2026年5月15日金曜日

お仏壇

背戸でもいだ橙(だいだい)も、
町のみやげの花菓子も、
仏さまのをあげなけりゃ、
わたしたちにはとれないの。

だけど、やさしい仏さま、
じきにみんなにくださるの。
だからわたしはていねいに、
両手をかさねていただくの。

うちにゃお庭はないけれど、
お仏壇にはいつだって、
きれいな花がさいてるの。
それでうち中あかるいの。

そしてやさしい仏さま、
それもわたしにくださるの。
だけど、こぼれた花びらを、
踏んだりしてはいけないの。

朝と晩とにおばあさま、
いつもお燈明あげるのよ。
まかはすっかり黄金(きん)だから、
御殿のように、かがやくの。

朝と晩とにわすれずに、
わたしもお礼をあげるのよ。
そしてそのとき思うのよ、
いちんち忘れていたことを。

忘れていても、仏さま、
いつもみていてくださるの。
だから、わたしはそういうの、
「ありがと、ありがと、仏さま。」

黄金の御殿のようだけど、
これは、小さな御門なの。
いつもわたしがいい子なら、
いつか通ってゆけるのよ。

(「お仏壇」「金子 みすゞ全集」<JULA出版局より>)

見真
龍谷総合学園 (著)
本願寺出版社; 第三刷版 (2003/03)
P108

見真

見真

  • 出版社/メーカー: 本願寺出版社
  • 発売日: 2003/03/15
  • メディア: 単行本

 

 

山口県下関市

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