将軍足利義満の幼いときからの参謀・細川頼之は、その人望と知略によって、縦横に腕をふるってきた。そうして義満を立派なリーダーに育てあげた。
が、やがて長じた義満にひどく疎まれるようになる。
独裁権力を築こうという義満は、深謀遠慮の策略で、諸将をたきつけて反頼之派を作るのに成功する。野心満々の長は、力量のある保護者がだんだん邪魔になる。
よくある話である。
かくて康歴元年(1379)閏四月十四日、細川頼之は讃岐へ追放された。
都をあとにするときの、頼之の作った漢詩がいい。
「人生五十、功なきを愧ず 花木、春過ぎて夏すでになかばなり 満室の蒼蠅掃えども去り難し 起ちて禅搨(ぜんとう 住人注;座禅をする台)を尋ねて清風に臥せん」
この国のことば
半藤 一利 (著)
平凡社 (2002/04)
P104
一六 子曰わく、我に数年を加え、五十にして以て学ぶ。易( また )大過なかるべし
~中略~
先生がいわれた。
「 天が私に数年の歳をかしてくれ、五十歳までまだ学問をつづけるなら、まあたいした過ちがなくなるだろうよ 」
述而篇
論語
孔子 (著), 貝塚 茂樹
中央公論新社 (1973/07)
P193
二三 子曰わく、後生( こうせい )畏( おそ )るべし。焉( いずく )んぞ来者の今に如かざるを知らんや。
四十五十にして聞こゆることなきは、これ亦( また )畏るるに足らざるのみなり。
~中略~
先生がいわれた。
「若い人は恐るべきだ。これから出てくる人が現在の自分たちほどになれないと、だれがいえようか。四十歳、五十歳になるまでに、しっかり勉強するようにさとしたのである。 」
子罕編
論語
孔子 (著), 貝塚 茂樹
中央公論新社 (1973/07)
P253
撫塵(ぶじん)は昨日なれども、不惑催す。
遍照発揮性霊集 巻第三
赤ちゃんだったころが昨日のことのように思えるのに、 もう四〇になってしまった。
空海 人生の言葉
川辺 秀美 (著)
ディスカヴァー・トゥエンティワン (2010/12/11)
生と死について一八七
浮世の月見過ごしにけり末二年
<この世の月を余分に見てしまった。寿命を過ぎて二年間も>―「浮世の月」には<この世の月日>という意味が託されている。<「人生五十年、それさえ自分には十分すぎるのに、さらに二年も長生きしてしまった>(前書)といういさぎよい辞世の句である。
たった二年を「二年間も」ととらえている。
西鶴という鬼才―新書で入門
浅沼 璞 (著)
新潮社 (2008/02)
P177
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