2026年4月6日月曜日

社会的発達の四段階

P757
  親子関係や周囲の人たちとの関係の中で、赤ちゃんがどんなふうに知性を発達させていくのかを、こんどはみていくことのしよう。ここでいう知性とは、道具を操る知性ではなくて、社会的な知性、対人関係にかかわるような知性のことだ。
  私は社会的知性の発達に四段階あると考えている
~中略~  

 ①生まれながらにして、親子のあいだでやりとりするようにできている。
 ②一歳半頃になると同じ行動をするようになり、行動が同期する。
 ③行動が同期するなかで、逸脱した行動、自分のしたことのない行動があると、だいたい三歳ぐらいから真似る。(略)
 ④摸倣を基盤として、相手の心を理解できるようになる。そこではじめて、「手を差し伸べる」という利他的な行動が現れる。あるいは相手の出方がわかるので、「あざむく」というような行動も出来るようになる。

P72
 要はこの摸倣の段階で、こどもというのは、親を含めた他者の行為をなんとかコピーしようとする。
自分がやっていない新しいことを誰かがしたのを見て、なんとか同じことをしようとする。
その結果として、今までにはない行動のレパートリーが取り込まれる。それが摸倣の効能だ。

P76
 ボッソウのチンパンジーをずっと観察しているうちに、思いがけない面白い発見があった。
 ある日、野外実験場にお母さんチンパンジーがやって来た。けれども、アブラヤシの種を割る石がない。適当な石はみんな、他のチンパンジが使っている。
しょうがないから、そのお母さんは、石で種割りをしている九歳の息子の毛づくろいを始めた。
 しばらくすると、お母さんは毛づくろいをやめて四足ですくっとたった。これは「毛づくろいのお返しをしてください」という意味だ。
そこで息子は、種割りの石を置いて、お母さんの毛づくろいを始めた。
そうしたら、なんと、そのすきにお母さんは息子の石を取っちゃった。だました、としか見えない。

 このエピソードは、「あざむき」とおいうものが、人間以外の動物でも確かにあるということのいちばん強い、すごく明確な証拠だと思う。 

想像するちから――チンパンジーが教えてくれた人間の心
松沢 哲郎 (著)
岩波書店 (2011/2/26)

想像するちから――チンパンジーが教えてくれた人間の心

想像するちから――チンパンジーが教えてくれた人間の心

  • 作者: 松沢 哲郎
  • 出版社/メーカー: 岩波書店
  • 発売日: 2011/02/26
  • メディア: 単行本

 

北海道 旭山動物園

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