2009年12月19日 提供:毎日新聞社
診療報酬改定:厚労省と財務省が火花 予算年内決着にも影響か
◇厚労省、10年ぶり増額/財務省、財政難で削減
医療関連予算を巡る厚生労働省と財務省の主張が真っ向から対立している。厚労省は「医療崩壊を食い止めたい」と、10年ぶりの診療報酬全体の増額改定を狙うが、財務省は財政難を理由に診療報酬の削減を要求している。中小企業の従業員らが加入する全国健康保険協会(協会けんぽ)への財政支援を巡っても両省の意見の隔たりは大きく、政府は予定していた週内決着を断念し、週明けに持ち越した。年内の決定を目指す予算編成のスケジュールにも影響を与えそうだ。【佐藤丈一、坂井隆之】
診療報酬は手術など医師の技術料にあたる「本体」部分と「薬価」の二つの公定価格で構成される。厚労省の政務三役は、薬価を1・37%引き下げて稼いだ原資(5000億円)をすべて本体部分の増額に振り向けて、本体部分を1・73%(6300億円)引き上げ、差し引き(ネット)での診療報酬全体の改定率をプラス0・35%(1300億円)にする戦略をとった。国費負担ベースで300億円の追加にとどめて、財務省の理解を得る作戦だ。
しかし、財務省は「デフレ状況で医師だけ報酬が増えるのは国民の理解を得られない」と主張。本体部分を最低でも据え置き、薬価をさらに引き下げることで診療報酬全体の減額を求めている。民主党が16日提出した政府への要望では、本体部分の増額を求めたため、財務省は本体部分引き上げは容認姿勢に転じたものの、総額削減は譲っていない。
財務省が減額を譲らない背景には、加入者の高齢化などで財政が悪化している協会けんぽへの支援問題もある。厚労省は保険料引き上げを抑えるため国庫負担を増やす方針で、必要な財源約1800億円を見込んでいる。財務省はマニフェスト項目でないことを理由に、「診療報酬の削減で財源を捻出(ねんしゅつ)すべきだ」と訴える。1800億円を捻出するには、診療報酬を2%以上引き下げることが必要だ。
自民党政権時代は、診療報酬は日本医師会と族議員との間で事実上決められてきた。鳩山政権が「政治主導」を掲げ、医師会や族議員の影響力を排除したことで、各省が互いの主張を譲らず事態が迷走する状況になっている。