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ここでちょっと止まって、服装の歴史について、とくに社会科学で対外シグナリングと呼ばれるものを念頭に考えてみよう。
対外シグナリングとは簡単に言うと、わたしたちが身につけるものをとおして、自分が何者であるかを他人に知らせる方法のことだ。時をさかのぼって古代ローマの法には、奢侈(しゃし)禁止令という一連の規制があった。禁止令はその後数世紀をかけてヨーロッパのほとんどの国に浸透した。この法では何よりもまず、身分や階級によって、だれが何を着てよいかがきめられていた。法は驚くほど詳細におよんでいた。
~中略~
こうしたルールは、上流階級のばかばかしいまでの脅迫症のように思えるかもしれないが、実は世間の人たちが自らシグナリングしたとおりの身分であることを保証するための策だった。
つまり、無秩序と混乱を排除するためのしくみだ(シグナリング上の利点があったのは間違いないが、この体制に戻りたいとは言っていない)。
現代の衣服の階級制度は、むかしほど硬直的ではないが、成功と個性をシグナリングしたいという欲求は、かってないほど高まっている。
~中略~
ところであなたはこう思っているかもしれない。安いコピー商品を買う人たちは、何も、ファッションメーカーに損害を与えているわけではない。彼らの多くは、そもそも本物など絶対に買わないのだからと。
だがここで忘れていけないのが、対外シグナリングの効果だ。
何しろ大勢の人がパチモンのバーバリーのマフラーを一〇ドルで買っていたら、ほかの人たち、とくに本物を買うだけの余裕と意欲のある一握りの人は、本物のマフラーにその二〇倍の値段を出そうと思わなくなるかもしれない。 せっかくのバーバリーのおなじみのチェック柄の洋服を着たり、ルイヴィトンのLV柄のバッグを身につけても、にせものではないかとまず疑われるなら、本物を買うことのシグナリング上の価値はどこにある?
この観点から言えば、にせものを買う人は対外シグナリングの効力を弱め、正規品(とそれを身につける人)の真正性を損うことになる。だからこそ、ファッションブランドや、ファッションに敏感な人たちは、偽造品にこのうえない危機感を抱いているのだ。
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以上の結果から、女性たちは正規ラベルを身につけても、ふだんより正直な行動を(すくなくとも大幅には)促されなかったことがわかる。だがにせものをそれと知りつつ身につけると、道徳的な抑制力がいくぶん弱まり、その結果不正の道に歩を進めやすくなるのだ。
この話の教訓?あなたや友人、デートの相手などがにせものを身につけているときは、気をつけよう!別の不正行為が、思ったより近くに迫っているかもしれない。
ずる―嘘とごまかしの行動経済学
ダン アリエリー (著), Dan Ariely (著), 櫻井 祐子 (翻訳)
早川書房 (2012/12/7)
清潔感と適度なグレードを感じさせる身なりは、あなたの信用度をかなりアップさせる。着こなしは本人のあらゆる物事への姿勢を感じさせる。派手に高価のもので飾るのはむしろ逆効果だが、分相応に身体に合った清潔な着こなしは、他人からの評価だけでなく自分の自信もアップさせる。
頭に来てもアホとは戦うな! 人間関係を思い通りにし、最高のパフォーマンスを実現する方法
田村耕太郎 (著)
朝日新聞出版 (2014/7/8)
P183


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