記事:共同通信社提供:共同通信社
【2008年9月2日】
介護福祉士を養成する専修学校などで入学者の定員割れが続いている背景をめぐり、一部の学生は親や教師に反対されて進学を断念した可能性があるとの指摘が学校関係者から出ている。「介護の仕事はきつい内容に見合った収入が得られない」などのイメージが広まっているためだ。
東京YMCA医療福祉専門学校(東京都国立市)では、定員80人の介護福祉科への今春の入学者は40人にとどまった。新入生へのアンケートでは、親や親族が医療や福祉の現場で働いていれば、入学を後押しする傾向が出たという。
同校の八尾勝(やお・まさる)副校長は「介護などの現場で働く親は、やりがいを求める子どもに共感するのでは」と指摘。親がサラリーマンなどの場合は「世間のマイナスイメージに引きずられ、生活を不安視して反対してしまう」と、介護職員の待遇改善などイメージ向上の努力が必要と強調している。
一方、学校側も、入学者が減っているのに学校や学科を新設し、定員割れに拍車を掛けている。日本介護福祉士養成施設協会によると、2008年度に6校が廃止などしたのに対し17校が新たに開校し、学校数は過去最高の434校となった。
高齢化の進行に伴う需要増を見込んで開校したとみられるが、学校関係者からは「学生を奪い合い、先細りになるだけでは」と心配する声も上がっている。
▽介護業界の人材不足
介護業界の人材不足 厚生労働省の調査によると、2007年の介護労働者の月給は、全産業平均に比べて男性で約12万円、女性で約3万円低い。待遇の改善は望めないと考えて介護現場を去るケースが後を絶たず、07年度の離職率は21・6%と全産業平均の16・2%(06年)を上回っている。特に介護福祉士は、05年9月時点で資格を持っている約47万人のうち、4割強の約20万人が介護や福祉分野以外の仕事をしているか、働いていないとみられる。