2009年9月30日水曜日

肺がん治療法紹介サイトの3-4割、内容に問題 東大病院の医員ら調査

2009年9月29日 提供:毎日新聞社
肺がん:治療法紹介サイトの3~4割、内容に問題 東大病院の医員ら調査

 インターネットで肺がん治療情報を紹介する日本の主なサイトのうち、効果が立証されていない治療法を紹介するものが3-4割を占め、米国に比べて信頼性が低いことが、東京大病院呼吸器内科で肺がん治療に携わる後藤悌(やすし)医員らの調査で分かった。後藤さんは「患者が信頼性を見分けるのは難しいが、国立がんセンターのサイト(http://ganjoho.jp/public/index.html)などの利用を勧めたい」と注意を呼びかけている。
 後藤さんは、ネットで見つけた怪しい治療法を実践した患者が不幸になった例を多く体験した。そこでネットの信頼性を調べ、3月まで勤めていた国立がんセンター中央病院の医師らと国際肺がん学会の機関誌に発表した。
 07年5月末、「肺がん」などをキーワードに、日本の検索サイト「ヤフー」と「グーグル」で検索。上位各50サイトを調べると、ヤフーで27サイト、グーグルで17サイトが、進行した肺がんの治療法に触れていた。
 このうちヤフーで20サイト(74%)、グーグルで10サイト(59%)を、学会の肺がん治療ガイドラインなど、世界的に妥当と認められた治療を紹介していたとして「納得できる」と評価した。しかし、残る各7サイト(ヤフー26%、グーグル41%)は、「認め難い」と位置づけた。
 一方、米国のグーグルで同様の分析をすると、29サイト中28サイト(97%)が「納得できる」と評価できた。グーグル社の日本法人は「検索結果の決め方は日米で同じ」と説明している。【高木昭午】

2009年8月28日金曜日

新型インフル流行 10月にも第1波ピーク

2009年8月27日 提供:毎日新聞社
クローズアップ2009:新型インフル流行 10月にも第1波ピーク

 <世の中ナビ NEWS NAVIGATOR>
 全国的に流行の勢いが止まらない新型インフルエンザ。厚生労働省は、集団感染の発生件数は23日までの1週間で前週から2割も増えたと発表した。新学期が始まった直後に休校する学校も相次いでいる。新型インフルはどこまで拡大するのか。流行拡大に伴い、重症患者が増え続けると、医療機関の受け入れが困難になったり、患者同士の接触で感染が広がることも懸念される。
 ◇沈静化後、第2波も 専門家「春までに3600万人」
 「10月が流行第1波のピークかもしれない」。冬とみられていた新型インフル流行のピークが大幅に前倒しになる可能性を、専門家が指摘し始めた。国立感染症研究所の安井良則・感染症情報センター主任研究官は「秋に感染者数が減る要素がない」と説明する。
 浦島充佳・東京慈恵会医科大准教授(疫学)によると、過去の新型インフルのパンデミック(大流行)は、流行期入りからピークまで約1カ月半。厚労省は今回、今月21日に流行開始を宣言したためこれを当てはめると10月にもピークを迎えることになる。厚労省は10月下旬にも新型用ワクチン接種を始める方針だが、ピークに間に合わない恐れが出てきた。しかもこれは第1波のピークで、いったん沈静化した後に第2波があるとの見方も強い。
 では最終的にはどこまで拡大するのか。
 季節性インフルエンザは毎年、約1000万人が感染し、流行期は12-3月。昨秋-今春に定点医療機関から国立感染症研究所に報告された患者数は、1月19-25日に1施設当たり37・45人に達し流行のピークとされた。これは厚労省が新型流行を宣言する根拠となった8月10-16日の同1・69人(全国患者推定数は約11万人)の約22倍に当たる。
 ほとんどの国民は新型ウイルスに対する免疫を持たないため感染は容易に広がり、新型が流行のピークを迎えれば、季節性の数倍規模になるとされる。
 東京大医科学研究所の河岡義裕教授(ウイルス学)は「この冬、必ず日本で大流行する」とし、季節性の3倍以上の規模となり、来春までに国民の約30%、約3600万人が感染すると予測する。浦島准教授は最大約5000万人の感染可能性を指摘。押谷仁・東北大教授(ウイルス学)は「11年春までに約8000万人が感染し、患者は5000万人に達するのではないか」と警鐘を鳴らす。世界保健機関(WHO)は8月、大流行が終わるまでに世界の人口の約3割、約20億人が感染するとの予測を公表した。【江口一、関東晋慈】
 ◇重症患者対策が急務
 新型インフルの症状は季節性とほぼ同じだ。だが感染者が多くなれば、季節性に比べ重症患者も増加するとみられる。
 21日朝、救急車が千葉県東部の中核病院、県立東金病院(東金市)に到着した。運ばれたのはぜんそくの既往症を持つ50代の糖尿病の女性。体温は40度、胸の痛みを訴えていた。簡易診断キットでA型インフルと判明、多臓器不全の恐れがあり血圧も低下し始めた。
 「新型かもしれない。集中治療が必要だ」。内科医が付き添い、集中治療室(ICU)のある千葉市内の病院へ転院した。女性は5月を最後に通院しておらず、過去1-2カ月の平均的な血糖状態を示すヘモグロビンA1cは10%(正常値は4・3-5・8%)を超えていた。糖尿病をはじめ腎臓病、心疾患、呼吸器疾患などの持病がある人は、新型インフルに感染すると重症化しやすい「ハイリスク」とされる。
 東金病院の平井愛山院長は「非常に厳しい状態だった。流行のピーク時にはICUはどこも満床になるだろう。その時はここで診るしかない」と話す。とはいえ、常勤医師はわずか14人。医師らが感染すれば、十分な診療ができなくなり得る。地域の重症患者発生をできるだけ減らすことを目指し▽ハイリスク者への注意喚起の通知発送▽糖尿病治療中断者の把握と早期受診の勧奨▽細菌性肺炎を防ぐワクチン接種--などを始める。
 死亡者が出た名古屋市内の病院では、看護師ら6人への感染が疑われた。医療施設では院内感染防止が極めて重要だ。
 東京都内の人工透析クリニック。仕切りのない部屋に20床を超えるベッドが並び、腎不全で人工透析を受ける患者でいっぱいだ。治療は4-5時間で週3日ほど。院長は「新型インフルの患者でも透析は中止できないから受け入れる」と話す。

2009年8月11日火曜日

自民、民主党ともに“医療崩壊”の本質を理解せず

2009年8月10日 原中勝征(茨城県医師会会長)

--------------------------------------------------------------------------------
 今度の総選挙に臨む各政党の医療・介護に対するマニフェスト読むと、文章的には大変似ていることを感じる。裏を返せば、現在の「医療崩壊」を認め、国民の最も不安に感じている年金問題を含めた「国民の生活保障」が争点になっていると言える。
 自民党は7月30日、民主党(7月27日)より遅れてマニフェストを発表した。「生活を支えるしくみのマイナスを改め、プラスへ」の項に、(1)70歳現役時代―生涯現役社会の実現へ 、(2)老後の安心を支え続ける年金制度の充実強化へ、(3)医療・介護サービスを、もっと身近に。安心と満足が、全国どこでも受けられる健康長寿社会へ、という文字が記されている。医師の増員も挙げている。さらに、民主党と同様、大学病院、社会保険病院、厚生年金病院については地域医療における重要性を述べ存続すること、診療報酬は「骨太の方針」を凍結して増額改定すると述べているが、その目的は従来通り救急、産科および地域医療を確保するためとしている。しかし、数字などの具体策が全く見えない。
 4年前の総選挙時の「自民党公約2005」、いわゆる小泉改革の120項目の4つの大きな柱として、「官のスリム化により少子高齢化の下でも、年金・医療など社会保障の充実を可能に」が掲げたが、実際には全く反対の政策を実行し、「消えた年金」、「医療崩壊」を生じさせた。しかし、今回のマニフェストで、政府の最優先政策として位置づけられた社会保障費年2200億円削減をはじめ、医師増員、医療費の凍結や増額を掲げたのは、従来の自民党の政策と正反対になっている。この方向転換は選挙対策のためか、従来の医療政策の間違いを認めたのか、説明がほしいものである。
 すなわち、このたびのマニフェスト合戦は、自民党政権が作ってきた社会保障や「医療崩壊」の修正案である。ただし、政治家が官僚任せの結果であったことの反省が全く見られない。一方、野党はすべて「後期高齢者医療制度」は年齢による人間差別として廃止を掲げており、廃止による国民保険への資金援助を盛り込んだことは大切なことである。
 次に、民主党のマニフェストの内容を見ると、党を挙げて議論されたとは思えない。医療の現状は複雑であり、現場の一部を強調しても医療は良くなるどころか、かえって混乱してしまう。誤解に満ちた中央社会保険医療協議会(中医協)の改革案、地域医療が病院だけで持っているような内容や米国的なメディカルスクール案などである。期待される民主党である。もっと広く深い知識で政策を作ってほしいものである。
 また、民主党はキャッチフレーズ「誰もが安心して暮らせる社会」の中で、年金について一元化して月額7万円を最低保障することと、社会保障費2200万円削減をしないことを明示している。医療介護については、国民皆保険の堅持からすれば、7万円は現在の特別養護老人ホームの自己負担分に相当し、最低の生活保障かと思われる。医学部定員を1.5倍にして医師数を先進国並みにすることと看護職員などの増員、介護職員の処遇改善を述べているが、この数がわが国に本当に必要な数なのか、医療費や現場検証を検証しつつ見直しが必要になると思われる。
 さらに主要政策のポイントを見ると、救急、産科、小児、外科、そしてへき地の医師不足の解消とその方策、地域医療崩壊を防ぐための医療費増額、医師派遣センターの設置、そして厚生年金・社会保険病院の地域医療に重要な病院として原則公的病院として存続、国民健康保険財政の地域格差の是正などが盛り込んである。自民・公明党、そして民主党双方とも、これらは現在の問題点の指摘であり、地域医療の将来像が見られないことが残念である。すなわち、地域医療の中核ともいえる診療所、中小・慢性期病院について一行も記されていないことは不安を感じる。マニフェストにおける「地域医療」の意味は、急性期病院と同意語と感じられる。地域医療は急性期病院だけでなく、慢性期病院、そして診療所すべての医療機関が連携して成り立つものであり、現在すべての医療機関が崩壊の危機に瀕していることへの配慮が見えない。自民・公明党、民主党の双方とも、「医療崩壊」の本質を理解していないのではないかと思われてならない。
 そのほか、民主党は、医療費の包括化について述べているが、例外規定を設けることも今後必要だろう。自民・公明党、民主党の大きな違いとして、医療費の財源が挙げられる。将来は消費税を含めた国民の負担増は避けられないことは明らかだと思う。しかし、現在国民の多くは、消えた年金、官僚の天下り、特別会計の存在、雇用法拡大による生活不安が解消されない限り、増税には否定的であると思われる。今回の総選挙で期待されている政権交代の意味がここにあるとすれば、当面民主党が公約している、この困難な改革の実行を支持したいと思う。
 政権の担当経験のない民主党、さらに新人が多く入る新しい与党が誕生したとき、いくら立派なマニフェストを掲げようとも必ず壁に突き当たるに違いない。そのときこそ国民の英知を求める姿勢が最も大切であり、政治が国民のものであることの原点に帰することが、国民から期待された政権交代であると評価されるであろう。
 最後に、他の政党のマニフェストを見ると、公明党は結党以来、生活重視を掲げている。また、社民党はセフティーネットの中に具体的数値はないが医師・スタッフの増員、療養病床やリハビリの制限の中止などが入れている。そして、共産党の主張は医師会の主張に近いと思われる。二大政党の流れの中で、党の存亡をかけて書いたマニフェストと思われた。

2009年7月1日水曜日

あごの骨の壊死 がんや骨粗しょう症治療薬の副作用で発症する可能性

あごの骨の壊死 がんや骨粗しょう症治療薬の副作用で発症する可能性… 
医療ナビ2009年6月30日 提供:毎日新聞社
医療ナビ:あごの骨の壊死 がんや骨粗しょう症治療薬の副作用で発症する可能性…

 ◆あごの骨の壊死 がんや骨粗しょう症治療薬の副作用で発症する可能性。厚労省も注意を呼びかける。
 ◇「骨を守る薬」が逆に 投与中の歯科治療注意
 ◇口の中の違和感/歯ぐきに骨露出/歯の脱落…
 問題が指摘される薬は「ビスフォスフォネート」系薬剤。発症率は高くないが、治りにくく、重症化して生活に支障の出る人もいる。厚生労働省も5月、「重篤副作用」として、対応マニュアルを策定した。
 ●破骨・骨芽細胞が死滅
 骨は一見、無機質なカルシウムの塊のようだが、実は骨を壊し続ける「破骨細胞」と、骨を再構成する「骨芽(こつが)細胞」という2種類の細胞活動が均衡を保ち、常に生まれ変わっている。この両細胞が死滅するのが骨の壊死(えし)。「腐骨」と呼ばれる残骸(ざんがい)が異物として体外に吐き出されたり、雑菌の温床となって化膿(かのう)する。
 ビスフォスフォネートは、骨粗しょう症の飲み薬として一般的なほか、乳がんや前立腺がんなどの骨への転移を防いだり、骨髄腫などの注射薬としても広く使われる薬の総称だ。この「骨を守る薬」が逆にあごの骨を壊死させたと03年、米国で初めて報告され、3年後には報告が世界で2500人を超えた。
 ●発症率、注射で1%
 詳しい原因は不明で、発症率は注射で1%前後、飲み薬で0・01-0・04%とする豪州の調査もある。注射と飲み薬では骨への吸収量が約50倍違うためらしい。
 歯ぐきなどに骨の一部が露出したり、腫れたり痛むといった症状が多いが、症状がない場合や「なんとなく口の中に違和感がある」程度のこともある。重症になると、上あごに大きな穴が開き、口から鼻へ水などが入ったり、歯が抜け落ちる場合もあるという。
 国内初報告を行った社会保険船橋中央病院(千葉県船橋市)の高橋喜久雄副院長(歯科口腔(こうくう)外科)は05年、口の中の皮膚が破れ、上あごの骨の一部が露出した81歳の女性患者を初めて診た際、「転移がんと思って疑わず、何度も精密検査した」と話す。当時、患者は乳がんの転移を防ぐためビスフォスフォネートの注射を受けていたが、薬の副作用は想像外だったという。
 米の報告例を知って他の薬に切り替えたところ、2年後に約6センチの骨片がポロリと取れて口の中は元に戻った。しかし、これは良い例で、有効な治療法はまだないのが現状だ。一定期間休薬したり、うがいや化膿止めで口の中を清潔に保って経過を見る治療が主だという。
 ●糖尿病患者も要注意
 不思議にも、壊死が起きるのはあごの骨だけだ。高橋医師は、もともと口の中は常在菌が多いほか、あごの骨を覆う口の中の皮膚は薄く、歯の周囲から感染が骨に及びやすいといった条件が重なるためだと推定する。
 このため、ビスフォスフォネートの投与中に抜歯やインプラント、歯槽膿漏などの歯科治療を受けた人は特に注意が必要だという。抜歯後には発症率が8-9倍上がるとの調査もあり、厚労省のマニュアルでは、若年性リウマチなどでステロイド薬を併用している人や糖尿病患者も要注意とされる。予防が重要で、患者はビスフォスフォネートを使っていることを歯科医に必ず言うこと、年1、2回は歯科検診を受け、常に口の衛生状態に気をつけること――と高橋医師は説明する。
 最近では、骨が壊れると成分のコラーゲンが溶け出すため、血液中のコラーゲン濃度を測って適切な休薬期間を取る予防法の研究も始まった。一方で、米国で07年、骨粗しょう症の注射薬が認可されるなど、骨への吸収力を高めた薬の開発も進んでおり、「今後より一層注意が必要になる」と高橋医師は訴える。【山田大輔】
………………………………………………………………………………………………………
 ■早期発見のポイント
・口の中の痛みがなかなか治まらない
・歯ぐきに白や灰色の硬いものが出てきた
・あごが腫れてきた
・下くちびるがしびれた感じがする
・歯がぐらついてきて、自然に抜けた
 →すぐに医師や歯科医に相談を
 ■主な予防・治療策
・ビスフォスフォネート投与前に歯科を受診し、抜歯など必要な治療は済ませておく
・歯磨きやうがいを行い、口の中の衛生状態に気をつける
・定期的に歯科検診を受け、口の中をチェックしてもらう
 (骨壊死が始まっている場合)
・化膿や痛みがあれば抗菌薬で治療する
・医師に十分相談した上で可能ならビスフォスフォネートの投薬を一時休止する
・腐骨を切除する
 =厚生労働省マニュアルより

2009年6月30日火曜日

患者を叱る医師になれ

6/8号 「患者を叱る医師になれ」、コラムニスト・勝谷氏2009年06月08日
 「確かに親は月末には徹夜でレセプトを書いていたが、僕が子供の頃、開業医は非常に金持ちだった。医師が特別な時代があった。一方、今は初期投資をして開業しても、元が取れるか取れないかという時代。しかし、国民の中にはこうした『お医者さん、イコールお金持ち』という深層心理が残っている。その時代を知っている人は子供や孫にそのことを話したりもする。世間の目は容易には変わらないことを理解してほしい」  「医師をよく知る立場」から、一般の方が医療、医師をどう見ているか、ではどうすれば患者とコミュニケーションが取れるかという視点から講演したのがコラムニストの勝谷誠彦氏。勝谷氏は、昨日(6月7日)に開催された第2回全国医師連盟集会で、「日本の医療を斬る - 全国医師連盟に期待すること-」というテーマで1時間強、記念講演を行いました(同集会については、『医師個人加入の労働組合「全国医師ユニオン」設立』を参照)。  勝谷氏は、文藝春秋で『週刊文春』などの記者を務めた後に独立、現在は雑誌に多数連載するほか、テレビのコメンテーターとしても活躍しています。「記念講演」と言っても堅苦しいものではなく、歯に衣着せぬ、軽快なトークショーでした。
 勝谷氏は1960年生まれ。同氏の父親は1959年に兵庫県尼崎市で開業、81歳の今でも現役だそうです。勝谷氏の弟が医院の後継者。
 勝谷氏がまず紹介したのは、子供・少年時代のエピソード。勝谷氏は、全国でも有数の進学校、灘中・高等学校の出身。「優秀な成績で入学したのに、どんどん下がっていった。進学校は何もしてくれない、自分で勉強するところだということに気づいたのは後になってからのこと。1日1時間授業に出ればよかったので、皆勤賞だった。1学年4クラスで、土曜日は4時限まで。他のクラスの授業にも出て、4時間とも体育をやっていたこともあった」(勝谷氏)。そんな勝谷氏が高校生の頃、母親から言われた言葉が、「離乳食としてポタージュを食べさせるために、宝塚ホテルに毎晩行ったのに……。どうしてこうなるの」。
 自家用車を持つのが珍しかった時代に、ご両親は米国製の車に乗って神戸のダンスホールまで遊びに行っていたそうです。近所の開業医の先生を見ても、往診に行く時とプライベートで乗る車を変えていたとか。
 「開業医は、その辺りの後ろめたさをずっと感じながら、やってきているのではないか。こうしたことを気にすることが、実は日本の医療の様々なところに関係しているのではないか。『妊婦のたらい回し』などのヒステリックなマスコミ報道の根底にも、人間の嫉妬、あえて言えば下劣な感情があるのではないか。それを怒っても仕方がないことで、どう解消していくかがこれからの医師と患者・国民との関係を考える上で重要なのではないか。データで現状を示すことも大切だが、お互いに本音でトークすることも必要」(勝谷氏)。
 患者とのコミュニケーションの重要性を強調する勝谷氏は、以下のように展開します。
 「モンスター・ペイシェントと言うべきでない。モンスターと言ったら、それは逃避。私の父は本当に患者を叱っていた。往診に行くと、しつけまでやっていた。これを50年間も続けていると、地域にいい患者が育ってくる。しかし、今は家の中には踏み込まなくなっている。これが本当にいいことなのか」
 「長野県では、若月俊一先生(地域医療で有名な佐久総合病院の創成期を支えた医師)が、患者宅で、味噌汁の塩分指導までしたことが今の低医療費につながった。患者に文句を言う医師であってほしい。『患者に文句を言ったり、叱ることが評価される』という論壇を作ってほしい」
 「兵庫県立柏原病院では、お母さんたちが小児科を救った。お母さんたちは、国が何をしてくれるかではなく、自分たちに何ができるかを考えている。疾患別の患者会だけでなく、例えば、勤務医が、診察以外に患者さんと向き合う場、サークルのような場を作ってはどうか。そこで話し合っていくうちに、『お前、何を言っているんだ』と患者を叱ってくれる怖いオヤジが出てくるのではないか。訴訟社会の米国とは異なり、日本社会にはまだこうしたことができる余裕があるのでは」
 勝谷氏の話は、記者クラブ制に依存したマスコミへの批判、福島県立大野病院事件などを例に挙げた検察批判にも発展。すべてを紹介すると長文になってしまうので、「記念講演」の主題である、「全国医師連盟に期待すること」に関連したコメントの一部を最後に取り上げます。
 「日本は、利権談合共産主義国家だった。これは、ボスがいて、パイを配分する仕組み。典型的なのが、医師会と農協。私の父は臨床医としてはすばらしいが、医者としての仕事が大事なのか、医師会の派閥活動をやっているのかが分からない時があった。全体のパイがあるときはいいが、パイが少なくなってくると、この構造が崩れ、ボスの力がなくなる。特に、ここ10年でこうした構造は崩れた。先人たちにこれまでできなかったが、全国医師連盟のような会が温厚に開催できること自体、画期的ではないか。上意下達の利権分配型の組織ではなく、自分たちで自分の権利を守るという組織にしてほしい」
以上2009/6/8
橋本佳子 氏

2009年5月28日木曜日

日本の医療をどうしたいですか?

社会保障費抑制の方針継続求める…財政審の建議原案
2009年5月27日 提供:読売新聞

 財政制度等審議会(財務相の諮問機関)が6月初旬にまとめる、2010年度予算編成に向けた建議(意見書)の原案が26日、明らかになった。原案は、与党内でも方針撤回を求める意見が根強い、社会保障費の伸びを毎年2200億円ずつ抑制する方針について、「歳出改革の基本的方向性は維持する」とし、抑制を続けていくことを求めた。
 一方、国と地方の基礎的財政収支(プライマリーバランス)を11年度に黒字化するとした政府の財政再建目標について、目標達成は「困難になったと言わざるをえない」と指摘。ただ、目標自体は撤回せず、引き続き「プライマリーバランスの黒字化に向け、その道筋を示しつつ、その早期実現を図ることが必要」との見解を盛り込んだ。
 長期的には、国内総生産(GDP)に対する国と地方の債務残高の比率を引き下げる重要性を訴えた。
 財務省には、建議を通じて他省庁や与党からの歳出圧力をけん制する狙いがあり、提言内容を09年度の「経済財政改革の基本方針」(骨太の方針)に反映するよう求めていく考えだ。だが、次期衆院選などをにらみ、与党内からは今後、社会保障費の抑制方針の撤回などを迫る声が上がりそうだ。
 ◆財政審建議原案の要旨◆
 ▼景気後退に伴う税収減と一連の景気対策により、財政悪化が見込まれ財政は危機的な状況
 ▼2011年度までの国・地方のプライマリーバランスの黒字化目標の達成は困難になったと言わざるを得ない
 ▼財政の持続可能性を確保する上で、国・地方の債務残高対GDP比の発散を止め、安定的な引き下げが必要不可欠。まずプライマリーバランスの黒字化に向け、その道筋を示しつつ、早期実現を図ることが必要
 ▼10年度予算編成は、経済状況に応じて弾力的に対応しつつ、「骨太の方針2006」の考え方を踏まえ、歳出改革を維持していくことが必要
 ▼医師確保対策等必要な対応を行う必要はあるが、社会保障分野も「骨太の方針2006」等に示されている歳出改革の基本的方向性は維持する必要がある

歯科の保険制度崩壊の危機

東京新聞から、みんなの歯科ネットワークが取材を受け「こちら特報部」というコーナーで「歯科の保険制度崩壊の危機」(仮)という特集記事が5/31(日)東京新聞に掲載されます。
歯科の問題を丁寧に取材しています。みなさんぜひご覧下さい。 
概要は以下です。※あくまで取材時の概要であり、紙面では多少の変更もあります。

歯科においては保険でまじめにやればやるほど経営は苦しくなる。 その上、保険ではビジネスモデルが成立せず、また高得点での指導などもあり「保険で経営努力は事実上ムリ」と歯科医は保険をサボタージュし、患者さんへの最良の治療の提供の為、そして経営を考え自費に逃避する。 結果、保険は形骸化し、ますます歯科医は保険治療をしたがらなくなる。そうなればイギリスなどの例にあるように高額な治療費が払えない人は、自分で自分の歯の治療をするなど異常事態となる。

歯の疾患は全身に及ぼすものも多く、歯科の保険が崩壊してしまった場合どうなってしまうのか。 保険は公共財すなわち国民のものである。「歯科医はワーキンプア」などと興味本位で見ているのではなく、保険の低点数は国民の不利益になることを認識し改革をしていかねばならない。
※また、このような歯科医院経営の圧迫のしわ寄せを最も受けているのが技工士であり、その過酷さから7割以上の離職者が出ているということも同時掲載の予定です。

http://www.minnanoshika.net/

http://www.minnanoshika.net/wiki/index.php?%B0%E5%CE%C5%A4%CB%A4%AA%A4%A4%A4%C6%A5%D3%A5%B8%A5%CD%A5%B9%A5%E2%A5%C7%A5%EB%A4%CF%C0%AE%CE%A9%A4%B7%A4%CA%A4%A4

http://www.minnanoshika.net/wiki/index.php?plugin=attach&refer=%B0%E5%CE%C5%A4%CB%A4%AA%A4%A4%A4%C6%A5%D3%A5%B8%A5%CD%A5%B9%A5%E2%A5%C7%A5%EB%A4%CF%C0%AE%CE%A9%A4%B7%A4%CA%A4%A4&openfile=%B0%E5%CE%C5%A4%CB%A4%AA%A4%A4%A4%C6%A5%D3%A5%B8%A5%CD%A5%B9%A5%E2%A5%C7%A5%EB%A4%CF%C0%AE%CE%A9%A4%B7%A4%CA%A4%A4%20.pdf

より引用
PDFをコピーしたので段組が崩れています。
リンクが壊れてなければ上のリンクからどうぞ

◇ ◆ ◇ 医療においてビジネスモデルは成立しない ◇ ◆ ◇
保険医療において「ビジネスモデル」は成立しません。健康保険のルールは頻繁に、突然に、通達も無く、遡って変わります。役人が、末端の役人ですら、ルールを変更でき、遡って適応できます。100 円バーガー。10 円饅頭。350 円の牛肉料理、牛丼。これらの「ビジネスモデル」は、大量仕入れやコストカット、効率的な調理システムなど簡単にマネが出来ないシステムを構築しました。これらのモデルが出たときには世間の注目を集めました。
医療において、こうした創意工夫が可能でしょうか。ビジネスモデルが成り立つでしょうか。たとえば、歯科医療で入れ歯に特化、他の歯科治療は行わないというシステムを作ります。保険治療では、価格は公定価格ですから変えられません。一般的な入れ歯では出来上がるまで3~4 週間かかりますが、これを3 日で作ります。スピードが売りです。「早く」というニーズはありますから集客が見込めます。一定価格なので、集客で利益を上げるビジネスモデルです。
指導料を集中的に請求するモデルも考えられます。歯科医師は削る、詰める、入れ歯を作るだけではなく、病気を良くするために生活上の留意点や食事内容の注意や指導を行うことができます。この指導に専念するビジネスモデルです。システムの構築にそれなりの手間がかかりますが収益が見込めます。
しかし、どちらも数ヶ月、遅くとも1 年以内に終焉するでしょう。保険指導という名目の規制がかかります。「入れ歯だけということはありえない」「指導だけを行うことはありえない」「平均から突出している」こういう指導に対して、特化した「ビジネスモデル」だという言い訳は通用しません。ビジネスモデルが成立する条件は何でしょうか。いろいろな要件があるでしょうが、ルールが変わらないこと、見通しが立つことが必須です。ルールが変わったとき、牛丼屋は売る物がなくなり閉店を余儀なくされました。狂牛病の牛肉輸入禁止です。ルールの変更がビジネスモデルを壊しました。
制度上、請求しやすい点数があったとして、多くの歯科医師が請求しました。不正をするわけではありません。ルールブックに書いてある通りに行いました。数ヶ月で請求できなくなります。実際、今回の改正でも大臣告示によるルールが、単なる事務連絡で変更されました。大元の大臣告示が書き換えられたわけではなく、「認めない」と事務連絡が出ただけです。どういう根拠があるのか、なぜ、そんなことが可能なのか分かりません。この事務連絡も医療機関に直接に送られてくるわけではありません。「なぜか」と国会議員が国会で聞いても、言語明瞭・意味不明な返答しか帰ってきません。一定のルールがあり、この中で創意工夫をします。このルールが一方的に、片方のプレイヤーの都合で変えられたら試合は行えるでしょうか?3ストライクでアウト、4ボールで出塁というルールの野球が、今日は観客が多いから、打者凡退が続いているから、1 ストライクでアウト、即チェンジ、さっさと9 回を終わらせろと途中で言われたら、プレイヤーはどうすべきでしょうか。そして見に来た観客はどうすればいいでしょうか。ホームベースを踏んだ人数が多い方が勝ちというルール以外は、適時、変更ありというルールならば、勝敗がつけることが出来ます。次の回が1 アウトでチェンジなのか、10 アウトでチェンジなのか分からないけど、とにかく点の多い方が勝ちならば、まだやりようがあります。変更が遡って適応されるとしたら勝負は可能でしょうか。9 回になって、1 回のホームランは認めないとされたら。後出しジャンケンで、どっちが勝つかの解釈もルールも遡って変えられる、そんなゲームに誰が参加するでしょうか。
保険医療ではこうしたルール変更が頻繁に行われています。ルールを変えるルールは闇の中、いえ、無いのかもしれません。国会で厚生労働大臣が「おかしいから正す」と答弁しても、正されるのはほんの1 ヶ月間だけで、翌月には元のおかしい状態に戻ります。急に変更するのは合理性がないそうです。大臣までがおかしいと認めたルールも、遡って変更されたルールで生じた違反も「不正」とされます。
数年後に予定されているレセプトオンライン化により、機械的に「平均から逸脱→不正」と判定されるでしょう。不正と判定されたら、自殺者まででている「指導」が待っています。いくらでもいやがらせが可能な制度が待っています。理不尽なルールであろうと従わざるを得ない現実があります。このレセプトオンライン化は、保険医療のさらなる経済的抑制、受けられる医療の縮小、個人情報の漏洩、医療崩壊の促進などいろいろな危険性が指摘されています。今日、力の限りを尽くした治療を、ルール通り請求して大丈夫でしょうか。分かりません。ルールがいつ変わるのか。分かりません。私は不正をしたのでしょうか。分かりません。誰が不正か否か知っているのでしょうか。誰も知りません。「俺がルールだ」「保険治療は医学的に行うのではなくルールに則ってやるものだ」と言う役人が正しいのでしょうか。
保険医療ルールとはその程度のものでしょうか。保険医療現場でも創意工夫は可能です。でも、経営的には成立しません。
結局、国は何がしたいのでしょうか。ある役人が言いました「それを許すと、蔵を立てる医者が出てくる」ユニクロの社長は豪邸に住んでいます。イチローは数億円もらっています。能力がある人が大金を稼ぐ。資本主義ですから、正しい行為です。医療において、特に、保険制度においては、経済行為---お金を稼ぐこと---は悪とされています。医者は「かくあらん」なんて精神論・倫理観ではなく、国の方針です。そして特化すること、狭い範囲の専門家、すなわちスペシャリストとして保険医療を行うことも事実上、認めていません。「狭い分野だけに特化するなんてありえない」そうです。
どんな職種であれ、人ひとりを派遣して1 時間労働させる。移動の交通費、移動時間の拘束、勤務コスト、作業時間中の勤務コスト。1 日3~5 件まわるとして、労働者のフィー、雇用元のフィー、その他の材料コストを考えると最低でも1 日3~5 万円のチャージが必要です。介護保険だと1 件当たり数千円~2 万円程度の報酬。移動の時間ロスがあるので、どんなに回れても10 件以下。件数を回ろうとすれば単価が下がる。単価を上げようとすると保険の規制がかかる。1 日分のチャージを稼げない。あげくに同じ行為は「十分に普及したため」単価が下がります。このしわ寄せが現場に、末端の労働者にいきます。これが介護の現場から人が立ち去っている理由です。
道路工事はもう十分に普及した技術なので単価をうんと下げてもおかしくないのですが下がりません。歯科医療の現場でも、人が立ち去りつつあります。歯科医療者の養成学校の大部分が定員割れをし、閉校も相次いでいます。国家医療資格を得た人たちが現場から立ち去っています。現場から立ち去らないでも、保険医療から立ち去っています。深い不信と絶望のもとに。「一度入れたクラウンには、2 年間お金を出せません。その間に再治療の必要が生じたときには、国の制度では面倒を見れません」「リハビリは90 日間しか行えません。90 日を過ぎてリハビリの効果がない方の面倒は見れません」
----
なぜですか「%$+!☆¥(国会答弁)」
こんな意味不明な答弁ではなく、「お金がありません」「もっとお金を出してください。現場には予算が必要です」「財源はどのようにしたら良いと思いますか。増税、赤字国債、他の予算を削る、どうしたらいいですか」「どのぐらいの予算が必要ですか。それだけ出すと何ができますか」「どのようなルールならば、皆が納得できますか」継続できるシステム。必要なことを必要なだけ行える制度。創意工夫が認められる制度。経営が成り立つ報酬制度。こうした当たり前の事が今の保健医療には認められていません。したがって、ビジネスモデルなんて成立しえません。
ビジネスが成立しないところから人が立ち去るのは当たり前のことです。持続可能な保険医療システムがないと、元気に年老いて、ころりと逝けるような世の中にはなりません。
ミサイルでも落ちて来いなんて叫ばずに済ませられる世の中にしたいですね。
May23, 2009 / Asahai wrote

2009年4月1日水曜日

病院の医業収支赤字、過去最大 100床当たり月1261万円 08年調査 2009年3月31日

提供:毎日新聞社
医業収支:病院の赤字、過去最大 100床当たり月1261万円--08年調査

 全国の病院の医業収支(医療での収入と経費の差)の赤字が08年に、ベッド数100床当たり月約1261万円に上ったことが、全国公私病院連盟(竹内正也会長)と日本病院会(山本修三会長)の調査で分かった。67年の調査開始以来最も赤字が大きかった。コストカットを優先する病院が多い中、診療報酬だけで経費を賄えない現状があるとみられる。
 全国の病院の約4割にあたる3412病院に対し、08年6月1カ月の医業収支などを尋ね、1206病院(回収率約35%)が回答した。
 医業収入は100床当たり約1億3609万円で、対前年比1・1%の減少。内訳は、入院収入が約9063万円(対前年比0・1%増)でほぼ横ばいだったが、外来収入は3・6%減の約3995万円と落ち込んだ。
 必要経費に当たる医業費用は約1億4870万円で、1・2%増。給与費の伸びが目立ち、1・3%増の約7791万円。100床当たりの赤字額は月約1261万円で、過去10年で最少だった00年(月約475万円)の倍以上に膨れ上がった。
 また、医業外を含めた総収支でみると、黒字の病院は23・8%にすぎず、76・2%は赤字だった。【河内敏康】

2008年10月14日火曜日

フジテレビ、2審も敗訴 医療事故の無罪報道

記事:共同通信社

提供:共同通信社


【2008年10月10日】


 東京女子医大で2001年、心臓手術を受けた群馬県の少女=当時(12)=の死亡事故をめぐり、業務上過失致死罪で1審無罪となった元担当医が、判決を報じたフジテレビの4番組で名誉を傷つけられたとして1500万円の損害賠償を求めた訴訟の控訴審判決で、東京高裁は9日、同社に100万円の賠償を命じた1審判決を支持、フジテレビの控訴を棄却した。
 渡辺等(わたなべ・ひとし)裁判長は1審同様に、4番組のうち1番組での名誉棄損を認定。「テロップで『未熟な医師』と表示し、専門家として力量が不十分だったため事故を予見できなかった、との印象を視聴者に与えたことは否定しがたい。無罪判決の判断とは重要な点で異なり、元担当医の人格的価値を損なった」と判断した。
 元担当医は05年11月30日、東京地裁で無罪判決を受けた。検察側は判決を不服として控訴している。
 判決によると、フジテレビは同日夕のニュース番組で、判決内容を報道した際、医師が未熟だったとする趣旨の弁護士のコメントを、テロップ付きで紹介した。

2008年10月6日月曜日

医師と医療行為

http://homepage3.nifty.com/dontaku/ijihou/CHAP1.htm

より



第1章 医師と医療行為

 医療は人間の生命や健康に直接関与するものであり,医師に無秩序に任されてよいとはいえない。ことに,医薬品の繁用,複雑で高度な医療器材の使用,多種の医療関係者のかかわるチーム医療など多様化する医療を適正に確保するためには,人と物に対する規制を必要とする場合も少なくない。 医療に関連する法としては,全市民が公平に医療を受けられる医療制度,医療事故の発生したとき適正な処理のできる法制度,さらに臓器移植,遺伝子操作などに対応する法規範などを必要とする。 また,規制は法規に頼るだけではなく,倫理的,社会的規範を基盤として,法はその上にあるものと考えるべきであろう。医療のように専門性の高い,医師と患者との信頼関係に依存する業務においては,ともあれ,まず倫理的,社会的コントロールが作動し,次いで法規範を問題とすべきものと思う。
1 医師と法律
 日本は法治国家である。したがって,医師の行動(医療)規範も法によって規制される部分が少なくない。しかし,法は抽象的であったり,限定された状況の範囲内でのみ適用されるものだったりして,具体的な行動規範としての指針に欠けることもある。その場合には,医師は法律を自分で解釈し,自己規制をしなければならない。そこで,医師には広い視野,深い洞察力が要求され,法の精神や意図を的確に認識し,それに基づき客観的な価値判断および行動を展開しなければならないことになる。 日本国憲法は,基本的人権の尊重を基本理念とし(第11条),生命権,自由権,幸福権(第13条),健康で文化的な生活(第25条)を維持する権利などを保障している。これらの権利を充足させるために諸制度は整えられることになる。そして,医療はそのうちの有力な一手段といえよう。 ここで特に触れたいことは医師の裁量権である。裁量権とは,医師が患者を診療するに当たって,考えられるいろいろな方法のうちからある方法を選択することのできる権利,そしてその選択について一定の範囲内では裁判所の介入をも許さない権利をいう。換言すれば,医師は専門家としての自分の行動を決定するに当たり,適正な手続きを経て,考慮しなければならない問題点に適切な対応をしておればよく,問題点の評価や勘案は自由であるということである。医師の裁量権は診療契約である委任契約とも絡んで広く認められている。医療のもつ高い専門性と緊急性のために,第一線の医師の判断が特に尊重されているのである。それゆえに医師の判断は的確でなければならない。
2 医師の定義
 医師とは,形式的には国によって医師免許を与えられた者であり,実質的には医療および保健指導に当ることを業とする者である。少し堅苦しい言葉で言い換えると,「人の生命および健康を管理する業務(医業)に従事するものとしての資格を国によって認められ,かつ,その旨を医籍と呼ばれる公簿に登載された者」と定義される。 このことをもう少し詳しく見てみよう。(1) 医師は,医師免許を受けた者である。 医籍は,医師という身分を示す公の台帳であり,厚生省に備えられている。医師国家試験に合格した後,医籍に登録されて医師の資格を得ることになる(医師法5条・6条)。この要件を満たさないものは医師ではない。したがって,いわゆるもぐりの医者がいかに優秀な技能を有していたとしても,それが医業を営めば無免許医業罪にあたる(医師法17条)。(2) 医師は,人の生命・健康を管理すべき業務(医業)に従事するものである。 生命と健康は人にとって最も大切なものである。そして医業は人の生命・健康に直接重大な影響を及ぼす危険な業務である。したがって,医業を行なう医師は高度の医学上の知識と技術経験を有する者でなければならない。(3) 医師は,高い倫理感を有する者である。 医師は,医療および保健指導を司ることによって公衆衛生の向上・増進に寄与し,もって国民の健康な生活を確保することを使命とする(医師法1条)。診療行為は患者の生命・健康の維持回復を目的とするものであるとはいっても,本質的には患者の身体に対する侵襲であることには違いない。したがって,高度の倫理性に医業が裏打ちされていなければ患者の精神や身体がどのように取り扱われるか保証されないということになる。
3 医療行為の条件
 医療行為は重大な危険を内包する行為である。このような危険は医療のすべての場面に潜んでいる。手術・麻酔はもちろん,日常的な検査,投薬,注射などいかなる場面でも,たとえ事故の起こる可能性は小さくとも,常に危険が伏在しているといっても過言ではない。この意味で医療行為は許された危険 das ealaubte Risko とよばれる。これは,ある業務が多少の危険性を内包していても,その業務の社会的な必要性や有用性が極端に高い場合には違法性はないとする法理である。つまり,医療は危険性をはるかに上回る有用性を持っているという理由で業務として成立しているのである。「医療は元来危険性を内包しているのだから,不測の事故が起こってもそれは許されるべきである」という意味ではない。 他人の身体を切開したり,劇薬を飲ませたりすると,刑法上の暴行や傷害の罪に問われる(刑法第204条など)。しかし,それを行うのが医師であって,それが業務であれば犯罪を構成しない。といっても自由気儘にそれが許されているわけではなく,それが医療行為として認められる場合にのみ合法なのである。医療行為がなぜ犯罪を構成しないか,については次の諸説がある。
(1) 医療行為は元来正当な行為であり,刑法でも問題にならない(正当行為説) (2) 医療行為は,患者の承諾があるから,傷害罪にならない(患者承諾説)(3) 医療行為が正当であることは慣習法がこれを認めているからである(慣習法説)(4) 医療行為は,国家が正当であると承認しているからである(国家承認説)(5) 医療行為は,小害で大害を排除するものであるから,犯罪にならない(必要行為説)(6) 医療行為は,人の身体に対する侵害を目的としないから,犯罪にならない(目的説)(7) 医療行為は,医師等当然の業務であり業務権に基づくものである(業務権説)
 いずれの説も医療行為を非行・犯罪であるとはしない。通説は,医療行為を法令による正当業務行為に相当する(刑法第35条)ものと解している。 医師の行為が医療行為と認められるためには,次の3つを充足していなければならない。
1. 治療を目的とすること 2. 医学上認められた手段および方法であること 3. 患者,保護者,代理人などの承諾のあること
 医師が善意であって,しかも過失もなく,目的が達成されても,前に述べた3点を充足していなければ原則的には違法行為である。逆に前記3点を充足していれば,患者に不幸な結果を招いたとしても医療行為であることに変わりなく,診療過程に過失の発見されない限りその責任を問われることはない。  ここで,医療行為が適法であるための3条件についてもう少し考えてみよう。
(1) 治療目的 つまり,行為の目的が治療でなくてはならない。ここでいう治療とは,疾病の予防や健康診断,アフターケアなどを包括する。なお,治療であるか否かは,医師の専門家としての判断に委ねられるもので,患者の一方的要求と合致しないこともありうる。患者からいかなる要求があろうと,医療目的以外に身体を侵襲することは医行為とはいえない。例えば,暴力団関係者の「指つめ」を手伝ってやることなどはそれに該当する。ところで,性転換手術は従来医行為ではないとされてきた。しかし,手術を望む者が性器の外形を変えることによって自己の性的同一性を取り戻すことができるのなら,それもある意味では治療行為と言えるとする見解もある。
(2) 医学上認められた手段および方法 これには以下の2つの要件が必要である。
1) 医学的適応性 : 疾病の治療手段がその当時の医学界で一般的に承認されていること。2) 医学的正当性 : 疾病の処置法が一般に承認されており,医学の準則(lege artis)に従ってなされていること。
(3) 患者の承諾 医療はあくまでも患者の利益のために行われるものでなくてはならない。したがって,どのような治療を受けるかは最終的には患者の決定すべき事柄に属する(患者の承諾権)。 患者(健康な人ではもちろん)の自己決定権は,生命権や健康権に劣ることのない高いものである。客観的に有効な治療行為であっても,患者の承諾のない場合,特に明示の意思に反したときは,違法とされる。手術の場合は術前に,また,胃の透視と手術の重なるようなときは別々に承諾を得る必要があろう。日常的な処置については,診療開始時の承諾に含まれていると解してよいとされている。 ここで患者の承諾と医師の説明義務との関連についてみておこう。 患者の承諾は十分に主体的判断であることを要する。処置の性質,危険性の程度,治療法,予後などを理解した上でなされた判断でなくては法律的に有効とはいえない。そのために医師の適切な説明が必要となる。説明義務は,医師法第23条の療養上の指導義務,あるいは診療契約としての委任における善管注意義務(民法第644条)および報告義務(民法第645条)などに基づくものと解されている。
4 例外的医療行為
 前に述べた医療行為としての3条件は常に完全に満たされなければならないわけではない。一つの条件が不十分であっても許されることもある。その場合には他の条件がより整っていることが望まれる。例えば,次のような例はそれに当たる。(1) 輸血用血液の採血 採血される本人にとっては医療ではない。しかし,延長線上には受血者の治療という明白な目的がある。したがって,他の2条件の揃うこともさることながら,事前の検診や採血した血液の性質などについて医師の責任は通常の医療行為に劣るものではない。(2) 実験的治療行為 新しい治療法の開発や新薬の治験の場合,前述の医学的適応性・医学的正当性の条件の不十分なこともある。すなわち,効果や安全性の点で必ずしも安定しているとはいえない。とは言っても,これらを全面的に禁止すると医療の進歩を阻害する。そこで,この様な行為も医療行為と認めざるを得なくなる。その場合は,次のような事項を厳格に守らなければならない。
1) 標準的治療方法を試みても効果のみられなかったこと。2) 効果や安全性について客観的なデータのあること。3) 患者に対して,治療行為,危険性,標準的(一般的,従来の)方法との相違や特異性などにつき十分説明し,患者の承諾を得ておくこと。
(3) 第三者の承諾 患者の承諾が直接得られぬことは医療の実際において少なくない。その場合,他の者の承諾をもってそれに代えることもできる。
1) 患者が幼児のとき,通常は親権者(両親)の承諾でよい。2) 理解力のある未成年者のとき,本人および親権者の一致した承諾が望ましい(12歳位以上)。3) 精神障害者のとき,原則としては本人の承諾を必要とする。しかし,精神保健法では特に保護義務者の承諾を求めることがある。(精神保健法第33条の医療保護入院)4) 患者が意識喪失状態のとき,配偶者など近親者が親しい順に承諾権を持つ。しかし,意識が回復すると承諾権は直ちに本人に帰属する。
 このように第三者の承諾を認める根拠は,第三者が本人の意思を推測して代弁している(意識喪失者),第三者の意思をもって患者の意思に代える(幼児)などがあるが,いずれも患者の直接承諾と比較して不完全である。したがって,承諾のとり方などにも十分の配慮が望ましい。特に幼児の場合,医療上または社会的に第三者の意思がきわめて不穏当なときは,それに従わなくてもよい状況も起こりうる。 患者の承諾を得られない強制措置によって治療を行いうることを法律は許容している。精神保健法上の医療保護入院・応急入院(第33条)がその例である。 患者の意識喪失の場合における診療は,いわゆる緊急事態に対する対応である。緊急を要する状況下では第三者の承諾を得る余裕のないこともあり,また医療施設の不備なところで治療を迫られることも少なくない。この場合にはいわゆる緊急避難の法理の適用となろう。緊急避難について刑法(第37条)は,次の3要件が整えば認められるとしている。
1) 患者の生命および身体に危険の存するとき2) 他に方法のないとき3) 患者の身体に侵襲を加えても,放置しておくより有益であるとき
 医療に《緊急避難》を適用しようとするとき,意思は諸般の事情を総合して的確に判断をしなければならない。 医療行為それ自体に対しては,医師の自由裁量の余地は広く認められる傾向にある。しかし,管理行為すなわち患者の近親者への連絡などについては,厳しい法的な判断が下されているのが実情である。医師のなかには管理行為に対して無責任に思える言動もあるが,チーム医療の責任者として医師の責任は重いことを銘記すべきである。
 
5 診療と契約
 患者が医師に診察と治療を依頼し,医師がこれに応ずることによって医療は成立する。この関係を法律的に表現すると契約ということになる。契約には,一般に雇用,請負,賃貸借,委任などの種類が知られ,それぞれに発生する権利と義務の性格は異なっている。 医師と患者の間にも,診療に際しては契約が成立している。しかし,診療契約においては,ことの性質上,契約書を作成することもなければ,履行期限を定めることもない。「傷病を治して健康体にして欲しい」という患者側の希望・目的は明らかであるが,その目的達成の可能性の有無・治療手段などの契約の具体的内容は個々の事例で異なり,一般的に論ずることはできない。 医師と患者の関係が順調なときには事態は問題なく推移する。しかし,患者と医師の間に齟齬が生ずると,両者間の権利と義務が問題となり,法的な紛争にまで発展することも少なくない。 診療契約には,一般の診療契約以外に,入院補装具貸与などの契約,また精神保健法などに基づく特別な対応もある。一般の診療と契約についても,どの種類の契約に属するのが適正であるか論議がある。ここでは通説として支持されている準委任契約について述べたいと思う。 1 委任契約 (民法643条) 委任契約とは,「一定の統一された高級な労務を,委ねられた者(受任者)がその意志と能力により,一定の裁量権をもって果たすことを約する」ことである。高級な労務が,法律行為でなくて,診療行為のような事実行為の場合の契約を準委任契約(民法656条)といっている。すなわち,委任者(患者)が受任者(医師)を信頼して労務(診療提供)を依頼するものとされている。
(1) 契約の成立 診療契約には一定の形式はなく,患者と医師の意志の合致だけで成立する。意志の表示は口頭でもよい。また診察室の中では黙っていても成立したものとみなされている。契約内容をどうするかは,原則として契約当事者の自由である。しかし,違法な堕胎のような刑法上の犯罪行為,無診察で処方箋を発行するような医師法に抵触するような行為を内容とした契約は,契約自体が無効であり,最初から権利や義務は発生せず,従って報酬の請求権も生じない。
(2) 契約の当事者 契約を締結する人は,通常は病院や医院の開設者(国公立病院の場合,国や都道府県)と患者とであり,この当事者間に権利と義務は発生する。患者が子供であったり,精神障害者のときは患者本人が契約当事者になり得ないこともある。この場合,親権者や保護者が患者に代わって診療を依頼し,依頼者が契約当事者となる。このような契約を第三者のためにする契約(民法537条)という。
(3) 無契約診療 (事務管理 : 民法697条) 交通事故の被害者で人事不省に陥っている患者を発見者が運び込み,医師が診察を開始する,という場面を考えてみよう。この場合は,契約関係は発生せず,医師が一方的に診療を開始したものと考えられている。これを事務管理(民法697条)とよんでいる。この場合でも医師は常に患者の利益に配慮する義務がある。
● 緊急事務管理(民法698条) 交通事故など緊急の場合,専門外の患者(内科医に外傷患者)運び込まれ,その診療を依頼されることがある。その治療が専門医としての医療水準に達していない場合であっても,故意や重大な過失のない場合には損害賠償の責任は免ずるとされている。
2 診療に伴うその他の契約 一定の業務を完成することを契約内容とするものは請負契約(民法632条)という。古くは,義歯の作成,正常分娩などが請負契約とみなされていた。ただし,医療契約を請負契約であるとする考え方には有力な反対意見もある。 差額ベッドは賃貸借契約に属するものである。医師に雇われ労働を提供する看護婦や検査技師などとの契約は雇用契約である。
3 診療を契約とみなすことの問題点 委任契約は経済活動上の契約であり医療上の契約にはそぐわないとして,新しく診療契約の法概念を構築すべきだという議論もある(無名契約説)。 また,医療契約の中に請負契約の考え方を持ち込むことは危険であり,すべて準委任契約として把握するべきだという意見もある。例えば分娩の場合,医師の責務は「妊産婦の妊娠および分娩が自然で正常な経過をとるよう助力すること,その間に発生するかも知れない病的過程に対処すること」であって,「必ず母児ともに健全な状態で出産に至らしめること」ではない。一般の疾患の診療でも医師は患者に対して「病気を診察治療すること」約し得るにとどまり「病気を治癒させること」までは約束できない。したがって,分娩の場合でも一般の病気の診療と同様に,請負契約ではなく準委任契約として捉えるのが適切であるとする。
6 インフォームドコンセントの原則
 インフォームドコンセントの原則(doctrine of informed consent)とは,患者が医師から治療・処置などを受けるに当たって,事前にその内容・目的・効果・リスク,またその他の異なる治療法のある場合にはそれらの説明を受けて,患者が納得した上でそれらの治療・処置を受けることが必要であるという原則のことである。換言すれば,患者の自己決定権を適正に行使できるよう,医師が助言指導をし,同意の上で医療行為を行うべきである,いうことになろう。この場合,医師の説明は,患者の理解できる言葉で,患者が理解できるまで行われなければならない。医師の説明が理解されて初めて,患者は主体的に判断し,承諾することが可能となる。したがって,インフォームドコンセントの前提となるのは患者の知る権利であり,その前提を満足させるために必要となる医師の説明義務を考えなければならない。 米国では,1950年代後半に医師の説明義務を法的義務とする学説・判例が出て医師の裁量権に一定の限定を与えるようになり,1972年にインフォームドコンセントの法理論が確立され,現在では当然のこととして捉えられている。わが国では1987年厚生省の国民医療総合対策本部「中間報告」の中にインフォームドコンセントという語が現われて以来,医療関係者の間でもよく議論されるようになった。 インフォームドコンセントの内容は具体的な個々の事例に即して判断されている。しかし,必ずしも各判例に共通した意義-要件-効果という基準は定まっていないようである。すなわち,誰が,いつ,何を,どの程度まで説明するのかに関しては個々の事例において医師の判断に委ねられている。医療行為は症状の客観的把握,医学的判断,取り得る措置の選択という連鎖的な行為であるから,予後内容,手術の危険性について不確定な要素が多い場合には,その不確定の部分にまで説明の範囲を広げる必要はないと思う。たとえば開腹術を予定するとき,腹壁からの感染によって敗血症を起こすことがあるとか,術前の導尿時に尿道損傷の危険があるとか,当該手術に直接関係のないことにまで言及する必要はないだろう。 実際の臨床の場で治療法の選択に困難を覚えることは多く,しかもそれらの治療法のそれぞれについて具体的な予後経過を正確に予測できる場合は少ない。また医学自体絶えず進歩しているものであるから,この手術の前にはこの形式で,といった固定的なフォーマットで説明を行うべきではない。あくまでも,個別の具体的な症例において,患者の自己決定権を尊重しつつ,自己の裁量権の範囲内でインフォームドコンセントは達成されなければならない。この意味では,説明の巧拙というのも医師の力量の1つといえるものなのかも知れない。