2026年8月25日火曜日

人生からは自分で捲いたものしか収穫することはできない

相手に対する自分の態度が、自分に対する相手の態度を決定する。

デール・カーネギー 著
田中 孝顕 訳
こうすれば必ず人は動く
騎虎書房
P122

こうすれば必ず人は動く

こうすれば必ず人は動く

  • 作者: デール・カーネギー
  • 出版社/メーカー: きこ書房
  • 発売日: 2008/09/30
  • メディア: 単行本

 

 

あなたが拳(こぶし)を握りしめたまま私のほうに向かって来れば、
あなたがそうするのと同時に、私もそうするだろう
ということは、まず確実に言えると思う。
                            ウッドロー・ウィルスン

人にあなたの考えを受け入れてもらいたいと思うなら、
まずあなたがその人の親友であるということを、その人に納得してもらうことだ。
これこそが彼の心をとらえる蜜の一滴であり、
あなたが何を言おうとも関係なく、彼の心を動かす大道となるのだ。
                          エイブラハム・リンカーン

デール・カーネギー 著
田中 孝顕 訳
こうすれば必ず人は動く
騎虎書房
P122

こうすれば必ず人は動く

こうすれば必ず人は動く

  • 作者: デール・カーネギー
  • 出版社/メーカー: きこ書房
  • 発売日: 2008/09/30
  • メディア: 単行本

 

 

P44
イエス
 良い木に悪い実はならず、また悪い木に良い実ができることもない。木はその実を見れば判断できる。いちじくをいばらの木から採ったり、ぶどうを野ばらの茂みから採ることはできない。
良い人は心の良い財産の中から良い物を生み出し、悪い人は心の悪い財産から悪い物を生み出す。心に満ちているものを、人の口は語るのである。
ルカ伝
P45
ブッダ
 およそ人の行いは、高潔なことであれ罪深いことであれ取るに足りないものは一つとしてなく、すべてなんらかの実を結ぶ。
ウダーナヴァルガ

今枝 由郎 (翻訳), 鈴木 佐知子 (翻訳), 武田 真理子 (翻訳), マーカス・ボーグ
イエスの言葉ブッダの言葉
大東出版社 (2001/10)

 

イエスの言葉ブッダの言葉

イエスの言葉ブッダの言葉

  • 作者: マーカス・ボーグ
  • 出版社/メーカー: 大東出版社
  • 発売日: 2001/10
  • メディア: 単行本

 

 

因果の花を知る事、極めなるべし

一切みな因果なり。
初心よりの芸能の数々は因なり。
能を極め、名を得ることは果なり。
しかれば、稽古する所の因をおろそかなれば、果を果たす事も難し。
これをよくよく知るべし。

世阿弥 (著), 竹本 幹夫 (翻訳)
風姿花伝・三道 現代語訳付き
角川学芸出版 (2009/9/25)
P285

 

風姿花伝・三道 現代語訳付き (角川ソフィア)

風姿花伝・三道 現代語訳付き (角川ソフィア)

  • 作者: 世阿弥
  • 出版社/メーカー: 角川学芸出版
  • 発売日: 2009/09/25
  • メディア: 文庫

 

世人は、一も二もなく彼を順境の人
と思うであろうが、実は順境でも逆境でもなく、
その人自らの力でそういう境遇を作り出したに過ぎない。
「論語と算盤」成敗と運命

渋澤 健 (著)
巨人・渋沢栄一の「富を築く100の教え」
講談社 (2007/4/19)
P94

 

巨人・渋沢栄一の「富を築く100の教え」 (講談社BIZ)

巨人・渋沢栄一の「富を築く100の教え」 (講談社BIZ)

  • 作者: 渋澤 健
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2007/04/19
  • メディア: 単行本

 

キュウリを植えればキュウリと別のものが収穫できると思うな。
人は自分の植えたものを収穫するのである。
 二宮尊徳

大山 くまお (著)
名言力 人生を変えるためのすごい言葉 
ソフトバンククリエイティブ (2009/6/16)
P201

名言力 人生を変えるためのすごい言葉 (SB新書)

名言力 人生を変えるためのすごい言葉 (SB新書)

  • 作者: 大山 くまお
  • 出版社/メーカー: SBクリエイティブ
  • 発売日: 2009/06/16
  • メディア: 新書

 

結局、あなたが受け取る愛はあなたが与える愛に等しい。
[ジョン・レノン] イギリスのミュージシャン | 1940-1980

人生はワンチャンス! ―「仕事」も「遊び」も楽しくなる65の方法

水野敬也 (著), 長沼直樹 (著)
文響社 (2012/12/11)

人生はワンチャンス! ―「仕事」も「遊び」も楽しくなる65の方法

人生はワンチャンス! ―「仕事」も「遊び」も楽しくなる65の方法

  • 作者: 水野敬也
  • 出版社/メーカー: 文響社
  • 発売日: 2012/12/11
  • メディア: 単行本

 

善(ぜん)を為すは耕耘(こううん)のごとし、当下(とうか)の穀(こく)を得ざるといえども必ず秋実(しゆうじつ)を得る。
悪を作(な)すは鴆酒(ちんしゅ)を飲むがごとし。即席の燕楽(えんらく)を得るといえども必ず死期(しき)来たる。 (雑説)

中江藤樹 人生百訓
中江 彰 (著)
致知出版社 (2007/6/1)
P228

中江藤樹人生百訓

中江藤樹人生百訓

  • 作者: 中江 彰
  • 出版社/メーカー: 致知出版社
  • 発売日: 2007/06/01
  • メディア: 単行本

女功をおしゆべし

 凡(そ)女子を愛し過して、ほしいままにそだてぬれば、おつとの家にゆきて、必(ず)おご(驕)りおこりて、他人の気にあはず、つゐには、しうとにうとまれ、夫にすさめられ、夫婦不和になり、おひ出され、はぢをさらすものほし。
~中略~
女子には、はやく女功をおしゆべし。女功とは、をりぬひ、うみぬひ、すすぎあらひ、又は食をととのふるわざを云。
女人は外事なし。かやうの女功をつとむるを以(て)、しわざとす。

和俗童子訓 巻之五 
総論 下

養生訓・和俗童子訓
貝原 益軒 (著), 石川 謙 (編さん)
岩波書店 (1961/1/5)
P271

養生訓・和俗童子訓 (岩波文庫)

養生訓・和俗童子訓 (岩波文庫)

  • 出版社/メーカー: 岩波書店
  • 発売日: 2022/09/26
  • メディア: 文庫
奈良県 室生寺

婦人の心ざまのあしき病

をよそ婦人の、心ざまのあしき病は、和順ならざると、いかりうらむると、人をそしると、物をねたむと、不智なるとにあり。
凡(そ)此五の病は、婦人に十人に七八は必(ず)あり。是婦人の男子に及ばざる所也。

和俗童子訓 巻之五 
総論 下

養生訓・和俗童子訓
貝原 益軒 (著), 石川 謙 (編さん)
岩波書店 (1961/1/5)
P 280


 

養生訓・和俗童子訓 (岩波文庫 青 10-1)

養生訓・和俗童子訓 (岩波文庫 青 10-1)

  • 出版社/メーカー: 岩波書店
  • 発売日: 2024/11/22
  • メディア: 文庫


京都府 東福寺

2026年8月24日月曜日

墨子

P80
 墨子は、社会が人の繁栄を実現できていないという孔子学派の考えを共有していた。倫理的によりよい人間になるよう人々に働きかけるべきだと墨子も考えていた。しかし孔子学派と違い、墨子と門人たち(墨家)は儀礼がよい人間になるのに役立つ手段だとは考えなかった。
それどころか、儀礼は型にはまった無意味なもので、本当に重要なことに関心を向けるのを防げる時間の無駄でしかないとして退けた。そして、本当に重要なのは、この場合、〈天〉、すなわち、世界を創造したと信じられていた神性を真摯に信仰することだと考えた。
 墨子と門人たちにとって、天は上帝であり、善悪の明確な道徳基準を定める存在だった。人間は善良な生活を送るためにその基準に従わなければならない。基準に従えば報われるし、従わなければ罰(ばち)があたる。~中略~ 
墨家は、ある種の公正な道徳律が宇宙を下から支えていると信じるように教え込めば、人々を倫理的にふるまわせることができ、その結果よりよい社会になると考えた。真摯な信仰の重視といい、儀礼への不信といい、善なる神性が創造した条理ある予測可能な世界への信念といい、僕家は多くの点で初期プロテスタントとかなり似ている。

P82
もちろん墨子は、人が生まれつき倫理的にふるまうことはなく、感情や私欲が妨げになることを理解していた。社会は人々の正しいおこないをあと押しするよう組織すべきだと考えた。社会は人々の正しいおこないをあと押しするよう組織すべきだと考えた。あと押しする仕組みには、なすべきことをしたときの賞(成功、金銭、名声)と、しなかったときの罰(失敗、降格、罰金)があった。善悪の判断がはっきりつく世界―勤勉が報われ、悪行が罰せられる世界―に生きていると信じられれば、人々はさもしい感情に従うのを思いとどまり、よい人間になろうと努力するはずだ。
墨子は、正しい制度が整いさえすれば、その結果、だれもが恩恵を受ける社会になると確信していた。墨子が「兼愛」と呼んだ世界だ。

ハーバードの人生が変わる東洋哲学──悩めるエリートを熱狂させた超人気講義
マイケル・ピュエット (著), クリスティーン・グロス=ロー (著), 熊谷淳子 (翻訳)
早川書房 (2016/4/22)

ハーバードの人生が変わる東洋哲学 悩めるエリートを熱狂させた超人気講義 (早川書房)

ハーバードの人生が変わる東洋哲学 悩めるエリートを熱狂させた超人気講義 (早川書房)

  • 出版社/メーカー: 早川書房
  • 発売日: 2016/04/28
  • メディア: Kindle版

老子

老子は道と徳をたいせつにした。その学説はおのれを隠し無名でいることを要務とする。
周の都に長らくいたが、周の国力が衰えたと見、やがて立ち去って関まで来た。関令尹喜(いんき)が言った。
「あなたはこれから隠者になられるのでしょう。わたしのために無理とは思いますが書物をかいてください」。
そのとき老子ははじめて上下二篇の書をあらわし、道と徳の意義をのべること五千余字。そして立ち去り、どこで死んだかを知るものはない。
~中略~
老子は百六十歳あまりまで生き、二百余歳だったともいうが、道の修行をつんで寿命をのばしたのだということだ。
老子・韓非列伝 第三

史記列伝1
小川環樹 今鷹真 福島吉彦 訳
岩波書店 (1975/6/16)
P25

史記列伝 1~5巻セット (岩波文庫)

史記列伝 1~5巻セット (岩波文庫)

  • 出版社/メーカー: 岩波書店
  • 発売日: 1976/06/10
  • メディア: 文庫

2026年8月22日土曜日

ヒトは性善か性悪か

P342
 これまでの話はとても悲観的なことばかりのように聞こえると思うが、明るい側面もある。なんといっても、人間は生まれつき社会的で信じやすい生き物であり、そうすべきではない合理的ではっきりした理由があっても、ついお互いを信じるところがある。

信用がうしなわれたときそれを乗り越えるのは簡単ではないが、適度な投資と方向づけがあれば、信用を回復するのは可能だと思う。

P357
なぜ正直になるのか
 偉大な経済思想家アダム・スミスは、この問いに気持ちのいい回答を示した。
”自然は、社会のために人間をつくったさい、同胞を喜ばせることへのい生まれついての願望と、同胞を怒らせることへの産まれついての嫌悪を植えつけた。自然は人間に、同胞の好ましい点に快感を覚え、好ましくない点に不快感を覚えるようにおしえこんだ”。
 スミスはさらにつづける。”大半の人の成功は[中略]ほとんどいつも隣人や同輩の支持や評価に左右される。そしてまずますの正しいおこないをしなければ、支持や評価はなかなか得られない。
そのため、「正直はいつも最善の策」という古きよきことわざがこのような場合にほとんどいつもあてはまる”。

P358
 ジグムント・フロイトはこう説明した。
フロイトによると、わたしたちは社会で成長するにつれて社会的美徳を内面化して自分のものにし、この内面化によって超自我の発達がうながされる。ふつう超自我は、わたしたちが社会の倫理に従うと満足し、従わないと不満になる。
だからわたしたちは、朝の四時に赤信号にぶつかれば、だれも見ていないとわかっていても車をとめる。拾った財布が持ち主の手にもどれば、自分の正体が相手に明かされなくても、温かい気持ちになる。
~中略~

 しかし、わたしたちにとって正直なことが重要で(合衆国の高校生三万六〇〇〇人近くを対象に行った最近の調査によると、九八パーセントが正直であることが重要だと回答した)、正直になることで気分がよくなるなら、なぜわたしたちは、こうもしゅっちゅう不正直になってしまうのだろう。

 わたしの考えはこうだ。わたしたちは正直であることを大切にし、正直でありたいと思っている。
問題は、わたしたちが大きな違反行為―イベント会場でペンを箱ごとごっそりともらうなど―を意図したときにしか、体内の正直監視モニターが反応してくれないことだ。
ペンを一、二本失敬するくらいの小さな違反行為に場合、こうした行為がどう自分の正直さにはね返ってくるか考えることもないし、そのため、超自我もねむったまま目を覚まさない。

P370
 これまでにわかっていることをまとめよう。
人々はチャンスがあればごまかしをするが、けっして目いっぱいごまかすわけではない。
また、いったん正直さについて考え出すと―十戒>を思いだすにしろ、ちょっとした文面に署名するにしろ―ごまかしを完全にやめる。
つまり、わたしたちは何かの倫理思想の水準から離れると、不正直に迷い込む。
しかし、誘惑に駆られている瞬間に道徳心を呼びおこされると、正直になる可能性がずっと高くなる。

予想どおりに不合理[増補版]
ダン アリエリー (著), Dan Ariely (著), 熊谷 淳子 (翻訳)
早川書房; 増補版版 (2010/10/22)

予想どおりに不合理 行動経済学が明かす「あなたがそれを選ぶわけ」 増補版

予想どおりに不合理 行動経済学が明かす「あなたがそれを選ぶわけ」 増補版

  • 作者: ダン アリエリー
  • 出版社/メーカー: 早川書房
  • 発売日: 2010/10/22
  • メディア: ペーパーバック



人の善悪は、多くはなら(習)ひな(馴)るるによれり。
善にならひなるれば、善人となり、悪にならひなるれば、悪人となる。
然れば、いとけなき時より、ならひなるる事を、つつしむべし。

和俗童子訓 巻之二 
総論 下

養生訓・和俗童子訓
貝原 益軒 (著), 石川 謙 (編さん)
岩波書店 (1961/1/5)
P231

 

養生訓・和俗童子訓 (岩波文庫)

養生訓・和俗童子訓 (岩波文庫)

  • 作者: 貝原 益軒
  • 出版社/メーカー: 岩波書店
  • 発売日: 1961/01/05
  • メディア: 文庫



 冒頭から、陸奥(住人注;陸奥宗光)は、「人性の根源には、善根とか悪根などというものはない。ただ欲があるだけだ」と定義しています。 これはベンサムが、その代表作「道徳及び立法の諸原理序説」の冒頭で、「人類は苦と楽との二つの君主の支配下にあり、これから逃れられない」と書いたことと同工異曲です。
 同工異曲というより同じものといってよいのでしょう。陸奥は、「欲」には、楽を求める欲望と、苦を避けようという欲望があるといっているからです。

岡崎 久彦 (著)
教養のすすめ
青春出版社 (2005/6/22)
P147

教養のすすめ

教養のすすめ

  • 作者: 岡崎 久彦
  • 出版社/メーカー: 青春出版社
  • 発売日: 2005/06/22
  • メディア: 単行本



健常者であろうと精神障害者であろうと、その人物の人柄はそう簡単にわかるものではない。
援助者としての我々は、さまざまなケースに遭遇するたびに、性善説の信奉者となったり、あるいは生育歴や環境が及ぼす影響の大きさを実感したかと思えば逆にそうした決めつけを否定したくなったり、人間観を大きく揺さぶられる。
人間なんて信じられない!と立腹してみたかと思えば、あんがいと世の中も捨てたもんじゃない、と気を取り直すこともある。そこに人間を相手にする仕事のおもしろさとつらさがあるわけで、けれども一方的に翻弄されるばかりではさすがに気疲れがしてくるだろう。

はじめての精神科―援助者必携
春日 武彦 (著)
医学書院; 第2版 (2011/12)
P012

援助者必携はじめての精神科 第2版

援助者必携はじめての精神科 第2版

  • 作者: 春日 武彦
  • 出版社/メーカー: 医学書院
  • 発売日: 2011/12/01
  • メディア: 単行本



 病気の治療というものが患者さんの幸福をめざすことと同義だとしたら、精神科医が想定する幸福と、患者さんが望む状態とがきれいに一致するとは限らない。
 たとえば一般的に言って、幸福であるための必要条件のひとつは「健康」でありましょう。
だが精神科の領域ではそんな発想が通用するとは限らない。むしろ病気の(ことに身体疾患)であったほうが周囲から注目されたり優しくしてもらえる。大切に扱ってもらえる。無視されないで済む。だから健康でいるなんて願い下げだと本気で思っている人などいくらでもいるのです。
あるいは過酷な現実に直面するよりは、病人として人生からリタイヤしたほうが面子が立つと考えたり。
 人間の内面の奥深さというよりは、むしろグロテスクさ※や不条理さに関心が向かったというわけです。 誰もが同じ価値観※で暮らしているわけではないし、心が安定し得るようなシチュエーションだって千差万別なのです。

グロテスクさ※性善説とか性悪性といった考え方がありますが、個人的には性グロテスク説が人間の本質だとわたしは考えています。いや、冗談ではなくて。
価値観※価値観というのは、むしろ優先順位といった言葉に言い換えられてもよいかもしれません。実際、わたしの理解としては、精神を病むということの定義は「ものごとの優先順位に常識を逸脱した入れ替わりが生じ、そのために社会生活が円滑に営めなくなった状態」であると考えています。神経症になれば不安感や焦燥感に囚われることのほうが仕事やノルマよりも先んじてしまうから「にっちもさっちも」いかなくなってしまうのだし、うつ病になれば自殺の誘惑が優先順位のトップに位置してしまったりする。人格障害者は無根拠なプライドや刹那的な衝動性を最優先させた生活を送るのでトラブルが絶えないのだし、統合失調症の患者は常識や協調性よりも幻覚妄想にもとづく言動を重要と信じて疑わないがために困ったことになる。
人間、優先順位がちょっと入れ替わっただけでものすごく異様に映ります。
~中略~
 精神を病むことを「優先順位がいくつか入れ替わっているにすぎない」と理解すると新しい視点を得られます。すなわち、彼らはその大部分において我々と優先順位を同じくしているという事実です。いかに精神を病んでいても、汚い部屋よりは綺麗な部屋のほうがうれしい。
どうせ食事をとるなら美味いものが望ましい。乱暴な態度を示されるよりは、ていねいでフレンドリーに接してもらいたい。彼らと我々とは、相違点よりも共通点のほうがはるかに多いのです。それなのに、ほんのわずかな違い(すなわち優先順位の入れ替わり)によって彼らはまったく異邦人とみなされてしまう。ここに精神医療のツボが伏在していると思われるのです。

「治らない」時代の医療者心得帳―カスガ先生の答えのない悩み相談室
春日 武彦 (著)
医学書院 (2007/07))
P120

「治らない」時代の医療者心得帳-カスガ先生の答えのない悩み相

「治らない」時代の医療者心得帳-カスガ先生の答えのない悩み相

  • 作者: 春日 武彦
  • 出版社/メーカー: 医学書院
  • 発売日: 2007/07/01
  • メディア: 単行本



人間は、いうまでもなく本来「性善」であるが、唐の韓退之(かんたいし)が、「人は生まれながらにして、これを知れる者にあらず」と説いているように、迷いのない、なにもかも知り尽くした人間などはいない。
そのためには、徳のあるりっぱな先生について、人としての道を教わることが求められる。~中略~ 現今のわが国は、自分の欲望を満たすために、他人の生命を軽んじることを平気でしてしまうような青少年犯罪の起こる、まことに悲しい時代となった。
これまでの公教育が、「孝」を無視してきた結果といわざるを得ない。

中江藤樹 人生百訓
中江 彰 (著)
致知出版社 (2007/6/1)
P27

中江藤樹人生百訓

中江藤樹人生百訓

  • 作者: 中江 彰
  • 出版社/メーカー: 致知出版社
  • 発売日: 2007/06/01
  • メディア: 単行本
立山

底つき体験

失業したり、妻に去られたり、肝臓がぼろぼろになったり、危機的状況になったときにタイミングよくアプローチがなされることで、やっと酒をやめる必要性を素直に認めることになる。
そのように、にっちもさっちも行かない状況にまで追い込まれることを「底つき体験」と呼ぶ。
へたをすれば命を落としたり人生を棒に振ってしまうわけだが、それくらいの目にあわなければ生き方を転換することができないのが人間の悲しいところなのである。

はじめての精神科―援助者必携
春日 武彦 (著)
医学書院; 第2版 (2011/12)
P130

 

はじめての精神科―援助者必携

はじめての精神科―援助者必携

  • 作者: 春日 武彦
  • 出版社/メーカー: 医学書院
  • 発売日: 2011/12/01
  • メディア: 単行本
立山

2026年8月21日金曜日

神が治し、医者が包帯を巻く


 フランスの有名な外科医A・パレー(注1)は「神が治し、医者が包帯を巻く」といっています。

まさしく、そのとおりなんです。すなわち神とは、患者さんご自身の、内なる力なのです。われわれ医療人は、包帯を巻く、絆創膏をはってさしあげる、この仕事を間違いなくやるのが、務めなのです。

患者本位の病院改革
新村 明(著),藤田 真一(著)
朝日新聞社 (1990/06)
P25




患者本位の病院改革

患者本位の病院改革

  • 出版社/メーカー: 朝日新聞社
  • 発売日: 2022/05/16
  • メディア: 単行本




われわれの命は医者によっては一日たりとも長くされはしません。
われわれは神の定めた寿命だけ生きるのです。
だが、哀れな犬のようにみじめに生きるか、達者で元気に生きるか、どうかは、大へんな違いです。
その点では賢明な医者にはさすべき余地が大いにあります。
(ミュラーへ、一八二七年)

ゲーテ格言集
ゲーテ (著), 高橋 健二 (翻訳)
新潮社; 改版 (1952/6/27)
P148

ゲーテ格言集 (新潮文庫)

ゲーテ格言集 (新潮文庫)

  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 2022/05/16
  • メディア: 文庫

わたしは本書で何度も「それが本人の運命なのである」といった突き放した(かのような)言い方をしてきた。そこに反発を覚える読者も少なくあるまい。だがこれは「無責任のススメ」なのではない。我々のできることには限界がある。
やれるところまでやったらあとは「人事を尽くして天命を待つ」ことになるのは当然ではないか。
我々援助者は努力を惜しむことなく対処を図ると同時に、それが万能ではないという謙虚さをもつ必要がある。
そこのところを煎じ詰めれば「本人の運命」という言葉へ自然に行き着くことになる。さらに「援助者の運の強さ」をも付け加えるべきか否かは、読者諸氏の人生観に委ねたいところである。

はじめての精神科―援助者必携
春日 武彦 (著)
医学書院; 第2版 (2011/12)
P182

はじめての精神科―援助者必携

はじめての精神科―援助者必携

  • 作者: 春日 武彦
  • 出版社/メーカー: 医学書院
  • 発売日: 2011/12/01
  • メディア: 単行本

「医術がもっと進めば変わってくるかもしれない。だがそれでも、その個躰のもっている生命力を凌ぐことはできないだろう」と去定は云った、
「医術などといってもなさけないものだ、長い年月やっていればいるほど、医術がなさけないものだということを感ずるばかりだ、病気が起こると、或る個躰はそれを克服し、べつの個躰は負けて倒れる、医者はその症状と経過を認めることができるし、生命力の強い個躰には多少の助力をすることもできる、
だが、それだけのことだ、医術にはそれ以上の能力はありゃしない」

赤ひげ診療譚
山本 周五郎 (著)
新潮社; 改版 (1964/10/13)
P55

赤ひげ診療譚 (新潮文庫)

赤ひげ診療譚 (新潮文庫)

  • 作者: 周五郎, 山本
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 2019/01/27
  • メディア: 文庫

上高地

こころの病

P4
今ではこころの病を治療中の人は300万人を超え、うつ病にかかった人はこの10年で3倍近く増加して70万人と報告されています。
また、統合失調症にかかる割合は人口の1%、つまり100人に1人がかかる病気であることがわかっています。つまり、こころの病は決して特別な病気ではないのです。  

P146
 まず心気症ですが、これは、実際は病気でないのに「自分は重いからだの病気にかかっているのではないか」と思い込み、強い不安に襲われて苦しむこころの病です。
病院を転々と回る、いわゆる「ドクターショッピング」をする人も少なくありません。
~中略~

心身症は、発症や経過にストレスをはじめとする心理社会的な要因が密接に関係している病気を指し、その代表的なものとしてはアトピー性皮膚炎や気管支ぜんそく、十二指腸潰瘍などがあげられます。
内科的な治療を必要とするため、精神科で扱うことはほとんどありません。

自律神経失調症は、いうなれば診断書用の病名です。たとえば、本当はうつ病だったとします。
でも本人が、会社に提出する診断書にうつ病とかかれるのが困る場合、病気が特定されるのを避けるために、医師にお願いしてオブラートに包んだような表現で自律神経失調症と書いてもらっていたわけです。

大切な人の「こころの病」に気づく 今すぐできる問診票付
日本精神科看護技術協会 (著), 末安民生 (著)
朝日新聞出版 (2010/11/12)

大切な人の「こころの病」に気づく 今すぐできる問診票付 (朝日新書)

大切な人の「こころの病」に気づく 今すぐできる問診票付 (朝日新書)

  • 作者: 日本精神科看護技術協会
  • 出版社/メーカー: 朝日新聞出版
  • 発売日: 2010/11/12
  • メディア: 新書



  仮に精神科医から「うつ病」と診断されたとしても、必要以上に落ち込む必要はない。
軽症うつ病と病気でない憂うつとの境界は連続的なものであり、どこからうつ病と判断するかは、本人の認識の強さや精神科医の受け取り方によって大きく左右される。
さらにうつ病と診断されたとしても、その程度や経過は様々であり、二~三ヶ月で自然に治って一生再発しないようなうつ病も多いのである。

 そもそもDSM-Ⅳのような操作的診断基準は、あらゆる精神的不調に何らかの病名がつけられるように作成された、非常に間口の広い診断基準である。
DSM-Ⅳで一般の米国人を診断すると、二人に一人は何らかの精神科病名がつけられるほどである。

冨高 辰一郎 (著)
なぜうつ病の人が増えたのか
幻冬舎ルネッサンス (2009/7/10)
P145

なぜうつ病の人が増えたのか

なぜうつ病の人が増えたのか

  • 作者: 冨高 辰一郎
  • 出版社/メーカー: 幻冬舎ルネッサンス
  • 発売日: 2009/07/10
  • メディア: 単行本



 精神を病むということを、介護や援助にたずさわる我々はどのようにとらえればよいのだろうか。おそらく立場によってさまざまな考え方や言い方が出てこようが、わたしとしてはそのあたりをかなり単純明快に把握している。
物事の優先順位が、常識や良識から逸脱するとき。
 これが、精神を病むことの意味だと思っている。キーワードは「優先順位」である。

はじめての精神科―援助者必携
春日 武彦 (著)
医学書院; 第2版 (2011/12)
P042

はじめての精神科―援助者必携

はじめての精神科―援助者必携

  • 作者: 春日 武彦
  • 出版社/メーカー: 医学書院
  • 発売日: 2011/12/01
  • メディア: 単行本




上高地

共感することは良いこと?

P87
トラウマはすでに日常語となり、自らのうちにトラウマらしきものを見出し、自分をPTSD患者だと規定する者まで現れるようになった。
こういった世の流れからか、患者の内なるトラウマに”敏感”な治療者も増えつつあるように思われる。すなわち、患者の「心的現実」のうちに深く入り込みすぎるさまが、ここかしこで見受けられるようになった。
 一般に、治療者が患者と<共感>することは、もっぱら良いこととして捉えられている。 しかし本当にそうなのだろうか。

P89
 患者が治療者に語る言葉は、もちろん大変重要である。しかし、患者が治療者に切実にその「心的現実」を伝えようとするからといって、治療者はそれを額面どおり受け取るべきではない。治療者が望む筋立てで、患者の「心的現実」を変更させてゆく危険性さえあるのだから。
 原則として、臨床の場で患者の「心的現実」を取り扱う際、夢の場合と同様、その内容自体よりもどこに強度がおかれているかが重要である。

精神科医になる―患者を“わかる”ということ
熊木 徹夫 (著)
中央公論新社 (2004/05)

精神科医になる―患者を“わかる”ということ (中公新書)

精神科医になる―患者を“わかる”ということ (中公新書)

  • 作者: 熊木 徹夫
  • 出版社/メーカー: 中央公論新社
  • 発売日: 2004/05/01
  • メディア: 新書


「相手の気持ちを尊重する」といった言い回しには、罠がある。なぜなら、相手の判断能力が必ずしも十分とはいえないのだから。
相手の言いなりなることイコール相手を尊重することにはならない。えてして「気持ちを尊重したのだから」といった言い回しが、我々自身の思考停止の言い訳となってしまいかねないことに注意したい。
 だが、「我々の言うことさえ聞いていれば間違いないのだから、おとなしく従いなさい」といった態度もまた放漫であろう。相手の言いなりにならずに強硬手段に出れば、おそらく相手から恨まれることになるだろう。
けれども、そのことを自覚したうえで、なお相手の意向に添わない処遇を実行せざるをえない場面はありうる。そのときは、専門家としての自負に賭けるしかないではないか。

はじめての精神科―援助者必携
春日 武彦 (著)
医学書院; 第2版 (2011/12)
P157

援助者必携はじめての精神科 第2版

援助者必携はじめての精神科 第2版

  • 作者: 春日 武彦
  • 出版社/メーカー: 医学書院
  • 発売日: 2011/12/01
  • メディア: 単行本



 このように人間は、話を聴くとその内容にのめり込み、感情移入していきます。話を聴いてもらうと、、気持ちが少しはすっきりするというのは、自分の思いに聴き手が反応し、共感を示してくれるからです。悲しくつらいことであれ、嬉しく喜ばしいことであれ、聴き手が一緒に悲しんだり、喜んだりするのが、話し手にとって大きな支えになるからこころが落ち着いていくのです。
 しかし、精神科診療のなかでの聴き手は。話し手の感情を受容する一方で、醒めた目で治療として適切な方法は何かを見極めなければなりません。一緒になって、喜んだり、悲しんだりするだけでは、治療的な働きかけができるわけではないのです。
重い話を聴いても沈んではいられない、嬉しい話を聴いても喜んでばかりいられないというのが、精神科医であり、心理士なのです。
 このような面接を行っているのですから、疲れないはずはありません。長い診療時間の後には、ぐったりするばかりか、何も考えたくないという気持ちになります。

精神科医はどのように話を聴くのか
藤本 修 (著)
平凡社 (2010/12/11)
P154

精神科医はどのように話を聴くのか

精神科医はどのように話を聴くのか

  • 作者: 藤本 修
  • 出版社/メーカー: 平凡社
  • 発売日: 2016/04/28
  • メディア: Kindle版

P250
 思いやりのある人のほうが看護師としてふさわしい。そんな風に考える人が多いのではないだろうか? 思いやりに近い行動経済学の概念に利他性がある。利他性は、他人の喜びを自分の喜びのように感じたり、他人を支援する行為そのものから自分の喜びを見出したりするような性質のことだ。
そのような思いやりに近い性質を持つ看護師の方が、様々な局面で患者の立場に立って、より親身に看護してくれるはずだ、と考えるのは自然なことだ。
~中略~
 利他的な人のほうが看護師にふさわしい。本当にそなのだろうか?著者らの研究グループは、利他的な看護師、特に純粋な利他性という種類の利他性を持つ看護師が実は心理的にバーンアウトしやすいことを、看護師に対し行ったアンケート調査をデータ分析して明らかにした(1)。
バーンアウトは、長期間、自分の対処能力を超えるような過度のストレスを受け続けたときに意欲などが減退し、疲れ果ててしまう症状のことを意味する。
「燃え尽き症候群」とも呼ばれ、この症状が強い看護師は離職しやすいことがよく知られている。ある種類の利他性をもつ看護師が本当にバーンアウトしやすいのだとすれば、その結果は「利他的な人のほうが看護師としてふさわしい」という通説に疑問符が投げかけられるもいのだろう。

P252
カリフォルニア大学サンディエゴ校のジェームス・アンドレオーニは、純粋な利他性、ウォーム・グローという2種類の利他性があると説明した。(2)
純粋に利他性な人とは、他人の喜びを自分の喜びとして感じ、他人の悲しみを自分の悲しみとして感じるというように、共感特性の強い人のことだ。
このタイプの利他性をもつ看護師は、看護行為によって患者の苦しみが和らぐことを通して自分自身の喜びを感じる、と考えられる。
一方で、ウォーム・グローをもつ人は、看護行為を行っている自分が好きというように、看護行為そのものから自分自身の喜びを見出す。
このタイプの利他性をもつ看護師の喜びは、患者の状態が良くなったり悪くなったりすることから影響を受けにくい、と感がえられる。
 なぜ、純粋に利他的な看護師ほどバーンアウトしやすいのだろうか?著者らは次のように解釈している。純粋に利他的な看護師は、患者の喜びを自分の喜びとして感じ、患者の悲しみを自分の悲しみとして感じてしまう。だから、患者の死や症状の悪化に直面したときに、患者の状態と連動して看護師自身のメンタリティまで悪化してしまうのでないか、という解釈である。

P254
 実は、過去に社会学・心理学・脳科学の分野で行なわれた研究から、著者らの研究結果に近い結果を見つけることができる。 例えば、「仕事を通して他者を手助けしたいから」「仕事を通して他者にとってよいことをするのが重要だから」という他者配慮の動機をもって看護師として働いている人ほど、バーンアウトしやすいようだ(6)。
患者の感情の変化が自分にも伝染してしまったり、患者の苦痛を想像したりする傾向の強い看護師ほど、バーンアウトしやすいこともわかっている(7)。
また、ある脳科学研究は、人の共感特性関わる脳内活動とバーンアウトの深刻度の間には強い相関関係があることを明らかにしている(8)。これらの結果は、他人の喜びを自分の喜びとして感じる看護師ほっどバーンアウトしやすい、とういう著者らの研究結果と共通する部分が多い。

P255
 さらに、純粋に利他的な看護師はいずれの利他性ももたない看護師に比べ、睡眠薬や精神安定剤・抗うつ剤を常用している可能性が高い、という結果を発見して著者らは驚いた。

医療現場の行動経済学: すれ違う医者と患者
大竹 文雄 (著), 平井 啓 (著)
東洋経済新報社 (2018/7/27)

医療現場の行動経済学: すれ違う医者と患者

医療現場の行動経済学: すれ違う医者と患者

  • 出版社/メーカー: 東洋経済新報社
  • 発売日: 2018/07/27
  • メディア: 単行本
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