鼻を高くする隆鼻術は西洋のものだが、目を大きくする目の整形手術は、日本で発達した。
江戸美人の眼は横幅を要求されたが、ぱっちり縦に開いている必要はなかった。ところが、西洋の美人写真が入り、この国でも目の面積が大きいのが美人ということになった。 ここで日本に天才医師があらわれる。丸ビル眼科を経営する医学博士・内田孝蔵(こうぞう)である。内田は高遠(たかとお)藩(長野県)の藩校絵画教師の家計に生まれ、美術的感性をもっていた。
この人がドイツに留学し、当時、世界最高の外科学にふれた。そして、この男が関東大震災に遭う。顔面やけどの患者の皮膚の引きつりをメスで治療するうちに手技が向上。目頭をWやZ字状に切開して、目を大きくする美容整形法を確立した。
~中略~
昭和初年には、目の整形手術も現代とさして変わらない値段でできたということだろう。東アジアでは、まず日本がドイツからの技術を入れて目の整形手術を発展させ、それが韓国・中国へと広がって、歴史上かつてない整形身体加工の時代をもたらしている。
日本史の内幕 - 戦国女性の素顔から幕末・近代の謎まで
磯田 道史 (著)
中央公論新社 (2017/10/18)
P161
日本史の内幕 - 戦国女性の素顔から幕末・近代の謎まで (中公新書)
- 作者: 磯田 道史
- 出版社/メーカー: 中央公論新社
- 発売日: 2017/10/18
- メディア: 新書
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