そもそも、悪は善より感じが深刻です。善というものは生命の発展に従うものですから、従順な感じです。刺激がない。素直です。
悪というものは生命の本流に抗するもの、逆行するもですから、どうしても感じが強く、身にこたえます。 薬でも本当の良薬は生命を助長して副作用がない。効果も遅い。病の局所攻撃をする速効薬というものは、刺激が強く、副作用もひどい。まして毒薬ではたまりません。
およそ、人々は善に対してかあまり感じません。悪に対して非常に強く感じます。人間も、概して悪人は強い。善人は弱い。
だから世の善人と悪人とを比べてごらんなさい。善人はたいてい引き込み思案、消極的で、傍観的であり、団結しない。
自然の草木と同じように自ら生きる。他に俟(ま)たないものです。
安岡正篤
運命を開く―人間学講話
プレジデント社 (1986/11)
P214

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