2010年1月6日 提供:共同通信社
自閉症の人の脳の中では、神経から神経に情報を伝える化学物質を回収し再利用するタンパク質「セロトニン・トランスポーター」が少なく、神経機能が低下していることを初めて確かめたと、浜松医大の森則夫(もり・のりお)教授らが5日、都内で発表した。
この化学物質「セロトニン」は感情、睡眠、食欲、不安などに関係するとされる。森教授は「セロトニン・トランスポーターという、予防や治療に役立つ具体的な標的を提示できた。研究が大きく進むだろう」と話している。
森教授らは、知的障害がない「高機能自閉症」の18~26歳の男性20人について、陽電子断層撮影法(PET)でセロトニン・トランスポーターの分布を調査。
すると脳全体で、健常者より密度が低いことが判明。自閉症の症状との関係を分析すると、帯状回という部位での密度低下は「相手の気持ちを読めない」という症状と、視床での低下は強迫症状と関係があることが分かったという。
これまで、自閉症の人の一部でセロトニンの血液中の濃度が高く、自閉症との関連が指摘されていた。
グループの辻井正次(つじい・まさつぐ)中京大教授(発達臨床心理学)は「自閉症は育て方の問題ではなく、明確な脳の障害があることが見いだされた。障害を前提に、社会に適応して生きられるようサポートしていくことが大事だ」と話している。