WRAP 「自己管理法」知り、元気に 米国発の行動プラン
2010年10月25日 提供:毎日新聞社
◇好・不調時の状態観察→立て直し方、考え実践
いつも元気に自分らしく、人生を楽しみたい。そんな願いをかなえる自己管理法がある。WRAP(ラップ、元気回復行動プラン)と呼ばれ、精神疾患から回復した人たちの生活調査から生まれた。健康な人にも役に立つというが、どんなものなのか。【中村美奈子】
「ここは皆さんの生活の工夫を交換し合う場所です。元気な時の自分を思い浮かべて、どんな状態か教えてください」
8月にオープンした精神障害者の地域活動支援センター「はるえ野」(東京都江戸川区)で、週1回のWRAPのワークショップが始まった。テーブルにはバナナや大福が並び、参加者が手を伸ばす。ファシリテーター(進行役)として説明するのは、過眠症を抱える増川信浩さん(36)だ。
「好きなことに没頭している」「人とよくおしゃべりをする」「ゆっくり話せる。早口の時はイライラしている」「くよくよしない」。いい感じの時の自分のイメージを一人ずつ挙げていく。
統合失調症などの精神障害者とスタッフ、ボランティアら17人が参加した。スタッフは挙がった回答を白板に書き、みんなで共有していく。
次に「元気でいるために毎日すべきことのリスト作り」に入った。毎日できる範囲に数を絞り、具体的な行動にすることが大切だ。
「鏡に向かって笑顔の練習をする」「アイスコーヒーを飲んでストレッチする」「朝6時に仏壇にお線香とお茶、ご飯を供える」。場が和むにつれ、次々に声が上がる。「毎朝、家中の窓を開けて換気する」は実践者が多かった。
元気になる方法として増川さんが「時々、木に抱きついてる。決まった木があって、春に桜だとわかった」と言うと「私もやってる」と声が上がり、盛り上がった。
うつ病と知的障害を抱える都内の島田猛さん(44)は2回目の参加だ。「自分も毎朝、窓を開けてみようと思った。うつ病の改善には光を浴びるのが大事。障害を持つ仲間と時間を分かち合えるのがうれしい」と喜ぶ。
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WRAP(Wellness Recovery Action Plan)とは、そううつ病などを患った米国人女性メアリー・エレン・コープランドさんが、精神疾患から立ち直った人々を調査し、闘病中の生活の工夫や考え方を仲間とまとめた自己管理法だ。
(1)元気な日常の生活管理(2)状態を悪化させる引き金(3)悪化した時起きる兆候(4)状態が悪化中(5)緊急状況(6)緊急状況を脱した時――の6段階で、その時の感じ方や、状態を立て直すための行動計画を患者自身が考える。
ポイントは日ごろの自分を観察し、自分をよく知ることだ。
健常者のWRAP名古屋ファシリテーター、森和美さん(59)は昨年8月、精神保健福祉士として勤めたデイケアを退職し、自宅にいるうちに気分が沈んだ。(1)に挙げた「歩数計をつけて1時間近く歩く」「野菜、魚、旬のものを取り入れたバランスのいい食事を取る」を毎日意識的に実践し、数週間すると元気になってきたという。
「WRAPには自分の元気は自分次第という考え方がある。何度も講座に出て自分について振り返るうち、立ち直りが早くなり、自分を大事に思えるようになった」と話す。
先月来日し、精神障害者の回復を考えるシンポジウムで講演したコープランドさんは「米国では禁煙や禁酒、ダイエット、がんや糖尿病の患者も使っている。人間関係改善やポジティブシンキング、自信回復にも役立つ。充実した生活を送り、人生を楽しむために使ってほしい」と話す。
■詳しく学べる本や講演
WRAPの実践法がわかる本「元気回復行動プラン WRAP」(1000円)はコンボ(047・320・3870)で購入可。同名の冊子(500円)の購入先はWRAP研究会(wrap_genki@yahoo.co.jp)。講演会などの開催団体は、WRAPプロジェクトZ(http://wrapprojez.exblog.jp/i4/)を参照。
2010年10月26日火曜日
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