租税特別措置法26条は昭和29年、社会保険診療報酬課税の特別措置として議員立法で成立した。成立の背景には、診療報酬が適正でないため、税制面で医師所得に特別な措置を講ずることがあった。
つまり、当時の財源では診寮報酬の適正化が図れないので、その分を税金で考慮しようと当時の大蔵省が言い出したものである
▼そのため、この26条には「適正単価決定までの措置」という付帯決議がついている。
そして、適正単価とは「保険者、被保険者、保険医の3者が妥当と認める単価」と定義づけされている
▼しかし大蔵省は、自ら言い出したものを「不公平税制」や「医師優遇税制」として昭和53年、いわゆる五段階税制に、また、平成元年からは5千万円超を適用除外とする四段階税制に改悪し、その後も、税制改革のたびにこれの全廃を目論んできた。
驚くべきはこの間、適正単価云々の付帯決議を全く無視した点にある
▼我々保険医は措置法成立時の経緯と付帯決議について今一度、認識し、地域医療を担う小規模医療機関を税制面から支え、先人が診療報酬適正化のために我々に託したこの26条を守り抜かねばならない。
また、民主党はマニフェストに従い、26条を真に必要なものとん、「特別措置」から「恒久措置」へ切り替えるべきである。(晴)
日歯広報 2010/1/25
下手に出ておいてこっそりはしごをはずす。これが彼らの 廃藩置県頃からの、いつものやり口である。
そして、マスコミも民主党もこういう経緯を知らないので、まんまと踊らされる。
当時よりもますます適正価格から遠のいている現在 、適正価格という議論さえ歯科ではない。
誠実に賢くなって、理論武装して、この事実を一般の方々に知っていただく努力が大切。
2010年1月18日月曜日
説明責任
巷では「疑惑をかけられたら、かけられた方は疑惑を晴らすために説明責任がある。」ということになっている。
これは公権力やマスコミには大変都合がよい考え方であるが、大変危険な考え方であることを直視ないといけない。
人が罪を犯しているのをいろいろな証拠から、理論的に証明して立件するのが彼らの仕事である。
それを疑いをかけられたほうに説明の義務があり、疑いをかけた方が退かない限り、被疑者は自由になれないというのは問題であろう。
一方で公務員の無謬性と匿名性に守られた彼らは、その疑いが根も葉もない物で、被疑者を一定期間、心理的、経済的に負担をかけたとしても責任を追求されることは全く無い。
政治家などがこのような目になうのを見ている分には気楽かもしれないが、いつ自分に同じようなことが降りかからないともかぎらない。
窃盗から、痴漢、脱税、全て疑いをかけられたら、自分で身の潔白を証明しなければならず、あらぬ疑いをかけたほうは何もしなくてよく、無責任に疑いをかけてよいのであれば、大変危険な世の中になる。
これは公権力やマスコミには大変都合がよい考え方であるが、大変危険な考え方であることを直視ないといけない。
人が罪を犯しているのをいろいろな証拠から、理論的に証明して立件するのが彼らの仕事である。
それを疑いをかけられたほうに説明の義務があり、疑いをかけた方が退かない限り、被疑者は自由になれないというのは問題であろう。
一方で公務員の無謬性と匿名性に守られた彼らは、その疑いが根も葉もない物で、被疑者を一定期間、心理的、経済的に負担をかけたとしても責任を追求されることは全く無い。
政治家などがこのような目になうのを見ている分には気楽かもしれないが、いつ自分に同じようなことが降りかからないともかぎらない。
窃盗から、痴漢、脱税、全て疑いをかけられたら、自分で身の潔白を証明しなければならず、あらぬ疑いをかけたほうは何もしなくてよく、無責任に疑いをかけてよいのであれば、大変危険な世の中になる。
2010年1月8日金曜日
免疫パトロールの機構解明 リンパ球が炎症を抑制
2010年1月6日 提供:共同通信社
異常な免疫反応に伴う炎症を抑えるリンパ球の働きを、徳島大の林良夫(はやし・よしお)教授のチームがマウス実験で解明し、米科学誌プロスワンに5日発表した。このリンパ球は「制御性T細胞」と呼ばれ、リンパ節から各臓器に広がって炎症を抑える"パトロール活動"をしていた。
この働きにはCCR7というタンパク質が必要なことも発見。林教授は「この仕組みを制御できれば、免疫機構が誤って自分自身の体を攻撃する自己免疫疾患の治療に役立つかもしれない」と話している。
チームは、CCR7をつくれないように遺伝子操作したマウスで実験。通常のマウスは制御性T細胞が血流に乗って体内に広がっていくが、遺伝子操作マウスはほとんどがリンパ節にとどまったままになり、目の炎症などの自己免疫疾患が起きるのを確かめた。
異常な免疫反応に伴う炎症を抑えるリンパ球の働きを、徳島大の林良夫(はやし・よしお)教授のチームがマウス実験で解明し、米科学誌プロスワンに5日発表した。このリンパ球は「制御性T細胞」と呼ばれ、リンパ節から各臓器に広がって炎症を抑える"パトロール活動"をしていた。
この働きにはCCR7というタンパク質が必要なことも発見。林教授は「この仕組みを制御できれば、免疫機構が誤って自分自身の体を攻撃する自己免疫疾患の治療に役立つかもしれない」と話している。
チームは、CCR7をつくれないように遺伝子操作したマウスで実験。通常のマウスは制御性T細胞が血流に乗って体内に広がっていくが、遺伝子操作マウスはほとんどがリンパ節にとどまったままになり、目の炎症などの自己免疫疾患が起きるのを確かめた。
国立大病院、15年度に累積赤字1438億円
2010年1月6日 提供:読売新聞
国立大学付属病院長会議が、全国42国立大学付属病院全体で2015年度の累積赤字額が約1438億円に達するとの試算をまとめていたことが4日、分かった。
累積赤字額は08年度の11倍強に相当する。
民間病院に比べて医療機器の老朽化が著しく、購入の必要や、病棟建設に伴う長期借入金の返済などで支出がかさむため。
同会議によると、各国立大学病院の決算をまとめたところ、08年度単年度では約52億9000万円の赤字で、累積赤字額は約129億円に上った。赤字の主な原因は国からの運営費交付金の削減としており、試算では、今後も削減が続くとして、15年度までの
国立大学付属病院長会議が、全国42国立大学付属病院全体で2015年度の累積赤字額が約1438億円に達するとの試算をまとめていたことが4日、分かった。
累積赤字額は08年度の11倍強に相当する。
民間病院に比べて医療機器の老朽化が著しく、購入の必要や、病棟建設に伴う長期借入金の返済などで支出がかさむため。
同会議によると、各国立大学病院の決算をまとめたところ、08年度単年度では約52億9000万円の赤字で、累積赤字額は約129億円に上った。赤字の主な原因は国からの運営費交付金の削減としており、試算では、今後も削減が続くとして、15年度までの
自閉症は脳の神経機能低下 タンパク質減少を確認 予防、治療の標的に
2010年1月6日 提供:共同通信社
自閉症の人の脳の中では、神経から神経に情報を伝える化学物質を回収し再利用するタンパク質「セロトニン・トランスポーター」が少なく、神経機能が低下していることを初めて確かめたと、浜松医大の森則夫(もり・のりお)教授らが5日、都内で発表した。
この化学物質「セロトニン」は感情、睡眠、食欲、不安などに関係するとされる。森教授は「セロトニン・トランスポーターという、予防や治療に役立つ具体的な標的を提示できた。研究が大きく進むだろう」と話している。
森教授らは、知的障害がない「高機能自閉症」の18~26歳の男性20人について、陽電子断層撮影法(PET)でセロトニン・トランスポーターの分布を調査。
すると脳全体で、健常者より密度が低いことが判明。自閉症の症状との関係を分析すると、帯状回という部位での密度低下は「相手の気持ちを読めない」という症状と、視床での低下は強迫症状と関係があることが分かったという。
これまで、自閉症の人の一部でセロトニンの血液中の濃度が高く、自閉症との関連が指摘されていた。
グループの辻井正次(つじい・まさつぐ)中京大教授(発達臨床心理学)は「自閉症は育て方の問題ではなく、明確な脳の障害があることが見いだされた。障害を前提に、社会に適応して生きられるようサポートしていくことが大事だ」と話している。
自閉症の人の脳の中では、神経から神経に情報を伝える化学物質を回収し再利用するタンパク質「セロトニン・トランスポーター」が少なく、神経機能が低下していることを初めて確かめたと、浜松医大の森則夫(もり・のりお)教授らが5日、都内で発表した。
この化学物質「セロトニン」は感情、睡眠、食欲、不安などに関係するとされる。森教授は「セロトニン・トランスポーターという、予防や治療に役立つ具体的な標的を提示できた。研究が大きく進むだろう」と話している。
森教授らは、知的障害がない「高機能自閉症」の18~26歳の男性20人について、陽電子断層撮影法(PET)でセロトニン・トランスポーターの分布を調査。
すると脳全体で、健常者より密度が低いことが判明。自閉症の症状との関係を分析すると、帯状回という部位での密度低下は「相手の気持ちを読めない」という症状と、視床での低下は強迫症状と関係があることが分かったという。
これまで、自閉症の人の一部でセロトニンの血液中の濃度が高く、自閉症との関連が指摘されていた。
グループの辻井正次(つじい・まさつぐ)中京大教授(発達臨床心理学)は「自閉症は育て方の問題ではなく、明確な脳の障害があることが見いだされた。障害を前提に、社会に適応して生きられるようサポートしていくことが大事だ」と話している。
「中医協議論への政治的圧力、由々しき発言」、日医が足立政務官を批判
2010年1月7日 村山みのり
日本医師会は、1月7日の記者会見において、2009年12月27日に共同通信による「厚生労働省は再診療について、現在710円の診療所を引き下げる一方、600円の病院を引き上げて650円前後で一本化する考えを示した」とする報道、まだ2010年1月6日付メディファクスにおける足立信也・厚労大臣政務官が「『病院の点数を診療所に合わせる判断を中医協がすることはあり得ない』と述べ、現行の診療所の点数は引き下げることになるとの見通しを示した」との記事について、「報道をきっかけに既成事実化しようとしているようであり、極めて遺憾」、「厚労大臣の諮問機関である中医協の議論に対し、政務官の立場から政治的に圧力をかけるものであり、中医協を軽視した由々しき発言」と批判した。
再診料の見直しについては、昨年12月に中医協で「『一物一価』の観点から病院・診療所で一本化する」との方針が合意されたが、遠藤久夫会長は「今後、具体的な点数設定の議論において意見が分かれる可能性がある」とコメントしていた。実際、診療側は「高い方に低い方を合わせるか、適正評価の観点から現在より高い点数で一本化する」ことを合意の条件としているのに対し、支払側は12月22日に提出した意見書に「診療所を引き下げ、病院を引き上げる形で統一を図るべき」と記載しており、統一の方法や点数の設定については今後議論することとなっていた。なお、足立政務官は12月23日夕方に行われた厚労大臣記者会見においても、「再診料も病院と、診療所を合わせるという中医協の合意もありましたし、再診料が下がるという」と発言している。
また、足立政務官は、再診料を引き下げて得た財源で、不採算の診療科を「手厚く加算すればよい」と述べたと報じられているが、これについても常任理事・中川俊男氏は「特定の診療科が算定できる加算を設けることを示唆しているが、再診料はすべての診療科に共通の技術料・経営コスト。例えば小児科に加算を付けたとしても、小児科診療所でも再診料は下がるため、意味がない。時間外診療を手厚く評価するとの意見も聞かれるが、時間外・救急をしないと経営ができないのは異常。いかに医療の現場を見ていないかは明らか」と批判した。
常任理事・中川俊男氏は、「中医協の中ではいまだ議論の途上で、基本診療料についても十分な議論は尽くされていない。また、足立政務官は外来管理加算についても『選択肢の一つはいらないということ』と廃止に言及し、中医協で合意されていない内容にまで踏み込んでいる。今回の発言は中医協の議論に政治的に介入し、圧力をかけたもので、重大な問題。日本医師会は、こうしたやり方を断じて容認することはできない」と問題視。
また、改定率について「大幅なプラス改定が可能な状況ではなかった」とする発言についても「民主党の公約における『総医療費対GDP比をOECD加盟国平均までの引き上げ』は診療報酬を10%引き上げることに相当する。また足立政務官は診療報酬を『少なくとも3.16%は戻さなくてはいけない』と発言していた。にもかかわらず、この期に及んでこのような発言はいかがなものか。厚生労働省の政務官として、発言の重みを肝に銘じていただきたい」と述べた。
日医は、再診料引き下げについて「診療所の収入の8.5%は再診料。再診料には、医師の技術料のほか、看護職員やコメディカルの人件費、減価償却費、光熱水費、事務経費などが含まれる。再診料の重みの大きい診療所にとって、引き下げは医業経営上きわめて大きな打撃」として強く反対。また、再診料統一については「病院の再診料を引き上げて診療所の点数に統一していく方針に賛成」との方針を示しつつ、現在の点数は病院・診療所いずれも不十分であり、本来はともに引き上げを行うべきであること、一方で2010年度改定の財源が限られていることから、まず今回は病院の点数を引き上げて診療所の水準に近付け、次回以降の改定でより高水準に統一するなど、段階的に統一を図っていくことを提案した。
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ちなみに歯科の再診料はもっと低く、400円である。
これで、医科同様の経費に加え、器具の消毒、紙コップに加え近年では手袋の装着経費もこの中に含まれ、ほとんど何十年も増加していない。
このことを日本歯科医師会や、行政は語っていないことを国民の皆さんに知っていただきたい。
一つ一つの医療行為のコスト計算を行えば、現状の医療がいかに不採算であるかご理解いただける。
日本医師会は、1月7日の記者会見において、2009年12月27日に共同通信による「厚生労働省は再診療について、現在710円の診療所を引き下げる一方、600円の病院を引き上げて650円前後で一本化する考えを示した」とする報道、まだ2010年1月6日付メディファクスにおける足立信也・厚労大臣政務官が「『病院の点数を診療所に合わせる判断を中医協がすることはあり得ない』と述べ、現行の診療所の点数は引き下げることになるとの見通しを示した」との記事について、「報道をきっかけに既成事実化しようとしているようであり、極めて遺憾」、「厚労大臣の諮問機関である中医協の議論に対し、政務官の立場から政治的に圧力をかけるものであり、中医協を軽視した由々しき発言」と批判した。
再診料の見直しについては、昨年12月に中医協で「『一物一価』の観点から病院・診療所で一本化する」との方針が合意されたが、遠藤久夫会長は「今後、具体的な点数設定の議論において意見が分かれる可能性がある」とコメントしていた。実際、診療側は「高い方に低い方を合わせるか、適正評価の観点から現在より高い点数で一本化する」ことを合意の条件としているのに対し、支払側は12月22日に提出した意見書に「診療所を引き下げ、病院を引き上げる形で統一を図るべき」と記載しており、統一の方法や点数の設定については今後議論することとなっていた。なお、足立政務官は12月23日夕方に行われた厚労大臣記者会見においても、「再診料も病院と、診療所を合わせるという中医協の合意もありましたし、再診料が下がるという」と発言している。
また、足立政務官は、再診料を引き下げて得た財源で、不採算の診療科を「手厚く加算すればよい」と述べたと報じられているが、これについても常任理事・中川俊男氏は「特定の診療科が算定できる加算を設けることを示唆しているが、再診料はすべての診療科に共通の技術料・経営コスト。例えば小児科に加算を付けたとしても、小児科診療所でも再診料は下がるため、意味がない。時間外診療を手厚く評価するとの意見も聞かれるが、時間外・救急をしないと経営ができないのは異常。いかに医療の現場を見ていないかは明らか」と批判した。
常任理事・中川俊男氏は、「中医協の中ではいまだ議論の途上で、基本診療料についても十分な議論は尽くされていない。また、足立政務官は外来管理加算についても『選択肢の一つはいらないということ』と廃止に言及し、中医協で合意されていない内容にまで踏み込んでいる。今回の発言は中医協の議論に政治的に介入し、圧力をかけたもので、重大な問題。日本医師会は、こうしたやり方を断じて容認することはできない」と問題視。
また、改定率について「大幅なプラス改定が可能な状況ではなかった」とする発言についても「民主党の公約における『総医療費対GDP比をOECD加盟国平均までの引き上げ』は診療報酬を10%引き上げることに相当する。また足立政務官は診療報酬を『少なくとも3.16%は戻さなくてはいけない』と発言していた。にもかかわらず、この期に及んでこのような発言はいかがなものか。厚生労働省の政務官として、発言の重みを肝に銘じていただきたい」と述べた。
日医は、再診料引き下げについて「診療所の収入の8.5%は再診料。再診料には、医師の技術料のほか、看護職員やコメディカルの人件費、減価償却費、光熱水費、事務経費などが含まれる。再診料の重みの大きい診療所にとって、引き下げは医業経営上きわめて大きな打撃」として強く反対。また、再診料統一については「病院の再診料を引き上げて診療所の点数に統一していく方針に賛成」との方針を示しつつ、現在の点数は病院・診療所いずれも不十分であり、本来はともに引き上げを行うべきであること、一方で2010年度改定の財源が限られていることから、まず今回は病院の点数を引き上げて診療所の水準に近付け、次回以降の改定でより高水準に統一するなど、段階的に統一を図っていくことを提案した。
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ちなみに歯科の再診料はもっと低く、400円である。
これで、医科同様の経費に加え、器具の消毒、紙コップに加え近年では手袋の装着経費もこの中に含まれ、ほとんど何十年も増加していない。
このことを日本歯科医師会や、行政は語っていないことを国民の皆さんに知っていただきたい。
一つ一つの医療行為のコスト計算を行えば、現状の医療がいかに不採算であるかご理解いただける。
2010年1月7日木曜日
日医、産経新聞記事「納税者の視点で見直せ」に厳しく抗議
日医、産経新聞記事「納税者の視点で見直せ」に厳しく抗議
2009年6月17日 村山みのり
6月15日、産経新聞朝刊に掲載された社説「納税者の視点で見直せ--開業医と勤務医の診療報酬配分」に対し、日本医師会は「事実誤認もはなはだしい」として、17日の記者会見で抗議を行った。
当該記事の執筆者である岩崎慶市氏(産経新聞論説副委員長)は、財政制度等審議会の委員を務めている。
常任理事・中川俊男氏は、「日本医師会は、財政審が医療崩壊の現実に目を背け、勤務医と開業医の開業医の対立構造を作り上げたことに憤りを感じており、財政審が恣意的に作り上げたデータで進めている議論の土俵に上がるつもりはない」と前置きしつつ、「何と言って怒りを表したら良いか分からない」と非難。記事中における記述と日医による反論のポイントは以下の通り(カッコ内は記事原文より抜粋。記事概要は文末を参照)。
・「医師の人件費に当たる診療報酬」「医師などの人件費、つまり診療報酬」
診療報酬は医療機関の主たる経営原資であり、医療機関は、医薬品費、材料費、外注費、給与費などを支払う。医療安全のために投資を行う場合には、利益も必要である。 診療報酬イコール医師の人件費ではない。一般企業の売上高がそのまま給与費に直結しないのと同じである。
・「医師会調査でも勤務医が開業医になりたい主な理由は『激務が給料に反映されない』だった」
医師会調査ではなく、中医協の調査*。当該質問の回答数(できれば開業したいと回答した医師に質問)は235人と少なく、うち72人(30.6%)がこう答えている。なお、「診療や経営方針を自分で決めたい」という選択肢はあるが、「理想の医療を追求したい」といった前向きな選択肢はなく、これだけで開業理由を判断できない。
*中医協診療報酬改定結果検証部会「診療報酬改定結果検証に係る特別調査(2008年度調査) 病院勤務医の負担軽減の実態調査報告書」
・「勤務医だって税引き前の数字だし」「借入金についても一般の会計手法とは違っている」
借入金の返済は、会計上は費用ではなく、税法上も経費ではないため、税引き後の所得から支払う。給与所得者は、事業のために借り入れをすることはなく、税引き後の所得から返済することもない。 医師会が勤務医・開業医の年収比較を、税金や借入金返済を差し引いた手取り年収で示すことを問題視するが、一般の会計手法で処理したままでは全く比較できない。
・「開業医は週休2.5日、時間外診療も往診もほとんどせずに」
そのエビデンスを示していただきたい。厚生労働省「医療施設調査(2005年)」によると、診療所は土曜の午前中は72.5%、午後も23.2%が表示診療時間としている。日曜は午前4.5%、午後3.4%。週2.5日、つまり土日丸々と平日半日休むケースは希少であり、もちろん夜間診療も行っている。
・「優遇されすぎた開業医の診療報酬を大胆に削り、その分を不足する勤務医や診療科に配分すれば、診療報酬全体を上げなくても医師不足はかなり是正される」
財政審建議(2009年6月3日)の受け売りであり、本質的な問題のすり替えである。また、基本診療料、入院診療報酬など、診療所・病院の診療報酬の違いを理解せずに開業医が優遇されていると指摘するのは間違いである。
・「中医協はかつて改革が行われ、公益委員や健保団体の代表もいるにはいる。だが、開業医を中心とする医師会の影響力が依然として圧倒的だ」
中医協は会議・議事録がすべて公開される透明な会議である。診療側・支払い側・公益側の委員が議論を展開しており、支払い側・公益側の発言力が弱いかのような表現は大変失礼だ。診療側にしても、様々な団体の委員が参画している。
【参考】産経新聞(2009年6月15日朝刊)
日曜経済講座:納税者の視点で見直せ--開業医と勤務医の診療報酬配分
〔要約〕医師の人件費に当たる診療報酬改定を控え、日本医師会などが医師不足解消を理由に大幅引き上げ論を展開している。
国民医療費は10年後には56兆円に達すると見込まれ、内訳は保険料49%、税金37%、患者負担14%であり、国民負担が急増する。使途の50%は医師などの人件費であり、診療報酬には多額の税金が注ぎ込まれている。同様に税金を財源とする公務員給与が民間準拠であるのに比べ、診療報酬の引き下げ幅ははるかに小さく、前回改定では逆に引き上げられた。民間では急激な景気悪化により、給与削減・雇用不安に直面している中、医師の給与をさらに上げよ、との主張に納税者が納得できるか。
■医師不足の本質は偏在:大義名分である「医師不足解消」も説得力に欠ける。この2年間で医学部定員は1割以上も増員され、医師会が求めていた医師数は確保される。
にも関らず医師不足が解消されないのは、問題の本質が勤務医・開業医、地域、診療科間の偏在であるため。この構造を支えるのが診療報酬のいびつな配分であり、それを大胆に見直さない限り、医師数を増やしても偏在は拡大するだけだろう。
勤務医と開業医の年収格差はデータからも明らか。医師会は税金・借入金返済等を理由に反論しているが、その理屈はサラリーマンには理解しがたい。開業医には定年がなく、週休2.5日、時間外診療も往診もほとんどせずに、この高報酬をずっと維持できる。
■米の報酬体系は真逆:米国でも医師の高報酬が問題となっているが、専門性が高く勤務が厳しい診療科ほど報酬が高い。これが常識だろう。
日本も優遇され過ぎた開業医の診療報酬を大胆に削り、その分を不足する勤務医や診療科に配分すれば、診療報酬全体を上げなくても医師不足は是正される。
それができないのは、配分を決める中医協で開業医を中心とする医師会の影響力が依然として圧倒的であるため。
配分見直しを断行するには、納税者が納得できるような別の機関が中医協を主導する場が必要。
また、医師には教育段階から多額の税金を投入している以上、米国・ドイツのように配置規制も考えるべきだ。
納税者の視点を欠いた護送船団的“医療村”に任せておいては、医師不足解消も国民負担抑制もままならない。
2009年6月17日 村山みのり
6月15日、産経新聞朝刊に掲載された社説「納税者の視点で見直せ--開業医と勤務医の診療報酬配分」に対し、日本医師会は「事実誤認もはなはだしい」として、17日の記者会見で抗議を行った。
当該記事の執筆者である岩崎慶市氏(産経新聞論説副委員長)は、財政制度等審議会の委員を務めている。
常任理事・中川俊男氏は、「日本医師会は、財政審が医療崩壊の現実に目を背け、勤務医と開業医の開業医の対立構造を作り上げたことに憤りを感じており、財政審が恣意的に作り上げたデータで進めている議論の土俵に上がるつもりはない」と前置きしつつ、「何と言って怒りを表したら良いか分からない」と非難。記事中における記述と日医による反論のポイントは以下の通り(カッコ内は記事原文より抜粋。記事概要は文末を参照)。
・「医師の人件費に当たる診療報酬」「医師などの人件費、つまり診療報酬」
診療報酬は医療機関の主たる経営原資であり、医療機関は、医薬品費、材料費、外注費、給与費などを支払う。医療安全のために投資を行う場合には、利益も必要である。 診療報酬イコール医師の人件費ではない。一般企業の売上高がそのまま給与費に直結しないのと同じである。
・「医師会調査でも勤務医が開業医になりたい主な理由は『激務が給料に反映されない』だった」
医師会調査ではなく、中医協の調査*。当該質問の回答数(できれば開業したいと回答した医師に質問)は235人と少なく、うち72人(30.6%)がこう答えている。なお、「診療や経営方針を自分で決めたい」という選択肢はあるが、「理想の医療を追求したい」といった前向きな選択肢はなく、これだけで開業理由を判断できない。
*中医協診療報酬改定結果検証部会「診療報酬改定結果検証に係る特別調査(2008年度調査) 病院勤務医の負担軽減の実態調査報告書」
・「勤務医だって税引き前の数字だし」「借入金についても一般の会計手法とは違っている」
借入金の返済は、会計上は費用ではなく、税法上も経費ではないため、税引き後の所得から支払う。給与所得者は、事業のために借り入れをすることはなく、税引き後の所得から返済することもない。 医師会が勤務医・開業医の年収比較を、税金や借入金返済を差し引いた手取り年収で示すことを問題視するが、一般の会計手法で処理したままでは全く比較できない。
・「開業医は週休2.5日、時間外診療も往診もほとんどせずに」
そのエビデンスを示していただきたい。厚生労働省「医療施設調査(2005年)」によると、診療所は土曜の午前中は72.5%、午後も23.2%が表示診療時間としている。日曜は午前4.5%、午後3.4%。週2.5日、つまり土日丸々と平日半日休むケースは希少であり、もちろん夜間診療も行っている。
・「優遇されすぎた開業医の診療報酬を大胆に削り、その分を不足する勤務医や診療科に配分すれば、診療報酬全体を上げなくても医師不足はかなり是正される」
財政審建議(2009年6月3日)の受け売りであり、本質的な問題のすり替えである。また、基本診療料、入院診療報酬など、診療所・病院の診療報酬の違いを理解せずに開業医が優遇されていると指摘するのは間違いである。
・「中医協はかつて改革が行われ、公益委員や健保団体の代表もいるにはいる。だが、開業医を中心とする医師会の影響力が依然として圧倒的だ」
中医協は会議・議事録がすべて公開される透明な会議である。診療側・支払い側・公益側の委員が議論を展開しており、支払い側・公益側の発言力が弱いかのような表現は大変失礼だ。診療側にしても、様々な団体の委員が参画している。
【参考】産経新聞(2009年6月15日朝刊)
日曜経済講座:納税者の視点で見直せ--開業医と勤務医の診療報酬配分
〔要約〕医師の人件費に当たる診療報酬改定を控え、日本医師会などが医師不足解消を理由に大幅引き上げ論を展開している。
国民医療費は10年後には56兆円に達すると見込まれ、内訳は保険料49%、税金37%、患者負担14%であり、国民負担が急増する。使途の50%は医師などの人件費であり、診療報酬には多額の税金が注ぎ込まれている。同様に税金を財源とする公務員給与が民間準拠であるのに比べ、診療報酬の引き下げ幅ははるかに小さく、前回改定では逆に引き上げられた。民間では急激な景気悪化により、給与削減・雇用不安に直面している中、医師の給与をさらに上げよ、との主張に納税者が納得できるか。
■医師不足の本質は偏在:大義名分である「医師不足解消」も説得力に欠ける。この2年間で医学部定員は1割以上も増員され、医師会が求めていた医師数は確保される。
にも関らず医師不足が解消されないのは、問題の本質が勤務医・開業医、地域、診療科間の偏在であるため。この構造を支えるのが診療報酬のいびつな配分であり、それを大胆に見直さない限り、医師数を増やしても偏在は拡大するだけだろう。
勤務医と開業医の年収格差はデータからも明らか。医師会は税金・借入金返済等を理由に反論しているが、その理屈はサラリーマンには理解しがたい。開業医には定年がなく、週休2.5日、時間外診療も往診もほとんどせずに、この高報酬をずっと維持できる。
■米の報酬体系は真逆:米国でも医師の高報酬が問題となっているが、専門性が高く勤務が厳しい診療科ほど報酬が高い。これが常識だろう。
日本も優遇され過ぎた開業医の診療報酬を大胆に削り、その分を不足する勤務医や診療科に配分すれば、診療報酬全体を上げなくても医師不足は是正される。
それができないのは、配分を決める中医協で開業医を中心とする医師会の影響力が依然として圧倒的であるため。
配分見直しを断行するには、納税者が納得できるような別の機関が中医協を主導する場が必要。
また、医師には教育段階から多額の税金を投入している以上、米国・ドイツのように配置規制も考えるべきだ。
納税者の視点を欠いた護送船団的“医療村”に任せておいては、医師不足解消も国民負担抑制もままならない。
近畿厚生局が事務処理の不手際で、集団的個別指導の対象を誤通知
「前代未聞のミス」、大阪府医師会が近畿厚生局に抗議
近畿厚生局が事務処理の不手際で、集団的個別指導の対象を誤通知
2009年8月19日 橋本佳子
「前代未聞のミス。集団的個別指導の通知を受け取った医療機関は非常に不安に思い、プレッシャーを感じただろう。本来なら、慎重を期して事前にチェックして、通知を送付すべきなのに、それを怠った」。こう指摘し、近畿厚生局の対応を問題視するのは、大阪府医師会理事の山本時彦氏だ。
近畿厚生局は7月27日、今年度の集団的個別指導に関する通知を大阪府の643施設に送付。ところが、その半数以上の351施設が同局の事務処理上の選定ミスで、本来対象でない施設にも誤って通知されるという事態が起こった。
その直後から、府医師会には会員から「高点数でないのに、なぜ指導の対象になるのか」など問い合わせが寄せられた一方、近畿厚生局にも電話が入るなどして、選定ミスが発覚。8月4日に、近畿厚生局が府医師会に事情を説明、翌5日に近畿厚生局がお詫びの連絡を医療機関に送付した。8月7日に府医師会は、原因究明とその公表などを求める抗議文を近畿厚生局に送付したが、「これに対する回答は現時点(8月18日の取材時点)ではない」(山本氏)という。
選定ミスがなかった医療機関に対しては、既に集団的個別指導が開始している。再計算し、集団的個別指導の対象を追加するかどうかは現時点では未定だ。
「内科の場合、約9割に選定ミスがあった。しかも、近畿厚生局が4日に府医師会に説明に来た際には、事務的な処理作業上の人為的なミスと説明していたが、5日の医療機関への説明文には、『対象医療機関を選定する過程において、使用したデータの一部に不具合が生じていることが確認された』とあり、コンピュータのシステムの不都合によるものと受け取れるようで内容で、説明にも食い違いがある」と山本氏は信感を募らせる。
厚生局への業務移管に伴い、「大阪ルール」も廃止
集団的個別指導とは、「指導大綱」に基づく行政指導の一形態。レセプト1件当たりの平均点数が、類型区分ごと(病院4区分、診療所11区分)の都道府県別の平均点数の一定割合(病院1.1倍、診療所1.2倍)を超える施設を対象に実施される。前年度と前々年度に集団的個別指導または個別指導を受けた施設は対象外となることから、おおむね上位約8%の医療機関が対象になる。2008年10月に社会保険事務局から地方厚生局に業務が移管された。
大阪府では従来、診療所(約8000)、病院(約550)と医療機関数が多いことから、上位約8%ではなく、上位約4%としていたほか、府医師会が年1回各地区医師会で実施する「社会保険指導講習会」の参加者は、集団的個別指導の対象に選定されても、その受講が任意になるとしていた。こうしたやり方は、「大阪ルール」とも呼ばれていた。
「指導は、本来、適切な保険診療を行うために教育的観点から実施するもの。決して医療機関を甘やかすのではなく、指導すべきことは指導するという府医師会のスタンスだ。長年、社会保険事務局と府医師会は協同して指導に取り組んできた。ところが近畿厚生局への業務移管に伴い、この大阪ルールはなくなり、地域の実情や経緯が無視されてしまった」と山本氏は指摘する。集団的個別指導は対象数が多いことから、本来、実施すべき個別指導が滞る場合もあるという。
昨秋以降、府医師会は近畿厚生局と何度か協議の場を持ったが、「近畿厚生局は自分たちで実施する、の一点張りだった」(山本氏)。その矢先の不手際だっただけに、府医師会の近畿厚生局の不信感は高まった。
集団的個別指導の対象は、その前年の医療機関別のレセプトの平均点数を基に決定される。支払基金と国保連合会のレセプトデータは別であるため、平均点数算出の際には両者のデータを合わせる必要があるが、ミスが生じたのはこの作業時だったようだ。
そのほか、(1)従来は類型区分ごと平均点数が公表されたが、今年度から公表されず、(2)指導を行う会場も医師会館から公共の会議場に変更、など、近畿厚生局への業務移管に伴い、変更された点は多い。「個別指導についても、その理由などを聞くなど情報交換を行い、社会保険指導講習会の指導内容を検討するなどしていたが、それもできなくなった」(山本氏)。
そもそも、大阪府医師会では、以前から集団的個別指導には意味がなく、指導大綱を見直し、撤廃すべきだと働きかけている。
「集団的個別指導の場合、2年連続、高点数が続けば、個別指導の対象になる。個別指導になれば、医療機関の心理的ストレスはより高まる。そもそもレセプトの平均点数は診療内容・形態などによって異なるものであり、単に点数が高いからと言って、即、請求に問題があるわけではない。点数の高さではなく、その請求の中身を問題視すべきだが、行政は、単に個別指導につなげたいために、実施しているにすぎない」(山本氏)
近畿厚生局が事務処理の不手際で、集団的個別指導の対象を誤通知
2009年8月19日 橋本佳子
「前代未聞のミス。集団的個別指導の通知を受け取った医療機関は非常に不安に思い、プレッシャーを感じただろう。本来なら、慎重を期して事前にチェックして、通知を送付すべきなのに、それを怠った」。こう指摘し、近畿厚生局の対応を問題視するのは、大阪府医師会理事の山本時彦氏だ。
近畿厚生局は7月27日、今年度の集団的個別指導に関する通知を大阪府の643施設に送付。ところが、その半数以上の351施設が同局の事務処理上の選定ミスで、本来対象でない施設にも誤って通知されるという事態が起こった。
その直後から、府医師会には会員から「高点数でないのに、なぜ指導の対象になるのか」など問い合わせが寄せられた一方、近畿厚生局にも電話が入るなどして、選定ミスが発覚。8月4日に、近畿厚生局が府医師会に事情を説明、翌5日に近畿厚生局がお詫びの連絡を医療機関に送付した。8月7日に府医師会は、原因究明とその公表などを求める抗議文を近畿厚生局に送付したが、「これに対する回答は現時点(8月18日の取材時点)ではない」(山本氏)という。
選定ミスがなかった医療機関に対しては、既に集団的個別指導が開始している。再計算し、集団的個別指導の対象を追加するかどうかは現時点では未定だ。
「内科の場合、約9割に選定ミスがあった。しかも、近畿厚生局が4日に府医師会に説明に来た際には、事務的な処理作業上の人為的なミスと説明していたが、5日の医療機関への説明文には、『対象医療機関を選定する過程において、使用したデータの一部に不具合が生じていることが確認された』とあり、コンピュータのシステムの不都合によるものと受け取れるようで内容で、説明にも食い違いがある」と山本氏は信感を募らせる。
厚生局への業務移管に伴い、「大阪ルール」も廃止
集団的個別指導とは、「指導大綱」に基づく行政指導の一形態。レセプト1件当たりの平均点数が、類型区分ごと(病院4区分、診療所11区分)の都道府県別の平均点数の一定割合(病院1.1倍、診療所1.2倍)を超える施設を対象に実施される。前年度と前々年度に集団的個別指導または個別指導を受けた施設は対象外となることから、おおむね上位約8%の医療機関が対象になる。2008年10月に社会保険事務局から地方厚生局に業務が移管された。
大阪府では従来、診療所(約8000)、病院(約550)と医療機関数が多いことから、上位約8%ではなく、上位約4%としていたほか、府医師会が年1回各地区医師会で実施する「社会保険指導講習会」の参加者は、集団的個別指導の対象に選定されても、その受講が任意になるとしていた。こうしたやり方は、「大阪ルール」とも呼ばれていた。
「指導は、本来、適切な保険診療を行うために教育的観点から実施するもの。決して医療機関を甘やかすのではなく、指導すべきことは指導するという府医師会のスタンスだ。長年、社会保険事務局と府医師会は協同して指導に取り組んできた。ところが近畿厚生局への業務移管に伴い、この大阪ルールはなくなり、地域の実情や経緯が無視されてしまった」と山本氏は指摘する。集団的個別指導は対象数が多いことから、本来、実施すべき個別指導が滞る場合もあるという。
昨秋以降、府医師会は近畿厚生局と何度か協議の場を持ったが、「近畿厚生局は自分たちで実施する、の一点張りだった」(山本氏)。その矢先の不手際だっただけに、府医師会の近畿厚生局の不信感は高まった。
集団的個別指導の対象は、その前年の医療機関別のレセプトの平均点数を基に決定される。支払基金と国保連合会のレセプトデータは別であるため、平均点数算出の際には両者のデータを合わせる必要があるが、ミスが生じたのはこの作業時だったようだ。
そのほか、(1)従来は類型区分ごと平均点数が公表されたが、今年度から公表されず、(2)指導を行う会場も医師会館から公共の会議場に変更、など、近畿厚生局への業務移管に伴い、変更された点は多い。「個別指導についても、その理由などを聞くなど情報交換を行い、社会保険指導講習会の指導内容を検討するなどしていたが、それもできなくなった」(山本氏)。
そもそも、大阪府医師会では、以前から集団的個別指導には意味がなく、指導大綱を見直し、撤廃すべきだと働きかけている。
「集団的個別指導の場合、2年連続、高点数が続けば、個別指導の対象になる。個別指導になれば、医療機関の心理的ストレスはより高まる。そもそもレセプトの平均点数は診療内容・形態などによって異なるものであり、単に点数が高いからと言って、即、請求に問題があるわけではない。点数の高さではなく、その請求の中身を問題視すべきだが、行政は、単に個別指導につなげたいために、実施しているにすぎない」(山本氏)
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