2025年1月8日水曜日

イヌ

イヌがヒトを咬んだりすれば飼い主が責任を問われる。
だから紐でつなぐ。イヌは外からの危険を知らせたり追い払ったりする存在だったが、おかげでなんのためにヒトがイヌを家畜化したのか、わからなくなった。
だから中山間地域では鳥獣害が問題になる。イヌがいないんだから、当然であろう。クマもイノシシもサルも、あるいはタヌキもアナグマも、畑に喜んで出てくる。作物のほうが野生のものより栄養価が高く、美味に決まっている。そこにヒトと動物の違いはない。
 イノシシが来ないように、電気柵を設ける。シカはそれを跳び越すので、二メートルを超える金網を張る。それでもサルが上るので、漁網の古いのを横全体に張る。子ザルが網に引っかかって、動けなくなるらしい。あとは上空から侵入してくるカラスだけである。そこも網を張るしかないであろう。
ヒトがなぜイヌを飼うようになったのか、現代日本社会、たとえば鳥獣害を見ていると、しみじみわかる。そこでイヌを放すと、保健所が捕獲に来ることになる。ご苦労様というしかない。

遺言。
養老 孟司 (著)
新潮社 (2017/11/16)
P185

遺言。(新潮新書) 「壁」シリーズ

遺言。(新潮新書) 「壁」シリーズ

  • 作者: 養老孟司
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 2017/11/24
  • メディア: Kindle版

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