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1960年代前半までは,米国においても「がんの告知」は稀であり,患者への医療上の説明も十分には行われていなかった。しかし,1960年代の公民権運動に引き続いて,病院での患者の人権を重視する運動が高まり,医師の「パターナリズム」(家父長主義:独善的に物ごとを決め,押し付けること)が批判されるようになった。
裁判上の判断基準として,「ニュールンベルグの倫理綱領」を参考に確立したのがインフォームド・コンセントの法理(法の原理)である1)。
患者には「真実を知る権利」があり,医師には「説明する義務」がある。
患者の同意を得ることにより,違法性棄却が行われ,医師は患者に侵襲的な医療行為を行っても傷害罪に問われないことになる。しかし,同時に患者には「真実を知る権利」を放棄する権利,「知らないでいる権利」もある。
また,米国,カナダは移民社会であり,さまざまな文化的背景をもった患者/家族が存在する。1970年代は,悪い知らせを不適切に伝えられた精神的衝撃によって,苦悩する患者/家族も多く存在していた。
このような状況の中で,とくに「悪い知らせ」を患者に伝えるための実践的ガイドとして開発されたのが,SPIKESである。
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表4-1 SPIKES 各段階のまとめ (文献2より引用,改変)
Spikes:場の設定
①環境を整える
②タイミングを図る
③患者の話を聴く技術を働かせる
sPikes:患者の病状認識を知る
spIkes:患者がどの程度知りたいかを確認し,患者からの招待を受ける
spiKes:情報を共有する
①伝える内容(診断・治療計画・予後・援助)を決定する
②患者の病状認識,理解度に応じて始める
③情報の提供
・情報を少しずつ提示する
・医学用語を日常用語に翻訳しながら説明する
・図を描いたり,小冊子を利用する
・患者の理解度を何度も確認する
・患者の言葉に耳を傾ける
spikEs:患者の感情を探索し,対応する
患者の感情に気付き,思いやりを示すBr> spikeS:今後の計画を立て,面談を完了する
①今後の計画を立てる
②面談のまとめを行ない,質問がないか尋ねる
③今後の約束をし,面談を完了する
がん医療におけるコミュニケーション・スキル―悪い知らせをどう伝えるか
内富 庸介 藤森 麻衣子 (編集)
医学書院 (2007/10/1)
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