こうした例を(住人注;腎移植の拒絶反応)見ると、免疫がたんに微生物から体を守る生体防御のための働きではなくて、基本的には「自己」と「自己でないもの(非自己)を識別して、「非自己」を排除して「自己」の全体性を守るという機構であることこがわかる。
免疫・「自己」と「非自己」の科学
多田 富雄 (著)
日本放送出版協会 (2001/03)
P15
P3
一度かかった病気には、次はかからない。二度目の「疫」病からは「免」れる。「免疫」という言葉には、そんな意味が込められている。
そうした免疫の働きを担う主役の一つを人類が突きとめたのは、いまから百年以上も前のことだった。日本の北里柴三郎が、破傷風菌の毒素を中和する抗毒素―現代の私たちが「抗体」と呼ぶ免疫分子―を、留学先のドイツで発見したのです。
P306
免疫とはかつて、外部からやってくる病原体を攻撃し排除する防衛システムと考えられた。その防衛力を削ぎ落とすブレーキの営みは、かつてなら免疫の対極に位置するものと捉えられた。
しかし、その認識のしかたはどうやら間違っていたらしい
。免疫は、病原体やがんなどの敵と向き合い対峙する能力の内に、攻撃を ほどほどに収めるしくみを重要な要素として含んでいたのだ。
免疫の攻撃力が強ければ、力をもてあました攻撃系の免疫細胞は身内の臓器や組織を攻撃し、深刻な自己免疫疾患を起こす。逆に攻撃力が弱くなれば、人は感染症やがんにかかりやすくなる。
私たちはこのように、免疫の両輪といえるアクセル(攻撃)とブレーキ(抑制)のバランス中で、ある時は健康に生き、ある時は病気になったり死んだりしているのだ。
現代免疫物語beyond 免疫が挑むがんと難病
岸本 忠三(著), 中嶋 彰
(著)
講談社 (2016/1/21)
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現代免疫物語beyond 免疫が挑むがんと難病 (ブルーバックス)
- 作者: 岸本 忠三
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 2016/01/21
- メディア: 新書
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