2026年3月4日水曜日

感覚は当てにならない

P172
毎日立って前を向いて歩いているでしょう(住人注;90日の間、ひたすらお経を唱えながらぐるぐる回る「常行三昧」)。
そうすると、(住人注;「常行三昧」が終わっても)目の前にあるものはすべて真正面にあるものだと思い込んでしまうんだよ。寝ていて見える天井だって、天井に見えず、壁に見えてしまう。
 習慣っていうのはそれくらい人の感覚を狂わせてしまうんだな。

天台宗大阿闍梨 酒井 雄哉 (著)
一日一生
朝日新聞出版 (2008/10/10)

一日一生 (朝日新書)

一日一生 (朝日新書)

  • 作者: 天台宗大阿闍梨 酒井 雄哉
  • 出版社/メーカー: 朝日新聞出版
  • 発売日: 2008/10/10
  • メディア: 新書


 脳が、空間に占めるからだの拡(ひろ)がりを明確に把握している、というのはどういうことか、ちょっとでも考えたことがありますか?
実は、左脳の方向定位連合野に、からだの境界を明確にする細胞があり、それによって、からだがまわりの空間と相対的にどこから始まり、どこで終わっているかがわかるのです。
同時に右脳の方向定位連合野には、空間でのからだの向きを決める細胞が存在します。その結果、左脳は、体がどこで始まってどこで終わっているかを教えてくれ、そして右脳が、わたしたちを好きな方へ向かわせてくれるのです。※6

ジル・ボルト テイラー (著), Jill Bolte Taylor (原著), 竹内 薫 (翻訳)
新潮社 (2012/3/28)
P331

奇跡の脳―脳科学者の脳が壊れたとき (新潮文庫)

奇跡の脳―脳科学者の脳が壊れたとき (新潮文庫)

  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 2012/03/28
  • メディア: 文庫

徳島県 剣山

自然は優しい

 ぼくの経験では、もっとも親身で優しく、純粋無垢で力になってくれるような友人は、自然のなかにはいくらでもいる。それは、哀れな人間嫌いの人や、やたらとふさぎこんでいる人にとっても同じことだ。
自然の中に住み、自分の感覚をもち続けていれば、先の見えない憂鬱などありえない。―「森の生活」

ソロー語録
ヘンリー・デイヴィッド・ソロー(著), 岩政 伸治 (翻訳)
文遊社 (2009/10)
P10

ソロー語録

ソロー語録

  • 出版社/メーカー: 文遊社
  • 発売日: 2009/10/01
  • メディア: 単行本

 

 私はしばしば山に登る。それは山がいつも私の前に立っており、私はただわけもなく、それに登りたくなるのだから。
あながち「岩の呼ぶ声」に惹きつけられるというのでもない。私にはむしろ岩は多くの場合恐怖の対象物でしかあり得ない。
「雪と氷を追って」私の若い血潮が躍るのでは更にない。「白い芸術」は私には余りに遠い世界に距(へだた)っており、氷の労作(アイス・ワーク)は私には肉体的にも精神的にも余りに大きな負担であり、痛苦と屈服のみ与えこそすれ、なんら、戦闘意識といったものすら起し得ないからである。
私には、私の山、千メートル級の山々の何物をも限界から奪い去るひどいブッシュの中であってもいいのだし、また単に山々の懐深く入りながら、かえって峰々の姿も見ないで谷から谷へと歩くばかりでもいいのである。

新編 単独行
加藤文太郎 (著)
山と渓谷社 (2010/11/1)
P117

新編 単独行 (ヤマケイ文庫)

新編 単独行 (ヤマケイ文庫)

  • 作者: 加藤文太郎
  • 出版社/メーカー: 山と渓谷社
  • 発売日: 2010/11/01
  • メディア: 文庫

 

大台ヶ原山 奈良県

2026年3月3日火曜日

豊臣秀吉

秀吉がよほど運のいい男だといえるのは、かれが天下をとるや、まるでそれを待っていたかのように、日本の処鉱山の黄金の産出額が飛躍的に上昇した。「太田牛一雑記」にも「秀吉公御出世以降、日本国には金銀山野に湧出」とある。
鉱山市の資料をみても、この時代から江戸初期にかけては、日本は世界屈指の金産国であった。ゴールドラッシュ時代といえるのではないか。
 秀吉は、「山野に湧出」した黄金を湯水のように使って天下を安定させた。


司馬遼太郎が考えたこと〈2〉エッセイ1961.10~1964.10

司馬遼太郎 (著)
新潮社 (2004/12/22)
P35

司馬遼太郎が考えたこと〈2〉エッセイ1961.10~1964.10 (新潮文庫)

司馬遼太郎が考えたこと〈2〉エッセイ1961.10~1964.10 (新潮文庫)

  • 作者: 司馬 遼太郎
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 2004/12/22
  • メディア: 文庫

 今日までの歴史家の多くは、朝鮮出兵を豊臣秀吉の個人的野心と無知による誇大妄想のせいに帰している。確かにこの出兵には、小西行長らの外国通も石田三成らの行政官僚も前田利家、毛利輝元ら大領主も反対だった。堺、博多の商人も抵抗した。そうした点から見ると、秀吉一人の無理強いにも見える。
 だが、いつの場合でも失敗した事業にはただ一人の責任者しか出ないものだ。~中略~ そこには、強力な推進力と避け難い事情が存在したはずである。
 おそらくそれは、急成長を遂げて来た日本社会と豊臣政権の成長機構 そのものであったろう。
つまり、次々と四隣を制圧して天下を取った豊臣政権には、急速に成長を続けるための機構ができ上がり、成長体質があふれていた。
それが、全国統一の結果、働き場所を失ったため、組織的な不満が充満するに至ったのだ。現実的ではあったが、情緒的家族主義者でもあった豊臣秀吉は、自己の政権を築き上げるのに大功のあったが、成長機構―軍事征服機構―を弾圧することができず、次の働き場所を朝鮮にもとめたのであろう。
~中略~
 一六世紀末において、世界一流の水準の技術と経済力を持っていた日本の政権が、軍事的拡大という従来のパターンの続行以外に成長継続の方法を思いつかなかったことはまことに悲劇的である。だが、そのあとを継いだ徳川幕府が、成長要素の大幅な粛清による停滞社会への回帰へ走り込んだこともまた不幸であった。


歴史からの発想―停滞と拘束からいかに脱するか

堺屋 太一(著)
日本経済新聞社 (2004/3/2)
P65

歴史からの発想―停滞と拘束からいかに脱するか (日経ビジネス人文庫)

歴史からの発想―停滞と拘束からいかに脱するか (日経ビジネス人文庫)

  • 作者: 堺屋 太一
  • 出版社/メーカー: 日本経済新聞社
  • 発売日: 2004/03/02
  • メディア: 文庫


秀吉がこの城(住人注;佐賀県唐津の肥前名護屋城)を拠点に大陸征服を狙ったのは事実だが、この男は征服そのものより、自分の意思に人が従い、物が集まるさまを可視化するのが、生きる目標であったように私は感じている。 ~中略~ 前半生、不当に卑しめられてきたことへの反動であったろう。おのれの権力の可視化こそが彼の快感であった。  ただ、この秀吉の我儘(わがまま)は日本政治史に大きな副産物をもたらした。日本中の大名と重臣・兵卒までが一か所に集結して対外戦争をやったため、天下・統一国家日本の現物を日本中の人間が見てしまった。日本は一つとの国民国家思想の形成の前処理がここで済んだ。

日本史の内幕 - 戦国女性の素顔から幕末・近代の謎まで
磯田 道史 (著)
中央公論新社 (2017/10/18)
P117

日本史の内幕 - 戦国女性の素顔から幕末・近代の謎まで (中公新書)

日本史の内幕 - 戦国女性の素顔から幕末・近代の謎まで (中公新書)

  • 作者: 磯田 道史
  • 出版社/メーカー: 中央公論新社
  • 発売日: 2017/10/18
  • メディア: 新書

呼子名護屋城跡 佐賀県

雛祭り

P290
 雛祭りの起源は遠い古えにさかのぼっています。身の清めの式としては人は河水に禊して身をきよめたのでありましたが、時代を経るにつれ、非情の物で人の型を作ってこれに替えることと致し、何なりと身近かな大切なものをとって、陰陽を型どって二つの型をつくることにいたしました。~中略~

そして、それを男女二つにして家族を代表させました。これが紙びなさまになったのでございます。
 やがて、支那文化をもとり入れ全国にわたって、清めの日を定めることとなり、陰暦の三月の最初の巳の日がそれときまりました。
この、蛇虫の脱皮時期は、闇の冬から希望と光明の春に入るということを象徴していたわけでございます。
~中略~

 また雛祭りが実際的に役立たされたのは封建時代になってからのことでした。当時の武士の家庭では、主人は一身を主君に捧げ、いつなん時でも君の馬前に討死の覚悟をいたしておりましたので、主婦は留守がちな主人の分まで負わなければなりませんでした。
それで、子女の教育は教養の高い侍者の手にゆだねられることになりました。こうして、女の躾の中でも大切な家事を仕込むには、この雛祭りがこよなき機会となったのでございます。

杉本 鉞子 (著), 大岩 美代 (翻訳)
武士の娘
筑摩書房 (1994/01)

武士の娘 (ちくま文庫)

武士の娘 (ちくま文庫)

  • 出版社/メーカー: 筑摩書房
  • 発売日: 1994/01/01
  • メディア: 文庫

 

大宰府天満宮

禽獣と人の違い

子を生みて子を養うは人類のみに非ず、禽獣皆然り。
ただ人の父母の禽獣に異なるところは、子に衣食を与うるの外に、これを教育して人間交際の道を知らしむるの一事に在るのみ。

福沢 諭吉 (著)
学問のすすめ
岩波書店; 改版版 (1978/01)
P94 学問のすゝめ 八編

学問のすゝめ (岩波文庫)

学問のすゝめ (岩波文庫)

  • 作者: 福沢 諭吉
  • 出版社/メーカー: 岩波書店
  • 発売日: 1978/01/17
  • メディア: 文庫


P69
 よしや生物学者から言ったらば人類もまた一動物であって、脚走羽飛するところのものと多く異なるなきが実際であるにせよ、少なくとも動物中の最高級の者に属する以上は、他の動物等の追随企及し能わざるような高尚都雅なる情状、即ち情を矯めて義に近づき、己を克して礼に復(かえ)るような崇美なところがなければならぬのである。
然らざれば人と他の動物とは何の区別するところもなくなるのである。
己を抑えて人に譲る、是の如きは他の動物に殆どなきところで、人にのみあり得るところである。
物足らざるも心に足りて、慾に充たざるも情に充ちて甘んずる、是の如きは他の動物になくして人にのみあり得るところである。
およそ是の如きの情状を做し得てこそ、人もいささか他の動物の上に立ち得るのであれ、然(さ)なくば那処に人の動物たらざるところを見んやである。
分福の説(明治四十三年十二月)

P175
純粋に自然に順えば人はただの野猿である、山羊である、人の尊き所以は何処にもない。
高野の大師が羝羊心(ていようしん) といわれたのは即ちその心である。
羝羊は淫欲食欲のほかに何が多くあろうぞやだ。然るに人は決して羝羊となって満足するものでない。
淫欲にも克ち食欲にも克ち、人の禽獣と同じき所以のものを超越して、そして人の禽獣と異なる所以のものを発揮しようと努めて居るのが、人類の血を以て描いた五、六千年の歴史である。
~中略~
一切動物に超越し、前代文明に超越し、かつ自己に超越し行くことを欲して居るものである。そして人々のその希望が幾分かずつ容れられるのである。
即ち造化 が自己の意志に参することを人間に限りて許して居るのである。で、人間は小造化となり得るのである。
静光動光(明治四十一年三月)

努力論
幸田 露伴 (著)
岩波書店; 改版 (2001/7/16)

努力論 (岩波文庫)

努力論 (岩波文庫)

  • 作者: 幸田 露伴
  • 出版社/メーカー: 岩波書店
  • 発売日: 2001/07/16
  • メディア: 文庫


時間ということにおばあさんは進歩的だった。―人は誰でも好きなことをしてのんびりしている時をもたなくてはいけない。
家事というものは行く河の流れと同じで、絶え間もなく続き続き、渋滞すればたちまち膨張氾濫するから、何事においても先ずこれを一埒さっとかたずける。
果て知らずという性質をもったのが家事だから、われからくぎって規矩にはめなくてはならぬ。

~中略~
よく、子供が多くてということをいうが、あれはよっぽどおかしな話で、子供は一家運営の基礎ではない。本末顛倒している。
子供なんぞは何人あってもその拠って立つところの家の、そのまた動脈たる家事に協力させるべきで、もともと能力未発達のものが子供なのだから、それに大人である親達が規矩を乱されてうだくだしているのは正しき愛情ではない。

~中略~
子供は望んで得られるものではないけれども、向こう向いている間にひょっこりと飛び出して来たなどということはないものである。
今の人達は子より寧ろ親の方が何かにつけ、あまったれ根性を出している、というのが家事観である。
露伴先生だって子供だったのだから、おばあさんの規矩のなかで協力させられ、芋買い米とぎはいっささかも不思議でないらしい。

幸田 文 (著), 青木 玉 (編集)
幸田文しつけ帖
平凡社 (2009/2/5)
P27

幸田文しつけ帖

幸田文しつけ帖

  • 出版社/メーカー: 平凡社
  • 発売日: 2009/02/05
  • メディア: 単行本


 P32
 公共の場とは、人間が文化というものをかなりの程度に高度化させた末に、生活をより社会的にするため(例えば生産物や情報の流通を促すために)、いわゆる理性を用いて作りだした人工物なのだろう。だから発達上の社会化も、私たちは意識してそれを促進する必要が求められる。
それを誤解して、サルのように動物的な愛情のままに育児をすればまっとうに人間が発達するととらえられたために、二十一世紀になって育ってきた子どもたちは、先祖返りしてサル化しつつあるのかもしれない。

P58
 子を持った母親を対象に話をしていると、時として「私は思いっきり子どもを可愛がることにしている。
動物だってそうじゃないですか。それで何が悪いのですか」と尋ねられることが少なくない。。
なるほど、この主張は表面的には説得力を持っているように聞こえるかもしれない。けれども人間は、動物的な水準の養育をうけるだけでは、サルの一員としての「ヒト」にしか育たない。
そうして実際、今やかなりサルに近い発達しか遂げなくなってきている。それは昨今の社会風俗に端的に現れてきている。

ケータイを持ったサル―「人間らしさ」の崩壊
正高 信男 (著)
中央公論新社 (2003/09)

 

ケータイを持ったサル―「人間らしさ」の崩壊 (中公新書)

ケータイを持ったサル―「人間らしさ」の崩壊 (中公新書)

  • 作者: 正高 信男
  • 出版社/メーカー: 中央公論新社
  • 発売日: 2003/09/01
  • メディア: 新書


P192
ヨーロッパの子供はおとなしい。もちろん子ども同士でケンカもするしワンパクもあるが、大人と一緒だと、まして他人と一緒だと静かに行儀よくしている。
来客のある食卓での子どもは、両親の許しがなくては話をしてはいけないとされている。ふだんでも子どもがしゃべりすぎると親がストップをかける。なんでも子ども中心にする日本とは大違いだ。
 またヨーロッパの人は、よく子どものお尻をぶつ。悪いことは体でわからせる、ということだ。
スウェーデンの夫の従兄弟の家でも、末っ子のミイケをよくオシオキしていた。奥さんは「子どもは動物だから、小さいうちからよくしつけなければならないのよ」と言っていたっけ。
 お隣のルイちゃんが、たいしたことでもなかったが私に対して「ごめんなさい」が言えないことがあった。 ママのところへ泣きに行くが、奥さんはその手をふりほどいて私のほうへ顔を向かせ、きつい調子で言った。
「ルイ、レイコおばちゃんに「ごめんなさい」を言いなさい!」
ルイちゃんは泣き出した。
「そろそろ自我が出てきたのね」と私は奥さんに言う。
「そうなの。最近泣けばいいと思っているのよ」
その泣き方が嘘泣きっぽいのはすぐわかる。そのうち悲しいから泣いているのか泣いているからかなしいのか、彼の泣き声エスカレートしていった。しかし、目の前に立って見下ろしているふたりの大人は何も言ってくれない。
 しばらくすると1歳半のルイちゃんは泣くのをあきらめ、涙がいっぱいたまった目で私に近寄って、「ごめんなさい」と言ってキスした。
私は「ルイはいい子ね」と抱きしめる。すぐに奥さんは抱き上げて「ル・ル(ルイの愛称)、賢くなったね」と、何度もその背中をやさしくたたいてキスした。

P194
 ヨーロッパでは「今のしつけが大切」という、大人のママの立場に立ってあげなければいけない。東京在住のイギリス人の友人の言う、「子どもは社会が育てるもの」なのだ。

P195
 大人だけが人間で、子どもや犬猫は”大人の世界”には入れないというルールが、ヨーロッパにはあるのだ。
食卓でも子どもが良心の許可を得ないで話せないのも一例だが、これはよいことだと思う。なぜなら、小さいころから、世界が自分を中心に回っていると思わないで育つから。

P196
 ところで、英語で赤ちゃんのことをItで呼ぶのをご存じだろうか。HeでもSheでもない。
いくつになったらheやSheで呼ばれるのかは定かではないけれど、Itと呼ばれる赤ちゃんは、つまり犬と同類、しつけられて初めて人間になる、というわけなのだろう。

一度も植民地になったことがない日本
デュラン れい子 (著)
講談社 (2007/7/20)

一度も植民地になったことがない日本 (講談社+α新書)

一度も植民地になったことがない日本 (講談社+α新書)

  • 作者: デュラン れい子
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2007/07/20
  • メディア: 新書

人間と動物を区別するギリギリ結着の問題は何かと言えば、「敬」と「恥」である。
この二つは人間に根本的にたいせつなものであって、これを失うと、人間は明らかに動物並みになる。
人間という獣になる。そうなると、最も悪質の獣になるわけです。外の動物が持っておらぬ知識だの才能だのといういろいろなものを持つから、これはどうも難物になる。

安岡正篤
   運命を開く―人間学講話
  プレジデント社 (1986/11)
   P82

 

新装版 運命を開く (安岡正篤人間学講話)

新装版 運命を開く (安岡正篤人間学講話)

  • 作者: 安岡正篤
  • 出版社/メーカー: プレジデント社
  • 発売日: 2015/03/31
  • メディア: 単行本


北海道 旭山動物園

頑固者

P214
村里生活者は個性的でなかったというけれども、今日のように口では論理的に自我を云々しつつ、私生活や私行のうえではむしろ類型的なものがつよく見られるのに比して、行動的にはむしろ強烈なものをもった人が年寄りたちの中に多い。これを今日の人々は頑固だと言って片付けている。

P207
祖父はもとからの畑や田の管理した。ムギをつくり、イモをうえ、アワをまき・・・・そういう仕事をくりかえしたのである。
そして藁仕事は一手にひきうけていた。つまり、もとからの生き方を生きぬいたのである。
「納得のいかぬことをしてはならぬ」というのが祖父の信条で、蚕をこうて金をもうけることは大切だが、そのために、米麦をつくる場所をせまくすることには賛成できなかった。だから自分は古いことをまもったが、人には強いたわけではない。
分だけは自分の納得のいく生き方を生涯通したかったのである。

忘れられた日本人
宮本常一 (著)
岩波書店 (1984/5/16)

忘れられた日本人 (岩波文庫)

忘れられた日本人 (岩波文庫)

  • 作者: 宮本 常一
  • 出版社/メーカー: 岩波書店
  • 発売日: 2017/04/20
  • メディア: Kindle版

 

戸上神社 北九州市門司区

兵力は集中

古来、勝利者は兵力の集中に成功した者であり、これとは逆に敗将たちの敗戦の共通理由は兵力の分散にあったということを、蔵六はよく知っていた。  

花神 (中)
司馬 遼太郎 (著)
新潮社; 改版 (1976/08)
P397 

花神(中)(新潮文庫)

花神(中)(新潮文庫)

  • 作者: 司馬 遼太郎
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 2015/06/05
  • メディア: Kindle版

 

関門橋

守・破・離

 日本の伝統文化を語る上で欠かせないのが、「守・破・離」です。
江戸時代に茶人の川上不白が最初に言ったとされていますが、この言葉は茶道、武道も含めたあらゆる伝統文化の型を身につけていくプロセスを、一つ一つの文字にシンプルに分かりやすく表現していると思います。~中略~
この守・破・離は、一つは師匠と弟子との関係を意味するものであり、さらには伝統文化の発展や進化を表す言葉としても使われています。
「守」とは弟子が師匠の教えを忠実に守り、その基本となる形や技をみにつけていく学びの段階です。
「破」とは身についた形や技に他流を取り入れたり、自分自身の個性というものを加えて洗練させていく創造の段階です。
「離」とは守、破、を抜けて何事にもとらわれない独自の境地に至る段階です。
 守が師匠から忠実に受け継いだ形や技を型として身につける段階であるならば、その型の先にあるものは「破」「離」ということになります。

基本である型をしっかりと身につけ、そこに自分自身の個性などを加味していったときに待っているのはどんな世界でしょうか。
 それは、想像と創造の世界だと思うのです。逆に言うと、そのような伝統文化においても、型をしっかりと身につけて初めてその先にあるものを自分で考え、自分で創りだしていくことができるのです。型が身についていないのにそれを破ろうとしてもできませんね。
 しかし、型がしっかりと身についている人は、何が起きても動揺することはないのです。

リッツ・カールトン - 「型」から入る仕事術
高野 登 (著)
中央公論新社 (2014/3/7)
P54

リッツ・カールトン 「型」から入る仕事術 (中公新書ラクレ)

リッツ・カールトン 「型」から入る仕事術 (中公新書ラクレ)

  • 作者: 高野登
  • 出版社/メーカー: 中央公論新社
  • 発売日: 2014/06/13
  • メディア: Kindle版

 

島根県 荒神谷遺跡

意識の中にないものは存在しない

養老 ごくごくやさしく言うと、昔は英米人には肩こりはないって思われていた。
「肩こり」っていう言葉がないから、肩はこらない。だけど、概念を導入した途端に彼らも肩こるわけですよ。で、マッサージが流行ったりして(笑)。

それはもうしょうがない。つまり、意識の中にないものは存在しないって思い込んでいるんです。
でも、人間そういうもんだっていう理解があるかないかで、僕は社会が随分違ってくると思うんですね。

玄侑 今は彼らも「スティッフ・ショルダー(stiff shoulder)って言いますもんね。そうか、あれは実は新しい言葉なんですね。知らなきゃよかったのにっていう言葉って、そういう意味じゃたくさんありますよね。

養老 孟司 (著) 玄侑 宗久 (著)
脳と魂
筑摩書房 (2007/05)
P143

脳と魂

脳と魂

  • 出版社/メーカー: 筑摩書房
  • 発売日: 2005/01/01
  • メディア: 単行本

P72
眠りについていようと目覚めていようと、走っていようと歩いていようと、走っていようと、望遠鏡や顕微鏡、あるいは自分の目で見ていようとも、人は自分自身以外、何も見いださず、何も超えることもなく、何も残すことはできない。
―「ハリソン・ブレイクへの手紙」一八六〇年五月二〇日

P75
僕らは「ある」ように見えるものを、本当に「ある」と思い込んでいる
―「森の生活」


ソロー語録

ヘンリー・デイヴィッド・ソロー(著), 岩政 伸治 (翻訳)
文遊社 (2009/10)

ソロー語録

ソロー語録

  • 出版社/メーカー: 文遊社
  • 発売日: 2009/10/01
  • メディア: 単行本

P96
 意識は脳の部分的なはたらきに過ぎない。少なくとも人生の三分の一は意識がないからである。私が教えていた学生には、授業時間中に一時間半にわたって、まったく意識ない場合もあった。
しかし面白いことに、覚醒しているヒトの脳と、寝ているヒトの脳とでは、消費するエネルギーがほとんど違わない。呼吸や循環もそうだが、脳は死ぬまでひたすら休みなくはたらいている。
意識がある時だけはたらき、その時にだけ特別にエネルギーを使う、というわけではない。
 じゃあ、寝ている間、脳はなにをしているのか。

P98
意識は間違いなく脳から発生する。それなら脳で秩序活動が起こっている分、無秩序が脳内に発生するはずである。それなら脳はその無秩序を片付けなければならない。乱暴にいえば、だから寝るのだ、ということになる。 寝ている間は意識という秩序活動がない。その間に脳はエネルギーを消費して無秩序を解消する。そのエネルギーは、秩序活動を生み出すのに使われたエネルギーとほぼ同じになるはずなのである。

遺言。
養老 孟司 (著)
新潮社 (2017/11/16)

 

遺言。(新潮新書) 「壁」シリーズ

遺言。(新潮新書) 「壁」シリーズ

  • 作者: 養老孟司
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 2017/11/24
  • メディア: Kindle版

戸上神社 北九州市門司区

間違っていない、掘り下げてゆこう

「個性のある人が、個性に沿ったことをやっているかぎり、安らぎあって楽しい」というのは、うまくいっているときです。ところがそれが頭打ちになると、やっぱり相当苦しいときが来るんです。
自分の個性に合ったことをしておられても、頭打ちになったり、しんどくなたりした人が、われわれのところにカウンセリングを受けに来られることがあります。
われわれはそういう人に「あなたは選択を間違っていた」とか言うんじゃなくて、「そこをじっくりと掘り下げていこう」というふうにやるわけです。

河合隼雄のカウンセリング講座
河合 隼雄 (著)
創元社 (2000/06)
P53

河合隼雄のカウンセリング講座

河合隼雄のカウンセリング講座

  • 作者: 河合隼雄
  • 出版社/メーカー: 創元社
  • 発売日: 2015/03/26
  • メディア: Kindle版

科学の名著の一つであるデカルトの「方法序説」(Discous de la Methode 一六三七年)のには、一人の男が大地に顔を向けて畑を掘り起こしており、その大地には天から陽光が燦々(さんさん)と降り注いでいる挿絵が載っていて、その絵の下には、(48)「行動せよ、そして希望を持て(Fac et Spera)」という銘が記されている。これはよい態度であり、よいモットーである。

平静の心―オスラー博士講演集
ウィリアム・オスラー (著), William Osler (著), 日野原 重明 (翻訳), 仁木 久恵 (翻訳)
医学書院; 新訂増補版 (2003/9/1)
P499

平静の心―オスラー博士講演集

平静の心―オスラー博士講演集

  • 出版社/メーカー: 医学書院
  • 発売日: 2003/09/01
  • メディア: 単行本

 きみの立っている場所を深く掘り下げてみよ。泉はその足下にある。
 ここではない何処か遠くの場所に、見知らぬ異国の土地に、自分の探しているもの、自分に最も合ったものを探そうとする若者のなんと多いことか。
「たわむれ、たばかり、意趣ばらし」

超訳 ニーチェの言葉
白取 春彦 (翻訳)
ディスカヴァー・トゥエンティワン (2010/1/12)
194

超訳ニーチェの言葉

超訳ニーチェの言葉

  • 出版社/メーカー: ディスカヴァー・トゥエンティワン
  • 発売日: 2012/10/18
  • メディア: Kindle版

「一志不退(いっしふたい)」
 道元禅師の著書「正法眼蔵」にある言葉です。志を一度立てたら、決して退かず進み続けること。志とともに歩き続ければ必ず道は開かれると禅師は説いています。~中略~
過去は変えようがないのですから、まずは現状を受け入れましょう。
 今すぐに歩き出せなくても、志と希望さえ失わなければ、そのうち立ち上がって一歩前に進もうと思える日がやってきます。
 そうやって前進しようと思えた時、過去の失敗が貴重な教訓となってくれるでしょう。
~中略~
 マイナスは、必ずプラスに転じます。しかし、そのためには、マイナスを自分に与えられた試練としてきちんと受け止め、プラスに変えていこうとする努力が必要です。

怒らない 禅の作法
枡野 俊明 (著)
河出書房新社 (2016/4/6)
P135

怒らない 禅の作法 (河出文庫 ま 14-2)

怒らない 禅の作法 (河出文庫 ま 14-2)

  • 作者: 枡野 俊明
  • 出版社/メーカー: 河出書房新社
  • 発売日: 2016/04/06
  • メディア: 文庫

自分と向き合い自分の基準を持てば、他人の評価や他人の目に影響されなくなってきて、そういうものからストレスを感じにくくなってくる。
 あなたの人生はあなたが責任を持って作り上げるもので他人がどう思おうが(それはよく思われるに越したことはないが)、結局はあまり重要ではない。 最後、死ぬときは一人であり、あの世に持っていけるのはあなたから見た達成感くらいだろう。人生の意義とは、ざっくり言えば自分が満足するかどうかである。
 しかし、現代社会、特に人の目を気にする日本社会で育ってきたわれわれは、他人からの評価に左右される人生を送っている。人間は周りに影響されやすい生き物なので、デキる人間に囲まれる環境を作ることは大事だが、そうした環境に満足するだけでなく、自分が納得できることが達成できたか、という自分だけの基準が重要だ。だからこそ、自分と向き合う必要性があるのだ。

頭に来てもアホとは戦うな! 人間関係を思い通りにし、最高のパフォーマンスを実現する方法
田村耕太郎 (著)
朝日新聞出版 (2014/7/8)
P199

頭に来てもアホとは戦うな!

頭に来てもアホとは戦うな!

  • 作者: 田村耕太郎
  • 出版社/メーカー: 朝日新聞出版
  • 発売日: 2014/09/25
  • メディア: Kindle版

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