2026年7月23日木曜日

自然治癒力

P062
 今、話していることは精神科に限らないのね。医療全般にそういうことが言えます。
生体は驚くほどの許容力を持っていますけれども、しかし必ず限界がある。それを超えれば、失調します。そして、その許容力には個人差がある。生まれつきの個人差があります。
 そして脳を含む、「身体」と言われている部分には自然治癒力がある。自然治癒力は復元力です。

P064
自然治癒力によって治療が進んでいくのだという考えを大事にすると、たとえばこういうことがあります。
ある検査成績がこの時点でありますね。そして一カ月後に検査しますと、両方とも異常であるけれども、ここからここにくる間に少し改善している。
そしたら、ここで追加した薬がいいんだと、増量するお医者さんがいる。「この薬がよさそうだから、もっと入れたら、もっとよくなりゃせんか」と考える。」これが自然治癒力を考慮に入れていない治療者で、増量すると次の検査結果がかえって悪くなってしまう。「こりゃいかんやった。この薬はだめだ」となる。
~中略~
よくなる方向にあれば、そのままで通すというのが臨床だ。だから「このままで様子をみましょう」と言うのが、ベテランになった治療者が非常によく使う言葉なの。
 それは自然治癒力で治療が進んでいるんだから、「今、その自然治癒力を保護している環境としての医療が、まあまあ、いいとこ行っとるようだから、このままでやっていこうじゃなの」という医療なの。
積極主義じゃなくて、保護的医療、積極的すぎない医療になる。それを覚えておくと、診療するときに役に立つ日が来ます。

P180
生命というものは、いろいろな刺激に対して、いろんな反応をちょっとやりながら自己保存し、種族を保存してゆく、こういうありようがすなわち生命ですから、その生命に何か障害が、あるいはひずみと言ってもいいな、ひずみが与えられたときに復旧しようとする活動は、これは生命のありようそのものです。
 外側の影響からやや独立した半閉鎖的なエネルギー体系をこしらえているのが生命ですから、その切り離されたエネルギー野を維持しようとする動きが、つまり生命の動きです。同じことをフロイト先生も言っています。
 したがって生命の営みと、自然治癒力と呼ばれているものは同じものです。これは一個の細胞であっても、そうです。そして細胞の集合体である多細胞生物でも同じことです。

P093
 治療というものは、放っといてよくなるのがいちばんいいんです。休ませてよくなると、あんまり副作用はないの。自然治癒がいちばんいい。
ボクは漢方を長年やっているけれども、もちろん漢方は自然治癒じゃないんですが、漢方で名人に達した先生方は「あんなもの、大して治療しているわけではない。自然治癒じゃないですか」と言われると喜ぶの。そうなれば、漢方のお医者さんとしては一流なんです。
「どう見ても自然治癒としか思えないような治し方をしたい」というのが漢方治療です。

神田橋條治 医学部講義
神田橋 條治 (著), 黒木 俊秀 (編集), かしま えりこ (編集)
創元社; 初版 (2013/9/3)

神田橋條治 医学部講義

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  • 出版社/メーカー: 創元社
  • 発売日: 2013/09/03
  • メディア: 単行本


 

愛媛県 石鎚山

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