一説によると「インターナショナリゼーション」というのは、本来、ヨーロッパ列強による、第三国の共同の統治、管理を意味する言葉であった、という。
つまり、ヨーロッパ列強が非ヨーロッパ世界に進出し、第三国を統治し管理することを示す概念なのである。こうしたヨーロッパ諸国の管理と責任において非ヨーロッパ世界がヨーロッパの原則のもとに参加させられてきたということだ。しかし、これは、またヨーロッパからすれば「文明化」であり「近代化」と呼ばれるプロセスだったのである。
~中略~
そしてさらに歴史的経緯を続ければ、二十世紀に入って、十九世紀ヨーロッパのこうしたヨーロッパ中心的な文明観が否定され、むしろアメリカ的な文化相対主義、世界的なデモクラシーの思想がでてくるとき、「インターナショナル」の語は、今日そうであるような「世界的」あるいは「超国家的」という意味に変換されてゆく。
しかし、それにもかかわらず、「インターナショナル」の概念は、その出生の場であるヨーロッパ的文明観のニュアンスを完全に払拭したわけでもないし、またできるものでもない。
現代民主主義の病理―戦後日本をどう見るか
佐伯 啓思 (著)
日本放送出版協会 (1997/01)
P65

現代民主主義の病理 戦後日本をどう見るか (NHKブックス)
- 作者: 佐伯 啓思
- 出版社/メーカー: NHK出版
- 発売日: 1997/01/01
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
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