2024年12月18日水曜日

記憶は薄れる。まして他人の記憶は

よく戦争は語り継がねばならない、などと言う人がいるが、体験というものは、当人さえ年々歳々記憶が薄れる。
ましてや他人の体験した恐ろしい話など、初めから別人の意識に移し植えられるものではないのである。

人生の原則
曾野 綾子 (著)
河出書房新社 (2013/1/9)
P176

人生の原則 (河出文庫 そ 1-5)

人生の原則 (河出文庫 そ 1-5)

  • 作者: 曾野 綾子
  • 出版社/メーカー: 河出書房新社
  • 発売日: 2016/02/08
  • メディア: 文庫

 

興味のなくなるところ、記憶もまたなくなる。
(「格言と反省」から)

ゲーテ格言集
ゲーテ (著), 高橋 健二 (翻訳)
新潮社; 改版 (1952/6/27)
P65

 

ゲーテ格言集(新潮文庫)

ゲーテ格言集(新潮文庫)

  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 2016/04/22
  • メディア: Kindle版

気分と免疫はつながっている

免疫細胞の中には、神経伝達物質のレセプターをもっているものがある。
神経伝達物質とは神経細胞から神経細胞へとインパルスを伝えるもので、つまり「気分」の決定権を持っている物質だ。
免疫細胞がこれのレセプターをもっているということは、免疫細胞と気分は、つながりをもっているということだ。

多田 富雄 (著), 南 伸坊 (著)
免疫学個人授業
新潮社 (1997/11)
P158

免疫学個人授業

免疫学個人授業

  • 作者: 多田 富雄
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 1997/11
  • メディア: 単行本



P158
アレルギーの治療は、昔に比べるとだいぶロジックのあるものが多くなってはいるが、まだまだ珍奇な民間療法も多い。それなりに有効とされている理由のひとつは、アレルギーの発症には著しい心因性要素があるからであろう。アレルゲンの見つからない成人の気管支喘息は山ほどあって、免疫学的にアレルゲンを特定できるのはむしろ少数派である。そういう例では、ストレス、精神的ショック、騒音、気圧、運動その他あらゆるものが発作の誘引となる。

~中略~
汎アレルギー症候群というのもカナダで報告されている。電話機、食器、ポリエステルの下着、眼鏡、新聞、便座など、あらゆる肌に触れるものによって皮膚に激しい発疹が出る。拒否の程度の低いごくわずかの物の間にひっそりと身をおき、社会から隔離されて暮らすほかはない。
 このようなすさまじい拒否に対しては、抗原と抗体の特異的な反応を基礎にしていた免疫学はお手上げである。なぜアレルギーはここまでエスカレートしてしまったのであろうか。

P164
 人工的な環境変化によるものはやむを得ないとして、アレルギーの拒否の姿勢はますます頑なになってきたらしい。夫の精液に対して全身性のアレルギー症状としてのショックを起こした女性も、何例か報告されている。
ペットに対するアレルギーは誰でも知っている。犬のフケに対して、飼い主はしばしばペットアレルギーを起こす。しかし、最近、飼い主の方が人間のフケに対してアレルギーを起こした例が見つかった。
相互拒否の根は深い。

多田 富雄 (著)
免疫の意味論
青土社 (1993/04)

免疫の意味論

免疫の意味論

  • 作者: 多田 富雄
  • 出版社/メーカー: 青土社
  • 発売日: 1993/04/30
  • メディア: 単行本


  ここでは(住人注;ベネズエラの熱帯雨林に住むヤノマミ)マラリアが流行している。悪寒、発熱、頭痛の発作時にシャーマンは悪霊を取り除こうとする。四、五時間後、発作はおさまり、嘘のように症状は緩和する。実はマラリア発作は放っておいても四、五時間で発作はおさまるのだ。
 しかし病気は心理的なものが大きく作用する。シャーマンの治療は他の病気に対しても大きな威力を発揮している。

関野 吉晴 (著)
グレートジャーニー―地球を這う〈1〉南米~アラスカ篇
筑摩書房 (2003/03)
P103

グレートジャーニー―地球を這う〈1〉南米~アラスカ篇 (ちくま新書)

グレートジャーニー―地球を這う〈1〉南米~アラスカ篇 (ちくま新書)

  • 作者: 関野 吉晴
  • 出版社/メーカー: 筑摩書房
  • 発売日: 2003/03
  • メディア: 新書


病を忘るれば病おのずから逃る
すべての疾病は不覚に生じて自覚に成るものが多い。自覚せざるときは病既に身に生じて居てもなおいまだ病を知らず、 一たび病あるを自覚するに及んで病は大にその勢を張る。
換言すればもし自覚せざれば病はあるもなおなきが如くで、また自覚すれば病はなきもなおあるが如きである。
進潮退塩(明治四十五年七月)

努力論
幸田 露伴 (著)
岩波書店; 改版 (2001/7/16)
P233

努力論 (岩波文庫)

努力論 (岩波文庫)

  • 作者: 幸田 露伴
  • 出版社/メーカー: 岩波書店
  • 発売日: 2001/07/16
  • メディア: 文庫


万物全て、これ師たらざるものなし

  「試験に合格しようが、残念であろうが、どちらも自分の人生を豊かにすることができたならば等価値だ」と思えるようになればいいんだなと、思ったんですね。
~中略~
 その人が自分にとって心地よいことを言ってくれようが、そうでなかろうが、やはりどちらも意味があることなんです。

気に障ることを言われて、まだそこで苛立っているようならば、「自分は未熟な人間だと教えてくれた、自分にとって価値のある人である」と思えばいい。
「万物全て、これ師たらざるものなし」のように、どんなに嫌な人でも、まだ、自分が成長過程にあることを教えてくれる師だと、理屈で考える訓練を繰り返していったんです。
結果的に本当にそう思えるまでに10年かかりましたね。

“司法試験流” 知的生産術
伊藤 真 (その他), 野田 稔 (その他)
NHK出版 (2012/1/25)
P86

“司法試験流” 知的生産術 2012年2月 (仕事学のすすめ)

“司法試験流” 知的生産術 2012年2月 (仕事学のすすめ)

  • 出版社/メーカー: NHK出版
  • 発売日: 2012/01/25
  • メディア: ムック

 

 つまり本は結論を書いているものではなく、自分で結論に辿り着くための道具です。
私自身は本について、「本屋さんとは、精神科の待合室みたいなものだ。大勢の人(著者たち)が訴えを抱えて並んでいる」と思っています。
~中略~
そう考えると、つまらない本というものはあまりなくなるのです。どんなに自分と異なる考えの本でも、「この人、どうしてこんなつまらないことをわざわざ書こうとしたのか」を考えることが出来ます。なぜ、つまらないのか、どう書いたら面白いのかとか、そういうことを考える材料になります。

 実はこれは本に限った話ではありません。人と接する際でも同じことです。
「この人、なぜこんなに怒っているのか」「なぜこんなに不機嫌なのか」と考えていれば、好き嫌いがあまりなくなるものです。

養老 孟司 (著)
養老訓
新潮社 (2007/11)
P51

養老訓 (新潮文庫)

養老訓 (新潮文庫)

  • 作者: 孟司, 養老
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 2010/06/29
  • メディア: 文庫

 

みんな自分が正しいと思って生きている

 人間は、それぞれ自分の考えに従って行動するものだ(またそうあってほしい)。それを自分とまったく同じ考えでなければいけないなどと思うのは、自分と体型も大きさも同じでなくてはいけないと言うのと同じくらい、傲慢なことだ。人間それぞれ、自分が正しいと思って生きている。ところが、ほんとうに誰が正しいかを知っているのは神一人なのだ。

父から若き息子へ贈る「実りある人生の鍵」45章
フィリップ・チェスターフィールド (著), 竹内 均 (翻訳)
三笠書房 (2011/3/22)
P40

父から若き息子へ贈る「実りある人生の鍵」45章 (知的生きかた文庫)

父から若き息子へ贈る「実りある人生の鍵」45章 (知的生きかた文庫)

  • 出版社/メーカー: 三笠書房
  • 発売日: 2011/03/22
  • メディア: 文庫


 その人がエゴイストであるのは、一般に善悪を判断するのは自分であるというふうに考えているからだ。
こういう野蛮な人間は世に少なくない。
「曙光」

超訳 ニーチェの言葉
白取 春彦 (翻訳)
ディスカヴァー・トゥエンティワン (2010/1/12)
147

超訳 ニーチェの言葉 (ディスカヴァークラシックシリーズ)

超訳 ニーチェの言葉 (ディスカヴァークラシックシリーズ)

  • 出版社/メーカー: ディスカヴァー・トゥエンティワン
  • 発売日: 2010/01/12
  • メディア: 単行本


   正しいことを「正しい」と主張することは「正しい」としても、それは理屈や事実としての正論であって、それを主張することで逆に目的が達せられなくなったとしたら、この主張は処し方として正しいといえるだろうか。

ビジネスを動かす「ウソの技法」
向谷 匡史 (著)
情報センター出版局 (2008/8/30)
P70

ビジネスを動かす「ウソの技法」

ビジネスを動かす「ウソの技法」

  • 作者: 向谷 匡史
  • 出版社/メーカー: 情報センター出版局
  • 発売日: 2008/08/30
  • メディア: 単行本


ゼンメルワイスは、「医者が手を塩素水で消毒するだけで、死亡者を激減させられる」ことを発見した。そしてその単純な「医者が手を洗う」方法を取り入れたところ、死亡率を一八%から一%に下げることに成功した。これはまさに画期的な発見であり、イノベーションである。
 しかし、その効果を証明する膨大なデータを一〇年にわたって集めたにもかかわらず、その方法は広まらなかった。その理由は大きく二つあると思われる。
一つの理由は、「これまで産褥熱で患者を死に追いやっていた原因は自分たちの手だった」という事実を医師たちが受け入れたくなかったことにある。
~中略~
 もう一つの理由は、ゼンメルワイスの啓蒙方法にあった。明らかなデータがあるにもかかわらず医師たちがその方法を受け入れようとしなかったので、ゼンメルワイスの説明は攻撃的で脅しのようになり、ついには医師を殺人者呼ばわりしはじめたのである。
~中略~
コロンブスの卵のように、後から聞けば「当たり前」のように思われるような、「コストや手間のかからないソリューション」が本質的である場合が多い。
~中略~
 どれだけ論理的に正しくて効果が期待できるソリューションであっても、フィールドで取り入れられなければなんの効果も出すことができない、

ビジネスマンのための「行動観察」入門
松波 晴人 (著)
講談社 (2011/10/18)
P267

ビジネスマンのための「行動観察」入門 (講談社現代新書)

ビジネスマンのための「行動観察」入門 (講談社現代新書)

  • 作者: 松波 晴人
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2011/10/18
  • メディア: 新書

 事業に成功するためには、「これが正しいんだ」という自分の信念がなければならない。
その信念が、「企業規模を大きくすること」でもよければ、利益をあげること」でもよい。 「新技術の開発」でも、「自分が有名になること」でもよい。もちろん「息子に継がせること」や「自分の好みを満たすこと」であってもよい。

 信念とは、もともと主観的なものである。ここで大事なのは、自分の正義は自分だけの正義、他人や世間が同意するとは限らないことを、承知しておくことである。
「「次」はこうなる」

堺屋太一の見方 時代の先行き、社会の仕組み、人間の動きを語る
堺屋 太一 (著)
PHP研究所 (2004/12/7)
P99

堺屋太一の見方 時代の先行き、社会の仕組み、人間の動きを語る

堺屋太一の見方 時代の先行き、社会の仕組み、人間の動きを語る

  • 作者: 堺屋 太一
  • 出版社/メーカー: PHP研究所
  • 発売日: 2004/12/07
  • メディア: 単行本

人はその好むところもって、真実とするなり。
[デモステネス] 古代ギリシャの弁論家 | B.C.384-322

人生はワンチャンス! ―「仕事」も「遊び」も楽しくなる65の方法
水野敬也 (著), 長沼直樹 (著)
文響社 (2012/12/11)
50


人生はワンチャンス!   ―「仕事」も「遊び」も楽しくなる65の方法

人生はワンチャンス!   ―「仕事」も「遊び」も楽しくなる65の方法

  • 出版社/メーカー: 文響社
  • 発売日: 2012/12/11
  • メディア: 単行本


P62
 人を苦しめる「判断」には、「自分はエライ」「正しい」「優れている(はずだ)」と肯定しすぎる思いもあります。仏教では、こうした心理を”慢(まん)”と呼びます。
 ”慢”は、いっときは自分を肯定できる気がして心地よいのですが、高慢、傲慢、プライド、優越感といった思いは、結局、不満や、うぬぼれゆえの失敗を招いて、損をします。

P63
 人はみな、「自分が考えることは正しい」と、心のどこかで思っています。  しかし、その判断が正しいのか、間違っているのかは、一体どのように「判断」するのでしょうか。
 ブッダは、このように語っています。
 私が言葉を語るのは、相手に利益となる場合である。  真実であり、相手に利益をもたらす言葉であれば、ときに相手が好まない言葉であっても、語るべきときに語る。それは相手への憐れみ(慈悲)ゆえである。
                      ―アバヤ王子との対話 マッジマ・ニカーヤ

P67
 正しく理解する者は、「自分が正しい」と思うこと(慢)がない。
 だから、苦しみを生み出す「執着の巣窟」(わだかまり)に引き込まれることはない。
                     ―スッタニパータ<あるバラモンとの対話> の節

P72
 もう一つ大切なのは、「素直になる」ことです。自分が一番ラクになれるからです。
 自分はエライ、正しいという”慢”の心に固まってしまうと、周囲との間に「壁」ができてしまいます。人とわかり合えなくなります。また、何か言われると自分を否定された気がして、逆上したり、落ち込んだりと、苦悩を溜めていきます。
 こうした苦しみは、周囲が問題なのではありません。「自分は正しい」という思い込みが、原因なのです。
~中略~
 率直に言って、「自分は正しい」という思いなんて、あまりに小さな自己満足にすぎません。その思いが、誰を幸せにしているというのでしょうか。

反応しない練習 あらゆる悩みが消えていくブッダの超・合理的な「考え方」
草薙龍瞬 (著)
KADOKAWA/中経出版 (2015/7/31)

反応しない練習 あらゆる悩みが消えていくブッダの超・合理的な「考え方」

反応しない練習 あらゆる悩みが消えていくブッダの超・合理的な「考え方」

  • 作者: 草薙龍瞬
  • 出版社/メーカー: KADOKAWA
  • 発売日: 2015/07/29
  • メディア: Kindle版

2024年12月17日火曜日

いい年なんか気にしない

 中高年からは、「いい年をして」と周りから言われるのを過常に気にしたり、自分に言いきかせたりしないで、面白そうと思ったことはやってみることだ。
ましてお金と時間があれば、今まで知らなかった強い刺激を得ることは比較的簡単だ。

人は「感情」から老化する―前頭葉の若さを保つ習慣術
和田 秀樹 (著)
祥伝社 (2006/10)
P73

 人は「感情」から老化する―前頭葉の若さを保つ習慣術 (祥伝社新書)

人は「感情」から老化する―前頭葉の若さを保つ習慣術 (祥伝社新書)

  • 作者: 和田 秀樹
  • 出版社/メーカー: 祥伝社
  • 発売日: 2006/10/01
  • メディア: 新書


 年をとれば額にしわが寄るのは仕方ないが、心にまでしわを作ってはならない。
ジェームス・ガーフィールド

カーネギー名言集 ハンディーカーネギー・ベスト (3)
ドロシー カーネギー (著)
創元社 (1986/11)
P39

 人生五十年―いまの若い人は、あまり聞いたことのない言葉かも知れません。どういうことかと言えば、私たちは長いあいだ、人生の寿命はほぼ五十年、そこまでは、どうにか生きていたい、でも、それ以後は余生と考えてきたのです。
 戦前は五十歳を越えたらもう年寄りで、七十を越えたら、古来稀(こらいまれ)なり(古稀(こき))ということで、長寿の人は非常に例外的で、尊ばれていたのです。
 しかし、戦後七十年たった、二十一世紀の現在ではどうでしょうか。
 五十歳は働き盛り、七十歳過ぎても現役という方が、どんどん増えています。
 いま盛んに雑誌やテレビで大騒ぎをする不倫の問題も、二十代、三十代というよりも、五十代、六十代の女性たちが、心身ともに青春時代のような情熱で、ラブ・アフェアをくり返しているという報告もあります。

百歳人生を生きるヒント
五木 寛之 (著)
日本経済新聞出版社 (2017/12/21)
P47

人生百年を生ききる (PHP文庫)

人生百年を生ききる (PHP文庫)

  • 作者: 松原 泰道
  • 出版社/メーカー: PHP研究所
  • 発売日: 2021/07/06
  • メディア: Kindle版

年をとったら

P216
 老いて子に養われるようになると、若いときから一緒にいるものに対しては怒りやすくなる。

欲深く、子を責め、人をとがめて、節度を失う。心を乱すものも多い。そうならないように、自ら我慢も必要である。
 若いときに慎み深く節度を守っていたとしても、老人になると欲深くなり怒りやうらみごとが多くなる人が多い。
後略~

P217
 老いると気力が少なくなる。気力をへらさないようにしなければいけない。
まず、第一に怒らないこと。憂い、悲しみ、泣き、嘆かないこと。
葬儀には関わらないこと。使者の家族を訪ねないこと。
また、もの思いにふけらないこと。
後略~

P225
 年をとったら、心の楽しみのほかに気をつかってはいけない。時の流れにしたがって楽しむといい。
悩み事がなく、四季の移り変わりや、美しい風景、自然の美しさなどを、楽しむのがいい。

養生訓 現代文
貝原 益軒 (著) , 森下 雅之 (翻訳)
原書房 (2002/05)

養生訓 現代文

養生訓 現代文

  • 出版社/メーカー: 原書房
  • 発売日: 2021/02/17
  • メディア: 単行本

 

 (住人注;思春期と)同様に老年期には老年期に特有なP(住人注;親的な自我状態)、A(住人注;大人の自我状態)、C(住人注;幼児的な自我状態)のアンバランスが考えられる。この一つのタイプとして、第6図のように、巨大なPと老化したAとのあいだに葛藤を起こすタイプがある。すなわち、時代が変化しても、子ども時代から身についた戦前の義理・人情を中心とした価値観は、簡単に変わるものではない。
しかし、現実的には、脳の動脈硬化などによって、現実認知のAの力が衰退してくる。また、体力やバイタリティ(C)も低下してくるため、Pが古めかしい価値観や理想をいかに主張しても、実行に移せない状態になる。このようなP、A、C間のあつれきとアンバランスは、多かれ少なかれ、老人の自我常態の特色である。

セルフコントロール―交流分析の実際
池見 酉次郎 (著), 杉田 峰康 (著)
創元社; 新版 (1998/11)
P50

セルフコントロール:交流分析の実際

セルフコントロール:交流分析の実際

  • 出版社/メーカー: 創元社
  • 発売日: 1998/11/01
  • メディア: 単行本

「頭髪が白くなったからとて<長老>なのではない。ただ年をとっただけならば〔空しく老いぼれた人〕と言われる」(「ダンマパダ」―法句経― 二六〇)

ボクは坊さん。
白川密成 (著)
ミシマ社 (2010/1/28)
P134

ボクは坊さん。

ボクは坊さん。

  • 作者: 白川密成
  • 出版社/メーカー: ミシマ社
  • 発売日: 2020/09/10
  • メディア: Kindle版

 

 

なぜ短命だったかというと、動物性蛋白質や脂肪分の不足が主な原因だったと考えられている。
~中略~
 たしかに欧米では「肉の摂りすぎが短命の要因」として、長寿の日本を見習おうという動きもある。
だが、アメリカ人の場合、一日に約一四〇グラムもの脂肪を摂っているのである。
それに比べて日本人は約六〇グラムである。肉に関しては、アメリカが一日に約三〇〇グラム、日本は七八グラムである。
~中略~
 つまり肉は摂りすぎるのはよくないが、摂らなさすぎも問題がある。
「菜食主義がいい」「年よりは魚だ」などと、決めつけて食生活が偏ってしまうのはかえってまずい、ということだ。

人は「感情」から老化する―前頭葉の若さを保つ習慣術
和田 秀樹 (著)
祥伝社 (2006/10)
P123
人は「感情」から老化する―前頭葉の若さを保つ習慣術 (祥伝社新書)

人は「感情」から老化する―前頭葉の若さを保つ習慣術 (祥伝社新書)

  • 作者: 和田 秀樹
  • 出版社/メーカー: 祥伝社
  • 発売日: 2006/10/01
  • メディア: 新書

 

P44
老人は人間の最大の人権の一つを失う。老人は対等なものからもはや批判されない。
(「格言と反省」から)

P48
人は子どもを大目に見るように、老人を大目に見る。
(「格言と反省」から)

ゲーテ格言集
ゲーテ (著), 高橋 健二 (翻訳)
新潮社; 改版 (1952/6/27)

ゲーテ格言集 (新潮文庫)

ゲーテ格言集 (新潮文庫)

  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 2021/02/17
  • メディア: 文庫

P62
 高齢になると、人の役に立っている実感が得られなくなる、ということがわかっています。1)
見る・聞く能力が落ちる上に体を動かす能力も十分でないため、周りのサポートを必要とするからです。
 特にそれまで主婦として支えてきた、仕事で家を支えてきた、という自負があるひとほど、今の状況に満足できません。
あなたも「仕事も家事もしなくていい」と言われたら最初は嬉しいかもしれませんが、何だか満たされない思いにならないでしょうか?満足できない高齢者は自分が否定されている気がして、「死ねばいいと思っているだろう」「早く死にたい」などと言ってしまいます。

P67
 特に注意が必要なのは、家族の死別で環境が変わった時です。高齢であるために、夫ないし妻に先立たれます。老夫婦が同時に亡くなることは事故でもない限りないので、家族がいても、ほぼ確実に独り身・1人暮らしの時期がやってきます。そして1年以内、特に6か月程度では残された高齢者は死亡率が40%上昇します。4)
 つまり死別後の1年間は、周りはそんなに忙しくてもこまめに連絡をとって様子を確認したほうがいいのです。配偶者との死別により、鬱状態になる人が多きことも覚えておいてください。
 残された側が男性だと要注意です。男性のほうがより危険であることがわかっており、鬱にならなくてもお酒におぼれてアルコール中毒になる確率も上がります。

老人の取扱説明書
平松 類 (著)
SBクリエイティブ (2017/9/6)

老人の取扱説明書 (SB新書)

老人の取扱説明書 (SB新書)

  • 作者: 平松 類
  • 出版社/メーカー: SBクリエイティブ
  • 発売日: 2017/09/05
  • メディア: Kindle版

P133
 ある茶人が言っていたことですが、歳をとったら、何か人前に身をさらす稽古事をするといいと。
 人前で芸をするなどして、人の視線にさらされると、いやでも身だしなみ、立ち居ふるまいに神経を使うようになる、ということなのでしょう。  その緊張感が心身によい影響を与えるのだと思います。

P158
 いまの時代、ひと昔前の日本の社会と違い、老人世代は尊敬されるどころか、若い世代からは嫌われる存在になってしまっています。
たとえば、加齢臭という言葉がテレビのCMで、平気で流れるということ自体、嫌老社会の一端をあらわしているのではないでしょうか。
 そんな社会の中で、嫌われる勇気をもつということは、孤立を恐れない自覚ではないでしょうか。自分自身の内なる声に、忠実に生きて行動し、若い世代の顔色を見たり、阿(おもね)ったりしないということです。
 同世代に対しては、これまでのような、慣れあい的な世間付きあいを遠慮する。自分がどうしても、出席したい、行きたいと望まないかぎり、冠婚葬祭から身を引く。

百歳人生を生きるヒント
五木 寛之 (著)
日本経済新聞出版社 (2017/12/21)

百歳人生を生きるヒント (日本経済新聞出版)

百歳人生を生きるヒント (日本経済新聞出版)

  • 作者: 五木寛之
  • 出版社/メーカー: 日経BP
  • 発売日: 2018/05/23
  • メディア: Kindle版

 一 人生は一日一日と費やされて行き、あますところ次第に少なくなって行く。それのみかつぎのことも考慮に入れなくてはいけない。
すなわちたとえある人の寿命が延びても、その人の知力が将来も変わりなく事物の理解に適し、神的および人間的な事柄に関する知識(1)を追求する観照に適するかどうか不明である。
なぜならば、もうろくし始めると、呼吸(2)、消化、表象、衝動、その他あらゆる類似の機能(3)は失われないが、自分自身をうまく用いうること、義務の一つ一つを明確に弁別すること(4)、現象を分析すること(5)、すでに人生を去るべきときではないかどうかを判断すること(6)、その他すべてこのようによく訓練された推理力を必要とする事柄を処理する能力は真先に消滅してしまう。
したがって我々は急がなくてはならない、それは単に時々刻々死に近づくからだけでなく、物事に対する洞察力や注意力が死ぬ前にすでに働かなくなってくるからである。

マルクス・アウレーリウス 自省録
神谷 美恵子 (著)
岩波書店 (2007/2/16)
P35

マルクス・アウレーリウス 自省録 (岩波文庫)

マルクス・アウレーリウス 自省録 (岩波文庫)

  • 作者: 神谷 美恵子
  • 出版社/メーカー: 岩波書店
  • 発売日: 2014/12/18
  • メディア: Kindle版

 

老化は免れない

 友人が七十歳を超えたころ、次から次へと歯が悪くなったので、かかりつけの歯医者さんに行き、
「一本治したと思ったら、また次の歯が悪くなった。治療の仕方が悪いんじゃないですか」
 と、旧知のよしみで言ったところ、
「だいたい、人間の体は、五十歳までは元気に動くようにできている。歯もそれに合わせて、五十年くらいしかもつようにできていない。それ以後、故障が出るのは、あたり前だ」
 と言われたそうです。
 肉体の衰えは、歳を重ねれば、万人にやってくるものです。
 日常の立ち居ふるまいすべてをひっくるめて、何でこんなに不自由になったんだろうと感じることは山のようにあります。
 親鸞のように、比叡山開闢(かいびゃく)以来の神童と言われた人物でさえ、八十歳を過ぎてから「字も忘れ候(そうろう)」というような嘆きをつぶやいています。
 あれだけ博学で記憶力抜群だった人物が、いろいろな固有名詞や字を忘れ、それを嘆いていたと思うと、親鸞のような超人にさえ、老化は免れなかったのだと、私たち凡人は少し安心します。
 私たちは退化していく肉体をまとって、この世界に生きていくことを、まず認めることからはじめなければなりません。

百歳人生を生きるヒント
五木 寛之 (著)
日本経済新聞出版社 (2017/12/21)
P105

百歳人生を生きるヒント (日本経済新聞出版)

百歳人生を生きるヒント (日本経済新聞出版)

  • 作者: 五木寛之
  • 出版社/メーカー: 日経BP
  • 発売日: 2018/05/23
  • メディア: Kindle版


乾燥肌

P121
 乾皮症とは、皮膚が乾燥してガサガサになったり、ウロコのようになったりして、ポロポロと剥がれてくる病気で、これも強いかゆみをともなう。特に高齢者に多い病気であり、ほかに軽症のアトピーとも関係するが、ここでは話を単純にするために炎症を伴わない乾燥肌、乾皮症に限って話をすすめよう。
 まずメカニズムについて。これは皮膚の乾燥が発端になる。原因は、「冬場コタツに入ったりストーブになたったりしたことで乾燥させてしまった」「石鹸の使いすぎで皮膚のバリアを落としすぎてしまった」「アカスリをして皮膚のバリアを自分で壊してしまった」などである。
 こうして皮膚のバリアが剥がれ落ちて乾燥が進むと、九一ページで述べたように、NGFが出て、本来は真皮と表皮の境界部になる知覚神経の末端が、表皮の中まで伸びてくる。皮膚のバリアが失われたことで、危険を察知し、外部に対して探知機を出すのだ。

P125
 冬場に乾燥する最大の理由は、「気温が低下することで血流が皮膚の表面に来なくなるから」なのである。
寒くなると体温を逃がさぬよう皮膚の血管が収縮するため、血流が減る。血液という水分が来ていないのだ。
 だから冬に乾燥するのは、湿度の問題だけではなく、気温による影響が大きいということだ。冬場は保湿を心がけてほしい。
 また年齢が上がれば、皮膚の保湿力は若い頃と比べて弱くなり、乾燥しやすくなる。石鹸も若い頃と同じように使っていては、当然乾燥するわけだ。

 

P127
ここで皮膚がデリケートな人におすすめの入浴法を紹介しておく。
 たとえば男性なら、毎朝か夜かシャワーを浴びるか湯船に浸かる。髪の毛は毎日洗うが、髪が短ければシャンプーはごく少量でいい。
洗顔料は頭についたシャンプーがそのまま流れ落ちていくだけでも十分だが、においのある汗の出る股間や腋が気になれば、少量の低刺戟の石鹸を泡立てて軽く洗う。もちろんタオルも何も使う必要はない。
髪が短ければリンスも不要だろう。また、入浴後に男性化粧水などつける必要もない。
 もちろん女性の場合は、そこまで簡単にはいかないかもしれない。
 しかし、シャンプーの回数や量を減らす、洗浄力の強いボディーソープをあまり使わないようにするなど、長期的に見て皮膚のバリアをできるだけ傷つけない洗い方をおすすめした。


なぜ皮膚はかゆくなるのか
菊池 新(著)
PHP研究所 (2014/10/16)

なぜ皮膚はかゆくなるのか (PHP新書)

なぜ皮膚はかゆくなるのか (PHP新書)

  • 作者: 菊池 新
  • 出版社/メーカー: PHP研究所
  • 発売日: 2014/10/16
  • メディア: 新書
京都 三千院

体を温めよう

 近年、日本人の平均体温が下がってきているという。この五〇年で、約一度低下したという説もあるほどだ。
 体温が下がると、生命活動を維持するために体内で働く酵素の活動が鈍くなるといわれ、また自律神経の働きも低調になるため、免疫力が低下してしまう。
カルフォルニア大学のダニエル・セスラー医師によれば、平均体温が一度下がると、免疫力は約三七%ダウンする。反対に一度上がると、免疫力は約六〇%も活性が増すそうだ。
 以前から、冷え性の女性は不定愁訴に悩まされがちだといわれていたが、冷えは精神の働きとも深い関連性があると考えられ得る。
実際、「体を温める」生活習慣を取り入れたところ、うつ症状が改善したという報告もある。
 このように、体温低下は心身の健康にマイナスなのだが、体温は加齢とともにだんだん低くなってしまう。加齢により、熱産生と体温調節機能が低下するために、それまでの体温を維持できにくくなるのだ。
~中略~
 男性の冷えはホテリや汗っかきなど、一見すると冷えの対極にあるように見えるのが特徴だ。だが、ホテリや汗っかきは体温調節がうまくいっていない証拠であり、体の芯は冷えていると考えられる。

精神科医が教える50歳からの人生を楽しむ老後術
保坂 隆 (著)
大和書房 (2011/6/10)
P186

精神科医が教える50歳からの人生を楽しむ老後術 (だいわ文庫)

精神科医が教える50歳からの人生を楽しむ老後術 (だいわ文庫)

  • 作者: 保坂 隆
  • 出版社/メーカー: 大和書房
  • 発売日: 2011/06/10
  • メディア: 文庫

 体温が下がれば免疫力が落ち、がんを含め、あらゆる病気にかかりやすくなります。
 冬場はもちろん、クーラーを使う夏も冷たいものばかり食べずに、温かいスープを意識的にとってください。ただし塩分過多にならないよう、しょっぱい味のものは避けましょう。
また、ショウガやトウガラシも体を温め血行をよくする成分を多く含んでいます。

医者が教える食事術 最強の教科書――20万人を診てわかった医学的に正しい食べ方68
牧田 善二 (著)
ダイヤモンド社 (2017/9/22)
P249

医者が教える食事術 最強の教科書――20万人を診てわかった医学的に正しい食べ方68

医者が教える食事術 最強の教科書――20万人を診てわかった医学的に正しい食べ方68

  • 作者: 牧田 善二
  • 出版社/メーカー: ダイヤモンド社
  • 発売日: 2017/09/22
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)

見えないものを信じる

P183
 この世の中は見えないものが真実、実在なんですよ。宇宙は見えないんです。

見えるものはほんのわずかしかない。
というのは見えるものというのは眼球が感じる波動しか見えない。ところが波動というのは無限にあるんです。

P185
シカはシカの見ている世界があるわけでしょう。それを悠々と行くわけですね。
シカはシカの世界で生きているんだから、全然別の世界を生きているわけです。
そういうことを知らなければいけないというんですよ。

人間は人間社会だけがすべてだと思っている。それが間違いのもとだと言っているんです。

 

~中略~
茶わんがありますね。これは単なる茶碗なんです。
これに悪い茶碗もいい茶碗もない。
ただの茶碗です。それが真実でしょう。
これがいいとか、悪いとかいうのはこちらが決めることです。
その原理がわかったら、この世の中から悩みがなくなる。

葉室 頼昭 (著)
「神道」のこころ
春秋社 (1997/10/15)

〈神道〉のこころ(旧版)

〈神道〉のこころ(旧版)

  • 作者: 葉室 頼昭
  • 出版社/メーカー: 春秋社
  • 発売日: 1997/10/15
  • メディア: 単行本

自分が認識している世界以外に、自分が認識できない多くの世界があることを知らねばなりません。
自分の認識したものこそ真実であり、自分の見方、考え方こそ正しいと考えてはいけないのです。
~中略~
私たちは「主観」(自分ひとりの考えや感じ方)によって客観世界(対象)を認識しているのであって、客観世界は主観の反映であるということになります。

角田 泰隆 (著)
禅のすすめ―道元のことば
日本放送出版協会 (2003/03)
P178

禅のすすめ―道元のことば (NHKライブラリー)

禅のすすめ―道元のことば (NHKライブラリー)

  • 作者: 角田 泰隆
  • 出版社/メーカー: 日本放送出版協会
  • 発売日: 2003/03
  • メディア: 単行本

「諸君の見られるように、人間の涙を科学的に分析すれば、多量の水分と少量の塩分とに分かれる。」 イギリスの科学者であり物理学者でもあったファラデーは、二本の試験管を示しながら学生たちに話しはじめた。
科学分析に、特にすぐれた業績を残した彼は、学生たちに、母親がわが子のために流した涙を分析して、見せていたのである。
 人間の涙―かなしくて流す涙。うれしくて流す涙。くやしくて流す涙。―人間はいろいろな場面で、さまざまな思いで、涙を流す。
しかし、それがどんな場面でも、どんな思いで流す涙であっても、人間の涙は、ただ、多量の水分と少量の塩分とに分析されるだけだという。

 彼は話を続ける。
 「しかし、母親の涙は、けっしてそれだけのものではない。その奥には、分析してもなお分析しきれない愛情というものがあることを、諸君は忘れてはならない。」
 わたしたちの住んでいる社会は、目に見えるものと、目に見えないものとによって成り立っている。そのうち、目に見えるものは、たいせつにされやすいが、目に見えないものは、つい忘れがちになるものである。
 ファラデーは、人間の涙の分析を通して、目には見えないが、たいへんたいせつにしなければならないものがあることを、学生たちに教えたかったのではないだろうか。

みち (仏教の学習)
浄土真宗本願寺派教学振興委員会 (著), 浄土真宗本願寺派学校連合会 (著)
本願寺出版社 (1973/03)
P2

 

 「日月星辰(せいしん)は 本より虚空に住すれども 雲霧蔽(へい)きし 烟塵(えんじん)映覆(えいふく)す 愚者はこれを視て日月なしと謂(おも)へり 本有の三身も またかくの如し」
(弘法大師 空海 「吽字義(うんじぎ)」
【現代語訳 太陽や月や星はもともと虚空にあるけれども、雲や霧によっておおいかくされて、煙やちりによって覆われることがある。 愚かな者はこれをみて、太陽や月がなくなってしまったと思う。もともとそなわっている仏心もまたこれと同様なのである】

ボクは坊さん。
白川密成 (著)
ミシマ社 (2010/1/28)
P139

ボクは坊さん。

ボクは坊さん。

  • 作者: 白川密成
  • 出版社/メーカー: ミシマ社
  • 発売日: 2010/01/28
  • メディア: 単行本

天国にあこがれ、地獄をおそれるということが人間社会から消滅して以来、人間はひょっとすると偉大さというものをうしなったかもしれない。
すくなくとも幸福というこのえたいの知れぬものがかつて実感として実在をしたのに、いまではその正体をつかむことさえ難渋するようになっている。また人間が個々に自分を統御したり、他との関係を調節したりする方法もむずかしくなった。

街道をゆく (4)
司馬 遼太郎(著)
朝日新聞社 (1978/11)
P111

街道をゆく (4) (朝日文芸文庫)

街道をゆく (4) (朝日文芸文庫)

  • 作者: 司馬 遼太郎
  • 出版社/メーカー: 朝日新聞社
  • 発売日: 1978/11/01
  • メディア: 文庫

 

 どこかで宗教学者が書いていたことですが、私たちは、見える世界と見えない世界の両方に、足を置いて生きている存在だというのです。
どんなにこの世のことしか信じないと考える人でも、心のどこかで、見えない世界、神仏の世界につながっていると。
 仏教の僧侶やキリスト教の司祭など聖職者は、軸足を、六割見えない世界に置いていきていくのがよく、ふつうの、市井の人びとは、四割を見えない世界に置き、六割を見える世界に置いて生きるのが理想だと言っています。
 これは、人の人生についても言えるのではないでしょうか。
 生まれたばかりの赤ん坊は、見えない世界の感覚で、この世を生きています。それが歳を経るごとに、見える世界の部分が多くなり、もう見えない世界の記憶などまったく忘れてしまう。
 それが、人生の後半になると、いままで影を潜めていた見えない世界とのかかわりがふたたびはじまり、自分の中の、見える世界と、見えない世界との割合が逆転してくる。そして、軸足が、徐々に見えない世界に移ってくるのではないでしょうか。

百歳人生を生きるヒント
五木 寛之 (著)
日本経済新聞出版社 (2017/12/21)
P207

百歳人生を生きるヒント (日本経済新聞出版)

百歳人生を生きるヒント (日本経済新聞出版)

  • 作者: 五木寛之
  • 出版社/メーカー: 日経BP
  • 発売日: 2018/05/23
  • メディア: Kindle版

 

P36
手持ちの計測機器では計量されないものは「存在しない」と断言する人たちは、その語の本当の意味での科学者ではありません。「何かがあるよな気がする」という直感を手がかりに、かすかな「ざわめき」を聞き取ろうとする人たちこそが自然科学の領域におけるフロントランナーたちなんです。
ですから、自然科学の先端で仕事をしている人たちは、因習的な意味では「いまだ存在しないもの」に対して心身のセンサーを最高度まであげて何かを感じ取ろうとしている。[存在しないもの」からのシグナルを聞き取ろうとすることは、私たちの世界経験にとって少しも例外的なことではありません。むしろ、私たちの世界を構築しているものは「存在しないもの」なんです。
~中略~
 思考するというのも同じことです。思考するというのは「自分が語ること」を聞くということですから、「存在しないもの」とのかかわりなしには、僕たちは思考することさえできない。
「もう存在しないもの」を現在のうちに持ちこたえ、「まだ存在しないもの」を先取りする。そのふたつの仕事を同時に遂行することなしには、僕たちは対話することも思考することもできない。「存在しないもの」とのかかわりなしに、我々は人間であることができないのです。
ですから、人間的な学の始点が「存在しないもの」とのかかわりについての技芸であるのは論理的には自明のことなのです。

P44
 文学研究者は「存在しないもの」を専一的に「存在しないもの」として扱っている。 その点では他の人文科学や社会科学よりはだいぶ「正気」の程度が高い。
 どんなふうに人間は欲望を覚えるか、どうやって絶望するのか、どうやってそこから立ち直るのか、どうやって愛し合うのか・・・・・そういうことを研究するのが文学研究です。
だから、文学研究が学問の基本であり、それがすべての学術の真ん中に存在していなければいけない。僕はそう思っています。

最終講義 生き延びるための七講
内田 樹 (著)
文藝春秋 (2015/6/10)

最終講義 生き延びるための七講 (文春文庫 う 19-19)

最終講義 生き延びるための七講 (文春文庫 う 19-19)

  • 作者: 内田 樹
  • 出版社/メーカー: 文藝春秋
  • 発売日: 2015/06/10
  • メディア: 文庫

 

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