2010年11月23日 提供:毎日新聞社
あなたの処方せん:/35 歯周病/2 菌が体内侵入、多様な病気の引き金に
歯周病が怖いのは、歯が奪われるだけでなく、体のさまざまな場所で病気などの引き金となる点だ。
歯周病の原因となるプラーク(歯垢(しこう))は、歯と歯茎の間の歯周ポケットに蓄積され、歯周病菌が塊になった「バイオフィルム」という状態で存在している。バイオフィルムは、外部から糖類などの栄養源を取り込んで徐々に大きくなっていく。抗菌薬などへの耐性も強いため、歯磨きなど物理的な方法でないと除去が難しい。
こうして増えた歯周病菌が、血液や唾液(だえき)などとともに侵入すると、さまざまな悪影響を及ぼす。まず気を付けたいのが、高齢者などに多い「誤嚥(ごえん)性肺炎」だ。唾液に含まれる歯周病菌が気道に入り、感染防御機能が落ちているため感染症を起こしてしまうのだ。
東京歯科大(千葉市)の奥田克爾(かつじ)名誉教授(微生物学)によると、歯周病菌は就寝中に口から気道へと流れ込むことが多いといい、「寝る前に歯を磨いて、できるだけ口の中を清潔にしておくのが予防のために大事」と指摘する。
一方、動脈硬化などによって起きる心筋梗塞(こうそく)にも、歯周病菌がかかわっていることが近年わかってきた。奥田名誉教授らは、動脈硬化によって詰まった心臓の周囲の冠状動脈に存在する細菌の遺伝子が、歯周病菌の遺伝子と一致することを発見し、04年に論文発表した。
また妊娠中の女性にとっては、歯周病が早産や低体重児出産などのリスクともなる。96年に米国の研究者が関連性を初めて報告。その後も同様の報告が相次ぎ、07年には、歯周病菌が早産した妊婦のうち3割の人の羊水中から検出されたとの内容の論文も出ている。
歯周病菌が早産などを引き起こす仕組みは解明されていないが、血流に乗った歯周病菌が胎盤まで達し、陣痛促進剤にも含まれるプロスタグランジンなどの炎症性物質が作られて、早産につながるのではないかと考えられている。=つづく
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