2026年4月1日水曜日

性淘汰

 たとえば、クジャクの雄の飾り羽は非常に長いし、シカの雄の角はとても大きい。
クジャクの雄の飾り羽の場合、雌がより立派な飾り羽の雄を選ぶことにより、進化してきた。シカの場合っ雌をめぐる争いが生じることから、戦いに有利な角の大きい雄が生き残った。
 このように、配偶者が篩(ふるい)にかけられることを「性選択」あるいは「性淘汰」という。
 最初に述べたように、進化は生存に有利な特徴を持つ個体が生き残る自然選択によって生じるが、生存に関係ない普段の雌雄の行動の違いや形態差はたいてい性選択によって説明できる。
~中略~
 このような性選択は、もちろんヒトにも働いている。女が男に対して、高価な贈り物を含むさまざまな「甲斐性」を求めることにも生物学的な意味を見出すことが可能だし、男も女に対して「若さ」、「腰のくびれ」など、生殖に関わるさまざまなことを求めている。

 

昆虫はすごい
丸山 宗利 (著)

光文社 (2014/8/7)
P73

昆虫はすごい (光文社新書)

昆虫はすごい (光文社新書)

  • 作者: 丸山 宗利
  • 出版社/メーカー: 光文社
  • 発売日: 2014/09/12
  • メディア: Kindle版

 

北海道 旭山動物園

オスがメスに求める価値

哺乳類のオスがメスに求める価値は二つあります。
若い固体であること、そして新しい個体であること。

これは歴然とした事実で、やはりオスとメスの戦略の違いから来ています。
哺乳類のオスは、とにかくたくさんのメスと交尾して、子どもを多くつくることを基本的な戦略としています。また、それが可能なのです。
極端な話、ヒトでも王様がハーレムをつくってたくさんの妻をもてば、それこそ何千人とかいう単位で子どもを残せるわけです。だからこそ、若くて子どもをたくさん産めそうなメスを選ぶ。
これはヒトやサルに限らず、子どもを持つのに妊娠・出産という大事業を要する哺乳類がもっている宿命です。

平然と車内で化粧する脳
澤口 俊之 (著), 南 伸坊 (著)
扶桑社 (2000/09)
P163

平然と車内で化粧する脳

平然と車内で化粧する脳

  • 出版社/メーカー: 扶桑社
  • 発売日: 2000/09/01
  • メディア: 単行本

 

ある調査によれば、男性は浮気をするときに、肉体関係を求めているというよりも、「ときめき」がほしくて浮気をするのだということがわかっています。
魅力のある女性は、もちろん外見的な美しさもさることながら、新しいときめき、自分を認めてもらえる快感を、男性に与えるのがとても上手です。
 男性は、「新奇探索性」と言って新しい刺激や快感を好み、求める傾向が女性よりも強いのです。新しいガジェット や機械、車、時計など、とくに使うわけでもないものを、つい購入してしまうのも男性のほうが多いですよね。

脳はどこまでコントロールできるか?
中野 信子 (著)
ベストセラーズ (2014/8/19)
P33

 

脳はどこまでコントロールできるか? (ベスト新書)

脳はどこまでコントロールできるか? (ベスト新書)

  • 作者: 中野信子
  • 出版社/メーカー: ベストセラーズ
  • 発売日: 2015/07/17
  • メディア: Kindle版
北海道 旭山動物園

カワイイと思う仕掛け

澤口 我々はミッキーマウスをなぜかわいいと思うか?というと、それも脳にカワイイと思うための仕掛けがあるからです。
 哺乳類は子育てをするために、子どもをカワイイと思う仕掛けをもってるんです。

哺乳類の赤ちゃんの顔には共通した特徴があって、全体に丸くて、おでこが広くて、鼻が低くて小さくて、ほおがふっくらしている。いちばん目立つのは目ですね、絶対的に目の比率が大きい。こういう顔を見ると、思わず保護し世話を焼きたくなるように、遺伝的にプログラムされているんですよ。
だから目が大きくて顔のでかいミッキーマウスを「カワイイ」と思うんです。

平然と車内で化粧する脳
澤口 俊之 (著), 南 伸坊 (著)
扶桑社 (2000/09)
P215

平然と車内で化粧する脳

平然と車内で化粧する脳

  • 出版社/メーカー: 扶桑社
  • 発売日: 2000/09/01
  • メディア: 単行本

 

北海道 旭山動物園

遺伝子

P12
遺伝子は使うことで改善されるものではない。それらはただ伝えられるだけで、ごくまれな偶然のエラーを別とすれば、まったく変わらないのだ。
成功がすぐれた遺伝子をつくるのではない。すぐれた遺伝子が成功するのであって、個体が生きているあいだに何をしようと、それは遺伝子に何の影響も与えない。
すぐれた遺伝子をもって生まれてきた個体は、大人になって首尾よく祖先になる可能性がきわめて高い。
したがって、すぐれた遺伝子は劣った遺伝子よりも後代に伝えられる可能性は高くなる。各世代はフィルターであり、篩(ふるい)なのである。すぐれた遺伝子は篩の目から次の世代へと落ちてゆく。

P34
遺伝子は純粋な情報であり、量の低下や異味の変質を招くことなく、暗号化も、再暗号化も、あるいは解読もできる情報である。純粋な情報はコピーすることができるし、デジタルな情報なので、複製の忠実度は計り知れないほどだ。
DNAの特徴は現代のエンジニアの能力にひけをとらない正確さでコピーされる。ちょうどまれに変種ができる程度のエラーをともなうだけで、世代から世代へとコピーされていく。
~中略~
増幅されたアナログ電話、何度もダビングしたテープ、ゼロックスで複写したものの複写など、アナログ信号は累積的な劣化をこうむりやすく、複製がきちんと維持できる世代数は限られている。
他方、遺伝子は一〇〇〇万世代でも自己複製が可能で、しかも劣化が全くないと言ってよい。ダーウィン主義が通用するのは、ひとえに―個別の突然変異は別で、これも自然淘汰によって排除されるかあるいは保存される―コピー処理が完璧だからである。

 

P46
遺伝子の視点には、何世代も流れていくDNAの川の長期的な見通ししかなくて、遺伝子はほんの一時的に特定の体に宿り、成功するか失敗するかわからない仲間の遺伝子とほんの一時的に一つの体を共有するにすぎないのである。
 長期的には、その川はいくつかの理由で生存に適した遺伝子でいっぱいになる。
槍投げの能力が少し改善されるとか、毒を見分ける能力が増すなど、何でもありうる。
平均的にみて生存に適さない遺伝子―それが宿る体を乱視にする傾向があるため、その体の持ち主は槍投げがあまりうまくないとか、肉体を魅力的にしないために、それが宿る体の主は結婚できそうもないなど―は、遺伝子の川から姿を消してゆくことになるだろう。

遺伝子の川
リチャード ドーキンス (著), 垂水 雄二 (翻訳)
草思社 (2014/4/2)

文庫 遺伝子の川 (草思社文庫)

文庫 遺伝子の川 (草思社文庫)

  • 出版社/メーカー: 草思社
  • 発売日: 2014/04/02
  • メディア: 文庫

 

北海道 旭山動物園

左脳マインド

P231
 左の脳は、情報をまとめる面では宇宙の中で最も優れた道具(ツール)です。
左脳のキャラクターは、あらゆるものを分類し、組織化し、記述し、判断し、批判的に分析する能力を誇っています。
左脳はいつも熟慮と計算によってうまく立ち回ります。口が動いていてもいなくても、左脳マインドは理論化し、合理化し、記録化するために忙(せわ)しなく働いています。
 左脳マインドは完全主義者で、まるで会社や家の管理人のよう。それはこう言い続けています、「全てのものには決まった場所があり、全てのものはその場所に属す」と。
右脳マインドのキャラクターは人間性を重視しますが、左脳マインドのキャラクターは財務や経済を重視します。
 何かをするとき、左脳マインドは複数の仕事を見事にこなし、同時にできるだけ多くの機能を演じるのを好みます。
左脳マインドは、そりゃもう働き者で、やらなくちゃいけない日課の項目をどれだけ線を引いて消せたかで、その価値を測ります。
左脳マインドは物事を順序だてて考えるので、機械的な操作に優れています。

P323
どちらの脳が支配的であるかは、どちらの半球がしゃべる言葉をつくり出して理解する能力を持つか、によって決まります。
そして統計上では、多少のばらつきはあるものの、(アメリカの人口の八五パーセント以上を占める)手が右利きの人のほとんどは、大脳の左半球の方が機能的に優れています。
でも、同時に、左利きの人の六〇パーセント以上も、右利きの人と同じように、大脳の左半球の機能が優れている方に分類されるのです。

P324
 正しい方法も規則も規制も持たない右脳マインドは、なにものにも束縛されず、あるがままに考える自由を持っています。そして新たな一瞬の数々が与えてくれる可能性を、どこまでも自由に求めていくのです。
右脳マインドはあらかじめ、自発的に気ままに、そして想像的につくられていて、だからこそわたしたちの芸術的な活力が、抑制や思慮分別なんてものに縛りつけられることなく、自由に迸(ほとばし)るのを可能にしてくれるのです。
~中略~
共感したり、他人の身になって考えてみたり、感情移入したりする能力は、右の前頭皮質のおかげなのです。
 それに対し、大脳の左半球は情報を処理する方法が全く異なっています。 左脳は、右脳によってつくられた内容豊富で複雑な瞬間のそれぞれを取り上げて、時間的に連続したものにつなぎ合わせます。
それから左脳は、この瞬間につくられた詳細と、一瞬前につくられた詳細を次々と比較し、きれいな直線上に並び替える作業をおこないます。こうやって、左脳が「時」の概念を明らかにしてくれ、瞬間は過去、
現在、未来に分けられていくのです。
~中略~
 大脳の右半球が、ひとつのイメージを思い描いて現在の瞬間の全体像を認知するんとは全く逆に、左脳マインドは、まさに微に入り細に入りうがつように、細かく細かく、細部にこだわり続けます。だから、大脳の左半球の言語の中枢はあらゆることを説明し、定義し、分類し、伝えるために、言葉を利用するのです。
~中略~
 左脳にある言語中枢の役目のひとつは、「わたしは」と言うことにより、「自己(セルフ)」の意味を明確にすること。
脳はおしゃべりをすることで、人生の細部を何度も反芻(はんすう)します。だからあなたは、自分の人生で起きたことを憶えていられるのです。

P328
 言語で考えることに加え、大脳の左半球は入ってくる刺激に対してパターン化された反応を見せます。 それは感覚的な情報に対して、ほぼ自動的に働く神経学的な回路をつくっています。このよな回路によって、多くの時間を個々の情報の断片に焦点を当てるのに費やすことなく、大量の情報を処理できるのです。~中略~ この種の反射的な回路設計が、わたしが左脳の「思考パターンのループ」と名づけたものをつくり出します。
これによって、最低限の注意力と計算力で、大量の流入情報をあっという間に解釈することができるのです。
 左脳は、こうした生得のパターン認知のプログラムで一杯で、このプログラムは過去の体験にもとづき、わたしたちが何を考えるか、どう行動するか、あるいは、将来どんなことを感じるか、ということを、見事に予測してくれるのです。

奇跡の脳―脳科学者の脳が壊れたとき
ジル・ボルト テイラー (著), Jill Bolte Taylor (原著), 竹内 薫 (翻訳)
新潮社 (2012/3/28)

奇跡の脳―脳科学者の脳が壊れたとき (新潮文庫)

奇跡の脳―脳科学者の脳が壊れたとき (新潮文庫)

  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 2012/03/28
  • メディア: 文庫

天神山しだれ桜 福岡県築上郡築上町

脳の可塑性

P177
 わたしは脳卒中の後の八年というもの、自分の脳が学んで機能する能力が格段の進歩をとげたのを実感しました。その時点で、自分の脳とからだが完全に回復したことを確認できました。 科学者の間では、脳が、入ってくる刺激に基いて「つながり方」を変えるという、驚くべき能力を持っていることがよく知られています。
この脳の「可塑性(かそせい)」により、わたしたちは失われた機能を回復することができるのです。

奇跡の脳―脳科学者の脳が壊れたとき
ジル・ボルト テイラー (著), Jill Bolte Taylor (原著), 竹内 薫 (翻訳)
新潮社 (2012/3/28)

奇跡の脳―脳科学者の脳が壊れたとき (新潮文庫)

奇跡の脳―脳科学者の脳が壊れたとき (新潮文庫)

  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 2012/03/28
  • メディア: 文庫

太宰府天満宮

大脳辺縁系(へんえんけい)

   大脳辺縁系(へんえんけい)は、感覚器官を通して入ってくる情報に、情動や感情を重ねることによって機能します。
辺縁系は、他の生き物にも共通しているので、しばしば「爬虫類の脳」とか「感情的な脳」などと呼ばれています。
産まれるとすぐに、辺縁系の細胞は感覚的な刺激に反応して、配線ができます。 注目したいのは、辺縁系は生涯を通じて機能するけれど成熟はしない、ということ。その結果として、感情の「ボタン」が押されると、大人であっても、いつだって、二歳の子供みたいに流入する刺激に反応することができるのです。

奇跡の脳―脳科学者の脳が壊れたとき
ジル・ボルト テイラー (著), Jill Bolte Taylor (原著), 竹内 薫 (翻訳)
新潮社 (2012/3/28)
P308

奇跡の脳―脳科学者の脳が壊れたとき (新潮文庫)

奇跡の脳―脳科学者の脳が壊れたとき (新潮文庫)

  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 2012/03/28
  • メディア: 文庫

北海道 旭山動物園

ゲノムは究極の個人情報

 ゲノムというのはある意味、究極の個人情報です。
一般的に個人情報というのは、本人の判断で取り扱いを決めることができると考えられています。自分の誕生日や学歴をネットで公開したいと思えば、してもよいわけです。

 しかし、ここにゲノムや遺伝子特有の問題が発生します。ゲノム情報というのは自分のものではありますが、自分だけのものでもないのです。自分の親きょうだい、子どもなどは、自分とゲノムの一部を共有しているからです。
~中略~

 自分のゲノム情報を公開すれば、それは自分の親きょうだい・子どもについての情報も公開したことになってしまいます。
つまり、ゲノム情報というのは個人情報であると同時に個人だけの情報というわけでもないのです。

「こころ」は遺伝子でどこまで決まるのか―パーソナルゲノム時代の脳科学
宮川 剛 (著)
NHK出版 (2011/2/8)
P220

「こころ」は遺伝子でどこまで決まるのか パーソナルゲノム時代の脳科学 (NHK出版新書)

「こころ」は遺伝子でどこまで決まるのか パーソナルゲノム時代の脳科学 (NHK出版新書)

  • 作者: 宮川 剛
  • 出版社/メーカー: NHK出版
  • 発売日: 2016/11/30
  • メディア: Kindle版

 

佐賀県 吉野ヶ里遺跡

知能はひとつの遺伝子で決まらない

P189
 結論からいえば、このひとつの遺伝子のスニップをもって知能診断をするのは原理的に不可能です。その理由は以下のようなものになります。

①これらの研究結果は、集団の平均値に関するものに過ぎない ~略
②遺伝子のタイプには人間種間でばらつきがある~略
③知能に影響する遺伝子はこの遺伝子だけでない~略

P193
 身長や血圧など、値が連続的に変わって現れてくる形質を「量的形質」といいます。
量的形質のほとんどは、ひとつの遺伝子だけで決まるものではなく、複数の遺伝子に加え環境や経験が影響して決まってきます。
性格や知能といったこころの性質はすべて量的形質であるといっていいでしょう。

P195

 おそらく知能は、ひとつひとつとしては効果が弱い遺伝的変異がたくさん集まって最終的に決まってきているのだと考えられます。 

「こころ」は遺伝子でどこまで決まるのか―パーソナルゲノム時代の脳科学
宮川 剛 (著)
NHK出版 (2011/2/8)

「こころ」は遺伝子でどこまで決まるのか パーソナルゲノム時代の脳科学 (NHK出版新書)

「こころ」は遺伝子でどこまで決まるのか パーソナルゲノム時代の脳科学 (NHK出版新書)

  • 作者: 宮川 剛
  • 出版社/メーカー: NHK出版
  • 発売日: 2016/11/30
  • メディア: Kindle版

 

佐賀県 吉野ヶ里遺跡

下戸遺伝子は中国南部出身


 余談ですが、この(住人注;アセトアルデヒドを分解する酵素の)遺伝子は両親から受け継ぐのですから、正確に言うと私たちのなかには、正常型のALDH2をセットで持っている人と、一つ持つ人、まったく持たない人の三つのタイプがあることになります。そうなると、一つだけ持っている人は、お酒の強さに関して言えば、ちょうど中間の能力を持つと考えたくなりますが、事情はちょっと複雑です。この遺伝子から作られれるタンパク質のユニットが四つ合体して機能していますので、そのなかに一つでも変異型を持っていると正常に働きません。ですから四ユニットすべてが正常型で構成されるのは確立的には一六分の一になってしまうのです。
つまり正常型の遺伝子を一つ持っている人のアセトアルデヒドの分解能力は、二つ持つ人に比べると約6%ということになります。
~中略~
変異型は中国南部を中心とした極東アジアの地域に多く、そこから離れると徐々に保有率が低下していくことがわかります。
ヨーロッパやアフリカの人々には、変異型の遺伝子を持つ人はほとんどいません。
周りを見わたせば、必ず何人かのお酒が飲めない人を発見できる私たちからすれば、これはずいぶん奇妙な状況です。
中国に行くと北京のような北部の都市で宴席に出されるのがアルコール度数の高い蒸留酒であることが多いのに、上海などでは紹興酒のような醸造酒であることが多いのも、この遺伝子の分布に一致しているように思えます。
~中略~
このような分布状態は、変異型が中国南部で発生し、その後のヒトの移動にともなって周辺の地域に広がっていったと考えるとうまく説明できます。
~中略~
お酒に弱い人に関して言えば、少なくとも祖先の一人はこの中国南部に由来していることになります。


日本人になった祖先たち―DNAから解明するその多元的構造
篠田 謙一 (著)
日本放送出版協会 (2007/02)

P34

日本人になった祖先たち DNAから解明するその多元的構造 (NHKブックス)

日本人になった祖先たち DNAから解明するその多元的構造 (NHKブックス)

  • 作者: 篠田 謙一
  • 出版社/メーカー: NHK出版
  • 発売日: 2007/02/24
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)


佐賀県 吉野ヶ里遺跡

BRCA遺伝子

P220
 BRCA1とBRCA2はがん抑制遺伝子で、変異があると遺伝子に不安定性が引きおこされ、発がんの可能性が高くなる遺伝子です。
これらの遺伝子に異常があると、前立腺がんやすい臓がんのリスクが高まることも知られています。どちらも常染色体の遺伝子ですが、片方に変異があるだけで発がんのリスクが高くなります。
 米国の統計では、全女性の12%が一生のうちに乳がんを発症する可能性があります。一方、BRCA1に変異があるとほぼ6割が、BRCA2に変異があると5割弱が、70歳までに乳がんを発症するとされています。卵巣がんに対する影響はもっと大きくて、全女性の1%強が発症するにすぎないのに対して、BRCA1に変異があると約4割が、BRCA2に変異があると1割強が卵巣がんを発症するようになります。
 アンジェリーナ・ジョリーの場合は、乳がんで亡くなった叔母と同じく、BRCA1の遺伝子に異常が見つかり、医師から乳がんになる確率が87%であると診断されたことがきっかけとなりました。

P222
 遺伝子というのは、もちろん自然界に存在する天然物なのですが、一定の条件を満たすと、特許として認められるようになっています。BRCA1もBRCA2も、ミリアド・ジェネティクスという会社が特許を取得しました。そして、これらの遺伝子検査を独占し、3000ドルという高額な費用で検査がおこなわれていました。 
 さらに、ミリアド社はBRCA遺伝子の検査をうけるべきだと啓蒙するビジネスを展開します。このような状況に対して、米国分子病理学会、および、がん患者や医師らが、特許は無効であるという訴訟をおこしました。
そして、米国最高裁判所は、ミリアド社の特許の一部は無効であるという判決を下します。この判決が出されたのが、アンジェリーナ・ジョリーの告白から1ヶ月後でした。アンジェリーナ・ジョリー効果で、検査を受けたい人が増えているのに、高額で受けられないという事例が出て社会問題になりつつあったこともあり、この判決は大きな話題をよびました。

こわいもの知らずの病理学講義
仲野徹 (著)
晶文社 (2017/9/19)

こわいもの知らずの病理学講義

こわいもの知らずの病理学講義

  • 作者: 仲野徹
  • 出版社/メーカー: 晶文社
  • 発売日: 2017/09/19
  • メディア: 単行本

佐賀県 吉野ヶ里遺跡

Y染色体

  Y染色体は男性の系統に受け継がれるのですから、男から見れば何か偉そうな染色体に思えます。
しかし、この染色体上に存在する遺伝子は七〇個あまりで、遺伝子全体の〇・二%にも満たないものです。
しかも最近の研究ではそれほど重要な働きをする遺伝子は存在しないことがわかってきています。
最大の機能は言うまでもなく男性を作る作用なのですが、その部分は非常に小さく一〇〇〇塩基対程度しかありません。Y染色体の大部分は意味のないDNA配列の羅列で埋められていて、実情はそれほど威張れるものではないようです。
ことさら男子の系統を大切にしようとする風潮は、DNAから見れば何か滑稽の感じすらします。
男性はX染色体を一本しか持たないので、このなかに含まれる遺伝子に異常があると、女性と違ってスペアがありません。おかげでX染色体に含まれる遺伝子の病気は、多くの場合、男性にだけ発現することになります。


日本人になった祖先たち―DNAから解明するその多元的構造
篠田 謙一 (著)
日本放送出版協会 (2007/02)
P188

日本人になった祖先たち DNAから解明するその多元的構造 (NHKブックス)

日本人になった祖先たち DNAから解明するその多元的構造 (NHKブックス)

  • 作者: 篠田 謙一
  • 出版社/メーカー: NHK出版
  • 発売日: 2007/02/24
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)

 

佐賀県 吉野ヶ里遺跡