2025年12月10日水曜日

教育の受益者は本人ではなく、社会全体

かの国(住人注;アメリカ)は基本的に「自助の精神」を重んじる国です。アメリカ社会における理想的な人格とは「self-made mann」です。
他人に依存せず、誰からも支援されず、独力で地位も、財産も、威信もすべて築き上げた人間を敬する伝統があるわけです。「開拓者の国」ですから。  ですから、この国では「弱者の支援」というアイディアがほんとうの意味で根づいたことはないのかも知れません。
例えば、アメリカ教育史上の大問題は、公教育の導入に多くの市民が反対したことです。

公教育の理念自体はコンドルやルソーなど、一八世紀のフランスでできたものですが、行政的に公教育が導入されたのはアメリカが最初です。
アメリカは公教育の先進国なのです。ただ、この公教育制度に対して、つまり「税金を使ってすべての子どもたちに初等中等教育を施す」という仕組みに猛然と反対した市民たちがいた。
 彼らは教育の受益者は「教育を受ける本人」であると考えた。子どもたちが学校に通い、そこでしかるべき教育を受けて、有用な知識や情報や技術を身につけて、資格や免許をとり、社会的上昇を果たすとするならば、教育の受益者は子どもたち自身だということになる。
だとすれば「受益者負担」の原則を適用して、教育経費は受益者たる子どもたち自身が、あるいはその扶養者である親が負担すべきではないのか、そこにわれわれの納めた税金を投じるのはアンフェアである、そう言って反対する人たちが出現してきた。これは反論のむずかしいロジックでした。彼らはたしかに刻苦勉励して税金が払えるような身の上になった。だから、自分の子どもたちにそれなりの教育を与えることができるようになった。
けれども、自分ほども努力していないし、才能もない貧乏人たちの子弟のためになぜ教育機会を提供しなければならないのか、その理由がわからない。彼らが教育を受けて、それなりの社会的能力を獲得すれば、自分の子どもたちとポストをめぐって競合することにもなりかねない。 なぜ、自分の懐を痛めてまで他人の子どもに自分の子どもに自分の子どもを蹴落とすチャンスを提供しなければならないのか。
教育の受益者は教育を受ける本人である。それなら、教育を受けたいものはまず働いて、金を貯めて、それを自己投資すべきである。~中略~
 それでも公教育が実現したのは、公教育論者たちが納税者たちを「短期的には損だが、長期的にはお得」という利益誘導のロジックを用いて説得したからです。~中略~ どう転んでも、こどもたちに教育を施したほうが長期的に見れば「金になる」んです。そういうふうに説得した。
 でも、僕は今でも、こういう経済合理性のロジックで公教育の導入に成功したという歴史的事実そのものがアメリカの根本にある種の「ねじれ」を呼び込んだのではないかと思います。
「学校教育」というのは、それで誰かが「金を儲ける」ことができるから有用であるというような理屈で基礎づけてはならないものだからです。
 学校教育の受益者は教育を受ける子どもたちではありません。誤解の多いことなので、繰り返し強調しますが、学校教育の受益者は本人ではなく、社会全体なのです。
われわれが学校教育を行う理由は、一言で言えば、われわれ共同体を維持するためです。集団として生き残るためです。次代の共同体を支えることのできる成熟した市民を育成するためです。自余のことは副次的なことにすぎません。

最終講義 生き延びるための七講
内田 樹 (著)
文藝春秋 (2015/6/10)
P316

最終講義 生き延びるための七講 (文春文庫)

最終講義 生き延びるための七講 (文春文庫)

  • 作者: 内田 樹
  • 出版社/メーカー: 文藝春秋
  • 発売日: 2015/07/03
  • メディア: Kindle版

48番西林寺 愛媛県

異文化コミュニケーション

異質な文化に切り込んでいけばいくほど、理解できる範囲も広まり、その深度も増してゆくことは確かだけれど、その反面、とうてい理解を許さぬ領域も、それにつれて、いやそれよりもはるかに強い割合で広がってゆく

会田 雄次 (著)
日本人の意識構造―風土・歴史・社会 (講談社現代新書 293)
講談社 (1972/01)
P95

 

日本人の意識構造 (講談社現代新書)

日本人の意識構造 (講談社現代新書)

  • 作者: 会田 雄次
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 1972/10/25
  • メディア: 新書

 

また自然保護といっても、ドイツ人なら「自然に美容整形の手術」を加える行き方であり、日本人なら「静かな山ふところに抱かれる」という、人間が自然に保護される行き方 であって、自然保護の「現実」の外観が同じだからといって、同じ考え方だと思ってはならないのである。

 こんなことを書いたのは、互いに交われば相互に理解できると単純に考えている日本人が余りに多いからである。
ジャンボ時代が来れば、世界はもっともっと狭くなり、お互いに肩をふれあい、話し合う機会はますます多くなり、日常のこととなるかも知れない。だが、それが相互理解に通 ずるなどと、絶対に安直に考えてはならない。

日本人とユダヤ人
イザヤ・ベンダサン (著), Isaiah Ben-Dasan (著)
角川書店 (1971/09)
P263

 

日本人とユダヤ人 (角川文庫ソフィア)

日本人とユダヤ人 (角川文庫ソフィア)

  • 作者: イザヤ・ベンダサン
  • 出版社/メーカー: 角川書店
  • 発売日: 1971/09/30
  • メディア: 文庫

 

 

コミュニケーション・デザインの基本
 君が人を好きになった時に取るべき最善の方法は、その人のことをきちんと知ろうと目を凝らし、耳をすますことだ。
そうすると、君はその人が自分の思っていたよりも単純でないことに気づく。極端なことを言えば、君はその人のことを実は何も知っていなかったのを思い知る。
 「映画篇」金城一紀著/集英社

佐藤 尚之 (著)
明日の広告 変化した消費者とコミュニケーションする方法
アスキー (2008/1/10)
P119

明日の広告 変化した消費者とコミュニケーションする方法 (アスキー新書 045)

明日の広告 変化した消費者とコミュニケーションする方法 (アスキー新書 045)

  • 作者: 佐藤 尚之
  • 出版社/メーカー: アスキー
  • 発売日: 2008/01/10
  • メディア: 新書
    

 

実は、こうして同じ事実を違ったように見ていることを互いに知ること自体が、コミュニケーションである。

マネジメント[エッセンシャル版] - 基本と原則
ピーター・F・ドラッカー (著), 上田 惇生 (翻訳)
ダイヤモンド社; エッセンシャル版 (2001/12/14)
P163

 

 

マネジメント[エッセンシャル版] - 基本と原則

マネジメント[エッセンシャル版] - 基本と原則

  • 作者: ピーター・F・ドラッカー
  • 出版社/メーカー: ダイヤモンド社
  • 発売日: 2001/12/14
  • メディア: 単行本

 

 

 

 「日本の舞台でも、恋愛の場面がありますか」とお聞きになるので、
「ええ、ございます。日本のお芝居は人生のありのままの姿を見せてくれますし、日本人だって、他の国民と変りはありません」と答えました。
~中略~
「日本では、夫婦の間でも接吻しないんですってね、ほんとですか」
「ええ、お辞儀をするだけです。お辞儀は日本人の心の表現なのです」
「でも、お母さまはあなたに接吻なさいましたでしょう。アメリカへご出発の時に、お母さまは、どうなさいましたの」
「唯、お辞儀をしてから、物静かに「道中、気をつけてね」と申しました」と答えましたが、まだ、この国に来て日も浅い私は、婦人の顔に浮かんだ奇妙な表情や、話題を更える前の一寸した沈黙が、何を意味していたのか、よくわかりませんでした。

 お辞儀は、唯、体を曲げる動作ではありません。それには、精神的な面もあるのです。
父や妹、友達、召使、子供に向かっては、それぞれ異なったお辞儀の仕方がある筈です。母が重々しい態度で、低いお辞儀をいたしました時、私にはそこに愛情がひしひしと感じられましたし、傍にいた人も、そのかくれた思いの深さを汲むことができたと思います。

 結局、日本人というものは、感情を出さない国民です。ごく最近まで、良家の子女は、強い感情を抑えることを、その心にも生活にも仕込まれて参りました。
~中略~

「ヱツや、異国では、犬のように、お互いになめあう習慣があるとか聞きますが・・・・」
 こう申した母は、批評していたわけではなく、ただ、不思議でならなかったのでございましょう。私もまた、不馴な習慣が、他所目(よそめ)にはどんなに映るものであるかを説明するために、母の言葉をひいたまでであります。この国に住みついて、この国の感情の表現も、日本のお辞儀と同じく、精神的な面のあることを知りました。
接吻が、親切、感謝、友情、愛情を表すものであり、どれもどれも、人の心から心への、聖なるささやきであることを、今はよく理解しております。

杉本 鉞子 (著), 大岩 美代 (翻訳)
武士の娘
筑摩書房 (1994/01)
P231

 

武士の娘 (ちくま文庫)

武士の娘 (ちくま文庫)

  • 作者: 杉本 鉞子
  • 出版社/メーカー: 筑摩書房
  • 発売日: 1994/01/01
  • メディア: 文庫

 

 

P62
「百聞は一見に如かず」という諺に似ているものとして、英語圏の「見ることは信じることである」という諺が引かれる。
確かに、信じるためには、耳で聞くよりも目で見るほうが百倍も確実である。しかしながら、目で見るよりも肌で「感じる」ほうが、もっと信じる度合いが強くなる。
 口でいうときは上手に説得しないと信じてもらえないが、一度でも見てもらうことができれば、すぐに信じてもらえる。さらに、身体全体で感じてもらうことができたら、その信じる気持ちは盤石のものとなる。
特にこれまでまったく知らなかったことについては、まず口で説明しても分からない。想像しようとしてみても、その素地となる要素を持ちあわせていないので、イメージの合成もできないのである。
~中略~
 異文化について理解を深めてもらおうとするときは、いくら雄弁に説明したとしても、あまり効果は期待できない。
英語圏の人に対して茶道の説明をするとき、英語を母国語とする人で茶道についてもかなり勉強した人が、着物を着たうえで上手に話したとしても、どこかものたりない。異文化の要素が欠如しているからである。
 それよりも、着物を着た日本人が下手な英語で説明したほうに説得力がある。
若い日本人の女性で茶道の勉強をした期間はそれほど長くはない人でも、日本文化の中で生まれ育ってきているので、日本の文化が身に染みこんでいる。その日本人が日本の伝統の色が濃い着物を着ていれば、それだけで外国の人にとっては、調和のとれた異文化である。
そのうえに、たどたどしい英語で話すのであるから、これも異文化のにおいを強調する結果になる。

P67
日本人は四季の移り変わりに敏感で、その気持ちが茶道のあちこちに、さまざまなかたちで表現されている。たとえば、一言でいえば、夏は涼しく冬はあたたかく、という配慮である。
人が快適な時間をすごせるように、という心遣いがちりばめられたプレゼンテーションは、処々にみられるのだ。
 しかし、その点を強調しようとするあまり、日本にはすばらしい四季があって日本人はその変化に敏感で、などといえば、同じような四季のある国の人は反感を覚えるかもしれない。
四季があるのは日本だけではないし、ほかの国の人が自然の変化に対して鈍感であるかのようないい方と解釈されるからである。
~中略~
 日本文化の説明をして正しい理解を得ようとするときは、相手の文化についての知識が必須である。相手の文化との類似点や相違点を認識したうえで、それに基づいて説明の内容や手法を考えていく必要がある。
その点について間違えると、相手に正しく理解されなかったばかりか、反感を買ったためにまったく耳を傾けてもらえなかったりする結果になる。

P147
 文化と文化が衝突するときは、真っ正面からぶつかったうえで、お互いに理解しようと努める。
そこをかわしたら、よく理解しないままで終わってしまう。
ぶつかって抵抗を感じ不便な思いをすることによって、なぜそのような文化になっているのかまでも考えるようになる。そうなって初めて相互理解に到達したということができる。

超説得力
山崎 武也 (著)
講談社 (2003/11)

超説得力 (講談社ニューハードカバー)

超説得力 (講談社ニューハードカバー)

  • 作者: 山崎 武也
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2003/11
  • メディア: 単行本

   イギリス人やアメリカ人が、お前の喋ることを理解できるように言え、などと要求するのは馬鹿げたことだ。
人間だろうと蕈(きのこ)だろうと、そんなに都合よく育つものではない。まるで英米人に理解されることだけが重要で、彼らでなければ理解できる者がいないかのようだ。

森の生活
D・ヘンリー・ソロー (著), 佐渡谷 重信 (翻訳) (著)
講談社 (1991/3/5)
P465

 

森の生活 (講談社学術文庫)

森の生活 (講談社学術文庫)

  • 作者: D・ヘンリー・ソロー
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 1991/03/05
  • メディア: 文庫
47番八坂寺 愛媛県

正義

 正義というのは、人間が人間社会を維持しようとして生みだしたもっとも偉大な虚構といえるかもしれない。
たしかに自然と現実から見れば、虚構に過ぎない。が、その虚構なしに人間はその社会を維持できないという強迫観念をもっている。 

花神 (下巻)
司馬 遼太郎 (著)
新潮社; 改版 (1976/08)
P216  

花神(下) (新潮文庫)

花神(下) (新潮文庫)

  • 作者: 遼太郎, 司馬
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 1976/09/01
  • メディア: 文庫

 聖書における正義の観念とは何か。それは少数民族が平等に遇せられることでもない。
裁判で冤罪が放置されるのを防ぐということでもない。正義は人知れず、人間が神の「道具」として、神の意志のために働ける関係を言うのである。
その神と人間との「折り目正しい関係」だけが正義である。したがって正義は人間社会の中で、他者の目を意識した水平間隔で見えてくるものせはない。
それは神と人との間だけに存在する、垂直的な関係なのである。

人生の原則
曾野 綾子 (著)
河出書房新社 (2013/1/9)
P52

人生の原則

人生の原則

  • 作者: 曾野 綾子
  • 出版社/メーカー: 河出書房新社
  • 発売日: 2013/01/09
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)

 アメリカでは有能な弁護士を雇う資金力があれば、そんな犯罪でも有利な判決に持っていけるといわれる。つまり、ある意味、お金で正義が買えるともいえる。インドやインドネシア、ロシアに行けば、いまだに交通違反のもみ消しをするときや、ビザの取得等の官僚の仕事を有利にするときなど、チップのように賄賂を要求される。
 確かに日本はここまでひどくはない。しかし、正義は常にまかり通るわけではない。もちろん悪を奨励しているわけではないが、最後は正義が常に勝つというナイーブな考えも奨励しない。
 洋の東西を問わず、スーパーヒーローがフィクションの世界であれだけ求められるのは、現実にそういう「スカッとする」ものがないことの裏返しだ。また、正義は人の数ほどある。その正義を完璧に数値化して公平に判断するのは不可能だ。人生は不条理だと思ったほうがいい。
そもそも”条理”は人間が考えた勝手な幻想ともいえる。あなたの思う通りに世の中はできていないのだ。神や仏がいるかどうかはわからないが、そういう絶対的な存在が常に条理にかなった鉄槌を下してくれるわけではなさそうだ。
 世の不条理を受け入れ、まかり通らないのを百も承知で正義とともに殉じる覚悟なら、それはそれでいい。しかし、そこまでの覚悟がないなら、善悪を最上位において、正義感を世の中にむやみやたらに要求することは避けたほうがいい。正義感から他者と無駄な諍いをすることはもってのほかだ。なぜなら、相手が勝つ場合が結構あるからだ。

頭に来てもアホとは戦うな! 人間関係を思い通りにし、最高のパフォーマンスを実現する方法
田村耕太郎 (著)
朝日新聞出版 (2014/7/8)
P21

頭に来てもアホとは戦うな!

頭に来てもアホとは戦うな!

  • 作者: 田村耕太郎
  • 出版社/メーカー: 朝日新聞出版
  • 発売日: 2014/09/25
  • メディア: Kindle版

46番浄瑠璃寺 愛媛県

文明とは

一一 文明とは道の普(あまね)く行はるるを賛称せる言にして、宮室の荘厳、衣服の美麗、外観の浮華を言ふには非ず。
世人の唱ふる所、何が文明やら、何が野蛮やら些(ち)とも分らぬぞ。予嘗(かつ)て或人(あるひと)と議論せしこと有り、 「西洋は野蛮ぢや」と云ひしかば、「否な文明ぞ」と争ふ。
「否な否野蛮ぢや」と畳みかけしに、「何とて夫れ程に申すにや」と推せしゆゑ、「実に文明ならば、未開の国に対しなば、慈愛を本とし、懇懇説諭して開明に導く可きに、左は無くして未開蒙昧の国に対する程むごく残忍の事を致し己を利するは野蛮ぢや」
と申せしかば、其の人口を莟(つぼ)めて言無かりきとて笑はれける。

西郷隆盛「南洲翁遺訓」―ビキナーズ日本の思想
西郷 隆盛 (著), 猪飼 隆明 (翻訳)
角川学芸出版 (2007/04)
P41

西郷隆盛「南洲翁遺訓」―ビキナーズ日本の思想 (角川ソフィア文庫)

西郷隆盛「南洲翁遺訓」―ビキナーズ日本の思想 (角川ソフィア文庫)

  • 作者: 西郷 隆盛
  • 出版社/メーカー: 角川学芸出版
  • 発売日: 2007/04/01
  • メディア: 文庫


P47
「欧米化」にもいろいろあります。自動車が普及して運動量が減ったことや、コーラのような清涼飲料水が飲まれるようになったことは、間違いなく糖尿病増加の原因です。一方で、肉を多く食べるようになったことなどは関係ありません。
~中略~
 いまでは、むしろ貧困層に糖尿病が増えています。
 アメリカのスーパーマーケットに行くと、巨大なピザが10枚くらいセットになったものが売られています。栄養バランスは良くないのですが、安くて手軽でお腹がいっぱいになるために人気です。
そして、そういうみのを常食している人たちに、肥満も糖尿病も、他の怖い病気も増えているのです。  これは世界的傾向で、日本でも同様の流れになりつつあります。

P63
 日本人の糖尿病に関する記録で、最も古いのが平安時代の藤原道長の日記です。道長は喉の渇きや視力の低下に悩んだようで、明らかに糖尿病であったと思われます。
 これは道長が糖質をたくさん口にできる特権階級だったからであり、一般人には糖尿病などありませんでした。  日本で一般人が糖尿病にかかるようになるのは、戦後20年くらい過ぎてからのことです。
経済が急成長して、多くの人たちがお米や麺類、砂糖の入ったお菓子や飲み物を好きなだけ口にできるようになり、糖尿病も増えていきます。
そして、現代ほど30代や40代の男性に肥満者が多い時代はありません。
 戦後70年といえば、長いように感じるかもしれません。しかし、1万2000年続いた縄文時代と比べたら、ほんの一瞬。その間に私たちは、なにかとんでもないことをしでかしてしまったのかもしれません。
 いま「生活習慣病」と呼ばれる病気は、明らかに「文明病」です。生活習慣には、運動や睡眠などさまざまな要素がありますが、食生活の変化が私たち現代人を苦しめる病気をつくりだしたのです。
 肥満、糖尿病、高血圧、がん、脳卒中、心筋梗塞、動脈硬化、脂質異常、うつ、ぜんそく、アレルギー、アトピー、潰瘍性大腸症候群・・・・・これらはすべて「文明的な食事によって生まれたと言っていいでしょう。

医者が教える食事術 最強の教科書――20万人を診てわかった医学的に正しい食べ方68
牧田 善二 (著)
ダイヤモンド社 (2017/9/22)

医者が教える食事術 最強の教科書――20万人を診てわかった医学的に正しい食べ方68

医者が教える食事術 最強の教科書――20万人を診てわかった医学的に正しい食べ方68

  • 作者: 牧田 善二
  • 出版社/メーカー: ダイヤモンド社
  • 発売日: 2017/09/22
  • メディア: Kindle版
45番岩屋寺 愛媛県

科挙

P227
一二、一三世紀には、大きな支配力のある中国の官僚制は、真の能力主義になっていた。権力のどの地位も、皇帝位をのぞけば、教養を身につけ科挙と呼ばれる官僚登用試験を受けなければ手に入れられなかった。
 科挙の目的は、志願者のもって生まれた資質や、発揮できる技術なり能力なりを評価することではなかった。試験の一環として、志願者はどんあ役人も直面しそうな現実のシナリオをめぐる質問をされた。道徳上のジレンマや葛藤、相いれない利害などに悩まされるような状況だ。
評価されるのは、正解を導けるかどうかではない。正解などないからだ。
志願者は、全体像を見て、複雑な状況を切り抜ける潜在能力をもっているかどうかで評価された。科挙は善良さを測る試験だった。
 いうまでもなく、科挙の制度はすべての人に分け隔てなくひらかれたものではない。手はじめに、科挙の受験者は男に限定されていた。また、当時は世界じゅうどこでもそうだったように、万人に対する教育はなかった。富裕層の家族は子どもが科挙のための指導を受けられるよう手配できた。
とはいえ、受験勉強をする者は、道徳的な自己修養の指導を受け、貴族のエリートとは異なる価値観を学んだ。試験の際、受験者の解答は匿名にされ、どの家の出かは問われなかった。
 科挙に合格すると、地元からはるかに離れた場所へあちこち転任させられた。子ども時代の縁故や地元の強力な利害関係者によって判断が過度に影響されないようにとの配慮からだ。
 これが意味するのは政治権力が世襲制ではないということだ。権力を握るのは教養のあるエリートだった。

P229
(住人注;一六世紀に中国へおもむいた)修道士たちは目にしたものに愕然とした。そしてそれを伝える報告書を書きはじめた。
貴族ではなく、教養のあるエリートによって運用される官僚制、農民であろうと貴族であろゆとすべての人に適用される法律、官僚登用試験を受けるために教育を受ける人々、能力主義による社会的流動性、すべてヨーロッパでは前例のないことばかりだった。
 二世紀後、この報告書が啓蒙思想と呼ばれるヨーロッパの思想運動を生む助けとなった。
フランスのヴォルテール(一六九四~一七七八)などの哲学者たちは、官僚制と法律と教養のあるエリートを育成できる組織の構想を発展させはじめた。
ヨーロッパの支配者たちは、そのような組織をもつことが十分に可能だと気づいた。なにしろ、中国にはちゃんと手本が存在するのだ。

P231
 ヨーロッパが―そしてその流れで 二一世紀の世界が―相続してきたものの大半は、まちがいなく中国に根ざしている。能力主義の試験(アメリカの大学の入学診査に利用される標準テストであるSAT、すなわち大学能力評価試験など)のおおまかな枠組みは、最終的に中国までさかのぼることができる。すべての人に等しく適用される法律も、教養あるエリートによって運用される官僚制も中国が起源だ。

ハーバードの人生が変わる東洋哲学──悩めるエリートを熱狂させた超人気講義
マイケル・ピュエット (著), クリスティーン・グロス=ロー (著), 熊谷淳子 (翻訳)
早川書房 (2016/4/22)

ハーバードの人生が変わる東洋哲学 悩めるエリートを熱狂させた超人気講義 (早川書房)

ハーバードの人生が変わる東洋哲学 悩めるエリートを熱狂させた超人気講義 (早川書房)

  • 出版社/メーカー: 早川書房
  • 発売日: 2016/04/28
  • メディア: Kindle版

44番大寶寺 愛媛県

アメリカ人が豊かなのは

 僕があのとき確信したのは、「アメリカ人が豊かなのは、たくさん稼いでいるからじゃない。モノが安いから豊かなんだ」ということ。
~中略~

 一方のアメリカは、小売業が数百とか1000店舗以上の規模でチェーン展開している。だから川上に立って、メーカーにオリジナル商品を発注することができる。
 つまり、日本はもともと物価が高いのではなく、生産者から消費者へモノが流れていく段階に、ものすごくたくさんのムダが潜んでいるんです。だから消費者に届くときには、アメリカの3倍近い値段に膨れあがっている。
似鳥昭雄

40歳の教科書 親が子どものためにできること ドラゴン桜公式副読本『16歳の教科書』番外編
モーニング編集部 (編集), 朝日新聞社 (編集)
講談社 (2010/7/23)
P154

40歳の教科書 親が子どものためにできること ドラゴン桜公式副読本『16歳の教科書』番外編

40歳の教科書 親が子どものためにできること ドラゴン桜公式副読本『16歳の教科書』番外編

  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2010/07/23
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)

 

愛媛県 43番赤石寺

2025年12月9日火曜日

満心をとりのぞけ

それ人心(じんしん)の病(やまい)は満(まん)より大なるはなし。
人の浮気躁念(ふきそうねん)、千状万態(ぜんじょうばんたい)、狂(くる)えるが如く酔えるが如く、病(や)めるが如き、悉(ことごと)くこれ満心祟(たた)りを為(な)せり。
是(ここ)を以て心術(しんじゅつ)の要(よう)、満(まん)を除き致(いた)すより先(さき)なるはなし。 (佃子を送る)
~中略~
ふつう、「マンシン」といえば、国語辞典には「慢心」という漢字があてられているが、藤樹は「慢心」を使わずにあえて「満心」をもちいた。
これには理由がある。
五経のひとつ「書経」大禹謨(だいうぼ)の、「満は損を招き、謙は益を受く。これすなわち天の道なり」に依拠している。

中江藤樹 人生百訓
中江 彰 (著)
致知出版社 (2007/6/1)
P222

 

中江藤樹人生百訓

中江藤樹人生百訓

  • 作者: 中江 彰
  • 出版社/メーカー: 致知出版社
  • 発売日: 2007/06/01
  • メディア: 単行本

42番佛木寺 愛媛県