私たちのからだに、何か異常な状態が発生したり、あるいは発生する可能性が生じた場合、その状態は、すべて痛みを訴える原因となり得る。
この異常な状態というのは、からだの中の、いかなる組織や器官に発生しようとも、痛みとして発現する可能性がある。このような痛みは、身体に異常が発生したための痛みという意味で「身体性疼痛」ともいわれている。 具体的には、外傷、炎症、血流障害、退行変性、腫瘍、代謝障害、などさまざまな原因によって痛みの発言することは、よく知られている。
したがって、このような状況下では、なんらかの痛みを訴えることは多い。しかし、このような異常状態がからだの中に発生したからといって、必ずしもすべての人が痛みを訴えるとは限らない。
訴える痛みの原因が、その人のからだの異常としては存在しなくとも、痛みは訴えられる。例えば、「体育の時間になると、足が痛くなる」など、体育に対する恐怖感、劣等感などが痛みの原因となっているものである。
この場合、足が痛いからといって足の治療をしたり、鎮痛薬を与えることは全く意味がないことであり、体育とのかかわり方にメスを入れない限り、すなわち、痛みの心因を除去しない限り痛みは治癒しない。このような痛みを「心因性疼痛」とよんでいる。
痛みとはなにか―人間性とのかかわりを探る
柳田 尚 (著)
講談社 (1988/09)
P38
痛みとはなにか―人間性とのかかわりを探る (ブルーバックス)
- 作者: 柳田 尚
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 2022/05/10
- メディア: 新書
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