人
宮本常一 (著)
岩波書店 (1984/5/16)
P234

忘れられた日本人 (岩波文庫)

忘れられた日本人 (岩波文庫)

  • 作者: 宮本 常一
  • 出版社/メーカー: 岩波書店
  • 発売日: 2017/04/20
  • メディア: Kindle版

 

乗鞍岳

喜んで支払えば、お金は入ってくる

クヨクヨ、グズグズ、イヤイヤ支払う。
出し惜しみして、渋面つくって支払われたら、
相手も買われた品物も面白くない。
ケチな人間には、ケチなようにしか周りは動いてくれない。

丸山 敏秋 (著), 倫理研究所
幸せになる法則を発見した人 丸山敏雄伝
近代出版社 (2001/11)
P24

文部科学省生涯学習政策局認可の社会教育団体で、全国に五十万人を超える会員をもつ団体、社団法人倫理研究所。その創始者である丸山敏雄が唱えた、生活の法則と幸せの法則、彼の人と生涯、思考・美学・感性などをまとめる。

 

 

幸せになる法則を発見した人 丸山敏雄伝

幸せになる法則を発見した人 丸山敏雄伝

  • 作者: 丸山 敏秋
  • 出版社/メーカー: 近代出版社
  • 発売日: 2001/11
  • メディア: 単行本


乗鞍岳

誰の手柄か明確にせよ

P70
南方がよい協力者に恵まれた秘訣は、発見に名札をつける方法であった。
他人の発見やアイディアを、自分の手柄のように発表し、かれらを踏み台として利用だけする、という方法をとらなかった。
南方は、「子分」とか「親分」とかいうことばをよく使ったが、学問上の創造性における個人の貢献に対する、異常なまでの厳格な識別性があったといける。そのことがかえったかれをめぐるアマチュアの研究者共同体の中で、相互に知的刺激を与えあい、共同研究を持続させたのだと思う。
進講の時の粘菌標本の「献上者」を小畔四郎とし、南方は標本「撰定者」として自己を位置づけているところにも、このような細かい配慮がうかがわれる。

P175
 南方は、註は用いなかったが、どんな小さなことを引照する時にも、また一般向けの読みものを書く場合でも、必ず、原典にあたってたしかめ、出所を本文中で明らかにしている。
この厳密な出典明示は、南方の学問への態度を示すものとして重要である。一つには、かれが大英博物館で学究としての自己形成をしたということと結びついている。

 もう一つは、かれ自身の独創性への自負とむすびついていると思う。情報および思想に名札をつけて、それを自分より先に、誰が発見し発表したを明らかにすることによってはじめて、それらに触発され、またそれらを駆使して、自分だどれだけ先に進み出ることができたかを示すことができる。 ~中略~出典記載は、博識のひけらかしではないのである。 

南方熊楠 地球志向の比較学
鶴見 和子 (著)
講談社 (1981/1/7)

南方熊楠 地球志向の比較学 (講談社学術文庫 528)

南方熊楠 地球志向の比較学 (講談社学術文庫 528)

  • 作者: 鶴見 和子
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 1981/01/07
  • メディア: 文庫

 

奈良県 室生寺

2025年11月27日木曜日

歴史を学べ

   いまわれわれが自分の先祖のことについて見るとき、五代六代以前のことがどれほど正しく伝承されているだろうか。
私はそのことについて教えていた学生たちによく質問したが、わかっているのはせいぜい祖父,曽祖父の時代までのことであり、高祖父のことについて知る人は稀である。
一〇代おなじ土地に住んだということのはっきりしている家は、私の教えた学生の中で一割にも満たないのである。

日本文化の形成
宮本 常一 (著)
講談社 (2005/7/9)
P10  

日本文化の形成 (講談社学術文庫)

日本文化の形成 (講談社学術文庫)

  • 作者: 宮本 常一
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2005/07/09
  • メディア: 文庫

 

「だいたい鎖国というのは」
と、長井はいう。古来の方針でなく、三代将軍家光のとき幕府が島原の乱に懲りて国を鎖してしまったのである、と長井はいう。
このくだり、後世では信じられないようなことだが、この幕末当時、日本史についての通史は頼山陽の「日本外史」が存在する程度で、よほどの教養人でも日本史に暗く、孝明帝でさえ、鎖国は天皇家の祖である天照大神以来の祖法であると信じ、「開国しては皇祖皇宗に申しわけない」とのみ言いつづけていたし、まして志士たちは、鎖国は僅々二世紀前の法で、しかも幕府が幕府体制を維持するためにやった法だということを知らない。
この天下あげての大錯覚を天下にむかって指摘したのは、長井雅楽が最初である。
―だから、長井は殺された。
と、維新後、ある長州系の要路の大官がひそかにいったというが、あるいはそうかもしれない。

世に棲む日日〈2〉
司馬 遼太郎 (著)
文藝春秋; 新装版 (2003/03)
P257

新装版 世に棲む日日 (2) (文春文庫)

新装版 世に棲む日日 (2) (文春文庫)

  • 作者: 司馬 遼太郎
  • 出版社/メーカー: 文藝春秋
  • 発売日: 2003/03/10
  • メディア: 文庫

現代社会では「改革」に価値を認め、「保守」を蔑(さげす)む傾向がある。しかし、歴史的に朝廷では「改革」には価値を置かず、むしろ「保守」に価値を見出してきた。
伝統を守り、それを継承していくことこそが最高の価値であり、そのために最大の努力を注いできたのである。
したがって、政務を執り行うに当たって判断に苦慮した場合、朝廷では必ず過去の先例が参照されてきた。

語られなかった皇族たちの真実-若き末裔が初めて明かす「皇室が2000年続いた理由」
竹田 恒泰 (著)
小学館 (2005/12)
P34

語られなかった皇族たちの真実-若き末裔が初めて明かす「皇室が2000年続いた理由」

語られなかった皇族たちの真実-若き末裔が初めて明かす「皇室が2000年続いた理由」

  • 作者: 竹田 恒泰
  • 出版社/メーカー: 小学館
  • 発売日: 2005/12
  • メディア: 単行本

じつは私も若い時があった。それは当たり前だが、その若い頃に歴史の話を年寄から聞くと、よく思ったものである。
年寄りは困ったものだ、ふるいことしかいわない。そんなこと、いまさら関係ねえじゃねーか。いまの若者なら、これを「いいんじゃないんですか」と表現するるらしい。
~中略~
ともあれれ歴史を面白くなるためには、自分自身に歴史ができてくる必要がある。以前は俺もそう考えていたんだけど、あおの頃から考えが変わったなあ。それがないと、歴史は面白くならない。
自分の考えが変わるということは、いわばそれ以前の自分が死んで、別な自分が生まれることである。 それを何度かくり返すと、歴史が面白くなる。ゲーテはそれを「死んで、生まれ変われ」といったらしい。
(住人注;養老 孟司)

解剖学個人授業
養老 孟司 (著), 南 伸坊 (著)
新潮社 (1998/04)
P50

解剖学個人授業 (新潮文庫)

解剖学個人授業 (新潮文庫)

  • 作者: 養老 孟司
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 2001/03
  • メディア: 文庫

ナポリの沖合にイスキア島という温泉島がある。一八八三年七月二八日、この島を地震が襲った。局地的な地震(マグニチュード五・六)だったが、震源が浅く、島の温泉町マーサミッチョラは一三秒の揺れでほぼ全壊した。
~中略~
 この時、裕福なイタリア人一家五人が夏のバカンスを楽しんでいた。父と母、兄・弟と妹の五人全員が建物の下に埋もれた。キャンドルの灯りを頼りに、数時間後、救出された時には、父母と妹は息絶えており、体力のある兄弟二人だけが生き残った。
 この兄のほうが、のちに世界的な歴史哲学者となるベネディット・クローチェで、掘り出された時、一七歳であった。孤児になった兄妹は父のいとこ、シルヴィオ・スパヴェンタに引き取られた。~中略~
クローチェはいきなりこの環境に放り込まれた。自伝に、この時の虚脱感を綴っている。「家庭的厄災に茫然と我を失い・・・・病気でないのに、あらゆる病気にかかっているかにみえ・・・・私から希望の喜ばしさをいっさい奪ってしまっ」た。
最近「震災うつ」という用語が使われだしたが、この苦しさは体験した人にしかわかるまい。「これらの年月は私の最も悲しく暗い時期であった。
夜、頭を枕によこたえて、朝めざめないようにと切に熱望し、自殺の考えさえおこ」ったという(坂井直芳訳「ベネディット・クローチェ自伝」「十九世紀ヨーロッパ史」)。
 しかし、時間は苦しむ者の味方だ。苦しいのは今だけで、永久には続かぬと思えば救われる。クローチェはローマの図書館に通いはじめ、スパヴェンタ家で哲学者ラブリオーラに出会い、哲学と歴史の研究に入った。
彼は、デカルトとは反対に、我有る故に、我思う、生は理性に先行すると悟ったのか、「生の哲学」と歴史を結びつけた。そして、世界的に有名な歴史哲学の深遠な言葉=「すべての真の歴史は現代史である」に到達した。
 人間は現代を生きるために過去をみる。すべて歴史は現代人が現代の目で過去をみて書いた現代の反映物だから、すべての歴史は現代史の一部といえる。歴史はその時代の精神を表現したもの、生きる人間のものではないか。

天災から日本史を読みなおす - 先人に学ぶ防災
磯田 道史 (著)
中央公論新社 (2014/11/21)
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天災から日本史を読みなおす - 先人に学ぶ防災 (中公新書)

天災から日本史を読みなおす - 先人に学ぶ防災 (中公新書)

  • 作者: 磯田 道史
  • 出版社/メーカー: 中央公論新社
  • 発売日: 2014/11/21
  • メディア: 新書

 私は司馬さんの文章を読むとき、その出来事がなぜ起きたかという因果関係を彼がどのようにとらえているかを文脈から読み取るように心がけています。
そもそも私たちはなぜに歴史を学ぶのでしょうか。過去を例に、どうしてそうなったかを知っていれば、現在や将来に似たような局面に出くわしたときに、役に立つからでもあります。

「司馬遼太郎」で学ぶ日本史
磯田 道史 (著)
NHK出版 (2017/5/8)
P27

「司馬遼太郎」で学ぶ日本史 (NHK出版新書 517)

「司馬遼太郎」で学ぶ日本史 (NHK出版新書 517)

  • 作者: 磯田 道史
  • 出版社/メーカー: NHK出版
  • 発売日: 2017/05/08
  • メディア: 新書



P143
古式ゆかしく、などと言うが、我々の伝統だと思っているもののなかには意外と伝統ではないものが多い。日本人の婚礼も昔からの儀式は三三九度の盃くらいかもしれない。

 江戸期の資料をみる限り、婚礼は<1>夜間に<2>自宅で<3>神主の関与なしで行なっていた。神の前で誓いを立てる神前結婚は明治以後につくられたものである(平井直房「神前結婚の歴史と課題」)。 

P240
 熊本で大地震が起きた。一報をきいた時、私は「やれれた!」と思った。悔しかった。悔しく思ったのには理由がある。
約四〇〇年前にも慶長三陸地震といって東北に大津波がきたことがあった。この四〇〇年前の東日本大震災のあと最初に大地震が襲ったのが「熊本」であった。
一六一一年に慶長三陸地震がきたあと、八年後に肥後八代(やつしろ)地震(一六一九年)、一四年後に肥後熊本地震(一六二五年)がきた。前回は八年後、今回は五年後であったが、まさかこんなに忠実に東北震災のあとに熊本が襲うとは思ってもみなかった。
 これは詳しく古文書を調べねばと思った。京大図書館に行けば「新収日本地震資料」という地震史料全集がある。~中略~
 それを読んでみて驚いた。今回の熊本地震は「揺れの顔つき」が四〇〇年前のそれに酷似していたのだ。
肥後八代地震は朝の卯(う)刻から揺れがきて旧八代城(麦島(むぎしま)城)が正午頃の午(うま)刻に倒壊している(「肥後国志」)。朝に前震、昼に本震がきて城が耐え切れず全壊した。しかも、このとき揺れは東北方向に拡大。「岡(大分県竹田市)大地震。御城中、所々破損」と、竹田城が破損した。現在と全く同じ展開である。
 今回の熊本地震もそうだが、どうも中央構造線の地震は連発しやすいらしい。一五九六年には、わずか五日の間に、伊予(愛媛)・豊後(大分)・伏見(京都)と、三か所ほぼ同時にマグニチュード(M)7クラスの地震が襲った。一六二五年には、三か月おきに、広島・愛媛・熊本が地震に襲われ、広島城と熊本城の石垣が崩れ、櫓(やぐら)が崩壊している。これも今とそっくり。
地震に遭うと城というものは、まず長塀が倒れ、石垣が上から崩れて、多聞(たもん)櫓といって細長い形の櫓が真っ先に落ちて崩壊する。

P243
 将来、地震が起きた時、熊本城の建物や石垣を保護し、見学者の犠牲も出さぬためには、やはり何らかの知恵が要る。つまり、伝統工法を尊重しつつ、文化財としての石垣を損なわぬ形で、崩れにくく石垣を積まねばならない。そんなのは無理にも思えるが、そうでもないらしい。
 地盤防災工学が明らかにした最新の石垣研究の成果を、城郭考古学者の千田嘉博先生が教えてくれた。~中略~ このメカニズムは二〇一六年、関西大学教授を退任された西形達明先生の研究グループが振動実験やシュミレーションで検証して解明済みである。
~中略~
 私が感服したのは西形先生たちがお城の石垣を地震から守る工学的研究を、今回の熊本地震が起きる前から、きちんと準備してあったことだった。実物大の石垣モデルを振動台のうえに乗せて実験。石垣が地震時にどう動くか調べ上げた論文はすでに二〇一〇年に発表されていた。

 

日本史の内幕 - 戦国女性の素顔から幕末・近代の謎まで
磯田 道史 (著)
中央公論新社 (2017/10/18)

日本史の内幕 - 戦国女性の素顔から幕末・近代の謎まで (中公新書)

日本史の内幕 - 戦国女性の素顔から幕末・近代の謎まで (中公新書)

  • 作者: 磯田 道史
  • 出版社/メーカー: 中央公論新社
  • 発売日: 2017/10/18
  • メディア: 新書

奈良県 興福寺

否定派を巻き込む

  それに、何でもそうですが、新しいことを始める時には、否定派というのは必ずいるものです。
その際、まったくやる気のない人をやる気にさせるのは難しいですが、ほどほどにやる気を持つ人を、やる気のある側に巻き込むことはできる。
「いやだ」と言っていた人たちのモチベーションも、実際にやっていくことで、上がるはずだと考えていました。

マネジメントは動物園に学べ 2011年5月 (仕事学のすすめ)
小菅 正夫 (その他), 野田 稔 (その他)
NHK出版 (2011/4/25)
P35

マネジメントは動物園に学べ 2011年5月 (仕事学のすすめ)

マネジメントは動物園に学べ 2011年5月 (仕事学のすすめ)

  • 出版社/メーカー: NHK出版
  • 発売日: 2011/04/25
  • メディア: ムック

 

東大寺 奈良県

絶対儲かる話はない

 絶対儲かる話は、他人には内緒にするものです。絶対儲かるのなら、人には言わずに自分が買う、これは常識です。自分が儲けようとせず、人に勧めるときはほとんど詐欺です。

プロカウンセラーの聞く技術
東山 紘久 (著)
創元社 (2000/09)
P115

プロカウンセラーの聞く技術

プロカウンセラーの聞く技術

  • 作者: 東山紘久
  • 出版社/メーカー: 創元社
  • 発売日: 2015/04/01
  • メディア: Kindle版

 

東大寺 奈良県