2026年5月21日木曜日

内子町

 谷がひろければ、町がある。  松山から大州への古街道ぞいにある内子町もそうで、三方の渓谷を削って流れおちてくる三つの川(中山川、麓(ふもと)川、小田川)がやや広い谷をつくって人々に集落をつくらせている。
「実家は内子でございます。櫨鑞(はぜろう)の問屋をいたしておりました」
 と、この夜、泊まった大洲の旅館「油屋」の女主人がいったが、内子の町はどこか古風で道をゆくひとびとの歩き方までが悠長にみえた。
 この町は、市から発達したらしい。奥のほうの谷々から山の物を持ち寄り、それを売って里の物を買ったようである。
 明治以前、諸藩の重要な産業のひとつは鑞であった。櫨の木の実からとつのだが、採ったばかりのなまの鑞を採集して晒し、諸国に出荷していたわけで、内子の鑞問屋といえば大きな資本であったらしい。

街道をゆく (14)
司馬 遼太郎(著)
朝日新聞社 (1985/5/1)
P51

街道をゆく14

街道をゆく14

  • 作者: 司馬遼太郎
  • 出版社/メーカー: 朝日新聞出版
  • 発売日: 2014/10/07
  • メディア: Kindle版

愛媛県 内子町

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