2026年7月21日火曜日

言霊

  口から出た言葉は、現実化してゆく。
口先でなく、
心情のこもった言葉を遣っているだろうか。
言葉を軽視してはいけない。

丸山 敏秋 (著), 倫理研究所
幸せになる法則を発見した人 丸山敏雄伝
近代出版社 (2001/11)
P36

幸せになる法則を発見した人 丸山敏雄伝

幸せになる法則を発見した人 丸山敏雄伝

  • 作者: 丸山 敏秋
  • 出版社/メーカー: 近代出版社
  • 発売日: 2001/11
  • メディア: 単行本


 

例えばこの机でも、机をつくろうという波動がなかったらできないでしょう。単に板を置いておいて机になるか、ならないですね。
だれかがつくろうと最初に思う。それからいろいろできてくる。

一番最初にあるものは、心の波動です。心の波動として出てくる言葉にも当然、ものを造り出す力が宿っているのだから。心にいい波動を出しなさい。
そうすればいいものが現れる。いい言葉を使うと現実にいい世界が現れてくる。悪い言葉を使うと悪い世界が現れてくる。
これが本当の話なんです。これが言霊信仰です。

葉室 頼昭 (著)
「神道」のこころ
春秋社 (1997/10/15)
P159

 

〈神道〉のこころ(旧版)

〈神道〉のこころ(旧版)

  • 作者: 葉室 頼昭
  • 出版社/メーカー: 春秋社
  • 発売日: 1997/10/15
  • メディア: 単行本



 

言葉でいえば、それが形になっていく。それが日本語の言霊というものです。
ですから、悪い言葉を吐けば、そこに悪い世界が現実に現れるということです。逆にいいことを言えば、いい世界が現れるんですね。
いまはテレビでも何でも、悪いことばかり言っているから、悪い世界が現実に出てくるんです。

葉室 頼昭 (著)
神道 見えないものの力
春秋社 (1999/11)
P84

 

神道 見えないものの力(旧版)

神道 見えないものの力(旧版)

  • 作者: 葉室 頼昭
  • 出版社/メーカー: 春秋社
  • 発売日: 1999/11/25
  • メディア: 単行本



 

初めに言があった。言は神と共にあった。言は神であった。この言は初めに神とともにあった。すべてのものは、これによってできた。できたもののうち、一つとしてこれによらないものはなかった。
(ヨハネによる福音書/第1章1節~3説)
~中略~
この時代の哲学の流派のひとつに、ストア派というものがありました。そのストア派の考えに、世界中のすべてのものには、世界を世界として秩序づける原理が備わっている、というものがあり、この原理を彼らはロゴスと呼びました。「ヨハネの福音書」の書き出しの「言」(ことば)とは、このロゴスのことをいっているようです。
~中略~
実際ギリシア以来の哲学の思想は、聖書宗教の考えにも少しずつ影響しはじめるようになっていました。

大城 信哉 (著)
あらすじと解説で『聖書』が一気にわかる本
永岡書店 (2010/4/10)
P207 新訳聖書

 

あらすじと解説で『聖書』が一気にわかる本 (ナガオカ文庫)

あらすじと解説で『聖書』が一気にわかる本 (ナガオカ文庫)

  • 作者: 大城 信哉
  • 出版社/メーカー: 永岡書店
  • 発売日: 2010/04/10
  • メディア: 文庫


持ち合わせの言葉が貧しければ、表現も貧しくなっているし、考えや感情を本当は充分に表しているとは言えない。
同時にまた、その言葉の質と量が自分の考えや心を決めてもいる。 「曙光」

超訳 ニーチェの言葉
白取 春彦 (翻訳)
ディスカヴァー・トゥエンティワン (2010/1/12)
202

 

超訳 ニーチェの言葉

超訳 ニーチェの言葉

  • 作者:
  • 出版社/メーカー: ディスカヴァー・トゥエンティワン
  • 発売日: 2010/01/12
  • メディア: 単行本


  身体で行う行動も、口から出る言葉も、心の中での思考も、ネガティブな方向に暴走しないようにじょうずに運転できていること。
 これが最高の幸福。
 これまで心の中に蓄えてきた善い業(カルマ)のエネルギーがたくさんあるなら、 これから先も安心できる。
 これが最高の幸福。
経集260

超訳 ブッダの言葉
小池 龍之介 (著)
ディスカヴァー・トゥエンティワン (2011/2/20)
 一一三

 

超訳 ブッダの言葉

超訳 ブッダの言葉

  • 作者: 小池 龍之介
  • 出版社/メーカー: ディスカヴァー・トゥエンティワン
  • 発売日: 2011/02/20
  • メディア: 単行本




 フリードリヒ・ニーチェは著書「悦ばしき知識」の中で、韻文は本来神々に直接語りかけるものであり、魔術的な力をそなえ、人間の心の原始的な部分に訴えると書いている。
この見方は広く認められてはいないが、最近の研究で口調のいいことばに大きな力があることが証明された。
~中略~
口調のいい言葉のほうが覚えやすく、好感がもて、口にしやすいためだろうと科学者は分析している。

その科学が成功を決める
リチャード ワイズマン (著), Richard Wiseman (原著), 木村 博江 (翻訳)
文藝春秋 (2012/9/4)
P70

 

 

その科学が成功を決める (文春文庫)

その科学が成功を決める (文春文庫)

  • 作者: リチャード ワイズマン
  • 出版社/メーカー: 文藝春秋
  • 発売日: 2012/09/10
  • メディア: 文庫




ソクラテスは、自分はある呪いを知っていて、それをトラケ王の医者の一人で、ザモルクシスの流れをくむ医術師から従軍中に教わった、と言った。
この医者がソクラテスに語ったところによると、全体をきりなはなして部分だけの治療を試みてはならないし、魂を別にして身体の治療にとりかかってはならない。
 したがって、頭にしても、からだのほかの部分にしても、うまく働かしたければ、まずなんといっても、とりわけ、そのたましいの世話をしなければならないそうだ。・・・・
ここでソクラテスの言う呪いとは、美しい言葉にほかならない。その言葉によって魂の中に節制が植えつけられるのである。

平静の心―オスラー博士講演集
ウィリアム・オスラー (著), William Osler (著), 日野原 重明 (翻訳), 仁木 久恵 (翻訳)
医学書院; 新訂増補版 (2003/9/1)
P94

 

平静の心―オスラー博士講演集

平静の心―オスラー博士講演集

  • 作者: ウィリアム・オスラー
  • 出版社/メーカー: 医学書院
  • 発売日: 2003/09/01
  • メディア: 単行本




 「悉曇(しったん)の妙章、凡書の字母、体、先仏より凝(こ)り、理、種智を含めり。
字は生の終(をはり)を絡(まつ)ひ、用、群命を断ず(中略)文字の義用、大いなる哉(かな)、遠い哉」(弘法大師 空海「遍照発揮性霊集」巻第四)
【現代語訳 インドの悉曇文字の十八の各章、摩多・体文より成る梵字の字母など、その書体は、仏が世に出でます以前から定まり、その文字のもつ理法は一切の種智(すべての存在の相を知る仏の全智)を含んでいる。 文字は人の生死の始めや終りにかかわりなく永遠に及び、文字のはたらきはあらゆる迷いを断つ(中略)文字の意義と功用は、まことに広大であることよ、深遠であることよ】
 こういった密教の文字や言葉に対する繊細なとらえ方は、古来より言霊のような感覚を強くもつ日本人の心情にも、しっくりとくる場合が多いようだ。

ボクは坊さん。
白川密成 (著)
ミシマ社 (2010/1/28)
P71


ボクは坊さん。

ボクは坊さん。

  • 作者: 白川密成
  • 出版社/メーカー: ミシマ社
  • 発売日: 2010/01/28
  • メディア: 単行本



 
涸沢 長野県

言葉は脳を自由にも不自由にもする

P090
つまり情報の有無によって、心は不自由になる。だけど、もっと不自由になっていく「からくり」があるの。それはおそらく集団からの規制の一種です。
たとえば自爆テロなんかはせんほうがいいんだけれども、彼らが信奉する教義の中で「聖戦として自爆テロをするのがいい。しないやつはだめだ」と「我らの大義に反する」というような考えが埋め込まれる。これは洗脳です。
集団の一つの考えによって、脳がある一定の方向にしか動きにくいようになってしまう。集団の拘束に使われている道具は、ほとんどが言葉です。 そして言葉を使って、集団の意志が心を拘束するときに起っているのは学習です。
 一つの生命体としての、それぞれの脳が持っている限界、二つ目は脳に蓄積されている情報の量と質によって起ってくる限界です。そして三つめは、むしろ積極的に脳の自由自在性を拘束する倫理観やその他の学習で、なかでもほとんど言葉によって拘束されるようなものです。だいたいこの三つによって、心は不自由になります。
 ところが、言葉こそは心がさらに自由度を得るために作ったものなんです。心が生みだしてきた最高の方法が言葉かもしれない。どうしてかと言うと、たとえば時間の概念、こういうものは言葉なしではおそらく出てこなかったでしょう。過去・現在・未来、あっち・こっち、空間・時空間を飛び回っているかのようなシュミレーション的活動が言葉によって可能となったのです。と

P105
あとのほうから申し上げますと、臨済宗の問答というのは、言語に束縛されているものを壊すために問答をやるんで、やはり最終的には「不立文字」に帰っていくということです。
それじゃ「不立文字」に帰っていくとどうなるかと言うと、今度は自由自在に言葉が湧き出るようになるわけですね。だから、言葉が人の心を支配するものではなくて、人の心を粗雑ながら一所懸命表現するものになる。
ちょっと粗雑な道具として、自在に心によって使われるようになることを禅は目指すんだろうと思います。

神田橋條治 医学部講義
神田橋 條治 (著), 黒木 俊秀 (編集), かしま えりこ (編集)
創元社; 初版 (2013/9/3)

神田橋條治 医学部講義

神田橋條治 医学部講義

  • 出版社/メーカー: 創元社
  • 発売日: 2013/09/03
  • メディア: 単行本

上高地 長野県

好奇心は危険を伴う

P106
 みなさん、子どもを育てるようになったときに、子どもは好奇心があるから、ストーブが赤くなっていたら、「面白そうだ、何だろうか」と思って、触るでしょう。あれを止めたらいけません。火傷をすれば、すぐに学習できますから、 好奇心には危険なこともあるんだ、という学習になりますから、ちょっと火傷をさせてあげるようにするのが教育です。
 そうすると、子どもの脳の中で、好奇心と、危険を察知しなければいけないということで葛藤が生じます。
それが子どもを、用心もするが好奇心もある人にしていきますので、「それは危ないからやめなさい」と言うと、危険を察知する能力が育つんじゃなくて、好奇心を抑制するようになります。
だからやっぱりナイフを使わせないなんていう今の教育は、どんどん健全さを落としてくことになるね。
 好奇心のもう一つの危険は、好奇心は平和を壊すのね。だから社会のほうから好奇心を抑制する動きが起こってくる。
~中略~
 だから、二つ危険がありますけれども、好奇心というものは常に前向きに行こうとするものですから、危険なほうへ危険なほうへと近づくものです。
個体にとっては危ないけれど、マルコ・ポーロでも誰でも、時代を拓いてきた人はみな好奇心の赴くままにそういう危険を冒してきた。 そういうことです。

神田橋條治 医学部講義
神田橋 條治 (著), 黒木 俊秀 (編集), かしま えりこ (編集)
創元社; 初版 (2013/9/3)

神田橋條治 医学部講義

神田橋條治 医学部講義

  • 出版社/メーカー: 創元社
  • 発売日: 2013/09/03
  • メディア: 単行本

涸沢 長野県

良師は規矩を教える

P195
 ボクは二〇年以上、漢方の勉強をしていて、師匠がいたんですが、一〇日ぐらい前に八〇数歳で亡くなられました。その師匠がおっしゃったことをときどき思い出すんですが、師匠はこういうことをおっしゃったことがあったんです。
「「良師は規矩を教える」という言葉があるよ」と。
 「規矩を教える」というのはどういう意味か。「規矩」というのは物差しです。物差しとはどういうことか。師匠が弟子に知識を教えると、弟子はその知識を持って、「ああ」と納得してそれをやる。
ところが規矩を教えると、規矩というのは物差しだから、物差しを習った弟子は自分でいろいろなものを見て、「これがいいんじゃないか」とか、「これとこれを組み合わせてみようかな」というような方法論を学ぶ。
 そして、それを使って自分の知識や情報の世界を築き上げていく。そして最終的には、この方法論で自分の世界を築き上げて、そして師匠とは違う世界が出来てくる。だけどまあ、そこまではまだ弟子なの。

 そして、その弟子のなかのほんのわずかな人が、師匠から学んだ規矩を捨てて、自分が築き上げた世界から新しい規矩を作り出す。その方法論を作るようになったときに、その弟子を「出藍」と言うのね、藍です。
「出藍の誉れ」というのはそういう規矩を、方法論を超えることができた弟子のことです。

神田橋條治 医学部講義
神田橋 條治 (著), 黒木 俊秀 (編集), かしま えりこ (編集)
創元社; 初版 (2013/9/3)

神田橋條治 医学部講義

神田橋條治 医学部講義

  • 出版社/メーカー: 創元社
  • 発売日: 2013/09/03
  • メディア: 単行本

涸沢 長野県

文明の生命を維持するもの

ビザンチンの例(多くの異文化の侵入や侵略にもかかわらず、1000年もの生命を持ちえた)が我々に示してくれるのは、
自分達の伝統、価値観、制度、ある場合には神話を含めて、その「文明の核心」となる部分は
どんな危機においても、また繁栄の中でも絶対に放棄しないといことであろう。
と同時に、外の大きな流れには積極的に対応し、本質的に可能なものや技術的なものについてはむしろ積極的に取り込んでいかねばならない。

中西 輝政 (著)
なぜ国家は衰亡するのか
PHP研究所 (1998/10)
P128

なぜ国家は衰亡するのか (PHP新書)

なぜ国家は衰亡するのか (PHP新書)

  • 作者: 中西 輝政
  • 出版社/メーカー: PHP研究所
  • 発売日: 1998/10/01
  • メディア: 新書

国家の生命力の真の試金石となるものは、その国の知的・道徳的水準である。金万能(マモン)主義という腐食作用を食い止めるためには、研究にいそしみ、欲望や虚栄などには眼もくれない、学問に専念する人々が社会に存在すること以上の解毒剤はないと言えよう。
国の真価を測る物差しは、穀物を測るブッシェルやバレルではなく、精神(mind)である。小麦や豚肉は確かに有用で、なくてはならないものだが、永遠不滅とも言える知的生産物に比べれば、浮き滓(かす)にすぎない。
地の産物を育てるのは簡単だが、精神という優れた産物のほうは成長が遅く、長い栽培期間を要する。

平静の心―オスラー博士講演集
ウィリアム・オスラー (著), William Osler (著), 日野原 重明 (翻訳), 仁木 久恵 (翻訳)
医学書院; 新訂増補版 (2003/9/1)
P44

平静の心―オスラー博士講演集

平静の心―オスラー博士講演集

  • 出版社/メーカー: 医学書院
  • 発売日: 2003/09/01
  • メディア: 単行本

徳慧の学問、即ち広い意味において道徳的学問・人格学、これを総括して「人間学」というならば、この人間学が盛んにならなければ、本当の文化は起こらない。
民族は国家も栄えない。

知命と立命―人間学講話
安岡 正篤 (著)
プレジデント社 (1991/05)
P9

人間学講話第6集 知命と立命 (安岡正篤人間学講話)

人間学講話第6集 知命と立命 (安岡正篤人間学講話)

  • 作者: 安岡 正篤
  • 出版社/メーカー: プレジデント社
  • 発売日: 1991/05/27
  • メディア: 単行本

涸沢 長野県

躁状態は辛い

P108
 躁状態の時は、楽しそうに活動しているの。よくしゃべって、人にちょっかいをかけているのに、それが薬によってある程度鎮静したときに、「楽になったみたいね」と言うと「はい」と言う。
躁状態はやっぱり苦しいのよ。
 楽しそうに、わあわあ言って、「俺は偉いぞ」とかやっていてもね、やはり脳のキャパシティぎりぎりになっていて、それが何だか辛いの。何か、脳が辛いという感じがあるみたいです。

神田橋條治 医学部講義
神田橋 條治 (著), 黒木 俊秀 (編集), かしま えりこ (編集)
創元社; 初版 (2013/9/3)

神田橋條治 医学部講義

神田橋條治 医学部講義

  • 出版社/メーカー: 創元社
  • 発売日: 2013/09/03
  • メディア: 単行本

2026年7月18日土曜日

想像力をはたらかせる

  この極東の島にいる日本人のおもしろさは、オランダ文字といういわば針の頭ほどに小さな穴を通して、広大な西洋の技術世界をのぞいている。
 蔵六は生涯西洋にゆこうともせず、ついに行かなかったが、しかし、
「西洋とはこうであろう」
と、オランダ文の構文や単語をたどりつつ想像した。蔵六だけではなく、すべての蘭学者がそうであった。西洋人が、ヨーロッパの他の言語をまなぶ作業とは、大いにちがっている。言語をまなぶことは、未知の世界に対してそれぞれの学び手がもっている文明の像と質に対する想像力を最大限にはたらかせることであった。

   そういう想像力の作業は、この地球上のいかなる民族よりも、日本人はふるい鍛錬の伝統をもっていた。
千数百年のあいだ、日本人は漢文という中国の古典語をまなび、それによって、その肉眼で見たこともない中国文明の世界を知ろうとした。
知ろうとすることは、日本人にとって想像力をはたらかせることことであった。

花神〈上〉
司馬 遼太郎 (著)
新潮社; 改版 (1976/08)
P400  

花神(上) (新潮文庫)

花神(上) (新潮文庫)

  • 作者: 遼太郎, 司馬
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 1976/09/01
  • メディア: 文庫

 ボクのところだけに誤診例が集まるわけはない。いっぱいあるはずです。
みなさんは「精神科にははっきりした検査データもないことだし、誤診も起こるんだろう。自分は精神科医になんかならないから関係ない」と思うかもしれませんが、全然そうじゃないの。もうあらゆる科で、すごい誤診が起こっている。どんどん誤診が増えています。
 最近、誤診例が増えているのはなぜか、いちばん大きな理由は、診断が形式化されているせいです。
診断マニュアルというのが作られて、「これとこれとこれの症状があれば、この病気」「これとこれだとこの病気が疑わしいけれども、もう一つ加わると確定診断」という診断マニュアルが全科で用いられています。
ところが、何となく感じる匂いというものは、その医療者のとても主観的なものだから、マニュアルには盛り込めない。マニュアルは、万人が等しく見ることのできる症状を取り上げて作るものですから。
 そうすると、医者になるくらいの知能の人だったら、センスは悪くても、ほんとはアホチンでも、みんなが合意できるような指標だけが取り出されるので、誰でもほぼ同じ診断ができて、個人のセンシティビティを活かしてする診断には全然ならない。そのことが誤診の多くなっている第一の理由です。
 しかも診断するこの時点で、症状があるとかないとか、いくつあるとかいうことで診断しますから、診断がついたときには、正しい診断がなされたとしてもほとんど手遅れです。たった一つぐらいしか指標がない時点で、「はっきりした診断にはならないけれども、これじゃないかしら?」という診断が浮かんで、そして試行錯誤的に治療が開始されることによって医療は成り立つの。誰が診ても分かるようになってから治療が出発したのでは、全然手遅れなの。しかも、間違った診断でやられると、もうむちゃくちゃです。
 症状がちょっとしかなくて、診断がつかないときに何が行われているかと言うと、症状に対する治療、症状を消す治療が行われます。
ところが症状というものは、病因と、それに抗っている生体の自然治癒力との合成によって出来ていますから、診断がつくまでに、症状に対して薬を出したり処置をしたりする治療は、ますます診断を誤らせる結果にしかならない。 初期の時点で、「こうかもしれん、ああかもしれん、ひょっとしたらこうかもしれん」と可能な診断をいくつか考えて、思いをめぐらす習慣が、医者の日常からなくなってしまっている。だからよく分からんでも、診断が決まるまでは症状に対して治療しておくということになる。
 この医者の態度がいあかに間違いであるかということを中学生が告発したのが、一九九八年に起きた和歌山ヒソ中毒事件。女子中学生が「犯人は他にもいる」という題の論文を「文芸春秋」に投稿して、賞を貰いました。~中略~
 ヒ素をのんでみんな吐く。吐いている人がたくさん、あっちこっちの病院に担ぎ込まれて、「吐いて苦しそうだ」と、吐き気を止める薬を出した病院に行った患者さんは死んだ。そして「吐くのは胃に変なものが入っているからかもしれない。訳は分からんけど一応、胃洗浄をしておこう」と、その処置を選んだ病院に行った患者さんは死ななかった。「見たところ、吐き気だけでも止めてやらんと苦しそうだから」と、止めてもらった人は死んだの。「その医者も犯人だ」とその中学生は言っているんです。
 医者の想像力の欠如だね。欠如はどこからくるかと言うと、症状や検査データが全部揃ってから診断を考えるという習慣からです。

神田橋條治 医学部講義
神田橋 條治 (著), 黒木 俊秀 (編集), かしま えりこ (編集)
創元社; 初版 (2013/9/3)
P015
神田橋條治 医学部講義

神田橋條治 医学部講義

  • 出版社/メーカー: 創元社
  • 発売日: 2013/09/03
  • メディア: 単行本
富士山

意味への意志

P182
「意味への意志」
 この言葉は、右にのべた二つの意志、すなわちフロイド的な「快楽への意志」とアドラー的な「力への意志」に対して、フランクルがそれらよりも人間にとってより本来的な意志であるとして提起したものである。
フランクルは言う、「人間は結局そしてもともと、意味への意志と言うか、自分の人生をできる限り意味で充たしたいとの憧憬によって魂―と言わぬまでも精神を―吹き込まれて、それに従って、生きがいのある生活内容を得ようと努め自分の人生からこの意味を闘い取っています。
われわれは、この意味への意志が充足されずにとどまる時に初めて、またその時に限って―人間はますます多量の衝動満足によってまさにこの内面的不充足を麻痺させ、自分を酔わせようと努めるのだと信じます」(「時代精神の病理学」(フランクル著作集3、みすず書房、一九六一年-九八)
 この「意味への意志」は、さきの二つの意志が生理的欲求と社会的欲求であるのに対して、実存的欲求であるということができるであろう。

P184
 生命とか人生の意味とかは何かということを問題にする場合、われわれは通常、それを自己の方から、つまり自己を中心にして、「われわれは人生から何が期待できるか」という観点から問う。この観点は、いわば自己を世界の中心にすえて、自己から世界を見る見方、つまり自己の利益という観点から世界を見る見方である。
このような見方はしかし、例えば強制収容所における絶望的な状況では耐えることができない。なぜなら、そこではもはや何ものも世界から期待できないからである。「私はもはや人生から期待すべき何ものも持っていない」と語らざるを得なかった人々は、やがて次々と仆(たお)れていったのである。
 この絶望的な状況はしかし強制収容所に限らない。われわれの存在はすべて「死への存在」(ハイディッガー)として、根本的に同じ限界状況に置かれているのである。
このことは、収容所で仆れていった人々と同じように、「われわれは人生から何を期待できるか」という自己中心的な人人生観ではこの限界状況に耐えることができないということを意味している。
そしてこの自己中心的な人生観は、先にのべた「快楽への意志」と「力への意志」の人生観に他ならない。
それらは、自己の「快楽」。自己の「力」の追求として、自己のためであるが、その自己が結局何のためか、という問いに対する答えはそこからは出てこないのである。
「われわれは人生から何を期待できるか」という自己中心的な人生観は、自己存在そのものの意味にとって原理的な限界をもっているのである。
 それ故、この人生観は、「人生は何をわれわれから期待しているか」という観点に変更されねばならない。それは、自己から人生を問うのではなく、人生から自己を問う、というように、人生観を一八〇度コペルニクス的に転回することである。
解説 山田 邦男

それでも人生にイエスと言う
V.E. フランクル (著), 山田 邦男 (翻訳), 松田 美佳 (翻訳)
春秋社 (1993/12/25)

それでも人生にイエスと言う

それでも人生にイエスと言う

  • 出版社/メーカー: 春秋社
  • 発売日: 2014/12/25
  • メディア: Kindle版

P059
「絶望」という気分も、自然治癒力を停止させます。~中略~
自然治癒力が心理的に停止されると、特別病名がつくような状態ではないけれども、全体の生理機能が低下して、死んでしまいます。

神田橋 條治 (著), 黒木 俊秀 (編集), かしま えりこ (編集)
創元社; 初版 (2013/9/3)
神田橋條治 医学部講義

神田橋條治 医学部講義

  • 出版社/メーカー: 創元社
  • 発売日: 2013/09/03
  • メディア: 単行本
富士山

退き時

 

得意の時候は、最も当に退歩の工夫を著( つ )くべし。


一時一事も亦皆亢龍有り。

               「 言志録 」第四四条


                佐藤 一斎 著

                岬龍 一郎 編訳

                現代語抄訳 言志四録

                PHP研究所( 2005/5/26 )

                       P34

 


「功なり名を遂げて身退くは天の道なり」
                  老子

「散りぬべき 時知りてこそ 世の中は 花は花なれ 人は人なれ」
           細川 ガラシヤ

 

[現代語抄訳]言志四録

[現代語抄訳]言志四録

  • 出版社/メーカー: PHP研究所
  • 発売日: 2005/05/26
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)

 

 

 

 [第百三十四段]前略~
己のつたなさに気がついたら、なぜすぐに身をひかないのだ。おいぼれたとわかったら、なんで、静かに暮して、身体を楽にしないのか。
仏道修行がおろそかだと気付いたら、どうして深い注意をこの点に集中しないのだ。
総じて、人に歓迎されないで、人中へ出るのは、恥である。容貌が見にくく、心が愚かでありながら、世に出て仕え、無智なくせに、すぐれた学才の仲間入りをし、下手な芸で、名人上手と同席し、真白な頭をして、壮年の人と一緒になり、その上、及ばぬことを望み、できないのを嘆き、来もしないことを期待し、人に気がねをし、へつらうのは、すべて他人が与える恥ではない。
欲ばる気持ちに引っぱられて、自分から自分を恥ずかしめるのだ。
~後略

徒然草―現代語訳
吉田 兼好 (著), 川瀬 一馬
講談社 (1971/12)
P252

徒然草 (講談社文庫)

徒然草 (講談社文庫)

  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2019/09/20
  • メディア: Kindle版

 

持して之を盈(み)たすは、其の已(や)めんには如かず。
揣(し)して之を鋭くするは、長く保つ可からず。
金玉、堂に満つれば、之を能く守る莫(な)く、富貴にして驕(おご)れば、自ら其の咎(とが)を遺す。
功遂げて身退くは、天の道なり。
~中略~
*この一章は要するに、満月が欠けるように、完成と豊満は衰退につながるものだから、長く保持することはできないというのである。
身を守るためには、適当な時機をみて身をひくのが最善の処世法だというのであって、主旨は明白である。

老子
小川 環樹 (翻訳)
中央公論社; 改版 (1997/03)
P25

 

老子 (中公文庫)

老子 (中公文庫)

  • 出版社/メーカー: 中央公論新社
  • 発売日: 1997/03/01
  • メディア: 文庫

 

 

 

 高松宮は(住人注;昭和19年)2月16日、細川(住人注;細川護貞 )に「玉砕と云ふ如きは、云ふ可くして実行不可能なり。足腰立たざるまで戦ふ如きは愚の骨頂にて、若し万一絶対国防圏を突破せらるゝことあらば、速やかに休戦する、即ち成るべくよい負け方を考へねばならぬ」と語った。

語られなかった皇族たちの真実-若き末裔が初めて明かす「皇室が2000年続いた理由」
竹田 恒泰 (著)
小学館 (2005/12)
P110

 

語られなかった皇族たちの真実 若き末裔が初めて明かす「皇室が2000年続いた理由」 (小学館文庫)

語られなかった皇族たちの真実 若き末裔が初めて明かす「皇室が2000年続いた理由」 (小学館文庫)

  • 作者: 竹田恒泰
  • 出版社/メーカー: 小学館
  • 発売日: 2012/10/26
  • メディア: Kindle版

 

 

 用をなさなくなったのにその事実にひとり気づかず、その情熱は称賛に値するとはいえ、時代が変化したため彼の能力では無理となった職務の遂行に固執する老教授の姿ほど痛々しいものはない。
もはや
もう逝くことにしよう・・・
油が切れてもえなくなったら、
新しいもの以外のすべてを蔑む若いやつらに
黒ずんでくすぶる蝋燭の芯扱いされるくらいなら。

平静の心―オスラー博士講演集
ウィリアム・オスラー (著), William Osler (著), 日野原 重明 (翻訳), 仁木 久恵 (翻訳)
医学書院; 新訂増補版 (2003/9/1)
P49

 

平静の心―オスラー博士講演集

平静の心―オスラー博士講演集

  • 出版社/メーカー: 医学書院
  • 発売日: 2003/09/01
  • メディア: 単行本

 

 

 

P95

 プロジェクトからの撤退は、いつでも難しいものですが、膨大な時間とエネルギーをつぎ込む前の初期の段階であれば、はるかにやりやすいものです。後になればなるほど、時間やエネルギーをつぎ込んでしまい、引くに引けなくなります。仕事でも、株式投資でも、人間関係でもおなじことが言えます。
あのレオナルド・ダ・ビンチも、「最初に抵抗する方が、あとになってから抵抗するよりも楽」だと言っています。組織行動の専門家ロバート・サットンは著書の「あなたの職場のイヤな奴」(講談社)のなかで、「ダビンチ・ルール」を詳しく論じています。サットンは、自分に合わない仕事は、どうしようもないと思ったらすぐにやめるべきだと言います。一般論としてまとめたものを紹介しましょう。
 何かを決める際には、過去にどれだけコストをかけたかを考えに入れるべきではない。―たいていの」人は、この原則を知っている。だが「投資しすぎて、引くに引けない症候群」はかなり強力だ。何年にもわたって努力や苦労を重ねてくると、つい正当化したくなり、自分自身の周りにも「これにはなにか価値や意味があるはずだ」とか「だからここまで賭けたのだ」と言ってしまう。
 何かをやめると、じつは驚くほど元気が出ます。決めるのは自分であり、その気になればいつだってやめられることに気づきます。自分で自分を檻に入れ、見返りをする必要などないし、うまくいかない場所に引きこもる必要もありません。

P100
 では、どうすればやめるべき時がわかるのでしょうか。これは哲学的な大問題です。成功させたいという願望と、実際に成功する確率とを分けて考えるのは、とてつもなく難しいものです。もちろん、資源を投入すれば、成功する可能性は高まります。でも、時間やお金をどれほどかけても、あるいは、どれほど汗をかいても、うまくいかないときはうまくいかないものです。わたしがたどり着いた、もっとも科学的な結論はこうです。「心の声に耳を傾け、選択肢を検討しなさい」。
まずは、自分自身と正直に話し合わなければなりません。成功するまでトコトンやる覚悟があるのか、それとも別の道を選んだ方がいいのか、自分に聞いてみることです。
 要するに、何しろやめるのは難しいのですが、うまくやめるのはもっと難しいものです。引き際が見事な人がいれば、後にぽっかり穴を残していく不器用な人もいます。 第8章で詳しくお話ししますが、人生では、おなじ人に何度も出会うことがよくあります。それも予想しない形で。この事ひとつとっても、やめるときは、周りの人への影響をよくよく考えておくべきです。引き際をきれいにするのは、後々、その影響が自分に巡ってくるというだけでなく、人としてやるべきことなのです。

P102
 これとは対照的に、きれいにやめていった人たちも見てきました。仕事が合わなくてやめるのであっても、礼を尽くせば周りは好印象を持ち、必要ならいつでも推薦しようという気になります。
十分に前もって辞意を伝え、仕事がやりやすいように引き継ぎに時間をかけ、ときには引き継ぎがうまくいくよう手伝おうと申し出ます。こうした人たちはヒーローです。きれいにやめる術を知っていて、その術を使って、悪い状況を好転させます。

20歳のときに知っておきたかったこと スタンフォード大学集中講義
ティナ・シーリグ (著), Tina Seelig (原著), 高遠 裕子 (翻訳)
CCCメディアハウス (2010/3/10)

 

20歳のときに知っておきたかったこと スタンフォード大学集中講義

20歳のときに知っておきたかったこと スタンフォード大学集中講義

  • 出版社/メーカー: CCCメディアハウス
  • 発売日: 2010/03/10
  • メディア: ハードカバー
富士山

自分との戦い

敵と戦う時間は短い。
自分との戦いこそが明暗を分ける。
 王貞治

大山 くまお (著)
名言力 人生を変えるためのすごい言葉 
ソフトバンククリエイティブ (2009/6/16)
P44

名言力 人生を変えるためのすごい言葉 (SB新書)

名言力 人生を変えるためのすごい言葉 (SB新書)

  • 作者: 大山 くまお
  • 出版社/メーカー: SBクリエイティブ
  • 発売日: 2009/06/16
  • メディア: 新書

 

いやしくも自ら新にせんとするものは昨日の自己に媚びてはならぬのである。一刀の下に賊を斬ってしまわねばならぬのである。
(明治四十三年一月)

努力論
幸田 露伴 (著)
岩波書店; 改版 (2001/7/16)
P48

 

努力論 (岩波文庫)

努力論 (岩波文庫)

  • 作者: 幸田 露伴
  • 出版社/メーカー: 岩波書店
  • 発売日: 2001/07/16
  • メディア: 文庫

自己中心志向が強く、独力で学ぶ開業医の生活は孤独である。
書物を丹念に読んだり、学会に出席して刺激を受けることによって毎日の診療を規制しなければ、診療の質は低下し、彼の知識は脈絡のない単なる寄せ集めにすぎなくなる。

 

平静の心―オスラー博士講演集
ウィリアム・オスラー (著), William Osler (著), 日野原 重明 (翻訳), 仁木 久恵 (翻訳)
医学書院; 新訂増補版 (2003/9/1)
P238

 

平静の心―オスラー博士講演集

平静の心―オスラー博士講演集

  • 出版社/メーカー: 医学書院
  • 発売日: 2003/09/01
  • メディア: 単行本