表現のおもしろさや迫力は、いつもそうせざるを得ない人によって創られるのであって、 さらに言うなら、そうした「悩み」のない人に迫力のある芸術は創れない。
南 伸坊
心理療法個人授業
河合 隼雄 (著), 南 伸坊 (著)
新潮社 (2004/08)
P160
異物が混入したらしいビーフカツの、その異物とはどんな物かと尋ねると、はっきりしないがプラスチィックのカケラみたいなものじゃないか、という話だった。
正体もよくわからない。混入したかどうかもわからない。「らしい」という話だ。「らしい」でけで廃棄するのか!四万枚も!
しかしそれが文明国のなすべきこと、あるべき姿だといわれれば、そうですか、といって引き下がるしかしようがない。
もしもプラスチィックのカケラが混入していれば、口に入れると下に触るだろうから、その時は吐き出せばいい、それだけのことなのに、もったいないねえ。大袈裟だねえ・・・・・などと、落ちぶれた主婦魂の持主たちはひそひそといい合うのみだ。
この頃のこの国を、やたらにギスギスとして小うるさく、住みにくくいちいちうるさく感じるようになっているのは、何かにつけて雨後の筍(たけのこ)のように出てくる「正論」のせいで、しかしそう感じるのは私がヤバン人であるためだということがここまで書いてきてよくわかったのである。
九十歳。何がめでたい
佐藤 愛子 (著)
小学館 (2016/8/1)
P185
(住人注;世界のメディアの以下のような論評)ビン・ラディンが死しんで9・11から続いていたイスラームとの戦争も終結する期待が高まった。一方、二〇一一年一月にチュニジアではじまりエジプトに飛び火した中東民主化の主役はツイッターやフェイスブックを使いこなす若者たちだ。
そこには、十年前に猛威を振るったイスラーム原理主義の影はない。ビン・ラーディンの死は新しい民主化運動としての「アラブの春」を象徴する事件だ・・・・・。
このような見方は、ひどく欧米中心的で、中東の本当の姿を伝えていません。第一に、ツイッターやフェイスブックのような情報ツールは、アフガニスタンのタリバン幹部も大好きです。だれでも携帯電話をもっていれば使えるようになったはずですから、ニューヨークの若者だろうと、イスラームの若者だろうと同じように使っているだけです。
ジャーナリストの頭には、アメリカで流行ったものをイスラームの若者も使うようになったのだから、きっと欧米化のきざしが出てきたにちがいない、という思いがあったのでしょうが、これは欧米諸国の優越感にもとづいた思い込みにすぎません。テクノロジーが、思想を決めるわけではないのです。
イスラームから世界を見る
内藤 正典 (著)
筑摩書房 (2012/8/6)
P86
「浅き川も深く渡れ」ということばがある。
字義通りにとれば、慎重にふるまいなさい、という意味だろう。一見すると浅く見える川も、実際には思いのほか深いことがある。
だから、足を取られて流されないように慎重に歩きなさい、という意味である。
しかし、このことばは私には少し違ったニュアンスに聞こえる。一見すると何気なく見過ごすもののなかに、実際には深い意味がひそんでいることがある。
だから、浅いと見えるののも深く味わってみなさい、という意味に受け取れるのだ。
細部にこそ、物事の本質が現れる。
想像するちから――チンパンジーが教えてくれた人間の心
松沢 哲郎 (著)
岩波書店 (2011/2/26)
P3
五四 至るところ、至る時において君にできることは、現在自分の身に起こっている事柄にたいして敬虔な満足の念をいだき、現在周囲にいる人びとにたいして正義にかなった振舞いをなし、現在考えていることに全注意を注ぎ、充分把握されていないものはいっさいそこに忍び込む余地のないようにすることである。
マルクス・アウレーリウス 自省録
マルクス・アウレーリウス (著), 神谷 美恵子 (翻訳)
岩波書店 (1991/12/5)
P132
日本は世界でも突出して自殺が多い国である。自殺者は一九九八年に三万人を超え、以来高止まりが続いている。十六分に一人が、日本のどこかで自ら命を絶っているという現実。
発展途上国では、生きていたくても飢えや病気やテロで命を落とす人が大勢いる。比べものにならないほど豊かな日本でなぜ?という疑問がわいてくる。 皮肉なことだが、その豊かさが問題なのである。
ここでいう豊かさとは、心の豊かさではなくモノの豊かさである。物質的に豊かになれば幸せになれると誰もが信じた時代は、日本では二十年前に終わっている。
モノが増えて便利になった反面、人は他人に無関心になり、自分のことばかり考えるようになり、心の通い合いやおせっかいが減った。
途上国の人たちの命を奪うのは飢えや病気だが、先進国の人にとって最大の敵は孤独である。
気になる科学 (調べて、悩んで、考える)
元村有希子 (著)
毎日新聞社 (2012/12/21)
P32
禅で教える主人公とは、心の中にある仏性、本来の自己のこと。誰もが自分のなかに仏様と同じ輝く仏性を持ち、それこそが自分本来の姿であるということ。
その姿に出会うことが、本当の自分を生きることにつながるのです。
自分本来の姿を生きられるようになれば、怖いものはありません。
何があっても泰然自若。あなたを攻撃したり批判したりする人が表れても、悠然とかまえていられます。思わぬトラブルに巻き込まれても、「これも経験」と前向きに受け取ることができます。なによりささいなことでカッとしたり、ムシャクシャして人に当たらずに済むようになります。
なぜなら、何ものにも侵されない尊い自分がいることがわかっているのですから。
怒らない 禅の作法
枡野 俊明 (著)
河出書房新社 (2016/4/6)
P50
P4
説得とは相手の心を動かすことであるから、言い換えれば「感動させる」ことである。
優れた芸術の説得力は人を感動させる力になることを考えれば、その点は明らかだ。
説得の方式に関しては、欧米は攻撃的な面が多く、日本人は「静かな説得」が得意である。
いずれの場合でも、これまで見てきた説得の上手な人は、つねに相手の心に焦点を当て、相手の心とのコミュニケーションを図っていた人たちだ。
説得する相手に対して、同じ人間としての立場から敬意を表することも忘れていないので、その働きかけがよい結果をもたらすのである。
そのように自分の欲をはっきりと自覚する習慣をつけておけば、説得しようとする相手に対して謙虚な姿勢にならざるをえないだろう。
超説得力
山崎 武也 (著)
講談社 (2003/11)
P60
だいじなのは、好感を持たれること。ギャラップ社の世論調査所が、一九六〇年以降のアメリカ大統領候補が大衆に支持された割合を、演説の力、政党の力、そして高感度に焦点を当てて調べた。
その結果この三つの中で、候補者が勝利した要因は一貫して好感度であることがわかった。
また、トロント大学のフィリップ・ノールによる夫婦関係の調査では、高感度の高い人は、そうでない人より離婚率が約五割少ないことがわかった。
そしてなんと、高感度はあなたの命まで救う。べつの調査結果によると、医師は好感が持てる患者には連絡を絶やさないよう勧め、検査をくり返し受けさせる率が高かったのだ。
だが、高感度を高めるには、どうすればいいのだろう。
自己啓発の大御所デール・カーネギ―は、相手に対して心から興味を示すことが、あなたの高感度を上げると語っている。
~中略~
だが研究によると、人の心を捉え友だちをえるには、もっと有効な方法がほかにあるという。
この方法に必要なのは、相手に小さな親切を求めるベンジャミン・フランクリン流の行動、ときどき失敗ができる能力、そして噂話の威力を理解すること。それだけだ。
フランクリン効果
~中略~
フランクリンは言う。「誰かに親切をほどこした人間は、相手にもっと親切な行動をしたいと望む」という原則だ。
言い換えると、誰かに好感をもたれたいときは、その当人になにかしてもらうほうが、効果があるのだ。
フランクリンから一世紀後に、ロシアの作家レフ・トルストイも同じ指摘をしている。「私たちが人を好きになるのは、相手からしてもらったことのためではなく、自分が相手にしてあげたことのためである」
~中略~
誰かに好意をもたれたいと思ったら、相手の好意にすがればいい。
しくじり効果
~中略~
結果では、サラのほうがいかにもプロで説得力もあると評価されたものの、好感をもたれたのは、へまをしたエマのほうだった。その理由を訊ねると、人びとはサラの完璧な演技には距離感を感じたが、エマの人間的な行動に温かみを感じたからだと答えた。完璧な実験とは言えないが~中略~、結果は、ときどき失敗するほうが人に好かれるという説を裏づけるものになった。 噂話は自分に跳ね返ってくる
そして、高感度アップの方法が最後にもう一つ。それは人間特有の、噂話が好きという特徴にかかわるものだ。ひとはたいてい、友だちや同僚にかんするおいしい情報を言いふらすのが好きだ。
~中略~
これは、「自発的特徴変換」と呼ばれる効果で、噂話をすることのマイナスとプラスが暗示されている。あなたが第三者の噂をした場合、聞き手は無意識のうちにななた自身をその第三者と結びつけ、話題になった特徴をあなたに「重ね合せる」のだ。
つまり、友人や仲間の長所を楽しげに話すと、あなたもいい人間に見られる。だが、いつも第三者の短所をけなしていると聞き手は無意識のうちにその短所や能力のなさをあなた自身のものとして感じはじめる。
成功へのステップ
自己啓発の権威たちは、高感度を高めるには思いやりと謙虚さ、おおらかさを身につけなさいと説いている。たぶんその通りだろう。だが、そのほかに三つ、意外な効果があなたの人気を高めるのに役立つ。
フランクリン効果:人は力を貸した相手を好きになる。ただし、力を貸すといっても、あまり負担がかからない範囲に限られる。大きな要求は逆効果になり、人は力になるのをしぶったり、即座にはねのけたりするだろう。
失策効果:ときどきへまをしでかすと、あなたの高感度はアップする。ただし、この効果が最高の威力を発揮するのは、あなたが完璧な人と思われている場合である。
噂話:ほかの人の噂話をすると、あなた自身に跳ね返ってくる。誰かの悪口を言った場合もほめた場合も、聞き手はあなたを話の中の人物に重ね合せて考える。
その科学が成功を決める
リチャード ワイズマン (著), Richard Wiseman (原著), 木村 博江 (翻訳)
文藝春秋 (2012/9/4)
気前が好(よ)ければ、人から好意をうける。特に気前の好さが謙遜を伴う場合に。
(「格言と反省」から)
ゲーテ格言集
ゲーテ (著), 高橋 健二 (翻訳)
新潮社; 改版 (1952/6/27)
P138
若者がいかにも自信ありげにまったくの下らぬことを喋りまくり、独壇的で狭量であるのを見ると、年配者は立腹して若者の愚劣さと無知を指摘する。
だが、自分だって若い時は同じように愚かで、独壇的で、傲慢で、自惚れていたのではないか?
(「作家の手帳」一九四一年)
モーム語録
行方 昭夫 (編集)
岩波書店 (2010/4/17)
P34
モーム語録 (岩波現代文庫) (岩波現代文庫 文芸 163)
自分のほうが立場が上であるとアピールしたいとき、人は相手を下に見るような言い方をします。これがマウンティングです。
マウンティングする人は、じつは根底に劣等感を持っています。つまり、自信がないのです。 ですから、相手からマウンティングされてイラッとしたときは、相手と同じ土俵に乗らないのが一番です。
また、マウンティングをする目的は、その場で自分が優位に立つことですから、その目的さえ達成されれば、本人は満足なのです。
発言に大きな意味もないので、言われたことをいつまでも気にせず、さらりと返したほうがいいでしょう。
<イラスト&図解>コミュニケーション大百科
戸田久実 (著)
かんき出版 (2019/2/14)
P124
本を読み終わっておもしろいと思っても、どこの書店でも売っているような本でないかぎりは、友人に読んでみることをすすめたりしないほうがよい。
貸してくれと言う人がいるだろうし、本を人から借りる習慣のある人は、貸したら最後で,返ってくる可能性は皆無に均しい。
山崎 武也
一流の条件―ビジネス・スタイルを固める43章
日本能率協会 (1990/08)
P19
一流の条件 ビジネス・スタイルを固める43章 (PHP文庫)
食事やお茶、お酒の席はもちろんワリカンにする。若い世代はおごってもらってラッキーとなるのこもしれないが、シニア世代はおごってもらうと、ちょっと気持ちが重くなる傾向のほうが強い。
相手の誕生日だとか、孫が生まれたからなど、おごりたい理由があるときには、席を立つ前に、「今日はオレにお祝いさせてくれよ」などと話しかけるようにしたい。逆にそう言われたら、喜んでおごってもらうのも、気持ちがいいつき合い方だ。何かの折に、今度は自分が「おごられる」側になればいい。
特に、自分のほうが経済的に余裕があると思われる場合など、ワリカンを心がけ、貸し借りのない気持ちでつき合うことが相手に対する心遣いになる。
精神科医が教える50歳からの人生を楽しむ老後術
保坂 隆 (著)
大和書房 (2011/6/10)
P164
精神科医が教える50歳からの人生を楽しむ老後術 (だいわ文庫)
是が非でも自分のいうとおりにしてもらいたいと思うとき、土下座という手段を使う人がいる。
論理的に説得するのが下手であったり不可能であったり、また相手がノーといい続けているようなとき、突如として身を床に投げ出し、頭を床につけた礼をするのである。
このような大げさな振る舞いをする人は、性格的にも支離滅裂な人である。人に頼むときは下手に出るが、人が願いごとをしてくるときは居丈高になるひとだ。~中略~
一時的にではあれ卑屈な態度を取ることができる人は、自分の利になる目的のためには、自分の人格を貶めるのも平気なのだ。自分の人格を無視しても何とも思わない。土下座する人にはご注意、である。
超説得力
山崎 武也 (著)
講談社 (2003/11)
P75
①トップマネジメントには、事業の目的を考えるという役割がある。~略~
②基準を設定する役割、すなわち組織全体の規範を定める役割がある。~略~
③組織をつくりあげ、それを維持する役割がある。~略~
④トップの座にある者だけの仕事として渉外の役割がある。~略~
⑤行事や夕食会への出席など数限りない儀礼的な役割がある。~略~
⑥重大な危機に際しては、自ら出動するという役割、著しく悪化した問題に取り組むという役割がある。~略~
トップマネジメントに課される役割は、各種の能力、さらには各種の性格を必要とする。少なくとも四種類の性格が必要である。
「考える人」「行動する人」「人間的な人」「表に立つ人」である。
マネジメント[エッセンシャル版] - 基本と原則
ピーター・F・ドラッカー (著), 上田 惇生 (翻訳)
ダイヤモンド社; エッセンシャル版 (2001/12/14)
P224