2026年1月30日金曜日

人間とチンパンジーとサル

 人間は九八・八パーセントまでチンパンジーである。
逆にいえば、チンパンジーは九八・八パーセントまで人間と同じ生き物である。~中略~

人間とサルのあいだには約六・五パーセントの違いがあった。
~中略~
しかし、実際には、人間とチンパンジーがよく似ていて、サルが違う生き物なのだ。

想像するちから――チンパンジーが教えてくれた人間の心
松沢 哲郎 (著)
岩波書店 (2011/2/26)
P12

想像するちから――チンパンジーが教えてくれた人間の心

想像するちから――チンパンジーが教えてくれた人間の心

  • 作者: 松沢 哲郎
  • 出版社/メーカー: 岩波書店
  • 発売日: 2011/02/26
  • メディア: 単行本


  ヒトにおいて個人間での塩基配列の違いは、1000塩基対に1個あるといわれてきました。~中略~
裏返すと、ヒトのゲノムは99.7~99.9%は誰もが同じ、というわけです。
これはちょっと驚きかもしれません。肌の色、髪の色、体質、性格とヒトには数え切れないくらいのバリエーションがあるように思えるのに、ゲノムはたった0.数%しか違っていないというのです。
  しかしもともとの塩基対は30億個あるわけですから、その0.1%といっても300万個になります。こう聞くと「300万個も違うのか」と感じられるかもしれません。

 

「こころ」は遺伝子でどこまで決まるのか―パーソナルゲノム時代の脳科学
宮川 剛 (著)
NHK出版 (2011/2/8)
P133

 

「こころ」は遺伝子でどこまで決まるのか パーソナルゲノム時代の脳科学 (NHK出版新書)

「こころ」は遺伝子でどこまで決まるのか パーソナルゲノム時代の脳科学 (NHK出版新書)

  • 作者: 宮川 剛
  • 出版社/メーカー: NHK出版
  • 発売日: 2016/11/30
  • メディア: Kindle版


 チンパンジーの遺伝子の個体差、つまり「ばらつき」の具合に比べて、ヒトの遺伝子の個体差は、ほとんどないに等しいくらい少ないのです。つまり、ヒトは動物種としてはかなり均一な集団なのです。

脳はなにかと言い訳する―人は幸せになるようにできていた!?
池谷 裕二 (著)
祥伝社 (2006/09)
P172   

 

脳はなにかと言い訳する―人は幸せになるようにできていた!? (新潮文庫)

脳はなにかと言い訳する―人は幸せになるようにできていた!? (新潮文庫)

  • 作者: 裕二, 池谷
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 2010/05/28
  • メディア: 文庫


 生物学的な進化は、ふつう、複雑でない状態から、より複雑な状態へ変化するとされています。 自然は、効率よくできていて、新しい種(しゅ)をつくり出す場合、まっさらな状態から作り直したりはしません。たいていの場合、いったん生き物の存続を支える遺伝暗号のパターンが見つかると、そうした重要な特徴を持つ暗号は、未来の遺伝暗号プログラムの中にきちんと席が用意されるようになっています。~中略~
すでにうまく働いているプログラムの上にさらに新しいレベルのプログラムを加えることにより、新しくつくられた種は、時の試練を経た強いDNA配列に支えられることになります。
こんな単純な方法で、自然は古(いにしえ)の生命に授けられた体験や知恵をその子孫へと伝えてゆくのです。
 こうしてずっと行われてきた「すでにうまくいっているもののうえに積み重ねる」という遺伝子工学的戦略は、遺伝子配列をほんの少し操作するだけで、大きな進化を遂げられるのが大きな利点です。
信じられないような話ですが、人間の遺伝子をみてみると、全DNA配列の九九・四パーセントはチンパンジーと同じであることが科学的にわかっています※8。
~中略~
 あなたとわたしは同じ人間の種として、〇・〇一パーセントを除いて、すべての遺伝子配列が同じになっています。
だから事実上、生物学的には、あなたとわたしはひとつの種として、遺伝子レベルでは九九・九九パーセント同じなのです。
そして、周囲を見渡せば明らかなように、残りの〇・〇一パーセントがあることで、見たり、考えたり、行動する場合、人によってきわめて大きく異なって、人類の多様性がつくり出されるのです。

奇跡の脳―脳科学者の脳が壊れたとき
ジル・ボルト テイラー (著), Jill Bolte Taylor (原著), 竹内 薫 (翻訳)
新潮社 (2012/3/28)
P302

奇跡の脳―脳科学者の脳が壊れたとき (新潮文庫)

奇跡の脳―脳科学者の脳が壊れたとき (新潮文庫)

  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 2012/03/28
  • メディア: 文庫

北海道 旭山動物園

叱ってやるのは親の慈悲

 涙がたまって木目がぼやけると、きまっていわれた言葉も忘れない。
「おまえ、なんで泣くんだ。正直にいってごらん。足がしびれたか、それとも腹がたっているのか?」そして
「ものを教えてもらっている最中に、むやみと泣くものじゃない」という。なつかしい。

 あの頃もその後も、私は無限に父に叱られるうまれつきなんだ、というようにおもっていたが、なにが無限なものか。
三十年四十年はまたたく間だった、いまはもう、この机の横に呼びつけ、叱ってくれる声はない。
叱られなくなって、叱られる仕合せをおもう。
叱られない環境などちっともいいものではない、私にとっては。

叱ってやるのは親の慈悲、とは俺はいいたくないが、おまえたちを叱るのは実は骨が折れるんだ、といわれてさすがの弟も困った表情をしたのなども昨日のようである。

幸田 文 (著), 青木 玉 (編集)
幸田文しつけ帖
平凡社 (2009/2/5)
P218

幸田文しつけ帖

幸田文しつけ帖

  • 出版社/メーカー: 平凡社
  • 発売日: 2009/02/05
  • メディア: 単行本

 

字引にはしかるとは、声をあらだててとがめ、戒める、とある。戒めは、止め禁じる意、とある。~中略~
若いころ親から、おまえはしかられると、教えられるを混同している、と注意されたが、教える、は知っていることを告げ知らせ、できるように導くことであり、静かな親切である。
しかるは、荒々しい好意だろうか。この好意、私はできたことがないようなのである。
(一九七一年 六十六歳)

幸田文 台所帖
幸田 文 (著) , 青木 玉 (編集)
平凡社 (2009/3/5)
P39

 

幸田文 台所帖

幸田文 台所帖

  • 出版社/メーカー: 平凡社
  • 発売日: 2009/03/05
  • メディア: 単行本

 

 

 

 

 人を叱るときには、その伝え方には4つの方法があると言われています。
 1.攻撃的に叱る
 2.黙る
 3.皮肉を言って叱る
 4.自分も相手もOKとなるように叱る
 すこし専門的な言い方をすれば、右の4つは次のように呼ばれます。
 1.アグレッシブ・コミュニケーション
 2.パッシブ・コミュニケーション
 3.パッシブ・アグレッシブ・コミュニケーション
 4.アサーティブ・コミュニケーション
~中略~
パッシブ・アグレッシブ・コミュニケーションは、表面上は穏やかなものの、裏では非常に攻撃的な方法です。相手から叱られているときであれば、黙って聞いているものの、心のなかでは舌を出しているようなことをしています。
そして、叱るときに最も望ましいとされているのが、4のアサーティブ・コミュニケーションです。

イラッとしない思考術
安藤 俊介 (著)
ベストセラーズ (2014/11/26)
P129

 

イラッとしない思考術

イラッとしない思考術

  • 作者: 安藤 俊介
  • 出版社/メーカー: ベストセラーズ
  • 発売日: 2014/11/26
  • メディア: 単行本

 

 

 

P208
澤口 虐待と体罰とはまったく違います。無関係です。今言った体罰は、あくまでもしつけに必要なしかるべき体罰ですから。
サルの世界では上位のサルは若いサルを威嚇したり攻撃したりして群れのルールに従わせようとします。チンパンジーもゴリラもそうですけど、子どもを叱るときはきちんと体罰を加えている。
そういうのを見てると体罰も重要だな、って気がしてくるんです。
あくまでも動物学的な観点からですけれども、それが子どもにとって「普通の環境」なのかもしれない。

P209
澤口 大事なのは、情動体験をしたあとの情報の与え方ですよね。
ただ叱るのではなく、そのあとのひと言ふた言を、その後の人生に生かせるようないい方向にフッともっていくとか。

たとえば危険な目にあっても、あおこで親なり年長者がこういうときはこうするんだと言えば、その言葉は生きてくる。
「ツライ」などの一見ネガティブな情動体験を与えておいて、そのときに「それでも生きるんだ」という情報を与えれば、脳はツラくてもがんばるべきだというふうに刻まれるわけでしょう。
 それはしつけるほうのベースに愛情がなければできないんですよね。ただ殴ったり叱りつけるだけじゃ虐待、イジメになっちゃいますから。

P211
澤口 そうですね。そこが「三つ子の魂」であって、子どものうちに親が叱っておかなきゃいけません。それは父親の役割なんです。
現存するサルでも、多妻型のサルはボスに当たるオスが若いギャング集団を指導する役割を果たします。群れの規範を守らせるというのは、サルの世界でもメスではなくオスの役割なんです。

平然と車内で化粧する脳
澤口 俊之 (著), 南 伸坊 (著)
扶桑社 (2000/09)

 

 

平然と車内で化粧する脳

 

平然と車内で化粧する脳

  • 出版社/メーカー: 扶桑社
  • 発売日: 2000/09/01
  • メディア: 単行本

 

父のいましめは、みなわが身の幸
小林 一茶

父から若き息子へ贈る「実りある人生の鍵」45章
フィリップ・チェスターフィールド (著), 竹内 均 (翻訳)
三笠書房 (2011/3/22)
P50

父から若き息子へ贈る「実りある人生の鍵」45章 (知的生きかた文庫)

父から若き息子へ贈る「実りある人生の鍵」45章 (知的生きかた文庫)

  • 出版社/メーカー: 三笠書房
  • 発売日: 2011/03/22
  • メディア: 文庫
北海道 旭山動物園

チンパンジーの教育と学習

 こうした観察から、チンパンジーの教育と学習の三つの特徴がわかる。
一番目が、親や大人が手本を示すということ。逆にいうと、「ああしなさい、こうしなさい」とはしない。やってみせるだけ。
二番目が、自発的に真似る。真似しなければいけない特段の理由はない。でも、真似る。そもそも、「まねる」ということばが語源になって、「まねぶ」から「まなぶ」となったそうだ。
三番目が、子どもに寛容。子どもが見るぶんには、「あっち行け」と邪険にしたりしない。
 子どもは見ているだけではなくて、自分でもいろいろやってみる。それは、トライアル・アンド・エラーという試行錯誤ではない。
トライアル・アンド・トライアル(試行また試行)とでもいうべきものだ。

想像するちから――チンパンジーが教えてくれた人間の心
松沢 哲郎 (著)
岩波書店 (2011/2/26)
P138

想像するちから――チンパンジーが教えてくれた人間の心

想像するちから――チンパンジーが教えてくれた人間の心

  • 作者: 松沢 哲郎
  • 出版社/メーカー: 岩波書店
  • 発売日: 2011/02/26
  • メディア: 単行本


北海道 旭山動物園

チンパンジーの子育て

チンパンジーの子育てを、生存率と出産率から要約すると、三つの特徴がある。
 一つは、5年に一度産む。だから年子がいない。
~中略~
二つめの特徴は、長い間授乳しているということ。
~中略~
 女性は授乳しているあいだは、生理が止まって、排卵しないのが通例だ。授乳が終わると、ホルモンの関係で生理周期がもどり、そこでセックスすると妊娠して出産する。
~中略~
三つめの特徴は、母親が一人で子育てをするということ。
チンパンジーの母親は、いってみれば「シングルワーキングマザー」。男の側、お父さんのほうから子育てへの関与はほとんどない。

約5年に一度産んで、長いあいだ授乳して、一人で育て上げ、子供が五歳になって独り立ちすると、また次の子を産む。子どもが独り立ちしてから次の子を生む、それがチンパンジーの子育てだ。
 そういうことがわかると、人間の子育ての特徴が見えてくる。
~中略~

 人間は、すぐに次の子を産む。母乳以外に離乳食を与えて、早めに授乳をやめる。だからすぐ次の子どもを産める。
そして、シングルワーキングマザーではなくて、母親以外も子育てをする。

想像するちから――チンパンジーが教えてくれた人間の心
松沢 哲郎 (著)
岩波書店 (2011/2/26)
P36

想像するちから――チンパンジーが教えてくれた人間の心

想像するちから――チンパンジーが教えてくれた人間の心

  • 作者: 松沢 哲郎
  • 出版社/メーカー: 岩波書店
  • 発売日: 2011/02/26
  • メディア: 単行本

 

北海道 旭山動物園

チンパンジーもフロスは気持ちいい

 アイが鏡を見ながら、口元に手をやっていた。食べ物が何か歯茎に詰まったらしい。
目は鏡を見ていて、「何が詰まったのかな」という様子で見ている。
デンタルフロスを貸したら、自分で使っていた。
これは明らかに、鏡に映った像が自分だとわかっているということだ。

想像するちから――チンパンジーが教えてくれた人間の心
松沢 哲郎 (著)
岩波書店 (2011/2/26)
P70

想像するちから――チンパンジーが教えてくれた人間の心

想像するちから――チンパンジーが教えてくれた人間の心

  • 作者: 松沢 哲郎
  • 出版社/メーカー: 岩波書店
  • 発売日: 2011/02/26
  • メディア: 単行本

 

北海道 旭山動物園

父親の役割

チンパンジーの父親は、子育てにほとんど参加しない。けれども、ぜんぜん参加しないわけではない。
チンパンジーの父親の役割は「心の杖」といえるだろう。父親がいるということが、女や子どもの心の支えになっている。

 「心の杖」とはどういうことか。具体的にいえば、外敵から守ってくれるということだ。
先ほどお話したように、チンパンジーの群れにはお母さんと「お父さんズ」がいて、お父さんが集団として複数組のお母さんと子どもたちを守っている。
~中略~
 だから、「はい、これどうぞ」といって食べ物を持ってきたり、給料を運んできたり、ということはないのだけれども、チンパンジーの男性たちもちゃんと子育てに参加している。女や子どもを守るという広い意味での子育てである。
 男性がいた方が安心するというのは、実際にそうなのだ。

想像するちから――チンパンジーが教えてくれた人間の心
松沢 哲郎 (著)
岩波書店 (2011/2/26)
P38

想像するちから――チンパンジーが教えてくれた人間の心

想像するちから――チンパンジーが教えてくれた人間の心

  • 作者: 松沢 哲郎
  • 出版社/メーカー: 岩波書店
  • 発売日: 2011/02/26
  • メディア: 単行本

 

親父が怖くなくなったのは、アメリカの個人主義や平等主義が入ってきたからだという人がいます。私は一概にそうだとは思いません。
~中略~
 たとえば、レストランに親子が来た際に、子どもが退屈してスプーンなどで遊び始めたとします。それに気づいた父親は、静かな、しかし厳しい口調で、
「静かにしなさい!」
と叱り、たしなめます。子どもは渋々ながらも、
「イエス・サー(わかりました)」
と口答えもせずに静かになります。
 そもそも、大人の社交場であるレストランに子どもがデビューするのは、自分で蝶ネクタイをつけることができるようになってからです。
つまり蝶ネクタイは、「大人の世界で、大人のルールに従います」という意思表示でもあるのです。

 また、友人の家に遊びに行ったときでも、子どもが帰ってくると、必ず一度はリビングに顔を出して「こんにちは、いらっしゃい、ミスタータカノ」とあいさつをしてから自分の部屋に上がっていきます。
 これが日本の場合だとどうでしょうか。~中略~
 これは個人主義とか平等主義とかいった話ではなく、もっと基本的な、人としての規範が崩れている、ということでしょう。おそらくそれが、今の日本の世相に映し出されているのではないか。
だからこそ今、父親(父性)のしつけが見直されるべきではないかと思うのです。
 母親(母性)のきめ細やかな気くばりや心くばりに加えて、子どもの心に、人としてのありようや生き方の本質を植えつける、骨太な父親の気働き。そのバランスを取り戻すのは「今しかない」ように思えてなりません。

一流の男は「気働き」で決める
高野 登 (著)
かんき出版 (2014/4/23)
P163

一流の男は「気働き」で決める

一流の男は「気働き」で決める

  • 作者: 高野 登
  • 出版社/メーカー: かんき出版
  • 発売日: 2014/04/23
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)

 

北海道 旭山動物園

共育

P39
 チンパンジーの子育てと比べたときに見えてくる、人間の特徴とは何だろう。
人間の場合には、明らかに母親以外も子育てをする。まず伴侶である父親が子育てをする。
それから、お祖母さんというものが子育てをする。お祖父さんも、お祖母さんほどではないかもしれないが少しは役に立っている。
そして、おじさんとかおばさんとか、兄とか姉とか、さらにはヘルパーという形で、血のつながっていない者も手助けする。

 チンパンジーの子育てが、母親一人で一人ずつ育てあげて、次の子を育てる子そだてだとすると、人間の子育ては、子どもが独り立ちする前に次々と産み、手のかかる子どもたちをみんなで育てるというものだ。
 実はこのことが、人間の女性が排卵と生理の周期を隠す理由だと考えられる。
チンパンジーの女性は、排卵するとお尻がピンクに腫れる。周囲から見て明らかで、排卵を積極的にアピールしているといえる。
人間の場合、女性が排卵しているかどうか外見からはわからない。
~中略~
 だから、生物学のことばでいうと、男性はいつもメイトガーディング(配偶者防衛)いていないといけない。こういして、伴侶というものができる。
チンパンジーは見られない、人間でのみ顕著な一組の男女の強い結びつきである。
霊長類の中で、チンパンジーは(あまり正しい言い方ではないけれども)多夫多妻とか乱婚とかいわれ、特定のつがいを形成しないのに対して、人間は特定のつがいを形成するように進化してきた。なぜなら次々こどもを育てないといけないから。
~中略~

 多くの子どもを育てるために、つがいを形成することによって伴侶をつくり、さらには寿命を延ばして生殖期後の期間を延ばすことによってお祖母さんをつくり、母親以外も子育てに参加して子どもたちをみんなで育てる。そういうように人間は進化していったのだと考えることができる。
 人間の女性は、子育てという制約に由来して、一人の男性を深く愛するようにできている。人間の男性は、配偶者防衛という機制に由来して、一人の女性を深く愛するようにできている。

 キリスト教の結婚式の誓いのことばは、人間の男女の結びつきの生物学的真実をことばで表現したものだともいえる。
「健やかなるときも病めるときも、富めるときも貧しいときも、これを愛し、これを助け、これを敬い、死が二人を分かつときまで真心を尽くすことを誓いますか」という文言だ。
 かんたんにいうと「愛し合いますか」ということだが、その意味としては、「共同してこどもたちを育てる覚悟はありますか」とたずねているのだ。

 人間とは何か。その答えは「共育」、共に育てるということだ。共育こそが人間の子育てだし、共育こそが人間の親子関係である。
また、あとで述べるように、共育こそが教育の基礎にある。共に育てる、共に育つ。それが、「人間とは何か」ということについて、生活史や親子関係から見たときの、人間の特徴だと結論づけたい。

想像するちから――チンパンジーが教えてくれた人間の心
松沢 哲郎 (著)
岩波書店 (2011/2/26)

想像するちから――チンパンジーが教えてくれた人間の心

想像するちから――チンパンジーが教えてくれた人間の心

  • 作者: 松沢 哲郎
  • 出版社/メーカー: 岩波書店
  • 発売日: 2011/02/26
  • メディア: 単行本

 

澤口 「ヒトを殺しちゃいけない」というのは、人類がもともともってる性質なんです。おそらくヒトがヒトに進化したときからの、500万年くらいの歴史がある性質です。
真猿類の進化からみたら4000万年ですよ。ですから南さんがおっしゃるとおり、ヒトはヒトを「殺しちゃいけない」ことを言われなくても「わかっている」べきなんです。
ロジカルな根拠なんてないですから、本来議論するようなことじゃないんですよ。それが質問になること自体、ヒトとしての500万年の歴史、真猿類としての4000万年の歴史がむしされているってことです。
~中略~

 理屈で説明はできないとしても、いろいろな面から見て「殺しちゃいけない」性質を説明する例はいくつも出てきます。
 たとえば共生戦略という考え方です。ヒトも生き物ですから、自分の遺伝子を残すことを究極的な目標としています。だとしたら、自分のライバルとか、自分の遺伝子が伝わっていない子どもを殺したりして、自分の遺伝子をばらまこうとしたって不思議ではない。
各個体は「利己的遺伝子の乗り物」にすぎないといわれるくらいですから、限りなく利己的になってもいいんです。
 でも、やっぱりよくない。というのは、群れ、社会をつくった場合、あまり利己的だと、社会的にとてもリスキーになってしまい、殺されたり追い出されたりしかねない。で、お互いに協力し合って、お互いに自分の遺伝子を残そうとする戦略、互恵的利他主義というのがでてきたんです。とくにオスどうしで。
これが共生戦略のベースの一つです。
~中略~

 こうした戦略をまっとうしようとおもったら、同じ群れの仲間は殺しちゃいけないですよね?そこで「同胞は殺すな」という性質が身につく。しかも、同じ群れの中では、自分の遺伝子が伝わっている個体が多い。元をただせば皆兄弟、親戚だ、というわけです。これで殺し合っていては、どうしようもない。自分の遺伝子を滅ぼすようなものですからね。
~中略~
(住人注;子殺しなど、同種同士の殺し合いが起きる) ですが、群れをつくる霊長類を全体としてみると、やはり共生戦略が基本です。
むしろ、群れの乗っ取りとか子殺しを避ける形で、互恵的利他主義が出てきたきらいがある。しかも、サルのメスのなかには、子殺しに対抗するカウンター戦略をとったのがいて、そういう群れでは子殺しにブレーキがかかって、より共生戦略的な関係性が生まれてきます。
伸坊 それは、どういう戦略ですか?
澤口 オスが「この子は自分の子かもしれない」と思うように仕向けるんです。
~中略~

 サルの種によって違いますが、はっきりとしたハーレム型ではない多妻型社会をつくるサルの場合、群れにはαメイルというボス的存在のオスがいます。
オス同士の力関係上、αメイルはたしかにメスと交尾するチャンスは多いのですが、それにしても交尾したメスの子どもが100%自分の子だという確証はありません。
もしかしたら、群れにいるほかの若いオスの子どもかもしれない。メスの排卵周期がわかれば、その時期のメスを支配すれば父親になれる確率はあがりますが、メスが排卵日を隠したとなると、ますます子どもの父親が誰かは不明確になってきます。
~中略~
結局、メスは排卵周期を隠すことで、オスに子どもの保護と指導の役割を与えることになりました。
父親が誰だかわからないという状況から父性らしきものが生まれた、というところが皮肉ですが・・・メスの作戦勝ちという感じです。
正確にいうと、ヒト以外の霊長類にはヒトほどはっきりと「父親」と呼べる存在はいません。しかし、父親「かもしれない」可能性から、年長のオスが若い子ザルの指導をする例はいろいろあります。
「かもしれない」戦略はサルの子殺しに歯止めをかけ、共生戦略を維持するのに役立ったであろうことは確かです。

平然と車内で化粧する脳
澤口 俊之 (著), 南 伸坊 (著)
扶桑社 (2000/09)
P166

 

 

平然と車内で化粧する脳

平然と車内で化粧する脳

  • 出版社/メーカー: 扶桑社
  • 発売日: 2000/09/01
  • メディア: 単行本

 

 

 

 基本的に、子孫を残す役目を終えた生物というのは、集団のなかで無用の長物のはずである。だから人間以外の霊長類で、閉経後の早い時期にメスの寿命がつきるのは、たいへん納得のいく話ともいえる。
むしろ、子どもを作り終えたのに生き延びる人間のほうこそ、変っているのだ。

ケータイを持ったサル―「人間らしさ」の崩壊
正高 信男 (著)
中央公論新社 (2003/09)
P150

ケータイを持ったサル: 「人間らしさ」の崩壊 (中公新書 1712)

ケータイを持ったサル: 「人間らしさ」の崩壊 (中公新書 1712)

  • 作者: 正高 信男
  • 出版社/メーカー: 中央公論新社
  • 発売日: 2003/09/01
  • メディア: 新書

 

北海道 旭山動物園

親や仲間と過ごす権利

 一日の終りに疲れてテレビをつけると、チンパンジーが面白おかしいことをしている。それを見て、人があっはっと笑う。
 それは人間としてよくない。
 チンパンジーを見世物や金儲けの道具にしてはいけない。
母親や仲間と離れて暮らすと、チンパンジーの挨拶や性行動ができなくなる。

おぼえておいてほしい。テレビにでてくるチンパンジーの顔は肌色だ。あれは子どもの特徴だ。
子どもは肌色の顔をしていて、大人になると真っ黒な顔になる。
つまり、テレビの番組やコマーシャルに出てくるのはみんな子どもである。本来は母親と一緒にいなければいけない年齢の子どもだ。
そういしたチンパンジーを、いろいろな理由をつけて母親から引き離している。
~中略~

 どんな理由があっても、たとえ死にいたったとしても、チンパンジーの子どもを母親や仲間から引き離してはいけない。
彼らには親や仲間と過ごす権利がある。
それを踏みにじってよいという権利は人間の側にない。

想像するちから――チンパンジーが教えてくれた人間の心
松沢 哲郎 (著)
岩波書店 (2011/2/26)
P126

想像するちから――チンパンジーが教えてくれた人間の心

想像するちから――チンパンジーが教えてくれた人間の心

  • 作者: 松沢 哲郎
  • 出版社/メーカー: 岩波書店
  • 発売日: 2011/02/26
  • メディア: 単行本

 

北海道 旭山動物園

朝令暮改

「どうも、この計画は間違っていたな」と気づいたなら、部下に対しても、あるいは協力会社に対しても、「間違った」とはっきり言うことだ。
そしてすぐ是正する。

若松 義人 (著)
なぜトヨタは人を育てるのがうまいのか
PHP研究所 (2005/12)
P49

なぜトヨタは人を育てるのがうまいのか (PHP新書)

なぜトヨタは人を育てるのがうまいのか (PHP新書)

  • 作者: 若松 義人
  • 出版社/メーカー: PHP研究所
  • 発売日: 2005/12/01
  • メディア: 新書



自分が悪いと知ったら、相手にやっつけられる前に自分で自分をやっつけておいたほうが、はるかに愉快ではないか。
他人の非難よりも自己批判のほうがよほど気が楽なはずだ。

デール・カーネギー (著) 香山晶 (訳)
人を動かす
ハンディーカーネギー・ベスト 
創元社 (1986/11)
P189

 

ハンディーカーネギー・ベスト (3冊セット)

ハンディーカーネギー・ベスト (3冊セット)

  • 出版社/メーカー: 創元社
  • 発売日: 2020/04/25
  • メディア: 文庫


108
 一度口にしたことは断固として行うというのは、一種の頑固ではないか。感情的な行為ではないか。強情の表れではないか。
また、そういうふうにふるまうことに、名誉心のようなものと虚栄心が隠されているのではないだろうか。
「曙光」

140
 信念がある人というのはなんとなく偉いように思われているが、その人は、自分のかっての意見をずっと持っているだけであり、その時点から精神が止まってし まっている人なのだ。つまり、精神の怠惰が信念をつくっているというわけだ。
 どんなに正しそうに見える意見も主張も、絶えず新陳代謝を繰り返し、時代の変化のなかで考え直され、つくり直されていかなければいけない。
「人間的な、あまりに人間的な」

超訳 ニーチェの言葉
白取 春彦 (翻訳)
ディスカヴァー・トゥエンティワン (2010/1/12)

 

 

超訳 ニーチェの言葉 (ディスカヴァークラシックシリーズ)

超訳 ニーチェの言葉 (ディスカヴァークラシックシリーズ)

  • 出版社/メーカー: ディスカヴァー・トゥエンティワン
  • 発売日: 2010/01/12
  • メディア: 単行本


 

「、道既に形体無し

西洋器械の術を尽くさば

心なんぞ拘泥( こうでい)あらん

達人は能く明了

渾( すべ)て天地の勢いに順う」

小楠はものごとに拘泥しなかった。臨機応変、君子豹変のたとえどおり、情勢に応じて、熟慮の上で、自らの考えを変えていったのである。それはある種の諦念というか、人 間の知の本質を知るからこその姿勢であろう。  

横井小楠―維新の青写真を描いた男
徳永 洋 (著)
新潮社 (2005/01)
P195

 

横井小楠―維新の青写真を描いた男 (新潮新書)

横井小楠―維新の青写真を描いた男 (新潮新書)

  • 作者: 徳永 洋
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 2005/01/01
  • メディア: 新書




 私がこの会社へ参りしばらくたってからですが、スタッフから、この際新しく社是社訓をつくてはどうかという提案がでたことがあります。

私は言下にノーといい、この変化の激しい時代に固定したものの考え方は許されないこと、そんなスローガンが逆に新しい物の考え方をはばむことを指摘したのであります。

そしてつくるなら、毎日変わる社是社訓をつくれと、半ば冗談口をたたいたのであります。


経営の行動指針―土光語録
土光 敏夫 (著), 本郷 孝信 (編集)



産能大出版部; 新訂版 (2009/10/15)


P Ⅴ



 

経営の行動指針―土光語録

経営の行動指針―土光語録

  • 出版社/メーカー: 産能大出版部
  • 発売日: 2009/10/15
  • メディア: 単行本


北海道 旭山動物園

妻は何を考えているのか?

もっとも身近な人間関係は夫と妻。
互いに胸の内を読み取れないようでは、他人の心など読めようはずもない。

橋本 保雄 (著)
感動を与えるサービスの神髄―ホテルオークラを築いた人間(おとこ)の経営学
大和出版 (1999/09)
P195

 

感動を与えるサービスの神髄―ホテルオークラを築いた人間(おとこ)の経営学

感動を与えるサービスの神髄―ホテルオークラを築いた人間(おとこ)の経営学

  • 作者: 橋本 保雄
  • 出版社/メーカー: 大和出版
  • 発売日: 1999/09
  • メディア: 単行本

幸福な家庭をつくる七原則
原則1 口やかましくいわない。
原則2 長所を認める。
原則3 あら探しをしない。
原則4 ほめる。
原則5 ささやかな心づくしを怠らない。
原則6 礼儀を守る。
原則7 正しい性の知識をもつ。

デール・カーネギー (著) 香山晶 (訳)
人を動かす
ハンディーカーネギー・ベスト 
創元社 (1986/11)
P332

 

ハンディーカーネギー・ベスト (3冊セット)

ハンディーカーネギー・ベスト (3冊セット)

  • 作者: ドロシー カーネギー
  • 出版社/メーカー: 創元社
  • 発売日: 1986/11
  • メディア: 文庫

 

 

 

そもそも相手を理解することは不可能である、とアドラーは考えているのです。だからこそ言葉を使うコミュニケーションが重要であることを強調するのです。
わからないと思って付き合うほうが、人はわかり合えるものだと思って付き合うよりはるかに安全でしょう(*)。
~中略~

(住人注;(**))相手は自分と違う異星人だからと許せていたのに、同じ地球人なのになぜ同じように考えないのだろう、感じないのだろう、許せない、ということになるのです。初めはわからなくて当然と思っていて、わからないことを前提に逆にわかろうとする努力をしていたはずなのに・・・・

(*)わかり合うことはできないのですが、それを前提としてなお「他の人の目で見て、他の人の耳で聞き、他の人の心で感じる」(「個人心理学講義」一八九頁)という意味での「共感」の重要性をとくところがアドラーの真骨頂です。
(**)ジョン・グレイの「ベスト・パートナーになるために」(三笠書房)に引かれている話~略

アドラー心理学入門―よりよい人間関係のために
岸見 一郎 (著)
KKベストセラーズ (1999/09)
P169

 

アドラー心理学入門―よりよい人間関係のために (ベスト新書)

アドラー心理学入門―よりよい人間関係のために (ベスト新書)

  • 作者: 岸見 一郎
  • 出版社/メーカー: ベストセラーズ
  • 発売日: 1999/09/01
  • メディア: 新書

 

 

 

私は中年以後、他人を理解することはほとんど不可能だと思うようになった。
もちろんその人の家庭環境や職業はよく知っている。しかしその人の心の深奥まで知っているということはほとんどあり得ないし、もし知っているなどと思ったら、それは相手に対して失礼なような気さえした。

人生の原則
曾野 綾子 (著)
河出書房新社 (2013/1/9)
P92

 

 

人生の原則

人生の原則

  • 作者: 曾野 綾子
  • 出版社/メーカー: 河出書房新社
  • 発売日: 2013/01/09
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)

 

 

 

P26
他人に生き方について指図を与えるなど、恐ろしくてできるものではない。だから、政治家、改革指導者、あるいはそれに類した連中が、人々に対して、習慣、態度、物の見方まで変えざるをえないような施策を押し付けて得々としている自身には呆れることが多い。
私自身は忠告を与えるのを常に躊躇してきた。自分のことと同じくらい他人のことがわかっていない限り、他人の行動を指図することなんて、できっこないからだ。
他人のことなどわからないのは絶対に確かだ。他人の考えや感情など、せいぜい推し量るくらいが精一杯だ。
(「幸福者一九二四年)

P73
時に人は、自分の愛している人のことさえ、こうもわからないのかと、怒りや絶望を感ずる。
相手を理解し、その心の奥まで入り込んで行くことの不可能さに、すっかり落胆する。
偶然か何かで、相手の内奥がちらりと見えることがあるが、そういう時、その内奥自分の全然知らぬものであり、自分からひどくかけ離れたものであるのを知って、人は絶望する。
(「作家の手帳」一九〇〇年)

モーム語録
行方 昭夫 (編集)
岩波書店 (2010/4/17)

 

モーム語録 (岩波現代文庫)

モーム語録 (岩波現代文庫)

  • 作者:
  • 出版社/メーカー: 岩波書店
  • 発売日: 2010/04/17
  • メディア: 文庫

 

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