出雲海岸を西へ走って、石見との国境いに出た。同じ県ながら、石見と出雲は方言はもとより、気性、顔つきまでちがっているといわれる。
国境いから石見へ入ったとたん、われわれ旅人にさえそれがわかった。
石見への目的は、出雲の国境いにある物部神社という古社を見るためであった。
この神社も、いまでこそ、神社という名がついているが、上古はただの宗教施設として建てられたものではなく、出雲への監視のために設けられた軍事施設であった。
その時代は、前期の天穂日命などのころよりもずっとくだり、崇神朝か、もしくはそれ以後であったか。とにかく、出雲監視のために物部氏の軍勢が大和から派遣され、ここに駐屯した。神社の社伝では、封印された出雲大社の兵器庫のカギをここであずかっていたという。出雲からそのカギをぬすみに来た者があり、物議をかもしたこともあったともいう。
国境いから石見へ入ったとたん、われわれ旅人にさえそれがわかった。
石見への目的は、出雲の国境いにある物部神社という古社を見るためであった。
この神社も、いまでこそ、神社という名がついているが、上古はただの宗教施設として建てられたものではなく、出雲への監視のために設けられた軍事施設であった。
その時代は、前期の天穂日命などのころよりもずっとくだり、崇神朝か、もしくはそれ以後であったか。とにかく、出雲監視のために物部氏の軍勢が大和から派遣され、ここに駐屯した。神社の社伝では、封印された出雲大社の兵器庫のカギをここであずかっていたという。出雲からそのカギをぬすみに来た者があり、物議をかもしたこともあったともいう。
司馬遼太郎が考えたこと〈1〉エッセイ1953.10~1961.10
司馬遼太郎 (著)
新潮社 (2004/12/22)
P239

司馬遼太郎が考えたこと〈1〉エッセイ1953.10~1961.10 (新潮文庫)
- 作者: 遼太郎, 司馬
- 出版社/メーカー: 新潮社
- 発売日: 2004/12/22
- メディア: 文庫
0 件のコメント:
コメントを投稿