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 初めはどの雲水も、それまでの生活とのギャップに戸惑い、大変苦労します。しかし、ひと月もすると別人です。背筋がしゃんと伸び、きびきびした動きが身につきます。
 禅の道を極めた高僧になると、ただそこにその人がいるだけで、そばにいる私たちの心まで済んでくるような、風格と品を感じさせるようになります。日々の所作を磨き、修行に精進した結果、そのような徳のある美しさが醸(かも)し出されるんです。
 姿勢を整え、呼吸を整えると、心が整う。これを禅では「調身、調息、調心」と言い、座禅の三要素としています。三者が一体となって座禅が完成し、無の境地を味わうことができるのです。
 決して目立つわけではありませんが、周囲を惹(ひ)きつける魅力を持った人が時々います。そんな人は、所作も、呼吸も、もちろん心も普段から整っているはずです。
 心だけを変えようとしても、人はそうそう変われるものではありません。しかし、日常の立ち居振る舞いなら、意識さえすれば簡単に変えられます。
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 心のありようを変えたいと思った時、まず形から入るのはとても大切なことです。
怒らない 禅の作法 
枡野 俊明 (著) 
河出書房新社 (2016/4/6)

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