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転移は悪性腫瘍にだけ認められる現象です。良性腫瘍は転移しませんから、逆に、転移巣があれば悪性腫瘍である、ということになります。その転移には三つの経路があります。一つは播種(はしゅ)です。
悪性腫瘍の細胞が、肺のはいっている胸腔、消化管や肝臓などのはいっている腹腔などへと漏れ出して、字のごとく、種が播かれるように広がることです。こうなると、胸水や複水のたまることがあります。
あとふたつは、リンパ管を通じたリンパ行性転移と、血管を通じた血行性転移です。
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血行性転移というのは、腫瘍細胞が血管の中にはいって、違う臓器に転移巣を形成することです。
リンパ行性転移が腫瘍に近いところから順々に進むのに対して、血行性転移では、いきなり離れた場所にできることがあります。また、がんよりも肉腫が血行性転移をしやすい、とか、腫瘍細胞は動脈より静脈に入りやすい、とかいう特徴もあります。
こわいもの知らずの病理学講義
仲野徹 (著)
晶文社 (2017/9/19)

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