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BRCA1とBRCA2はがん抑制遺伝子で、変異があると遺伝子に不安定性が引きおこされ、発がんの可能性が高くなる遺伝子です。
これらの遺伝子に異常があると、前立腺がんやすい臓がんのリスクが高まることも知られています。どちらも常染色体の遺伝子ですが、片方に変異があるだけで発がんのリスクが高くなります。
米国の統計では、全女性の12%が一生のうちに乳がんを発症する可能性があります。一方、BRCA1に変異があるとほぼ6割が、BRCA2に変異があると5割弱が、70歳までに乳がんを発症するとされています。卵巣がんに対する影響はもっと大きくて、全女性の1%強が発症するにすぎないのに対して、BRCA1に変異があると約4割が、BRCA2に変異があると1割強が卵巣がんを発症するようになります。
アンジェリーナ・ジョリーの場合は、乳がんで亡くなった叔母と同じく、BRCA1の遺伝子に異常が見つかり、医師から乳がんになる確率が87%であると診断されたことがきっかけとなりました。
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遺伝子というのは、もちろん自然界に存在する天然物なのですが、一定の条件を満たすと、特許として認められるようになっています。BRCA1もBRCA2も、ミリアド・ジェネティクスという会社が特許を取得しました。そして、これらの遺伝子検査を独占し、3000ドルという高額な費用で検査がおこなわれていました。
さらに、ミリアド社はBRCA遺伝子の検査をうけるべきだと啓蒙するビジネスを展開します。このような状況に対して、米国分子病理学会、および、がん患者や医師らが、特許は無効であるという訴訟をおこしました。
そして、米国最高裁判所は、ミリアド社の特許の一部は無効であるという判決を下します。この判決が出されたのが、アンジェリーナ・ジョリーの告白から1ヶ月後でした。アンジェリーナ・ジョリー効果で、検査を受けたい人が増えているのに、高額で受けられないという事例が出て社会問題になりつつあったこともあり、この判決は大きな話題をよびました。
こわいもの知らずの病理学講義
仲野徹 (著)
晶文社 (2017/9/19)

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