2026年6月15日月曜日

仲間と一体であるという安心感

P66
 ニホンザルは、仲間が自分から空間的に離れた時に、むしろ声を出し合うことがわかる。そうすることで姿は認めなくても、相手が自分の周辺にいることを確認しているのだろう。
彼らが生活する森のなかは視界がよくない、へたをすると仲間からはぐれてしまう危険が存在する。それを防ぐためにおしゃべりが役に立っている。
自分が声を出して応答があることで彼らは仲間と一体であるという安心感を得ているらしい。

P119
 現代の日本人は若者を中心として、過去のような対人関係を営むことが難しくなってきている。このような風潮は、「関係できない症候群」の蔓延と呼んでも差支えないだろうと私は考えている。

 

その背景にあるのは、社会の高度情報化、端的にIT化にほかならない。それを象徴化するのがケータイの流布である。
 ケータイを使いだすと、常に身につけてないとどうも不安な気分に陥ってくる。
「常につながっていないと気が安まらない」という感覚ーそれは、私たちがコミュニケーションの媒体そのものの共有という事実にもとづいて、集団としての連帯を確認するようになってきたことを示唆している。ともに同じホームページにアクセスしているとか、同じアイドルの情報を共有しているとか、そういうことのみで一体感を味わうのである。

ケータイを持ったサル―「人間らしさ」の崩壊
正高 信男 (著)
中央公論新社 (2003/09)

 

ケータイを持ったサル―「人間らしさ」の崩壊 (中公新書)

ケータイを持ったサル―「人間らしさ」の崩壊 (中公新書)

  • 作者: 正高 信男
  • 出版社/メーカー: 中央公論新社
  • 発売日: 2003/09/01
  • メディア: 新書

P125
すねたりいじけたりしている人は、治療者が「鏡」として機能しようとしても、「理想化」として機能しようとしても、素直に乗ってきません。
 たとえば、相手の話を聞いていれば、「ここで褒められたいのだろう」と思うポイントが出てきます。
ところが、そういう人は、そこを褒めてあげても、「先生は仕事でやってるからそんなお世辞をいうんでしょ」と思ってしまう。これでは、治療者を鏡自己対象として体験できず、したがって自己愛も満たされません。
 また、こちらが理想化自己対象として機能しようと振る舞い、「私がついているから大丈夫ですよ」などと不安を解消しようとしても、安心感を得るどころか、ひがんでしまう人もいます。
「そんなことをいわれても、自分みたいな人間はエリートのお医者さんとは違うから」というわけです。
 では、このような患者にはどんな心理ニーズがあるのか。そして、それはどのようにすれば満たすことができるのでしょう。
 コフートがたどり着いたのが、「双子」の概念でした。
 前述したとおり、「鏡」や「理想化」で自己愛が支えられないのは、その自己対象が「自分とは違う種類の人間だ」と思ってしまうからです。
つまり、自分が「他人とは違う」ことで自己愛が傷つき、拗ねたりひがんだりしている。なので「自分が人と同じ人間だと思いたい」という心理ニーズを満たしてあげる必要があるのです。
~中略~
コフートは人間には「他人と同じでありたい」という根源的な欲求があることに気づきました。コフート理論を「自己愛の心理学」だと考える人はあまりここに注目しないのですが、私はこれこそがコフートの大発見だったと思います。

P129
 ちなみにこのような「双子感」が役に立つのは、一対一のカウンセリングだけではありません。
たとえばアルコール依存症の人たちが集まる「アルコホーリクス・アノニマス(AA)や断酒会、ギャンブル依存症の人たちの集まる「ギャンブラーズ・アノニマス(GA)」と呼ばれる自助グループにも、そういう効果があります。
 前述したとおり、「一人でいること」が依存症の共通点ですから、患者たちはふだん同じ苦しみを抱えている人に会っていません。つまり、深い疎外感を抱いている。でも、AAや断酒会やGAに行くと、「こういうときに、つい飲んでしまうんですよね」とか「ギャンブルをやめられない自分がイヤになります」といった告白を聞くことで、「自分だけではないんだ」という安心感を得られるのです。

自分が「自分」でいられる コフート心理学入門
和田 秀樹 (著)
青春出版社 (2015/4/16)

自分が「自分」でいられる コフート心理学入門 (青春新書インテリジェンス)

自分が「自分」でいられる コフート心理学入門 (青春新書インテリジェンス)

  • 作者: 和田 秀樹
  • 出版社/メーカー: 青春出版社
  • 発売日: 2015/04/16
  • メディア: 新書

馬島 小倉北区

 

プレ・パフォーマンス・ルーティン

 P34
ボストン・レッドソックスの上原浩治投手も、シーズン中に判で押したような毎日を送るそうです。試合当日も、ナイトゲームなら昼過ぎに球場に入り、ほぼ決まったメニューの食事をとり、マッサージを受ける。それからウェイトトレーニングを行い、試合前のウォ―ミングアップ。試合がはじまれば、二イニングか三イニング目にブルペンに向かうといいます。

その一連の流れが上原投手の準備であり、それを積み重ねるからこそ、結果が出る―上原投手は著書のなかでそのように語っています。
 事実、長生きされている方も、毎日同じ時間に起きて、同じものを食べて、同じことをする・・・・・というリズムを崩さない方が多い。そうすることが心理的安定につながっているのです。

P36
 パフォーマンスの前に行うルーティンがあるなら、パフォーマンスのあとに行うルーティンはないのか?
 じつはあります。プレ・パフォーマンス・ルーティンに対して、ポスト・パフォーマンス・ルーティンと呼びます。ポスト、つまりパフォーマンスのあとに、一定の動作を、一定の順序、リズムで行うのです。
 よく見れれるのが、テニスでミスショットをした選手が、そのあとで素振りをするケース。あれは、失敗したら、必ず成功したときのことをイメージして素振りをすることで、ミスを引きずらず、次のプレーに集中して臨むことができるようにするために行うものです。

 

P42
 スポーツにかぎったことではありませんが、自分でコントロールできない、変えられないことに対して気を揉(も)んでも、何の解決にもなりません。時間とエネルギーを浪費するだけです。
ならば、その時間とエネルギーを自分ができることに費やすほうが、よほど建設的だと思いませんか?

ラグビー日本代表を変えた「心の鍛え方」
荒木 香織 (著)
講談社 (2016/2/19)

ラグビー日本代表を変えた「心の鍛え方」 (講談社+α新書)

ラグビー日本代表を変えた「心の鍛え方」 (講談社+α新書)

  • 作者: 荒木香織
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2016/02/26
  • メディア: Kindle版


 私の場合は、「好きな音楽」を使って「自分をコントロールする習慣を持っています。
~中略~ この曲を聴けば「パブロフの犬」のごとく、歩く姿勢が堂々となるのです。
 このことは、心理学用語で「アンカリング」とも言います。アンカリングとは、五感の情報をトリガーとして、特定の反応が引き出される仕組みのことを指します。船のアンカーを降ろすがごとく、ある事柄を心に根差すことにより、反応を深層心理より起こすのです。
 休憩時間を必ずコーヒーブレイクとする、ストレッチをする、おいしいものを食べるなど、きっかけは何でもオーケーです。定期的に実践し、日常生活の一部にこのサイクルを定期的に組み込んでしまいましょう。
 要は、サイクル化することで、自分を良好なサイクル、つまり、「快」の状態を意識的に作りあげてしまうことが重要です。

ワーキングストレスに向き合う力-スポーツ分野で話題のストレスコントロール手法<コーピング>でビジネスに強くなる-
坂上 隆之 (著)
日刊工業新聞社 (2015/2/25)
P93


 梅干しを見ていると、すっぱい感覚がわきおこり、自然に唾液が出てきます。
「仰げば尊し」のメロディーを聴くと、いや、「仰げば尊し」という曲名を聴くだけでも、卒業式が頭に浮かびます。
 このように、何らかの刺激が引き金となって、特定の反応が起きることはよくあります。
 刺激と反応の組み合わせは、自然にできるものもありますが、意図的に作り出すこともできます。
刺激と反応の組み合わせを作ることを「アンカリング」(anchoring)といいます。
 アンカリングは自分の中にスイッチを作るようなものです。アンカリングによって、勉強するときは集中力のある状態になることができます。
 バッターボックスで特定のしぐさをすることによって集中力の高い状態を作り出すプロ野球選手がいますが、これもアンカリングの一例です。
 特定の反応を起こす引き金となる刺激のことを「アンカー」(anchor)といいます。アンカーは「碇(いかり)」という意味です。碇を下した時のように、自分の状態が固定されるものです。
視覚、聴覚、体感覚といった五感の刺激がアンカーになります。

脳と言葉を上手に使う NLPの教科書

前田 忠志 (著)
実務教育出版 (2012/3/23)
P166

脳と言葉を上手に使う NLPの教科書

脳と言葉を上手に使う NLPの教科書

  • 作者: 前田 忠志
  • 出版社/メーカー: 実務教育出版
  • 発売日: 2012/03/23
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)


九重連山 大分県



チョーキング

P124
 極度のプレッシャーや不安に対処しきれなくて、パフォーマンスが悲劇的に悪くなる―
こうした状態を「チョーキング」と呼びます。
「チョーク」とは「息がつまる」「窒息させる」という意味。文字通り、パフォーマンスの途中で窒息してしまったかのように、身体が動かなくなる状態がチョーキングです。
ゴルフでは「イップス」と呼ばれることが多いですが、スポーツ心理学ではチョーキングと表現します。
 チョーキングが起こりやすいのは、自分自身や周囲の期待が高いときです。
「どうぢても勝ちたい。勝たなければいけない」「勝たなければ意味がない」「見る人を感動させるような最高のパフォーマンスをしたい」・・・・・。
 過度に思うと、そういう状態に陥ります。また、自分のパフォーマンスに疑いがあるときにも生じることがあります。

P126
 チョーキングは、何の前触れもなく突然襲ってきますから、試合中に修正することは不可能、ないしは困難です。そこで、チョーキングは起こるものだと想定して、日ごろから準備をしておくことが必要となります。
 その方法として、以下のものが考えられます。
・プレッシャーを受け入れる
・プレッシャーのなかで意思決定をする経験を積む
・不安のレベルを下げる方法を身につける
~中略~
 金メダルを期待されていることを「重荷」ととらえてしまえば、苦しくなってチョーキングに陥りかねない。けれども、
「期待されているということは、自分に可能性があるからなんだ」
 と考えることができれば、それはエネルギーになります。
 つぎに「プレッシャーのなかで意思決定をする経験を積む」。これは、トレーニングのなかで試合を想定してパフォーマンスをするということです。考えうる状況を設置して、そのなかでつねに冷静にふるまえるよう、訓練をするわけです。~中略~
「不安のレベルを下げる方法」にはまず、「呼吸法」が挙げられます。一回、または二~三回、ゆっくりと深い息をしましょう。大切なのは、「落ち着くために深呼吸するのだ」と意識してすること。無意識にするのとでは効果が違ってきます。
 もうひとつの方法は「注意や集中を自分の内から外へ変える」ことです。
 たとえば、ラグビーでボールを落としやすい選手は、「落とさないように、落とさないように」と考えてばかりいます。
でも、以前にも述べましたが、人間は、自分の考えていることが行動に出ます。「落としたらダメだ」と考えるから落としてしまうのです。
「落としたらダメだ」
 そう思うから、「ダメだ」と思うことに集中してしまう。そうではなくて、「落とさないためには何をすればいいのか」を考えるのです。


ラグビー日本代表を変えた「心の鍛え方」
荒木 香織 (著)
講談社 (2016/2/19)

ラグビー日本代表を変えた「心の鍛え方」 (講談社+α新書)

ラグビー日本代表を変えた「心の鍛え方」 (講談社+α新書)

  • 作者: 荒木香織
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2016/02/26
  • メディア: Kindle版

 

九重連山 大分県

同罪

 まっとうな人間が、おなじ国家の国民だからといって、他人の犯罪の責任を問われてもほんとうにいいのでしょうか。
むしろ、その人自身が、犯罪の犠牲者であり、自分の民族の支配層、指導層が執行したテロの対象であり、そのテロにあらがうことができなかったのではないでしょうか。
同罪だと言い立てると、ほんとうは克服したいと思っているまさにその世界観に逆戻りしてしまうのではないでしょうか。
それは、たまたまおなじ集団に属している人がなんらかの犯罪を事実犯した、また、犯したものと考えられるからといって、ひとりひとりの人に罪を着せるような世界観なのです。こうした考えかたは、なんと愚かしいものに思えることでしょうか。
もっとも、いまになってやっとそう思えるようになったのですが。

それでも人生にイエスと言う
V.E. フランクル (著), 山田 邦男 (翻訳), 松田 美佳 (翻訳)
春秋社 (1993/12/25)
P143

それでも人生にイエスと言う

それでも人生にイエスと言う

  • 出版社/メーカー: 春秋社
  • 発売日: 2014/12/25
  • メディア: Kindle版

 

九重連山 大分県

パーソナルゲノム時代の脳科学

P241
統合失調症・双極性気分障害・大うつ病などの精神疾患、アルツハイマー病・パーキンソン病・ハンチントン病などの神経疾患、自閉症・ADHD(注意欠陥多動障害)などの発達障害など脳の疾患の発症には、遺伝的な影響が大きく存在することがわかっています。
遺伝率は、大うつ病で40%、アルツハイマー病で70%、統合失調症で80%、自閉症で90%などと推定されています。

~中略~
 統合失調症の遺伝率が100%でない、ということの意味を考えましょう。ゲノムが100%同じである一卵生双生児の一方が統合失調症になったときに、もう一方も発症する可能性は50%です。これは、統合失調症に明らかにかかりやすいゲノムを持っていた場合でも、生まれてからの環境や経験、食生活などによって、統合失調症にならない可能性が50%もあるということなのです。
~中略~

 さて、日本の大学の精神科や心理学科では、歴史的に精神疾患は「こころの問題」とされることが多々ありました。この場合の「心の問題」とは、個性の延長でしかない、脳の物質としての問題はないと言う考え方です。
こういう背景もあってか、世界の生物学的精神医学や生物学的心理学の流れのなかで、日本は大幅な後れをとってしまいました。
~中略~

  わが国では、精神疾患の患者数は右肩あがり、先進国の中でワースト1の自殺大国でもあるわけです。
こころの問題、精神疾患について、生物学的視点に立った研究をもっと盛んにしていく必要があります。

「こころ」は遺伝子でどこまで決まるのか―パーソナルゲノム時代の脳科学
宮川 剛 (著)
NHK出版 (2011/2/8)

「こころ」は遺伝子でどこまで決まるのか パーソナルゲノム時代の脳科学 (NHK出版新書)

「こころ」は遺伝子でどこまで決まるのか パーソナルゲノム時代の脳科学 (NHK出版新書)

  • 作者: 宮川 剛
  • 出版社/メーカー: NHK出版
  • 発売日: 2016/11/30
  • メディア: Kindle版

九重連山 大分県

2026年6月9日火曜日

社会主観

人間は自分一人で満足できるほど意志強固ではない。見せる相手がわかってくれる、世間みんなが認めてくれるものでなければ満足できない。つまり、人間の満足は主観的だが、その主観は世間の同意を得た社会主観なのだ。
 広告は、社会主観を創る。このブランドは高級だ、この店は一流だ、この俳優はすばらしい、巨人―阪神戦は伝統の一戦、サッカーのワールドカップは見る値打ちがある等々、いずれも「世間の評価」や「みんなの話」で創られた社会主観だ。
「「平成三十年」への警告」

堺屋太一の見方 時代の先行き、社会の仕組み、人間の動きを語る
堺屋 太一 (著)
PHP研究所 (2004/12/7)
P58

堺屋太一の見方 時代の先行き、社会の仕組み、人間の動きを語る

堺屋太一の見方 時代の先行き、社会の仕組み、人間の動きを語る

  • 作者: 堺屋 太一
  • 出版社/メーカー: PHP研究所
  • 発売日: 2004/12/07
  • メディア: 単行本

それ自体良いとか悪いとかいう行為はない。ただ社会の習慣次第でどっちでもなる。
(「作家の手帳」一八九二年)

モーム語録
行方 昭夫 (編集)
岩波書店 (2010/4/17)
P36
モーム語録 (岩波現代文庫) (岩波現代文庫 文芸 163)

モーム語録 (岩波現代文庫) (岩波現代文庫 文芸 163)

  • 出版社/メーカー: 岩波書店
  • 発売日: 2010/04/17
  • メディア: 文庫

 貯金通帳に大きな数字が並んでいれば「お金持ち」だと誰もが思うでしょう。しかし、それ自体は紙に印刷された単なる記号です。ATMから引き出した現金も、何か社会の大変動が起これば一瞬にして紙くず同然になる可能性がある。すくなくとも、これに価値があるのは、人も価値があると考えているからでしょう。
私たちが現実だと思っているものの存在感は、意外と脆いものです。
 そう考えると、現実というのは決して客観的なものではなく、私たちの主観の中にしかないのだといえるでしょう。
 それも、自分だけが「ある」と信じるだけでは。本当にあるとは感じられません。ビットコインも、大勢の人が「ある」と信じているから自分も「ある」と思えるし、そこに価値を感じることもできるのです。
それは「自分」という存在についても同じことがいえます。

自分が「自分」でいられる コフート心理学入門
和田 秀樹 (著)
青春出版社 (2015/4/16)
P143

自分が「自分」でいられる コフート心理学入門 (青春新書インテリジェンス)

自分が「自分」でいられる コフート心理学入門 (青春新書インテリジェンス)

  • 作者: 和田 秀樹
  • 出版社/メーカー: 青春出版社
  • 発売日: 2015/04/16
  • メディア: 新書

三つ子の魂百まで

 アドラー心理学では、行動は信念から出てくる、と考えますから、自立し、社会と調和して暮らせるという適切な行動ができるためには、それを支える適切な信念が育っていなければならないのです。
 ここでいう信念は、自己や世界についての意味づけの総体であり、「ライフスタイル」と呼ばれています。
アドラーは四、五歳といっていますが(「子どもの教育」一二五頁、「個人心理学講義」三二頁など、)、現代アドラー心理学では十歳前後である、といわれています。
子どもはライフスタイルを個々の体験の中形成するわけですから、親や教師は、子どもと接する際絶えず自分の行っていることが、子どもの適切な信念を形成する援助となっているかを点検していかなければなりません。
~中略~
 ときに自分のライフスタイルが不便であるということに思い当たるような経験をしたとしても、一度身につけたライフスタイルを容易に変えることはありません。
不便でも慣れ親しんだライフスタイルで生きるほうが、次に何が起こるかという予想もできますから、実際には変えようとはしません。

アドラー心理学入門―よりよい人間関係のために
岸見 一郎 (著)
KKベストセラーズ (1999/09)
P40 

アドラー心理学入門―よりよい人間関係のために (ベスト新書)

アドラー心理学入門―よりよい人間関係のために (ベスト新書)

  • 作者: 岸見 一郎
  • 出版社/メーカー: ベストセラーズ
  • 発売日: 1999/09/15
  • メディア: 新書

 

個性と我

  ぼくが桂離宮を撮って三年目のこと、楽器の間の飛石を撮影しているときに、飛石がピントグラスを割って目に突き刺さるように見えた。
あ、写るというのはこれだな、と。
そのとき喜びが足の裏から噴水のように上がってきて頭のてっぺんからビューっと中央に伸びるような体験をしました。

それから自分の写真が変わりました。事務所でそれまでに撮った二千枚くらいのカラー・フィルムを鋏でちょん切り、その後の写真でまとめたのが「桂離宮」(講談社・一九七七年)です。

 土門拳の作品は実存に直接アタックしていく写真ですから、学問では探求できない世界。言葉で聞いてわかるというものじゃないんです。
土門さんは「自分が小さくなって消えてしまう写真がいい」といっていますが、~中略~
現代の芸術は作家の主観が出ていることを尊重しますが、土門拳はそんなもの完全に否定した。作家の個性が出ているような写真は失敗作だという考えです。
西川 孟 

古寺を訪ねて―東へ西へ
土門 拳 (著)
小学館 (2002/02)
P194

土門拳 古寺を訪ねて 東へ西へ(小学館文庫)

土門拳 古寺を訪ねて 東へ西へ(小学館文庫)

  • 作者: 土門拳
  • 出版社/メーカー: 小学館
  • 発売日: 2018/07/01
  • メディア: Kindle版

 

P44
「個性を伸ばそう」なんていうようなことが書いてある学校は、欧米にはありません。そんなこと当たり前の話だから、わざわざ書く必要がないです。日本とは大違いです。
~中略~
外国の教育学者の人と話をしていると、すごくよく言われます。 「日本人は、少しでも変わった事に対する寛容度が低い」と。

P45
 みなさん、外国へ行かれた時に、できたら一度向こうの小学校とか中学校でも見に行かれたらいいと思いますが、それはすごいやかましさです。それから、アメリカの高等学校なんかでは、治安を保つために警官が入っています。~中略~
校内暴力とか言っても、日本の現状を向こうの人に話したら、そんなものは暴力の内に入らないくらいですね。それほど向こうの学校はすごいんです。
そしてガヤガヤ言うにしても、暴れるにしても、喧嘩をするにしても、スケールが日本とはぜんぜん違います。 それほど、みんな一人ひとりが「自分が生きないといけない」と思っていますから、大変なんです。

P48
 私は、カウンセリングをしながら、ある人がだんだんと個性が強くなって行ったときに、「あなたはその勢いで生きていったらいいけれども、日本の国であなたが生きようと思うと、ある程度考えないとだめですよ」ということを言う時があります。

P97
 先日、アメリカの臨床心理学者が来まして、いろいろと話をしていたら、その人がおもしろいことを言いました。
~中略~
 西欧人は、個性を伸ばす、個人を生かすということをものすごく大事にしてきた。ところが最近、個性を伸ばし個人を生かすこわさを心理学者が感じはじめていると言うのです。
あまりに個性、個人と言いだすと、場を壊してしまう。あるいは、さきほど言ったように、偉い者や大将はいいけれど、大将に従わなければならない者はだめだということが、すごくはっきりしてしまう。
心理療法では、個性を伸ばし、個人を生かすということを目標にしてきたけれども、やはり全体ということも考えねばならないと、この頃反省している。日本はどうだ、というようなことを言いました。なるほどと思いましたね。

河合隼雄のカウンセリング講座
河合 隼雄 (著)
創元社 (2000/06)

河合隼雄のカウンセリング講座

河合隼雄のカウンセリング講座

  • 作者: 河合隼雄
  • 出版社/メーカー: 創元社
  • 発売日: 2015/03/26
  • メディア: Kindle版

隣人の見た日本人


秋山謙蔵の文章を借りると、
「・・・・・当時外人に反映した日本人の性格は「吾学篇」に奸狡(かんこう)の語を以て代表せされ」
 とある。悪賢くてずるい、というほど他人に対して悪しざまな言葉はない。
 秋山が摘出した文献のなかに、前記「籌海図編」のなかに日本人評がある。
 「倭奴(わど)(日本野郎というほどの意味)ハ、狡猾ニシテ素(もと)ヨリ義を慕フノ誠ナシ」
 と、いかにもはげしい。
 また明の「皇明世法要録」に言う。
 「性、徂詐(そさ)ニシテ狼貪(らうたん)ナリ」
 徂詐とは狙い撃ちのようにして人をたばかる。狼貪とは狼のごとく貪(むさぼ)る。どちらもすさまじい表現である。
 おなじく「皇明実録」では、
「倭情、譎詐(けっさ)、遽(にはか)ニ信ズベカラズ」
~中略~
 ところが、十五、六世紀におけるこれら漢文文献関係の日本人評の悪さにひきかえ、おなじく漢文文献の関係の琉球人評は、黒と白ほどに評判がいいのである。
 「俗ハ、死ヲ軽ンズルコトヲ尚(たふと)ビ、進ムヲ知ッテ退クヲ知ラズ、戦ヘバ勝タザルコトナシ」(「李朝世祖実録」)
 「其ノ俗、皆礼法に循(したが)ヒ」(「殊域周咨録」)
 といったぐあいなのである。明の使節潘営が「礼儀之郷」といったということも、琉球人評の一つに数えていい。
~中略~
 中世における琉球人の貿易活動はじつに盛んなもので、その行動圏は日本、朝鮮、中国、そして遠く東南アジアにまで及んでいたことは、諸記録をみてもあきらかである。
沖縄の「万葉集」といわれる「おもろさうし」にも、そういう歌がある。
~中略~
 評判といえば、当時、ヨーロッパ人からみた東南アジアでの日本商人の人格的印象は決して悪くはないし、さらには、フランシスコ・ザビエルらの日本人評にいたっては、日本人として照れたくなるほどにいい。
だからかならずしも、漢文文献による評判だけで、秋山謙蔵のように当時の日本の貿易商人を品評することはできない。

街道をゆく (6)
司馬 遼太郎(著)
朝日新聞社 (1978/12)
P46

街道をゆく6

街道をゆく6

  • 作者: 司馬遼太郎
  • 出版社/メーカー: 朝日新聞出版
  • 発売日: 2014/08/07
  • メディア: Kindle版

 

 くり返していうが、百年あまりまえまでは、日本にとって中国は、先進の技術や、文物の供給源にすぎなかった。中国の影を、そんなに政治的に意識しないですんだ。

双方にとって、たがいに友好的であるのはもちろん望ましいが、かりに非友好的な関係であったとしても、現実にはべつに差支えなかったのである。
 どうでもよかった隣人。―
 といえば言いすぎかもしれないが、すくなくとも、おたがいに息苦しくなるほど相手を意識したケースは稀でであった。
 幕末明治期から、この淡白な隣人同士が、どうでもよいというわけにはいかなくなったのである。


日本人と中国人――〝同文同種〟と思いこむ危険
陳 舜臣 (著)
祥伝社 (2016/11/2)
P45

日本人と中国人――〝同文同種〟と思いこむ危険 (祥伝社新書 487)

日本人と中国人――〝同文同種〟と思いこむ危険 (祥伝社新書 487)

  • 作者: 陳 舜臣
  • 出版社/メーカー: 祥伝社
  • 発売日: 2016/11/02
  • メディア: 新書

関門海峡

念仏の教え

 仏教には大事な二つの原理があります。
ひとつは平等ということですね。
仏教はインドで起こったのですが、インドは厳しいカースト社会ですから、このカースト社会を裏づけるヒンズー教が盛んで、人間の平等を説く仏教はインドでは根づかなかった。

 もうひとつ大事なのは、悟りを得る、煩悩の世界を超えた生き方ができるということです。
煩悩を超えた、自利利他の世界に生きることができる。

念仏の教えは密教のように悟りを自力によって得るのと違いまして、悟りを他力で得る。阿弥陀さまという極楽浄土の仏さまをお頼みすることによって、他力によって菩提を得る。
これは日本仏教のひとつの大きな流れになっています。
 浄土仏教は、特に日本において発展した仏教であるということができると思います。

梅原猛の授業 仏教
梅原 猛 (著)
朝日新聞社 (2002/01)
P194

梅原猛の授業 仏教 (朝日文庫)

梅原猛の授業 仏教 (朝日文庫)

  • 作者: 梅原 猛
  • 出版社/メーカー: 朝日新聞社
  • 発売日: 2006/10/01
  • メディア: 文庫

 五木 たとえば、念仏ということ一つにしても、念仏の発展の歴史の中で、いろんな念仏がありますよね。

 最初の念仏は「お頼み申します。お願いします」で、法然、親鸞になると、もう他力で、むこうから救われるのだから。「ああ、ありがたい。もうおまかせします」という帰依の念仏。
蓮如のときになると、往生、救われることは、むこうがもう決めてくれているのだから、はっきりと報恩感謝の念仏と言い切っているんです。ただただ、あんたたちは毎日毎日「ありがとうございます。ありがとうございます。うれしゅうございます」とこう言えばいいんだよ、というふうに変化、発展しています。
 能登のほうでは、お茶なんか出してもらうと「ああ、なんまんだぶ、なんまんだぶ」と言います。これは「ありがとう」と言っていることなんです。 

仏の発見
五木 寛之 (著), 梅原 猛 (著)
平凡社 (2011/3/8)
P237

仏の発見

仏の発見

  • 出版社/メーカー: 平凡社
  • 発売日: 2011/03/08
  • メディア: 単行本

 

 

[第三十九段] 或る人が法然上人に「念仏の最中、眠りにおかされて、お勤めを怠ることがありますが、どうしたら、このさまたげを取りのけることができましょうか。」と尋ねたところ、「目がさめている間、念仏なさい。」と答えられたのは、まことに尊いことであった。
また、「極楽往生は、確かに決まっていると思えば、一定(たしか)、決まっていないと思えば、不定だ。」と言われた。 それも尊いことだ。
さらにまた、「疑いながらも念仏すれば、それでも極楽往生する。」と言われた。これもまた尊いことだ。  

徒然草―現代語訳
吉田 兼好 (著), 川瀬 一馬
講談社 (1971/12)
P196

 

徒然草 (講談社文庫)

徒然草 (講談社文庫)

  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2019/09/20
  • メディア: Kindle版

 

 

 

[三六] 静かな夜の明け方に、この道理(住人注;執着を持つなということ?)をよくよく考えて、そこで、私自身の心に向かって問いを発してみる。―長明よ、おまえが世俗から脱出して、山林に入りこんだのは、乱れやすい心をととのえて、仏道を修行しようがためである。それなのに、おまえは姿だけは清浄な僧になっていて、心はけがれに染まったままだ。
住む家は、まるでそのまま浄名居士維摩の方丈の小室をまねているが、そこでおまえのやっていることは、どんなに見つもったって、周利槃徳の修行にさえもかなうものではないぞ。ひょっとすると、これは、宿業のむくいとしての貧賤がおまえ自身を悩ましているのか。
あるいはまた、みだりな分別心、なまはんかな知性がこうじて、気が狂ったのか。さあ、どうだ。―こうして問いつめた時、私の心は、まったく答えることができない。答えられないのだ。
残った方法は一つ。ここにけがれたままの舌をうごかして、阿弥陀如来をお迎えする儀礼もととのえず、ただ念仏を二、三べんとなえるだけ。それで終わったのだ。 )

方丈記 現代語訳付き
鴨 長明 (著), 簗瀬 一雄 (翻訳)
角川学芸出版; 改版 (2010/11/25)
P114

 

方丈記 現代語訳付き (角川ソフィア文庫)

方丈記 現代語訳付き (角川ソフィア文庫)

  • 出版社/メーカー: 角川学芸出版
  • 発売日: 2010/11/25
  • メディア: 文庫

 

 

 

浄土真宗が他の仏教とくに真言密教などと異なるのは偶像を媒体としないことや、それを行すれば利益があるとも説かず、さらには加持祈祷の思想のように法には超人的な力があるとも説かない。
ただたれでも弥陀の本願によって浄土に生まれるはずだと説くのである。
その本願のありがたさへの感謝として念仏を唱えるだけで、念仏そのものに浄土に生まれる呪術性があるとも説かない。

街道をゆく (4)
司馬 遼太郎(著)
朝日新聞社 (1978/11)
P110

街道をゆく〈4〉洛北諸道ほか (1978年)

街道をゆく〈4〉洛北諸道ほか (1978年)

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京都市 法然院