2025年9月10日水曜日

毒親

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 毒親―育児放棄、肉体的のみならず精神的な虐待や、過度の干渉によって子供を支配しようとするなど、まさに子供の人生にとって毒になる親のことです。近年、家族関係についてこれを「病」と名づけて分析を試みる書籍が立て続けに出版され、非常に話題になりました。

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 よく耳にするのは、母親は結婚しようとする娘に対し、娘の結婚相手の選択をコントロールしようとすることがあるという問題です。自分と同じような失敗を子どもにさせたくないのか、自分が成功したから子どもにもそうなってほしいのか、はたまた自分が失敗したから子どもに成功されると面白くないという気持なのか・・・・・。
 いずれにせよ、子供が幸せになるのをどこか手放しで喜ぶことができず、モヤッとした気持を抱えたままその感情にふたをし、自分のネガティブ感情をうまく制御しきれていない親というのは、存外少なくないのではないかと思います。

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 子どもを支配しようとしたり、レールを敷こうとしたりするとき、母親側はそれを子どもに対する愛情だと信じているようです。もちろんそのとおりでしょう。でも、その濃厚な愛情の裏側に、別の感情が隠れていないでしょうか?
 子どもに失敗してほしくない、逸脱した行動をとって後悔してほしくないという気持ちから、子どもについ干渉してしまうのだと親側はこぞって口にします。しかし、子どもの自発的な行動に対して、コントロールするかのように注文をつけたり、あれこれと口出ししてしまったりする自分自身の行動を、振り返って苦々しく感じてしまう親がいるのもまた事実なのです。
 それが愛情なんだと自分に言い聞かせなければならないほど、本当は後ろめたい気持ちが心の内に潜んでいるのではないか。
 親である多くの人は「私は「誰かの親」である前に、「ひとりの人間」である」―このことを確認したい、誰かに認めてほしい、とやはりどこかで願っているものだろうと感じます。
「毒親」という言葉が流行した背景には、多少問題があったからといって、産み育ててくれた親のことを悪(あ)しきざまに言うなんてとんでもない、親不孝だ、もっと感謝すべきだ、という社会通念があったことを考慮しなくてはなりません。
 その中で黙殺されてきた、自分に対してひどい行為をした親への怒り、ひどい扱いをされた悲しみ、ひどい言葉で嬲(なぶ)られた悔しさを、認めてほしいと子ども側の本音を一撃で表現し得たのが「毒親」という言葉ではなかったかと思います。

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 無論、親も完璧な人間ではありません。疲れもするでしょうし、ミスも犯すでしょう。
家庭にあってすら常に神経を研ぎ澄ませていてほしいというのは酷な要求です。大人であっても、自分自身を制御することすら難しい場合は少なくないでしょう。
 ただし、だからといって他人(「毒親」の場合は子ども) に危害を加えていいということにはなりません。しかしこのことに冷静に思い至ることができる人はそう多くはないのです。これが、「毒親」の問題が根深い理由です。

空気を読む脳
中野 信子 (著)
講談社 (2020/2/20)

空気を読む脳 (講談社+α新書)

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