2026年4月22日水曜日

お辞儀

 たいていの人は、お辞儀というのは「相手に敬意を表する」ことと思っているが、それは第二義である。
第一義は相手を敬するということではなくて、「自らを敬す」ということである。例えば、仏典にお辞儀ということを説いて、「吾を以て汝を敬し、汝を以て吾を敬す」と言っている。つまりお辞儀をするということは「自分が相手に敬意を表すると同時に、相手を通じて自分が自分に対して敬意を表する」ことである。
 鳥獣はお辞儀をするとういうことを知らない。ということは、自らその真理、価値というものを尊重することを知らない。まだ精神生活が発達していない。人間になると初めてそれが発達してきて、お互いに挨拶をする。
お辞儀をするということは、お互いに相敬するということであり、自ら他に挨拶をするということは、同時に他を通じて自己を敬すということだ。そこにお辞儀というものの厳粛な意義がある。
 この頃は人間が人間味というものをなくしてきたからお辞儀をしなくなった。

知命と立命―人間学講話
安岡 正篤 (著)
プレジデント社 (1991/05))
P155

人間学講話第6集 知命と立命 (安岡正篤人間学講話)

人間学講話第6集 知命と立命 (安岡正篤人間学講話)

  • 作者: 安岡 正篤
  • 出版社/メーカー: プレジデント社
  • 発売日: 1991/05/27
  • メディア: 単行本

 

京都府 東福寺

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