2025年6月2日月曜日

近代化とは合理化の過程だ

 ところで、近代化とは何か。ヴェーバーは合理化にその本質を見ましたよね。
合理化(あるいは合理性)とは何かという哲学的な問題はさておき、とりあえずヴェーバーにならって、近代化とはさまざまな分野における合理化の過程だと考えてみます。
そうすると、イスラム教のほうがキリスト教より合理化されているように見えるわけです。それなのに、どうして近代化においてはキリスト教(カトリック)圏が主導権を握ったのか。
 歴史をふりかえれば、中世くらいまではイスラム圏のほうがカトリック世界よりずっと先行していました。技術の面でも哲学や思想の面でも、たいていイスラム圏のほうが先んじています。
中世の後半に、アリストテレスの哲学がイスラム圏からカトリック世界に言わば逆輸入されて、キリスト教学の水準を大幅に引き上げたという事実など、イスラム圏がいかに先行していたかを示している。逆転の兆しが出てくるのは十六世紀頃、つまり大航海の時代です。あるいは、宗教に即していえば、宗教改革の頃です。
 どうして、きわめて首尾一貫性が高く、合理的な宗教であるイスラム教が、しかも中世までは断然優位に立っていたイスラム教が、近代化の過程では、結局、キリスト教に主導権を奪われてしまったのか。非常に不思議な感じがします。

ふしぎなキリスト教
橋爪 大三郎 (著), 大澤 真幸 (著)
講談社 (2011/5/18)
P273

ふしぎなキリスト教 (講談社現代新書)

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  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2012/09/28
  • メディア: Kindle版

P102
 西欧の近代化とは、キリスト教の穏健化による世俗主義の確立である。
これは法治主義(英米法では、法の支配と呼ぶ)の原初である。主(God)による支配から、人の定めた法による支配、そしていかなる権力も個人の心の中に介入してはならないとする原則の確立により、文明を築いていくのである。

P160
 ナポレオン戦争時代のプロイセンの軍人、カール・フォン・クラウゼヴィッツは「戦争論」において、「戦争とは政治の延長である」と説いた。
~中略~
 クラウゼヴィッツの世界観においては、戦争とは政治目的に基づいて正規軍によってなされる国家と国家の衝突である。もちろん不正規軍は存在するし、国際法違反や政治目的からの逸脱も存在することを前提に彼の理論は説明される。
~中略~
 軍人の本分を遵守するクラウゼヴィッツは、国策の手段としての戦争においてどのような戦闘方法が合理的であるかを考察したのみである。「戦争の目的は異民族の殲滅である」とは十字軍の思想であり、これを曲がりなりにも克服してきたのがヨーロッパ近代なのである。

日本人だけが知らない「本当の世界史」
倉山 満 (著)
PHP研究所 (2016/4/3)

日本人だけが知らない「本当の世界史」 なぜ歴史問題は解決しないのか (PHP文庫)

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  • 作者: 倉山 満
  • 出版社/メーカー: PHP研究所
  • 発売日: 2016/04/03
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京都府 嵐山

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