2025年4月17日木曜日

老化します?がん化します?

 我々の体の普通の細胞にはテロメラーゼ活性がありません。ですから、染色体の端っこであるテロメアは、細胞が分裂するたびに短くなっていきます。そして、分裂回数が進んでテロメアがある程度以上短くなると、もう分裂できなくなります。
これがヘイフリック限界です。ですから、この「テロメア短縮」も、細胞レベルでの老化原因の一つなのです。
 しかし、幹細胞という一群の細胞にはテロメラーゼ活性があります。再生医療の発展とともに、マスコミなどでよく目にする用語になってきました。
これも広辞苑をひくと「生体を構成する細胞の生理的な増殖・分化などの過程において、自己増殖能と、分化する能力とをあわせ有する細胞。血球・粘膜上皮・表皮などで細胞が枯渇しないのは幹細胞の存在による。」とある。
~中略~
このように、一般的に幹細胞はテロメアーゼ活性を持っています。
 では、活性のない細胞でのテロメアーゼを活性化すれば、老化を防げてすばらしいことかというと、そんなに単純な話ではありません。それは、無限に増える細胞、がん細胞を考えてみるとわかります。
がん細胞とて、テロメア短縮が生じては、どんどん増えることはできません。
第3章で詳しくお話ししますが、がん細胞ではテロメアーゼの活性化が生じて、それが無限の増殖に必須です。すなわち、テロメアーゼの活性化は発がんのひとつの要因なのです。

こわいもの知らずの病理学講義
仲野徹 (著)
晶文社 (2017/9/19)
P092

こわいもの知らずの病理学講義

こわいもの知らずの病理学講義

  • 作者: 仲野徹
  • 出版社/メーカー: 晶文社
  • 発売日: 2017/09/19
  • メディア: 単行本

 私は、おおむねガンは老化現象だと考えている。健康な人でも、体内では毎日3000~4000個ほどのガンの芽が生まれている。ガン細胞は、免疫が正常に働いていればすぐに摘み取られ、大きくはならない。
しかし、免疫細胞の働きは、加齢によって衰える。年齢とともにガンになる人が増えるのは、当たり前なのだ。
~中略~
 ある意味、元気で長生きだから、ガンになるともいえる。
 私は、ガン告知も高血圧と同様、年齢という視点がすっぽり抜け落ちていると思う。
 40代、50代なら働き盛りで、社会的責任も大きい。仕事や残される家族のことなど、死を自覚して初めて考えることも多いだろう。
 しかし、80を過ぎて、告知の精神的ストレスと、手術や坑ガン剤などの辛い治療に耐える意味は、果たしてあるのだろうか?


高血圧はほっとくのが一番
松本 光正 (著)
講談社 (2014/4/22)
P129

高血圧はほっとくのが一番 (講談社+α新書)

高血圧はほっとくのが一番 (講談社+α新書)

  • 作者: 松本 光正
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2014/04/22
  • メディア: 新書

 

奈良県 興福寺

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