森 毅
テレビに出てきたあるおばあさんに僕は感動しました。「私は室戸台風も経験しました」と言うのです。
室戸台風は昭和九年で僕が小学校一年生のとき、それからその次には関西地方を襲った阪神大水害を経験し、もちろん戦争で空襲も体験した。そしてまた今度、しばらく間はあきますが、この震災(住人注;1995年の阪神大震災)に遭遇したというわけです。
そのおばあさんの、「そやけど、まぁ長生きしたらいろいろとありますわ。それでも生きていったらなんとかなりますわ」という言葉に、実に感銘を覚えました。
~中略~
僕は、年寄りの役割というのは、いろいろと変化を体験していること、そしていろいろ変化があってもなんとか生きているということそのものだと思うのです。
森 毅 (著), 養老 孟司 (著)
寄り道して考える
PHP研究所 (1996/11)
P94
玄侑 「黒船が来た」なんていう未曾有の体験をしたときは、やっぱりお年寄りに意見を訊くわけですよね。
若いと特定の条件に思い込みが強くなっちゃうわけですけど、お年寄りは複数の条件をインプットして、結晶を見るように並べて均等にみる能力があるんだと思うんですね。
結晶性知能と言っている方がいますけど、そういう複雑な状況を総合的に判断する能力は、お年寄りのほうが優れていますよね。
~中略~
養老 人間そのものが変化していくパターンは、年寄りが一番よくわかっているんですよ。
自分がそうだったし、周りをみてるから、今、あいつはあんなことを言ってるけどこう変わるよっていうことがわかるんですね。
玄侑 そういうわかる人がもっと大事にされてほしいですね。
養老 孟司 (著) 玄侑 宗久 (著)
脳と魂
筑摩書房 (2007/05)
P192
およそわかき人は、老人の、ふるき物語をこのみききて、おぼえおくべし。
わかき時は、おほくは、老人のふるき物語をきく事をきらふ。いましむべし。又わかき時、わが先祖の事をしれる人あらば、よくと(問)ひたずねてしるしおくべし。
和俗童子訓 巻之二
総論 下
養生訓・和俗童子訓
貝原 益軒 (著), 石川 謙 (編さん)
岩波書店 (1961/1/5)
P236
十二音技法で知られているシェーンベルク(一八七四年、ウィーン生まれ、アドラーと同時代人です)の「弦楽四重奏嬰へ単調」「室内交響曲」が初演されたたとき、その斬新さはウィーンに大きな衝撃を与え、演奏会ではひどい口笛と怒号が浴びせられました。聴衆は椅子を鳴らし、大勢が席を立ちました。
このとき演奏会場にいたマーラーは立ち上がって静粛を命じ、最後の反対者が立ち去るまで喝采したといわれています。
しかし、、そのマーラーがその夜こう告白しました。
「わたしには彼の音楽がわからない。だが彼は若いし、たぶん正しいのだろう。わたしはもう年で、あの音楽がわかる耳を持っていないのかもしれない」(ヒルデ・シュピール「ウィーン黄金の秋」原書房)
アドラー心理学入門―よりよい人間関係のために
岸見 一郎 (著)
KKベストセラーズ (1999/09)
P98

アドラー心理学入門―よりよい人間関係のために (ベスト新書)
- 作者: 岸見 一郎
- 出版社/メーカー: ベストセラーズ
- 発売日: 1999/09/01
- メディア: 新書
あまり医療に依存しすぎず、老いには寄り添い、病には連れ添う、これが年寄りの楽に生きる王道だと思います。
年寄りの最後の大事な役割は、できるだけ自然に「死んでみせる」ことです。
大往生したけりゃ医療とかかわるな
中村 仁一 (著)
幻冬舎 (2012/1/28)
P7
昔、大家族の時代はじいちゃんばあちゃんが死ぬところを、孫までみんな見ていた。今はそういう風景がなくなった。病院は酸素吸入したり点滴ぶらさげたりいろんなことするでしょ。あれが普通の死に際だと思っちゃってますから。
多いものは減らす、足りないものは足すのが医療。酸素不足だと足す。でも酸素不足になれば脳内モルヒネが出て、本人はいい気分で死んでいくわけですから、本来は酸素なんかすわせちゃいかんのですよ。本人にとっては、余計なことはしないのがいちばんいい。
中村仁一
別冊宝島2000号「がん治療」のウソ
別冊宝島編集部 (編集)
宝島社 (2013/4/22)
P141

別冊宝島2000号「がん治療」のウソ (別冊宝島 2000)
- 作者:
- 出版社/メーカー: 宝島社
- 発売日: 2013/04/22
- メディア: 大型本
辻(住人注;辻嘉一) 今の年寄りは弱いというか、ええ子になろうとして。わたしはね、このごろの若い人のふしだらなことをもますと、われわれがよくなかったんだ、もっと終戦直後のどさくさのときに、叱るべきことはもっと叱っておけばよかったと反省しますね。
幸田 そうですね。
(一九七九年 七十四歳)
幸田 文 (著) , 青木 玉 (編集)
平凡社 (2009/3/5)
P53
しかし、こういう(住人注;村の)世話役は人の行動を単に善悪のみでみるのではなく、人間性の上にたち、人間と人間との関係を大切に見ていく者でなければならない。そしてそういう役割はすでに家督を子供にゆずって第一線から退き、隠居の身になって、世間的な責任をおわされることのなくなった老人にして初めて可能なことであった。
忘れられた日本人
宮本常一 (著)
岩波書店 (1984/5/16)
P42
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