2026年4月20日月曜日

徳の貯蓄

P262
 天性実に美わしく生まれて人がある。嫉妬羨望の念なく、ほとんど悪の観念なきかと思われる人がある。しかし、こんな人は極めて希だ。十中の八、九人はこれに反し修養を積まなければ善に進まれぬものである。
善悪の両性を有するものは、たゆまず失望せず徳を貯えるようにせよ。~中略~
 徳を積むものは、前に述べた富とか知識とかを積むもののごとく、この世に栄華を極めることの保証は出来ぬ。人から偉いと言われるや否やも分からぬ。月給も多く多くもらえるかどうか分からぬ。
~中略~
しかし、徳には名誉も黄金も及ばぬ保存力と快楽とがあるものと見ゆる。金ある者は、あるいは失敗して一夜にこれを失うことがある。知識は病気のために忘れることもある。
人に嫉まれたりうらやまれたりすることもある。しかし、徳のある人は火災に喪失するの憂いもなく、人に嫉まれることもない。

P264
徳の貯蓄はいかなる人、いかなる位地においても、行わんとする意志があれば、必ずできる。納豆売り人は金力の貯蓄を行わんとしても、少額たるを免れぬ。また肥桶を担う農夫は知識を貯蓄せんとしても、狭きを免れぬ。
しかるに徳の貯蓄に至っては、職業の貴賤、金力の有無、社会階級の高下、身体の強弱関係なくできる。

しかも、最初の種はすでにかくじにももっておるから、今から・・・、今晩からでもすぐに積み始めることができる。 

修養
新渡戸 稲造 (著)
たちばな出版 (2002/07)

修養 (タチバナ教養文庫 23)

修養 (タチバナ教養文庫 23)

  • 作者: 新渡戸 稲造
  • 出版社/メーカー: TTJ・たちばな出版
  • 発売日: 2002/07/01
  • メディア: 新書

性急にやらねばならぬこともたくさんありますが、
節度を保ち、不自由を忍ばねば、手に入れることのできぬものもあります。
徳はそれだと申します。
徳とは縁続きの愛も同様です。
(「タッソー」一一一九行以下)

ゲーテ格言集
ゲーテ (著), 高橋 健二 (翻訳)
新潮社; 改版 (1952/6/27)
P12

 

ゲーテ格言集(新潮文庫)

ゲーテ格言集(新潮文庫)

  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 2016/04/22
  • メディア: Kindle版
戸ノ上山 北九州市 >

0 件のコメント: