P55
ひとつには脳は、「単体では存在し得ないもの」であるということ。体があって初めて脳が存在するのです。
脳が頭蓋骨という箱の中に入っていて、外部とは接点を持っていません。環境を感知したり、環境に働きかけたりするのは、すべて体です。
脳は、すべて乗り物である体を通じて初めて、外部と接することができます。
つまり、脳にとっては「体」こそが環境であって、それ以上でも以下でもありません。
P155
過去の人物を見返してみても、レオナルド・ダ・ヴィンチやニュートンなど類まれな才能を発揮した人たちがいる。そう、特別に与えられた才能は確かに存在する。
しかし、そうした偉人と自分を比較して、自分の脳の性能が劣っているとは考えてはいけない。一億人に一人程度の確率という、まず起こりえないようなことが、自分の脳に実際に起こらなかったからといって気を落とすのは労力の無駄である。それ以前に、こうした天才たちでさえ尋常ならぬ努力を重ねていることを忘れてはならないだろう。
P157
「脳の神経細胞は1000億個あると聞いたが、10%しか使われていないということは、残りの900億個は何をやっているのですか」と質問する人がいます。
これには明確に答えられます。神経細胞が1000億個あったとしたら、1000億個、ほぼすべて使っています。基本的には脳は無駄なく使っています。あればあった分だけ、一応使っています。残りの90%の神経細胞が休んでしまっているというわけでは決してありません。
~中略~
10%しかない脳であっても、100%の脳であっても、乗り物がたまたま人体だったから人間の脳になったと捉えるのがより真実に近いように思います。
だから、残りの90%の脳が眠っているという言い方はちょっとニュアンスが違うのです。逆に身体能力が今の人間よりも10倍優れているような優秀な体に、今の私たちの脳が入ったとしたら、たぶん、十分にコントロールできると思います。
脳はなにかと言い訳する―人は幸せになるようにできていた!?
池谷 裕二 (著)
祥伝社 (2006/09)
脳はなにかと言い訳する―人は幸せになるようにできていた!? (新潮文庫)
- 作者: 裕二, 池谷
- 出版社/メーカー: 新潮社
- 発売日: 2010/05/28
- メディア: 文庫
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