2026年7月1日水曜日

怖畏ある時には空観せよ

怖畏ある時には空観せよ。
秘蔵記

あなたの心が恐怖につつまれたときには、
「あらゆるものはことごとく 因縁によって生じたものであって、 永遠不変のものはない」
ということを、一つひとつ丁寧に瞑想しなさい。

空海 人生の言葉
川辺 秀美 (著)
ディスカヴァー・トゥエンティワン (2010/12/11)
心について一一

空海 人生の言葉 (偉人の名言集) (ディスカヴァー携書)

空海 人生の言葉 (偉人の名言集) (ディスカヴァー携書)

  • 作者: 川辺秀美
  • 出版社/メーカー: ディスカヴァー・トゥエンティワン
  • 発売日: 2014/10/16
  • メディア: 新書





P17
 もし何かを恐れているなら、他の人々もあなたと同様、何かに対して恐怖心をもったことを思い出して頂きたい。
多分この本を読んでいる瞬間にも、あなたは恐怖心のとりこになっているだろう。 何が起こったかちゃんと分かっているし、思ったほど大したことでもなかったから。しかし、未来は一寸先も分からない!未来の恐怖とたたかう方法は簡単である。
「なぜ恐ろしいのか」という理由を一つ一つ考えてみれば、こわさも薄れてくる。最悪の事態がどのていどのものか分かれば、こわがることもなくなる。
あなたはつぶやくだろう。「なんだ、あれくらいの事など!」
P21
 恐怖心を克服する缺唇をしさえすれば、たいていの恐怖は克服できる。
恐怖は人の心の中にしか存在しないからだ。
デール・カーネギー

カーネギー名言集 ハンディーカーネギー・ベスト (3)
ドロシー カーネギー (著)
創元社 (1986/11)

 

ハンディーカーネギー・ベスト (3冊セット)

ハンディーカーネギー・ベスト (3冊セット)

  • 出版社/メーカー: 創元社
  • 発売日: 1986/11/01
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)


大分県 九重連山

自己決定理論

P109
 デジとライアンは共同で、「自己決定理論(STD)」を構築した。
~中略~
STDはこれ(住人注;行動理論の多く)とは対照的に、普遍的な人間の願望を起点とする。人間には生来、(能力を発揮したいという)有能感、(自分でやりたいという)自律性、(人々と関連を持ちたいという)関係性という三つの心理的要求が備わっている。この要求が満たされているとく、わたしたちは動機づけられ、生産的になり、幸福に感じる。
~中略~

すなわち、人間は本来「自律性を発揮し、自己決定し、お互いにつながりたいという欲求」を備えている。その欲求が解き放たれたとき、人は多くを達成し、いっそう豊かな人生を送ることができる、というものだ。

P154
自律性
 過去100年を振り返り、その間に活躍した有名な芸術家とその仕事ぶりに思いをめぐらせてもらいたい―たとえば、パブロ・ピカソ、ジョージア・オキーフ、ジャクソン・ポロックなど。一般の人とは異なり、<モチベーション2.0>は彼らのOSではなかった。

この芸術家たちに対して、誰もこんなことは言わなかったはずだ。
このような種類の絵を描かなくてはいけない。午前八時半きっかりに絵を描きはじめなくてはいけない。わたしたちが選んだ人と一緒に絵を制作する必要がある。こんな感じの絵を描くべきだ。
まったくばかばかしい話だ。

モチベーション3.0 持続する「やる気!」をいかに引き出すか
ダニエル・ピンク (著), 大前 研一 (翻訳)
講談社 (2010/7/7)

モチベーション3.0 持続する「やる気!」をいかに引き出すか

モチベーション3.0 持続する「やる気!」をいかに引き出すか

  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2010/07/07
  • メディア: 単行本

アドラーと一時期一緒に仕事をしていたヴィクトール・フランクルは次のようにいっています(「宿命を越えて、自己を越えて」春秋社)。 環境や教育、また素質ではなく自分が自分を決める。
人間であるということは、このあり方しかできない、他のあり方ができない(住人注;環境や素質、運命にある)ということでは決してなく、
人間であるということは、いつでも、他のあり方ができる(住人注;可能性と、選択権がある)ということなのである、と。これはまさにアドラーがいっていることです。

アドラー心理学入門―よりよい人間関係のために
岸見 一郎 (著)
KKベストセラーズ (1999/09)
P137 

アドラー心理学入門―よりよい人間関係のために (ベスト新書)

アドラー心理学入門―よりよい人間関係のために (ベスト新書)

  • 作者: 岸見 一郎
  • 出版社/メーカー: ベストセラーズ
  • 発売日: 1999/09/15
  • メディア: 新書
大分県 九重連山

あきらめないのが美徳と思っている日本人

小野寺(住人注; 小野寺時夫) 前略~ がんは発生したときから運命が決まっているといってよく、手術してもダメなものはダメ、手術をしなくてものんびりタイプは長生きするといくことです。
~中略~
近藤(住人注; 近藤誠) 医師としてやれるだけのことをやろう、という使命感は、なかなかやっかいですね。
小野寺 そうなんです。「がんが進行しているけど、最善を尽くす」という医者の言動が、外科手術でも化学療法でも、得てして最悪の結果を生んでいます。
~中略~
小野寺 私がいるホスピスに送られてくる患者には、化学療法で心身ともボロボロになり、余命わずかの状態という人が多数います。
「患者をこんなに苦しませるだけの無益な治療をした医師は、よほど非常識で、人格的に問題があるのではないか」と思うことがあります。 ところが、当の医師にたまたま会う機会があると、誠実そうで、「熱心な努力家」として評判だったりするんです。
~中略~
小野寺 医者は「あきらめないでなんでもやることが最善」だと思いこみ、患者側も「最後まであきらめず、なにかしてくれる医者がいい」ってカン違いして医者に頼るわけです。
近藤 万にひとつも治る可能性はなく、「固形がんは放置するに限る。それがいちばん苦しまずに長生きできる」という証拠をどれだけ見せられても、日本人はなかなか「治療しない」ことに耐えられない。 「治療はやるもの」と思いこんでいるから。

別冊宝島2000号「がん治療」のウソ
別冊宝島編集部 (編集)
宝島社 (2013/4/22)
P34

別冊宝島2000号「がん治療」のウソ (別冊宝島 2000)

別冊宝島2000号「がん治療」のウソ (別冊宝島 2000)

  • 出版社/メーカー: 宝島社
  • 発売日: 2013/04/22
  • メディア: 大型本

 幸福への道はただ一つしかない。それは意志の力でどうにもならない物事は悩んだりしないことである。
エピクテートス

カーネギー名言集 ハンディーカーネギー・ベスト (3)
ドロシー カーネギー (著)
創元社 (1986/11)
P72

 積極的な治療法がない旨を伝えるのはきわめて難しい。もちろんこちらの伝え方もよしあしはあろう。しかしながら、一定の割合で「聞く耳もたない」人はいる。
患者本人はくたびれていても、周囲が無責任に叱咤激励して無理やり引っ張り出すことも極めて多い。
この新聞に、あの週刊誌に書いてあったじゃないか。余命三ヶ月と言われても、奇跡的に良くなった人もいる、諦めないことが肝腎だと。
今の医者はそんなことは非現実的だなどとほざくが、そんなことはない、どこかにあるはずだ、あるに違いない。希望を挫くようなことを言うな。そんなこと言う奴は信用できないに決まっている。
 そうだそうだと言う連中も世の中にはいる、というよりうじゃうじゃいる。この治療法で、薬で、免疫で、温熱で、ただしこれこれの金がかかる・・・・。

偽善の医療
里見 清一(著)
新潮社 (2009/03)
P166

偽善の医療 (新潮新書 306)

偽善の医療 (新潮新書 306)

  • 作者: 里見 清一
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 2009/03/01
  • メディア: 新書

由布岳 大分県

嫉妬することすら諦めた若者

 もしいまの若者たちがきたやまし氏(住人注;きたやまおさむ)の推測(住人注;「実際はイチローとか何かに嫉妬している」のに「嫉妬しているのをどこかで感じたくないという意識が働いて、「イチローなんか別に羨ましくないよ」と言っている」) とは違って、「本当に嫉妬しない人たち」だとしたら、彼らは昔に比べてより心が広くなったと考えて、その素直さを手放しで肯定してよいのだろうか。
 きたやま氏も先の本(住人注;「帰れないヨッパライたちへ―生きるための深層心理学 (NHK出版新書 384) 」 )の中で、「嫉妬」はいろいろなトラブルの原因になると同時に、時として自分の成長を妨げることもある、とそのデメリットを指摘している。しかし、一方で、嫉妬は「私たちの閉塞感を生み出す原因になっていると同時に、それを打ち破り、創造的なものを生み出すエネルギーの源にもなる」とも言っているのだ。 自分と同世代で活躍している作家、スポーツ選手などに「わー、すごい!」「マジでリスペクトします」と嫉妬することもなく、拍手を惜しまない若者たちは、ドロドロ、イライラもないかわりに、その閉塞感を打ち破る必要性も感じないのではないだろうか。
あるいは逆に最初から活躍している人、才能に恵まれている人と自分のあいだに「壁」をもうけることで、自分たちが置かれているあまりに不安いっぱいの状況を見ずにすませようとしているのかもしれない。

P69
 では、彼らは自分のコンプレックスとどうやってつき合おうとするのだろうか。
 学生たちに聞くと、いちばん多いのは「そういう自分を”これでいいんだ”と受け入れる」「自分なりの良さを認める」という声だ。
 つまり、無理せずに欠点があるままの自分をそっと認め、「何としても自分をよく見せよう」などとは考えない。まして、「他人を利用し、他人を自分の”信者”にしたてあげることで、自信を回復させたい」などとは思わない。
 しかし、コンプレックスがあるがままの自分を受け入れる、というのは言うほど簡単なことではない。

若者のホンネ 平成生まれは何を考えているのか
香山リカ (著)
朝日新聞出版 (2012/12/13)
P63

若者のホンネ 平成生まれは何を考えているのか (朝日新書)

若者のホンネ 平成生まれは何を考えているのか (朝日新書)

  • 作者: 香山 リカ
  • 出版社/メーカー: 朝日新聞出版
  • 発売日: 2013/02/27
  • メディア: Kindle版

 

禅定寺 京都府

精神科治療

P8
  脳科学とは、脳が様々な物質からなる臓器の一つにすぎないという事実に注目し、まず解剖学的構造を知り、さらに生化学的・生理学的に機能を捉えるなら脳というものが分かるとする、人間機械論的な見方に立脚した学問である。
脳科学でいう構造とは、具体的にシナプス(神経細胞同士の接合部)や神経化学物質のレセプター(受容体)といったものを指していると考えられる。
向精神薬の薬理作用についての説明は、もっぱらこれに終始する。たとえば、ドーパミンが増えすぎるから精神分裂病(統合失調症)にあるとか、セロトニンが不足するからうつ病になるといった仮説がそうである。
この説明は一見因果関係が明瞭なだけに、大きな説得力を持つ。
 しかし実際に臨床に携わる私を含めた一定数の精神科医たちは、この明晰なはずの薬理学的説明にしばしば違和感ととまどいを覚えている。
それは精神科臨床(のみならず他科でも実はそうであろう)では、患者に生じる現象(すなわち精神症状)と薬物によってもたらされるはずの効果が、非常に複雑で、精神科医にとっても予想がかなり困難なことが多いからである。

P10
 精神病理学で構造という場合、脳科学で説明される構造とは質的に異なるもので、治療者や患者の間主観性を基盤とした、物質としては捉えられないものを指す。これは精神構造と呼ばれるものである。これを、心の構造と言いかえてもいいだろう。
~中略~
たとえば同一の人間の存在の仕方について、脳科学的構造と精神構造というそれぞれまったく別の様式の構造で説明をつけることができる。すなわち双方の構造説明は、同一人物の中で同時に成立しうるものだといえる。
ただ、一人の人間に起こる一現症を双方の構造で説明しようとする時、それぞれの説明を具体的に照らし合わせることは困難であり、時には不可能ですらある。
~中略~
それらはいずれも<構造>そのものではなく、<構造>があある方向によって映し出された「像」である。

P12
先に私は、位相が異なる異なるはずの二つの治療法(薬物療法と精神療法)が、一人の患者に混合して施行され、ハーモニーを形成していることに衝撃を受けたと述べた。そしておそらく他の多くの治療者も、同じ感じにとらわれたことがあるはずである。
しかし大抵の場合、この衝撃は不問に付せられたまま、各々の治療者のキャリアが積み重ねられてゆくことになる。
 実はこの衝撃は、臨床の初心者の潜在意識にある影響をもたらしている。たとえば、患者がよくなりさえすれば、どんな方法論を援用することも是とする考え方がそうである。現に先にあげた薬物療法・精神療法のみならず、集団療法、家族療法といった多数者を介したものや芸術療法、その他さまざまな位相の異なったものが、同時並行的に実施されることはまれではない。
これだけ多くのパラメーター(媒介変数)が存在すると、後にもたらされる結果が何にもとづくものなのか検証するのが容易ではない。つまり治療状況をコントロールするのに多大な困難が伴うはずである。しかしこれらを行うに際し、現在の治療者にそれほどの覚悟があるようでもない。
 もとはといえば、精神科で歴史的に形作られてきた治療観が、これらの事態の基底にあるように思われる。精神科では長らく不治と見なされ、悲観的に予後が語られる患者が多くいた。~中略~
精神科薬物療法に多剤併用傾向が見られるのも、同じ流れからきていると思われる。
~中略~
これまでの精神科臨床はEBMは水と油であった。しかし精神科臨床の現場は、またしても位相の全く異なるEBMの取り込みを行なおうとしている。EBMが取り込まれていった後の精神科臨床はどのようになってゆくのだろうか。

P80
第二章で書いたように、「物語」こそが精神科治療が実現する根拠となるものであり、精神科治療者の専門性のおおもとは、「物語」作成のすべてにあるといってもよいであろう。すなわち、「物語」作成の能力こそが、精神科治療者のアイデンティティだと言うこともできる。それに対し身体科では、臨床検査を主とするさまざまな他覚所見(治療者などの第三者が行なう、患者の身体についての見立て)の読み方が診療根拠である。 身体科治療者にとって、アイデンティティはそこにある。

精神科医になる―患者を“わかる”ということ
熊木 徹夫 (著)
中央公論新社 (2004/05)

精神科医になる 患者を〈わかる〉ということ (中公新書)

精神科医になる 患者を〈わかる〉ということ (中公新書)

  • 作者: 熊木徹夫
  • 出版社/メーカー: 中央公論新社
  • 発売日: 2020/03/13
  • メディア: Kindle版

 精神分析的な心の治療を受けたことのある人は、日本ではまだ少ないでしょう。心の病を治すサイコセラピー(精神科医は精神療法と呼び、臨床心理士は心理療法と呼びます)にはさまざまな種類がありますが、通常のカウンセリングを行う臨床心理士などと比べると、日本では精神分析家そのものの数があまり多くありません。
 その要因の一つは、大学医学部の意識の低さです。
 文系中心の臨床心理士と違って、精神分析家の多くは基本的に医学部出身の医師。しかし、日本の精神医学は薬物治療を中心とする生物学的精神医学が優勢で、精神療法のひとつである精神分析には熱心ではありません。
 その証拠に、医学部の精神科の主任教授は、およそ九割が生物学的精神医学の専門家。
そのため大学の講義では、統合失調症やうつ病などを引き起こす脳のメカニズムや、それに対する薬物治療の話が大半を占めることになり、医学生がまともに精神分析を学ぶ時間がほとんどないのです。

自分が「自分」でいられる コフート心理学入門
和田 秀樹 (著)
青春出版社 (2015/4/16)
P16

自分が「自分」でいられる コフート心理学入門 (青春新書インテリジェンス)

自分が「自分」でいられる コフート心理学入門 (青春新書インテリジェンス)

  • 作者: 和田 秀樹
  • 出版社/メーカー: 青春出版社
  • 発売日: 2015/04/16
  • メディア: 新書
京都府 浄瑠璃寺

フロイトの精神分析

 P18
精神分析と聞けば、誰よりもまずジグムント・フロイトの名を思い出す人が大半だと思います。~中略~
 また、もともとはフロイトの共同研究者で、のちに、袂を分かって独自の心理学を築きあげたカール・ユングも、日本では人気があります。
~中略~
 この二人の名前が日本で有名なのは、国内の専門家の多くが、フロイトやユングを高く評価しているからでしょう。先ほど「古い理論」といったのは、まさにフロイトとユングの心理学のことです。
 とくにフロイト理論の信奉者は多く、学会で新しい精神分析理論について発表すると、彼らから反発を受けることが少なくありません。
「フロイトはそんなこといっていない!」
 と、大変な剣幕で怒り出す学者もいるぐらいです。

P20
 しかし、ユングやアドラーがそうだったように、フロイトの精神分析に限界や反発を感じて、そこから離れていった研究者がたくさんいるのも事実。それによって精神分析の世界は幅が広がり、さまざまな理論や手法が生み出されてきたのですから、いつまでもフロイト理論だけにしがみついていたのでは、この分野を発展させることはできません。
 そして、本書の主人公であるコフートも、もともとはフロイトの弟子的な立場の人でした。それも、一時はフロイト学派の「優等生」と呼ばれたほどの存在です。当初はフロイトのことを心から尊敬し、その理論に心酔していました。

P28
フロイトは当初、人間の心の世界が「意識・前意識・無意識」の三層構造になっていると考えました。その中で、心の病気の原因となる傷や葛藤は、患者自身にはまったくわからない「無意識」の領域にある。それを「意識」のレベルまで引き上げなければ、症状は良くならないと考えました。
 無意識の世界を見ることはできませんが、それをうかがい知るためのヒントはあります。
フロイトは、無意識にある傷や葛藤が形を変えて「前意識」に浮かび上がり、それが睡眠中の夢やリラックス状態の自由連想に姿を現すと考えました。
~中略~
このように心の世界を三層構造で考えるフロイトの理論を「局所論モデル」といいます。
 しかしフロイトはその後、大胆なモデルチェンジを行いました。

P31
 フロイトはそういうことも含めて「構造論モデル」と呼ばれる理論を考え出しました。
 局所論とは違い、こちらでは人間の心が「エス・自我・超自我」の三つで構成されていると考えます。
 エスとは、性欲や攻撃性なおの動物的な本能のこと。それが暴れないようにコントロールする理性のようなものが、自我です。
自我が弱い人は、本能的な欲動が野放しになってしまいます。
 では、超自我とは何か。こちらは、親から植え付けられた無意識の道徳観や価値観などのことです。これが心の中で、エスや自我に向かって「そんなことをしてはいけない」「そんな人間になってはダメだ」などといった禁止命令を出しているとフロイトは考えました。
 したがって、これが強すぎても、心のバランスは取れません。しかも無意識で禁止命令を出すので、うつになったり、身体の苦しみのような形で現れます。性欲を抑圧して神経症になる女性も、この超自我が強すぎることが病気の一因だといえるでしょう。
 それを食い止めるには、自我が重要な役割を果たします。自我は、エスをコントロールするだけでなく、超自我の感情な禁止命令とも戦わなければいけません。

P34
フロイトのは決して「万能」ではありません。あらゆる心の病を治せるわけではなく、治療対象は基本的に「神経症レベル」の患者だけでした。
~中略~
 神経症患者は薬に奪われ、精神病は治せないとなると、残るのはボーダーラインだけになります。精神分析が生き残るには、これに対する有効な知慮法を生み出さなければいけません。

 しかし、ボーダーラインも精神病ほどではないにしろ、フロイトの精神分析ではあまり良くならないことがわかっていました。

自分が「自分」でいられる コフート心理学入門
和田 秀樹 (著)
青春出版社 (2015/4/16)

自分が「自分」でいられる コフート心理学入門 (青春新書インテリジェンス)

自分が「自分」でいられる コフート心理学入門 (青春新書インテリジェンス)

  • 作者: 和田 秀樹
  • 出版社/メーカー: 青春出版社
  • 発売日: 2015/04/16
  • メディア: 新書

京都府 神護寺

自己愛性パーソナリティ障害

P58
自己愛を満たそうとすること自体は、少しも不健康な状態ではありません。
問題は、大人になっても「未熟な自己愛」を抱えている人です。
 そういう人は、他人を愛することの大切さを知らないので、他人も自分の自己愛をなかなか満たしてくれません。すると自己愛が傷つくので、自分を相手にしてくれない他人を恨んだりすることもあるでしょう。
 それが病的なレベルにまで達したのが、「自己愛性パーソナリティ障害」にほかなりません。この患者は、あまりにも自己愛が傷つきやすいため、まともな人間関係を築きにくくなります。

P59
では、自己愛性パーソナリティ障害には、どんな治療が有効なのでしょう。
 フロイトの自我心理学では治療対象になっていませんが、もし、その「外科医モデル」で対応するとしたら、分析家が患者の心のあり方を「解釈」してやることになるでしょう。
「あなたは自我が未熟だから、自己愛が子供のように傷つきやすいのです」
 というわけです。
これでは、「あなたは大人になりきれていない」と批判されるようなものですから、自己愛性パーソナリティ障害の患者は分析によって自己愛が傷つき、その場で症状が出てしまうかもしれません。
分析家が悪意を持って自分を攻撃していると感じ、はげしく反発する可能性があるのです。~中略~
 そうなると、治療を継続することもできません。「だから自我を鍛え直しなさい」などといわれても、ますます自己愛が傷ついて反発するばかりです。

P61
 傷ついた自己愛を癒やすのに必要なのも、まずは共感でしょう。自分が「すごい」「すばらしい」と思っていることを他人にも認めてもらえたときに、自己愛は満たされます。
成長過程の子供が自信を身につけることができるのも、親に「あなたはすごい」「間違っていない」と褒められたり勇気づけられたりするからでするからです。
 逆に、幼少期にそのような経験が少ないと、大人になってからも自己愛が成熟しません。それが自己愛性パーソナリティー障害を生むひとつの要因だろうとコフートは考えました。
 ならば、分析家の役割は「親」の代わりに患者の心を育て直すことです。
患者に共感を示し、褒めたり勇気づけたりすることで、まずは傷ついた自己愛を満たしてやる。

自分が「自分」でいられる コフート心理学入門
和田 秀樹 (著)
青春出版社 (2015/4/16)

京都府 神護寺