少子化は二十世紀後半からの文明病で、その解決案はまったく見当たらない。この問題の難しさは論と証拠が逆転している点にある。
ヨーロッパの諸国では早くから少子化が問題となり、論じられる限りの手が打たれた。育児手当の支給や育児休暇も実行した。住宅の拡大も実現した。婚外児の公認も、嫡出子と非嫡出子の差をなくすることも行われた。どれも理論的に出生率を増やすのに役立つ、といわれた政策である。
だが証拠(統計)は逆に出ている。育児手当や育児休暇が確立されても出生率は低い。住宅の広さも出生率の向上には役立っていない。出生率が高いのは、育児手当もなければ住宅事情も悪い中東やアフリカの途上国である。
(あるべき明日)
堺屋太一の見方 時代の先行き、社会の仕組み、人間の動きを語る
堺屋 太一 (著)
PHP研究所 (2004/12/7)
P34

堺屋太一の見方 時代の先行き、社会の仕組み、人間の動きを語る
- 作者: 堺屋 太一
- 出版社/メーカー: PHP研究所
- 発売日: 2004/12/07
- メディア: 単行本
少子高齢化社会の日本では、今後、人口が増えることはまずありません。
ほとんどの業界で、売り上げをいま以上に上げることは困難になります。基本的には「マーケットは縮小する」という前提で、会社としてどう対応していくのかを考えるべきです。
~中略~
世帯当たり、一人当たりの支出も減っていき、おそらく長期的に見ると二割、三割という単位で市場が急速にしぼんでいくでしょう。
売り上げがいまより二~三割ダウンしたら、利益が出る小売業者はいまはほとんどないはずです。
利益を3倍にするたった5つの方法―儲かる会社が実践している!
大久保 恒夫 (著)
ビジネス社 (2007/08)
P180

利益を3倍にするたった5つの方法: 儲かる会社が実践している!
- 作者: 大久保 恒夫
- 出版社/メーカー: ビジネス社
- 発売日: 2007/08/01
- メディア: 単行本
実はこの(住人注;家や公との強い)紐帯こそが、幕末から明治維新にかけて我が国を訪れ日本人を観察した欧米人が、「貧しいけど幸せそう」と一様に驚いた、稀有の現象の正体だったのです。
日本人にとって、金とか地位とか名声より、家や近隣や仲間などとのつながりこそが、精神の安定をもたらすものであり幸福の源だったのです。
これを失った人々が今、不況の中でネットカフェ難民やホームレスとなったり、精神の不安定に追い込まれ自殺に走ったり、「誰でもいいから人を殺したかった」などという犯罪に走ったりしています。
少子化の根本原因もここにあります。家や近隣や仲間の有難さが失われ人々との繋がりが希薄になったこの社会で、苦労して産み育てた子供は本当に幸せになれるのだろうか。なれそうにないのなら出産や子育てにエネルギーを使うより、自らの幸福を追い求めよう。
自分を支えてくれた社会への恩返しをするより自己実現、となるのです。「個の尊重」「個を大切に」を子供の頃から吹き込まれているからすぐにそうなります。
日本人の誇り
藤原 正彦 (著)
文藝春秋 (2011/4/19)
P241
貧困は、たしかに結婚への意欲をくじくけれど、かならずしもそれを妨げはしない。それは、出産にとって好都合でさえあるかにみえる。
ハイランドのなかば飢えている婦人は、しばしば二〇人以上の子供を産むことがある、これと反対に衣食足りている貴婦人は、しばしば一人の子供も産めないことがあるし、ふつうは二人か三人で力がつきてしまう。
不妊は、上流夫人のあいだでは広くみられるが、下層階級の婦人のあいだでは、きわめてまれである。
女性の贅沢は、おそらく享楽への心の高まりをかき立てるだろうが、それと同時に出産能力をつねに弱め、しばしばそれをまったくなくしてしまうように思える。
しかし貧困は、たとえ出産を妨げないにしても、子供たちの養育にはすこぶる不都合である。
ひ弱な植物は、非常に寒冷な土壌や非常にきびしい気候では、芽ばえはしても、まもなく枯死してしまう。私がよく聞く話であるが、スコットランドのハイランド地方では、一人の母親二〇人もの子供が生まれても、そのうちの二人とは生きていない、ということも、珍しくはないそうである。
国富論 (1)
アダム・スミス (著), 大河内 一男 (翻訳)
中央公論新社 (1978/4/10)
P134
個体の生存を優先に考えた場合、子孫を残す行為は大きな負担となります。
とくに女性では肉体的な負担となり、男性では子育てにかかるコストの負担=経済的負担となりますから、恋=ときめきによって脳の働きを一次的に麻痺させてやらなければ、子孫をつくろうという方向へはなかなか脳が判断してくれない。
こうした「理性的」な判断を一時的に麻痺させ、「個体優先」でなく「種の保存優先」の行動をとらせるシステムが、脳が大きく発達してしまった人類が子孫を残すためには、必須でした。恋のときめきは、人類が種として生き延びてくるために必要だった、進化上の工夫なのでしょう。
さて、この「ときめき」ですが、加齢によって減っていきます。
恋のときめきのもととなるドーパミンなどの脳内物質は加齢とともに分泌が減ってしまうのです。
~中略~
ただ、近年は、なかなか恋のときめきを感じない若い人も増えていると聞きます。
冷静すぎる人たちは、恋のときめきを感じる前に、「理性的」な判断をするため、「種の保存優先」でなく、「個体優先」の行動をとる個体が多いのでしょう。その判断のほうが、個体の生存のためには有利だからです。
現実問題として、経済的な負担を考えてしまうとどうも子どもをつくろうという気になれない、という若いカップルは多いのではないでしょうか?
こう考えると、少子化とは、もしかしたら理性をつかさどる脳が発達しすぎたからこそ起きた、ある意味必然の流れなのかもしれません。
脳はどこまでコントロールできるか?
中野 信子 (著)
ベストセラーズ (2014/8/19)
P177
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