2026年2月4日水曜日


 若者は夢と未来に向かって前進する。
 老人の前進は死に向う。
 同い年の友達との無駄話の中で、我々の夢は何だろうということになった。
「私の夢はね、ポックリ死ぬこと」
と友人はいった。
ポックリ死が夢?
なるほどね、といってから、けれど、と私はいった。
「あんたは高血圧の薬とか血をサラサラにする薬とかコレステロールを下げる薬とか、いっぱい飲んでいるけど、それとポックリ死とは矛盾するんじゃないの?」
 すると憤然として彼女はいった。
「あんた、悪い癖よ。いつもそうやってわたしの夢を潰す・・・・・・」
 彼女にとってポックリ死はあくまで「夢」なのだった。
~中略~ 現実には摑(つか)めないことをわかっていての「夢」である。

九十歳。何がめでたい
佐藤 愛子 (著)
小学館 (2016/8/1)
P27

九十歳。何がめでたい

九十歳。何がめでたい

  • 作者: 佐藤愛子
  • 出版社/メーカー: 小学館
  • 発売日: 2016/08/01
  • メディア: 単行本

 

島根県 熊野大社

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