2024年12月21日土曜日

帰っておいで

P113
 こうした現象(住人注;大都市部の自治体における「過疎」)は、地方の大都市間でも見られる。同じ福岡県の政令指定都市であっても、北九州市は(住人注;社人研が2010年の国勢調査に基づいて予測した、2040年の人口が)19.7%も減るのに、福岡市は1.7%にとどまる。年齢別の増減まで比較すると、高齢者が大きく増える自治体、勤労世代が激減する自治体など事情はそれぞれ異なる。こうした事情を考慮せず、「大都市部と地方」といゆ単純な発想で人口減少対策を考えたのでは成果は上がらない。

P114
 実は、ここ(住人注:東京への一極集中)でも重要な視点が欠落しがちだ。往々にして東京に住む人が今後味わう”医療・介護地獄”が忘れられるのである。これは近い将来、深刻な社会問題になることだろう。
東京一極集中の是正を考える場合、この問題の解決を避けて通ることはできない。
「2025年問題」の項でも指摘したが、東京圏の高齢者が激増するのは、経済成長期以降に上京した”かつての若者”が年齢をを重ねたことに加え、現在の勤労世代が地方の老親を呼び寄せるからだ。
~中略~
 東京は、日本最大の医療集積地であるが、前述したようにビジネス中心の街づくりをしてきたため、介護を要する高齢者用のベッドが極度に不足している。仮に、高度な治療を受けられたとしても、その後、転院先や療養先に困ることになる。
 同データ集によれば、介護保険施設のベッド数と高齢者住宅を合わせた高齢者向けのベッド数は、75歳以上1000人あたり100で全国の121を大きく下回る。東京23区の一部では危機的な状況にある。

P116
 こうしたアンバランスを考えれば、退職後は東京から地方に「脱出」するのも1つの選択肢となろう。
東京一極集中と地方の人口減少という2つの課題の同時解決ともなる。人口減少時代は、国民1人ひとりにどういう老後を選ぶかを問うているのである。

P125
 もう1つ大きく誤解されてきたことがある。「地方からの人口流入が続く大都市部では若者は増え続けている」との錯覚だ。
生産年齢人口について2010年と2015年の国勢調査で増減を比較してみると、東京都は約11万6000人減っている。国土交通省の「首都圏白書」(2017年)によれば、首都圏では2000年を境に減少を続けている。
「人口は増えているのに、生産年齢人口は減っている」というのが、この十数年の間に、東京周辺で起こっていることなのだ。この流れはますます強まるだろう。

P126
 要するに、日本の少子高齢化と人口減少の実態は、大都市部と地方で大きく異なっているのだ。
大都市部では総人口はあまり減らず、高齢者の実数だけが増えていく。これに対して、地方では総人口は減少するが、高齢者の実数はさほど増えるわけではない。

 

P130
 勤労世代が減れば、税収増も期待できず、高齢者向け政策を展開しようにも財源が追いつかない。財源問題を解決するには、自治体は税金や社会保険料のアップと、行政サービスのカットを同時に行なう「ダブル負担増」に踏み切るしかない。しかも、高齢者は長期的に増えるため、それは繰り返し行わざるを得ない。
 つまり、大都市部に住み続ける限り、負担増とサービス低下に繰り返し見舞われるということだ。住民の生活水準は低下し、街そのものが活気と魅力を失う。やがて、大都市部の自治体は行き詰るだろう。

未来の年表 人口減少日本でこれから起きること
河合 雅司 (著)
講談社 (2017/6/14)

未来の年表 人口減少日本でこれから起きること (講談社現代新書 2431)

未来の年表 人口減少日本でこれから起きること (講談社現代新書 2431)

  • 作者: 河合 雅司
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2017/06/14
  • メディア: 新書

<椿大師「椿堂」大分県豊後高田市黒土/div>

2024年12月19日木曜日

危険なバブルの見分け方

 では、危険なバブルなのか、それとも経済の自然な発展なのか、判断する基準はあるのだろうか。
これは非常に難しい。しいて言えば、次の3つの点に注目すべきだろう。
①経済見通しの過度な自信
②信用取引の拡大
③投資初心者の新規参入
~中略~
 自分の周りに株式投資を始めたという人が増えたら、それは十分に危険なバブルのサインと言えるだろう。


世の中の罠を見抜く数学
柳谷晃 (著) 
セブン&アイ出版 (2013/3/1)
P150

世の中の罠を見抜く数学

世の中の罠を見抜く数学

  • 作者: 柳谷晃
  • 出版社/メーカー: セブン&アイ出版
  • 発売日: 2018/10/29
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)

 

椿大師「椿堂」大分県豊後高田市黒土

云いわけすべからず

子孫、年わかき者、父母兄長のとがめをうけ、いかりにあはば、父祖の言の是非をゑらばず、おそれつつしみてきくべし。
いかに、はげしき悪言をきくとも、ちりばかりも、いかりうらみたる心なく、顔色にあらはすべからず。かならず、わが理ある事を云いたてて、父兄の心にそむくべからず。只ことばなくして、其せ(責)めをうくべし。
是子弟の、父兄につかふる礼なり。父兄たる人、もし人のことばをきき損じて、無理なる事を以て、子弟をしゑた(虐)げせむとも、[子供において]いかるべからず。
うらみ、そむける色を、あら(顕)はすべからず。
云いわけする事あらば、時すぎて後、謝すべし。或(は)別人を頼みて、いはしむべし。
十分に、われに道理なくば、云いわけすべからず。

和俗童子訓 巻之二 
総論 下

養生訓・和俗童子訓
貝原 益軒 (著), 石川 謙 (編さん)
岩波書店 (1961/1/5)
P233

養生訓・和俗童子訓 (岩波文庫)

養生訓・和俗童子訓 (岩波文庫)

  • 出版社/メーカー: 岩波書店
  • 発売日: 2021/04/09
  • メディア: 文庫

 

子曰わく、父母に事( つかえて )は幾( ようや )くに諫め、志の従わざるを見ては、また敬( つつし )んで違( たが )わず、労( うれ )えて怨みざれ。


~中略~


先生がいわれた。


「 父母のおそばで用事をしていて、誤りを見つけたときには、まず遠まわしに諫言申し上げよ。
諫めをとりあげられない意向と察したら、つつしんでこれに違背しないようにし、
心の中では憂慮していても、怨みをいだいてはならない」


里仁篇

                  論語
孔子 (著), 貝塚 茂樹
中央公論新社 (1973/07)
    P105

 

論語 (中公文庫)

論語 (中公文庫)

  • 出版社/メーカー: 中央公論新社
  • 発売日: 1973/07/10
  • メディア: 文庫

 

 

 

わたしたちは、「何かをしようとしている」としょっちゅう口にします。減量であったり、運動であったり、職探しであったり。
でも、ほんとうのところは、しているのか、していないのかどちらかなのです。「しようとしている」というのは言い訳に過ぎません。
何か事を起すには、最低でも一〇〇パーセントの力を出して実現のために努力しなくてはなりません。一〇〇パーセントの力を出す覚悟がないなら、目標が達成できなかったとき、責めるべきは自分しかいないのです。
 言い訳は無意味、専門的に言えばたわ言である、とバーニー(住人注;スタンフォード大学の機械工学教授バーニー・ロス)は教えています。
人は、するべき努力をしなかったという事実を繕うために言い訳をします。
~中略~
できなかったことの言い訳や理由は、「もっともらしく」聞こえるなら、社会的に容認されるとバーニーも認めています。しかし、人に対して言い訳をしなくていけないと感じたとしても、自分自身には言い訳をしてはいけません。

20歳のときに知っておきたかったこと スタンフォード大学集中講義
ティナ・シーリグ (著), Tina Seelig (原著), 高遠 裕子 (翻訳)
CCCメディアハウス (2010/3/10)
P193

 

新版 20歳のときに知っておきたかったこと スタンフォード大学集中講義

新版 20歳のときに知っておきたかったこと スタンフォード大学集中講義

  • 出版社/メーカー: CCCメディアハウス
  • 発売日: 2020/11/27
  • メディア: Kindle版
富貴寺 大分県豊後高田市田染蕗

2024年12月18日水曜日

アーンツ・シュルツの法則

 

19世紀中期,Arndt Rudolph と Schultz Hugoは,次のような法則を提唱した。
「あらゆる刺激は,それが非常に弱い刺激である場合,生体の反応を刺激することはない。しかし,ある刺激域に達すると,生体の反応を促進させ,強い刺激は逆に抑制させる。
さらに強い刺激は,生体の反応を停止させる」という法則であり,アーンツ・シュルツの法則(Arndt-Schultz Law)と呼ばれている。

皮膚科・形成外科医のためのレーザー治療
渥美 和彦 /荒瀬誠治/大城俊夫/中島龍夫 (編)
メジカルビュー社 (2000/08)
P52

 

 

皮膚科・形成外科医のためのレーザー治療

皮膚科・形成外科医のためのレーザー治療

  • 出版社/メーカー: メジカルビュー社
  • 発売日: 2000/08/01
  • メディア: 単行本

 

京都北白川天然ラジウム温泉えいせん京 【旧 源泉湧出元 北白川天然ラジウム温泉】
https://onsen.nifty.com/kyoutoshinai-onsen/onsen003109/
より引用

 量-反応関係の重要性は500年前,ルネサンス期の内科医パラケルススが「毒性学の第1法則:すべてのものは毒物であり,毒物でないものなどはなく,毒性のなさは量だけで決まる」と明言したとき以来,認識されていた.
つまり,有益な薬でさえ量が多すぎれば毒になり,毒物や細菌も量が少なければワクチン注射のように防護的な反応を引き出す.

リスク 不確実性の中での意思決定
Baruch Fischhoff (著), John Kadvany (著),中谷内 一也 (翻訳)
丸善出版 (2015/4/26)
P70

 

リスク 不確実性の中での意思決定 (サイエンス・パレット)

リスク 不確実性の中での意思決定 (サイエンス・パレット)

  • 出版社/メーカー: 丸善出版
  • 発売日: 2015/04/26
  • メディア: 新書

早野 そのラドンというのは、周期表でいうと「水兵」の「へ」のずっと下のほうにあるんです。一番右の列の下の方です。このラドンという元素は、重たいけど気体なんですね。
糸井 重たいけど気体。
早野 うん、気体なんです。岩の中、コンクリートの中、土の中とかに、すごく微量だけれどもウランがあって、そのウランが長い長い年月の中で、あるときα線をぽこっと出して、ラドンになるんです。で、そのラドンは気体なので、地面から出てきて、空気の中に漂ってたりする。
私たちは今この瞬間もラドンを吸っているんです。だから、肺の中で、そのラドンによって内部被ばくしてます。温泉の成分として微量のラドンを含むものに療養効果があるとされる一方で、住居内における高濃度のラドンは健康リスクがあることもわかっています。
糸井 あ、そうなんですか。でも、ラドン温泉は大丈夫?
早野 ラドン温泉、線量としては非常に低いですから。お湯に浸かってる時間が、そんなに長いわけじゃないですし・・・・・。

知ろうとすること。
早野 龍五 (著), 糸井 重里 (著)
新潮社 (2014/9/27)
P142

 

知ろうとすること。(新潮文庫)

知ろうとすること。(新潮文庫)

  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 2015/05/01
  • メディア: Kindle版

京都という町はおそろしい町

  そのうち、だんだんわかってきたことだが、この青年は、きのうきょう、西本願寺に出入りしたのではなく、という。
根掘り葉掘りきいてみると、おじいさんもひいじいさんも、
「お菓子のご用はおへんか」
ときいてまわったそうだし、さらにきいてみると、三百数十年前の天正年間から、れんめんと「お菓子のご用」をきいてきたという。
 そのころ、西本願寺は、いまの大阪城の位置に、城郭同然の巨刹を築いて、天下の門徒を支配していた。
~中略~
 その石山合戦の兵糧方だったのが、この青年の先祖だというのである。
この菓子屋さんには、
松風(まつかぜ)
という名菓があり、それは石山合戦のときの携帯口糧だったという。
~中略~
京都という町は、これほどにおそろしい町なのだ。
(昭和36年11月)


司馬遼太郎が考えたこと〈2〉エッセイ1961.10~1964.10
司馬遼太郎 (著)
新潮社 (2004/12/22)
P64

司馬遼太郎が考えたこと〈2〉エッセイ1961.10~1964.10 (新潮文庫)

司馬遼太郎が考えたこと〈2〉エッセイ1961.10~1964.10 (新潮文庫)

  • 作者: 遼太郎, 司馬
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 2004/12/22
  • メディア: 文庫

 


西本願寺 唐門[京都]

記憶は薄れる。まして他人の記憶は

よく戦争は語り継がねばならない、などと言う人がいるが、体験というものは、当人さえ年々歳々記憶が薄れる。
ましてや他人の体験した恐ろしい話など、初めから別人の意識に移し植えられるものではないのである。

人生の原則
曾野 綾子 (著)
河出書房新社 (2013/1/9)
P176

人生の原則 (河出文庫 そ 1-5)

人生の原則 (河出文庫 そ 1-5)

  • 作者: 曾野 綾子
  • 出版社/メーカー: 河出書房新社
  • 発売日: 2016/02/08
  • メディア: 文庫

 

興味のなくなるところ、記憶もまたなくなる。
(「格言と反省」から)

ゲーテ格言集
ゲーテ (著), 高橋 健二 (翻訳)
新潮社; 改版 (1952/6/27)
P65

 

ゲーテ格言集(新潮文庫)

ゲーテ格言集(新潮文庫)

  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 2016/04/22
  • メディア: Kindle版

気分と免疫はつながっている

免疫細胞の中には、神経伝達物質のレセプターをもっているものがある。
神経伝達物質とは神経細胞から神経細胞へとインパルスを伝えるもので、つまり「気分」の決定権を持っている物質だ。
免疫細胞がこれのレセプターをもっているということは、免疫細胞と気分は、つながりをもっているということだ。

多田 富雄 (著), 南 伸坊 (著)
免疫学個人授業
新潮社 (1997/11)
P158

免疫学個人授業

免疫学個人授業

  • 作者: 多田 富雄
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 1997/11
  • メディア: 単行本



P158
アレルギーの治療は、昔に比べるとだいぶロジックのあるものが多くなってはいるが、まだまだ珍奇な民間療法も多い。それなりに有効とされている理由のひとつは、アレルギーの発症には著しい心因性要素があるからであろう。アレルゲンの見つからない成人の気管支喘息は山ほどあって、免疫学的にアレルゲンを特定できるのはむしろ少数派である。そういう例では、ストレス、精神的ショック、騒音、気圧、運動その他あらゆるものが発作の誘引となる。

~中略~
汎アレルギー症候群というのもカナダで報告されている。電話機、食器、ポリエステルの下着、眼鏡、新聞、便座など、あらゆる肌に触れるものによって皮膚に激しい発疹が出る。拒否の程度の低いごくわずかの物の間にひっそりと身をおき、社会から隔離されて暮らすほかはない。
 このようなすさまじい拒否に対しては、抗原と抗体の特異的な反応を基礎にしていた免疫学はお手上げである。なぜアレルギーはここまでエスカレートしてしまったのであろうか。

P164
 人工的な環境変化によるものはやむを得ないとして、アレルギーの拒否の姿勢はますます頑なになってきたらしい。夫の精液に対して全身性のアレルギー症状としてのショックを起こした女性も、何例か報告されている。
ペットに対するアレルギーは誰でも知っている。犬のフケに対して、飼い主はしばしばペットアレルギーを起こす。しかし、最近、飼い主の方が人間のフケに対してアレルギーを起こした例が見つかった。
相互拒否の根は深い。

多田 富雄 (著)
免疫の意味論
青土社 (1993/04)

免疫の意味論

免疫の意味論

  • 作者: 多田 富雄
  • 出版社/メーカー: 青土社
  • 発売日: 1993/04/30
  • メディア: 単行本


  ここでは(住人注;ベネズエラの熱帯雨林に住むヤノマミ)マラリアが流行している。悪寒、発熱、頭痛の発作時にシャーマンは悪霊を取り除こうとする。四、五時間後、発作はおさまり、嘘のように症状は緩和する。実はマラリア発作は放っておいても四、五時間で発作はおさまるのだ。
 しかし病気は心理的なものが大きく作用する。シャーマンの治療は他の病気に対しても大きな威力を発揮している。

関野 吉晴 (著)
グレートジャーニー―地球を這う〈1〉南米~アラスカ篇
筑摩書房 (2003/03)
P103

グレートジャーニー―地球を這う〈1〉南米~アラスカ篇 (ちくま新書)

グレートジャーニー―地球を這う〈1〉南米~アラスカ篇 (ちくま新書)

  • 作者: 関野 吉晴
  • 出版社/メーカー: 筑摩書房
  • 発売日: 2003/03
  • メディア: 新書


病を忘るれば病おのずから逃る
すべての疾病は不覚に生じて自覚に成るものが多い。自覚せざるときは病既に身に生じて居てもなおいまだ病を知らず、 一たび病あるを自覚するに及んで病は大にその勢を張る。
換言すればもし自覚せざれば病はあるもなおなきが如くで、また自覚すれば病はなきもなおあるが如きである。
進潮退塩(明治四十五年七月)

努力論
幸田 露伴 (著)
岩波書店; 改版 (2001/7/16)
P233

努力論 (岩波文庫)

努力論 (岩波文庫)

  • 作者: 幸田 露伴
  • 出版社/メーカー: 岩波書店
  • 発売日: 2001/07/16
  • メディア: 文庫