2010年11月29日月曜日

花粉症、来春増える花粉に注意を

2010年11月26日 提供:毎日新聞社
花粉症:来春増える花粉に注意を

 来春は、花粉症の人にとって憂うつな季節になりそうだ。気象情報会社などが発表した、来春のスギ・ヒノキの花粉飛散予測によると、今年より飛散量がかなり多くなりそうだからだ。「日本人の3割が花粉症」とのデータもあり、多くの人が花粉飛散に備える必要があるが、本格的な飛散前の対策がポイントといえそうだ。【永山悦子】
 ◇今年の10倍予想も
 今春のスギ・ヒノキの花粉飛散量は全国的に少なく、花粉症の人には過ごしやすいシーズンだった。ところが、来春は一転して増加するとの予測が出ている。気象情報会社「ウェザーニューズ」は、全国平均で今年の5倍(関東7-8倍、近畿10倍)、日本気象協会も「全国で今春のおよそ2-10倍になる」と予想する。
 花粉飛散予測に詳しい佐橋紀男・東邦大理学部訪問教授(花粉学)は「7月の日照時間が長いと、花芽(かが)がたくさんできる。今年の夏は猛暑だったため花芽が多く、今春の飛散量を上回るのは間違いない」と話す。一方、猛暑が長引いた結果、一部の花芽が枯れるなど成長に遅れが見られるという。「飛散量は、過去10年で最多の05年春より少なく、例年並みかやや多い程度。飛散開始も例年並みかやや遅いのではないか」と分析する。
 ◇発症者増える恐れ
 佐橋さんも参加するNPO花粉情報協会の全国調査によると、スギ・ヒノキの花粉飛散量は過去10年、増加傾向が続く。全国の耳鼻咽喉(いんこう)科医と家族を対象にした調査では、花粉症の人が過去10年で1・5倍の3割に増えた。今井透・東京慈恵会医大柏病院耳鼻咽喉科診療部長は「飛散量が多くなる年には、新たな発症者が増えることが分かっている。これまで症状のない人も、花粉に触れる機会が多ければ発症する恐れがある」と注意を促す。
 ◇黄砂の刺激で症状悪化
 最近は黄砂の影響も指摘される。今年は、5年ぶりに11月に黄砂の飛来が各地で観測された。福井大の研究チームが今年、花粉症患者約150人の日記を分析したところ、黄砂が飛来した日に症状が悪化する傾向が明らかになった。黄砂に含まれる化学物質の刺激が加わって症状が悪化するとみられ、花粉症の人は、黄砂対策も必要になりそうだ。
 ◇初期療法が重要 症状に合った薬選びも
 「鼻アレルギー診療ガイドライン(2009年版)」によると、花粉症対策の大前提は「抗原回避」だ。「抗原」とはアレルギーを起こすもと、つまり「花粉」のことだ。
 さらに花粉症の治療では、症状が出る前やごく軽い時期の「初期療法」が、重症化するかどうかを左右する。初期療法は、花粉飛散の初観測日から本格飛散が始まるまでの間の治療をいい、毎年強い症状が出る花粉症患者に勧められる。完全に症状を止めることは難しいものの、花粉症の症状を起こす炎症の進行を遅らせ、重症化が抑えられるという。
 初観測日は地域によって1-3月と異なり、例年では関東地方など早いところで1月初旬。本格飛散は、関東以西で主に2月中旬から、東北以北で3月以降とされる。
 診療ガイドラインによると、初期療法では抗ヒスタミン剤など5種類の薬のうち一つを服用する。これらには保険が適用される。服用開始時期は、飛散開始予測日か少しでも症状が出た時から飲むものや、予測日の1-2週間前から飲むものなどがある。
 症状に合った薬選びも大切だ。大久保公裕・日本医大教授(耳鼻咽喉科)は「鼻水やくしゃみを抑えるのに適した薬、鼻づまりを起こしにくくする薬など、薬には『得意分野』がある。患者一人一人が、どの症状を改善したいかを正確に医師に伝えることが必要」と話す。
 また、大久保教授らは現在、花粉症の新治療法の臨床試験に、東京都とともに取り組んでいる。スギ花粉エキスを染み込ませた食パンを舌の下に置き、アレルギーの原因物質を取り込んで、症状が出ない体質に改善する「減感作療法」だ。これまでの試験で約7割の症状が改善した。大久保教授は「13年には承認申請が可能だろう」と話す。
 一方、正常な免疫機能や鼻粘膜の状態を保つため、日ごろからストレスや睡眠不足、酒の飲み過ぎを避け、喫煙を控えるなど、生活習慣を見直すことも大切だ。

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