2026年2月9日月曜日

女はつよし

P55
 配偶者に死に別れたあとの平均生存期間は、妻が約10年間、夫が約3年間。夫のほうが圧倒的に短い。
とはいえ、男性シングルと有配偶者をくらべた平均寿命をみると、夫婦そろっているほうがシングルより長生きすることがわかっている。
生活のうえでも、情緒のうえでも、妻のいる男性はシングルの男性より、ずっと安定したストレスの少ない状態になることを各種のデータは示している。
 その反対に、女性の既婚者はストレスをかかえる傾向があるようだ。調査をみると、「夫がストレスになる」と答える妻は約6割。

P60
 死別おひとりさまが、男か女かは大ちがいだ。女性のほうは、男性ほどの喪失感に苦しまないようだ。もちろん配偶者を失って、打撃から立ち直れなかったり、うつ状態になる女性は何人もいる。おもしろいのは、それがかならずしも仲のよかった夫婦とはかぎらないこと。

P67
死別シングル女性は、結婚は一度でたくさん、と思っているし、夫の残してくれた資産と遺族年金が入るから、再婚ニーズがそもそも低い。日本の年金は結婚したら夫が妻を養うもの、という前提で組み立てられているので、もし死別の女おひとりさまが再婚などしたら、遺族年金の受給権を失う。年金が自分についている女性は、みすみすそれを失う選択などしないものだ。
 そのうえ、再婚したらふたたび介護要員になる将来が待っていると思えば、よほどラブラブでなければ再婚に踏み切らないだろう。それに前妻やその子たちとのトラブルを避けたいと思えば、事実婚を選ぶほうがよい。
事実婚は、うまく行っているあいだは続くが、そうでなくなれば解消されるリスクが高い。
 離別シングル女性が再婚願望をもつのは、ほとんどが経済的な動機。離別男性と離別女性との再婚顔貌を比較した調査では、男性の多くが「できれば再婚したい」と希望しているのに対し、女性の多くが「もう結婚はしたくない」と思っていることがわかっている。
~中略~
 離別女性には子どもがついてくる場合が多いから、夫になるには、新しい妻の子どもの父親になる覚悟もいる。
”再建”家庭はややこしい。それに離別シングル男性の場合には、別れた家族に養育費を送っていたりして経済的負担があったり、自分の子どもとの関係は切れないから、こちらもややこしい。よほどの資産と収入が、なければ、再婚の可能性は低い、と承知すべきだろう。
 それなら初婚の若い女がいる、と思うあなたは虫がよすぎる。

~後略 

男おひとりさま道
上野 千鶴子 (著)
文藝春秋 (2012/12/4)

男おひとりさま道 (文春文庫 う 28-2)

男おひとりさま道 (文春文庫 う 28-2)

  • 作者: 上野 千鶴子
  • 出版社/メーカー: 文藝春秋
  • 発売日: 2012/12/04
  • メディア: 文庫

 

生物学的に女性のほうが男性より強いのは、平均寿命の面からも、各種データの面からも確かであり、これは日本人に限らない世界的な傾向である。そして、女性のほうが人生を楽しむすべに長けていることも、間違いないと思う。
人生を楽しむのがうまくて、感情が老化しにくいから、長生きもできるのだ。
 男性は筋力があって瞬発力にこそ優れているが、生物として弱いのに加え、感情が老いやすいのだ、定年退職を持っていたように、病気に倒れてしまう人もいる。

人は「感情」から老化する―前頭葉の若さを保つ習慣術
和田 秀樹 (著)
祥伝社 (2006/10)
P110

人は「感情」から老化する 脳の若さを保つ習慣術(祥伝社黄金文庫Gわ4‐9) (祥伝社黄金文庫 Gわ 4-9)

人は「感情」から老化する 脳の若さを保つ習慣術(祥伝社黄金文庫Gわ4‐9) (祥伝社黄金文庫 Gわ 4-9)

  • 作者: 和田秀樹
  • 出版社/メーカー: 祥伝社
  • 発売日: 2023/03/09
  • メディア: 文庫

人の一生のうちには、人の心を
喜びや悲しみでゆるがすような
大事な瞬間が幾度かあるものです。
そういう場合、男なら自分の身なりなど忘れて、
むぞうさに多ぜいの前に出ますが、
女はそういう時でもやはり皆の気に入ろうと、
えりぬきの衣装や申しぶんない飾りを身につけて、
人前に出てうらやまれようとするものです。
(悲劇「私生の娘」一八〇三年作、第一幕第六場から)

ゲーテ格言集
ゲーテ (著), 高橋 健二 (翻訳)
新潮社; 改版 (1952/6/27)
P16

 

ゲーテ格言集(新潮文庫)

 

ゲーテ格言集(新潮文庫)

  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 2016/04/22
  • メディア: Kindle版

 

 女性の脳を機能的に見ていくと、どうしても不安になりやすい傾向が男性よりも高いのですが、この性質にも利点があります。
将来のリスクを男性よりずっと正確に予測して、それに備えることができる、という点です。
 しばしば、女性は男性よりも現実的、などと言われるのはこのためでしょう。

脳はどこまでコントロールできるか?
中野 信子 (著)
ベストセラーズ (2014/8/19)
P186

脳はどこまでコントロールできるか? (ベスト新書)

脳はどこまでコントロールできるか? (ベスト新書)

  • 作者: 中野信子
  • 出版社/メーカー: ベストセラーズ
  • 発売日: 2015/07/17
  • メディア: Kindle版

 

病気は完全否定すべき存在?

 ヨーロッパの思想では、病気に対する考え方は、根底において否定の精神から出発します。
病気を否定すべき存在だと考える。 そういう考え方で発達してきたのが西洋医学、近代医療なのです。

 いまは近代医療が医療の現場に長く君臨してきたため、病気を見つけたらその病根を切除するのがあたりまえになっています。
病気をなだめて、それを内包しながら、どのように共に生きてゆくかということを考えることができません。

五木 寛之 (著)
他力
幻冬舎 (2005/09)
P71

他力 (講談社文庫)

他力 (講談社文庫)

  • 作者: 五木 寛之
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2000/11/06
  • メディア: 文庫

外国人は自分の力で苦難を払いのけようとするでしょう。
外国人は征服するとよく言うでしょう。病気でも、西洋医学というのは病気を征服しようというシステムになっているんです。
日本人にはそういうシステムはなくて、祓いの精神で、病気を征服しようなんていうのは昔は微塵も考えていなかったのではないでしょうか。

葉室 頼昭 (著)
神道 見えないものの力
春秋社 (1999/11)
P207

 

神道 見えないものの力(旧版)

神道 見えないものの力(旧版)

  • 作者: 葉室 頼昭
  • 出版社/メーカー: 春秋社
  • 発売日: 1999/11/25
  • メディア: 単行本

 

 疾病は実に忌むべきである。しかし疾病の人に存するも、あるいは意義あるように見える。 疢疾(ちんしつ)の身にあるものはかえってその志すところが成るという理は、古人も道破して居る。
~中略~
病が吾人を啓発することは決して少なくない。是の如く観ずれば、自ら招かざるの病に苦むものも必ずしも不幸のみとはいえぬ。
しかしこれは道理は然様(そう)であるにしても、病者に対しては言うに忍びざることである。
(明治四十四年十一月)

努力論
幸田 露伴 (著)
岩波書店; 改版 (2001/7/16)
P154

 

努力論 (岩波文庫)

努力論 (岩波文庫)

  • 作者: 幸田 露伴
  • 出版社/メーカー: 岩波書店
  • 発売日: 2001/07/16
  • メディア: 文庫

京都府 宇治川

年をとればこんなもの

P6
   病院通いの年寄りが多いのは、私たちの同業者が、「健やかに老いなければいけない」と脅し続けてきたせいもあります。
今、年寄りに対する「若さ」や「健康」の重圧には、かなりのものがあります。健康食品やサプリメントの売れ行きの凄さがそれを物語っているように思えます。
 本来、年寄りは、どこか具合の悪いのが正常なのです。不具合のほとんどは老化がらみですから、医者にかかって薬をのんだところで、すっかりよくなるわけではありません。昔の年寄りのように、年をとればこんなものと諦めることが必要なのです。

P170
現在の日本人は若さにこだわり、「年のせい」を嫌って認めようとはせず、」発達したといわれる近代医療に過度の期待を持ち、老いを「病」にすり替えています。
~中略~
 年寄りの不具合は、すべてが老化が原因か、老化がらみです。今さら、医者にかかって薬を飲んでみたところで、若返らせることは不可能ですから、根本的には、どうなるものでもありません。
 しかし、治りたい一心で治そうと思ってやって来た医者のところで「年のせい」などという、にべもない言葉は、患者にとっては許せません。
もっとも、医療側も年寄りは大事な「飯の種」ですから、のど元まで出かかった言葉でも、ぐっと呑み込みます。 そして、さらに、老化にもっともらしい病名をつけ、発達した医療に頼れば何とかなるように煽り、期待を持たせます。
下手に、「年をとればこんなもの」と覚られようものなら、病院は潰れ、開業医は夜逃げを余儀なくされ、医療関係の失業者が町に溢れます。

大往生したけりゃ医療とかかわるな
中村 仁一 (著)
幻冬舎 (2012/1/28)

大往生したけりゃ医療とかかわるな (幻冬舎新書)

大往生したけりゃ医療とかかわるな (幻冬舎新書)

  • 作者: 中村 仁一
  • 出版社/メーカー: 幻冬舎
  • 発売日: 2012/01/30
  • メディア: 新書

 

京都府 宇治川

禁止は人間の好奇心への挑戦である

禁止は人間の好奇心への挑戦である。

昔話と日本人の心
河合 隼雄 (著)
岩波書店 (2002/1/16)
P2

昔話と日本人の心 (岩波現代文庫―学術)

昔話と日本人の心 (岩波現代文庫―学術)

  • 作者: 河合 隼雄
  • 出版社/メーカー: 岩波書店
  • 発売日: 2002/01/16
  • メディア: 文庫

 

京都府 宇治川

好奇心がたいせつ

P67
 面白いっていうのは、かならずしも「わかりやすい」ってことじゃない。わかりにくい、むずかしいものがわかるとき「面白い」んです。
南 伸坊

P71
科学というのは好奇心第一ですよ。一体どういう仕掛けであんなことになるんや?

 

五〇年ばかり、脇目もふらずにケムシから蛾への旅の謎を研究した人おるねん、日本人ですよ。五〇年間やってついに正体をつきつめたという人がおる(石崎宏企矩氏(名古屋大学名誉教授)らのチームのこと。)。大変な仕事ですよ。
だからといって、この、ケムシが蛾やチョウになる謎を調べても、その結論が、カエルの場合にも通用するかといったら、簡単にはいきませんわ。
岡田 節人

生物学個人授業
岡田 節人 (著) , 南 伸坊 (著)
新潮社 (1996/10)

生物学個人授業 (河出文庫 み 26-1)

生物学個人授業 (河出文庫 み 26-1)

  • 出版社/メーカー: 河出書房新社
  • 発売日: 2014/08/06
  • メディア: 文庫

春日 好奇心って、人が動く動機としていちばん大きいですからね。
内田(住人注:内田 樹) そうなんですよ。天岩戸ってけっきょく、皆が号泣して頼み込んでも、怒鳴って脅かしても開かなかったドアが、好奇心が喚起されることによって開くっていう話じゃないですか。
 皆が背中を向けてゲラゲラ笑ってると、「わたしがいないのに、何がおかしいんだ?」という好奇心が引き起こされる。

「治らない」時代の医療者心得帳―カスガ先生の答えのない悩み相談室
春日 武彦 (著)
医学書院 (2007/07))
P190

「治らない」時代の医療者心得帳-カスガ先生の答えのない悩み相

「治らない」時代の医療者心得帳-カスガ先生の答えのない悩み相

  • 作者: 春日 武彦
  • 出版社/メーカー: 医学書院
  • 発売日: 2007/07/01
  • メディア: 単行本

京都府 宇治川

真=善=美

この世のあらゆる事象において、政治、経済から自然科学、人文科学、社会科学まで、神髄とはすべて美しいのだと私は思っています。
何故だかよく分かりませんが、私の経験では常にそうなのです。万物の創造主である神がそのように宇宙を創り給うた、とは言いたくないのですが。
となると神髄にたどり着くには美しいものを探せばよい、ということになります。逆に言うと、美しくないものは神髄ではないのです。

日本人の誇り
藤原 正彦 (著)
文藝春秋 (2011/4/19)
P27

日本人の誇り (文春新書)

日本人の誇り (文春新書)

  • 作者: 藤原 正彦
  • 出版社/メーカー: 文藝春秋
  • 発売日: 2011/04/19
  • メディア: 新書

 

京都府 宇治川

世間師

P214
 日本の村々をあるいて見ると、意外なほどその若い時代に、奔放な旅をした経験をもった者が多い。村人たちはあれは世間師だといっている。
旧藩時代の後期にはもうそういう傾向がつよく出ていたようであるが、明治に入ってはさらにはなはだしくなったのではないだろうか。

P259
 明治から大正、昭和の前半にいたる間、どの村にもこのような世間師が少なからずいた。
それが、村をあたらしくしていくためのささやかな方向づけをしたことはみのがせない。いずれも自ら進んでそういう役を買って出る。政府や学校が指導したものではなかった。
 しかしこうした人びとの存在によって村がおくればせながらようやく世の動きについて行けたとも言える。そういうことからすれば過去の村々におけるこうした世間師の姿はもうすこし掘りおこされてもよいように思う。

忘れられた日本人
宮本常一 (著)
岩波書店 (1984/5/16)

忘れられた日本人 (岩波文庫)

忘れられた日本人 (岩波文庫)

  • 作者: 宮本 常一
  • 出版社/メーカー: 岩波書店
  • 発売日: 2017/04/20
  • メディア: Kindle版

 

高知県 四万十川

2026年2月7日土曜日

博多に仙厓あり

 越後に良寛あれば、博多に仙厓ありで、正直に自分自身を曝した達人の生き方は、われらケチくさい人生を送っているものには、まことに羨望に耐えない。とくに聖福寺の禅僧仙厓義梵の天衣無縫ぶりは、知れば知るほど楽しくなる。

 たとえば、達磨の画を描いてそこに「九年面壁いやな事」と賛を入れ、人のびっくりするのに平気の平左。
あるとき、新築の家へ呼ばれ一筆を乞われた仙厓は「ぐるりっと家をとりまく貧乏神」と書いた。縁起でもないと青ざめる主人や客。仙厓はニコニコしながら、「七福神は外へ出られず」。
こんな風にガッチリ固まった封建の世の形式主義と対決し、常に洒脱な人間の妙味を撒き散らして生き抜いた。

 天保八年(一八三七)十月七日、享年八十八で入寂するとき、枕辺の弟子たちに言った最後の言葉が、この和尚さんらしくていい。
 「死にとうない」
 この達人禅師にしてこの言葉、聞き違えであろうと弟子が口元に耳を寄せると、仙厓はニコリとして、「ほんまに、ほんまに」と付け加えた。
最後まで性根を剥き出しにして生きたといえる。羨ましい。

この国のことば
半藤 一利 (著)
平凡社 (2002/04)
P196

この国のことば

この国のことば

  • 作者: 半藤 一利
  • 出版社/メーカー: 平凡社
  • 発売日: 2002/04/01
  • メディア: 単行本

 

福岡市 天神

戦国時代の僧の役割

 P13
「心頭滅却すれば火もまた涼し」というように、禅は気合いの仏法である。 (住人注;戦国大名は)子ども時代に禅寺で修行し、気持ちを高める漢詩や漢文を学ぶことは、戦でもっとも重要な決断力を養うのに大いに役立ったのである。  それに領内の治世や外交にも、禅僧をはじめとする僧の力が必要だった。 僧は文書の作成に長けていただけでなく、その師弟関係を軸とする人脈は大名の領国を越えて広がっていた。そのため、さまざまな交渉を僧が引き受けた。  豊臣秀吉の毛利攻めのときも、毛利方の交渉役は安国寺恵瓊(あんこくじえけい)という臨済僧で、のちに秀吉によって僧のまま大名に取り立てられた。  そのほか、徳川家康が幕府を開いたときも、臨済僧の金地院崇伝(こんちいんすうでん)、天台僧の天海(てんかい)の二人が黒衣(こくえ)の宰相、すなわち僧服を着た政治顧問として幕府の体制をつくりあげたのだった。 ~中略~

  政教分離の現在では考えられないことだが、自身の精神を安定させるためにも、領国を治めるためにも、大名にとって僧はきわめて重要なポジションを占めていたのだった。
~中略~
 こうした寺社の保護は、各地の戦国大名にとって重要なことだった。
前述したように、僧は政治顧問や子弟の教育などの役割を担っていたほか、土地の神仏を保護することは、領民の心をまとめるうえで非常に重要だったからだ。
大角 修

仏像探訪 (エイムック 2124)

エイ出版社 (2011/2/17)

仏像探訪 (エイムック 2124)

仏像探訪 (エイムック 2124)

  • 出版社/メーカー: エイ出版社
  • 発売日: 2011/02/17
  • メディア: 大型本

 

京都府 南禅寺

寺田虎彦

  寺田(住人注;寺田虎彦)が、ここまで防災に熱心であったのは、彼が、津波常襲地である高知の出身であったことと無関係ではない。
なかでも「種崎」という高知市街に近い海岸の地が、彼の思想形成に大きくかかわっているように思われる。
 種崎は、坂本龍馬像のある観光地・桂浜から幅約三〇〇メートルの蒲戸湾口をはさんで向かい側にある風光明媚な砂浜である。
寺田は中学時代の一八九二(明治二五)年頃から、種崎へ海水浴に出かけた。~中略~
 種崎は、寺田の原風景となっており、「海水震動」や「海鳴り」など、海の自然現象に関する科学的研究を行なう素地を作っている。
 実は、この種崎こそが、高知市近郊でも、津波による最も悲惨な人的被害が見られた地であった。多感な寺田が、この地に長く滞在して、それを意識しなかったはずはなく、種崎が寺田の防災思想の母なる地となった、と、私はみている。

天災から日本史を読みなおす - 先人に学ぶ防災
磯田 道史 (著)
中央公論新社 (2014/11/21)
P58

天災から日本史を読みなおす - 先人に学ぶ防災 (中公新書)

天災から日本史を読みなおす - 先人に学ぶ防災 (中公新書)

  • 作者: 磯田 道史
  • 出版社/メーカー: 中央公論新社
  • 発売日: 2014/11/21
  • メディア: 新書


高知市 寺田虎彦邸