2026年2月20日金曜日

私生活

 私生活というのは、飯を食ったり、排泄したりすることの総和ではない。そんなのが私生活なら犬でもカイコでも私生活はある。
私生活とは、チャンとした考え方、それを大きくは人生観、小さくは処世法とでもいおう、そうしたものによって、キチンと律せられた生活を私生活というのだ。
二十年勤続の銀行員が、無味乾燥な一日のつとめを終えて、家の小さな庭でボンサイを楽しんだり、同好を誘って句会に出かける。
それが私生活だ。魂の安らぎをもとめて静かに聖典を誦し永遠へ思索を参入させる。 これもすぐれた私生活だし、享楽を人生の目的としている人物が、暮夜ひそかに走ってバーの扉を押し、キャバレーで乱痴気さわぎをするのも、厳然たる私生活である。

司馬遼太郎が考えたこと〈1〉エッセイ1953.10~1961.10
司馬遼太郎 (著)
新潮社 (2004/12/22)
P58

司馬遼太郎が考えたこと〈1〉エッセイ1953.10~1961.10 (新潮文庫)

司馬遼太郎が考えたこと〈1〉エッセイ1953.10~1961.10 (新潮文庫)

  • 作者: 遼太郎, 司馬
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 2004/12/22
  • メディア: 文庫

 

高知県 四万十川

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