まだ救援も届かない被災地で、混乱にも陥らず、互いに助け合う人びとの姿に感動して、「日本人のガマンとモラル」を賞賛した世界の人びとも、その「日本人」がこのような政府や役人しかもっていないことに、憐憫の苦い笑みを浮かべずにはいられないだろう。
そして、日本がなぜアジア太平洋戦争に突入し、「大本営」の指揮の下ヒロシマ・ナガサキの悲劇を経験するにいたり、それでも廃墟の中からいかにして復興したのかの「秘密」を垣間見たことだろう。
このような指導層によって奈落に引き込まれ、その災厄を「天災」のように受け容れて、廃墟の中で黙々と働き、繁栄と豊かさを築き上げた末に、いままた政府がこの国の民を奈落に引き込もうとする、そんなことがどうしてありうるのかということの「秘密」を。
脳力のレッスン 109
緊急編 東日本大震災の衝撃を受け止めて──近代主義者の覚悟
寺島実郎
世界 2011年 05月号
岩波書店; 月刊版 (2011/4/8)
P87
司馬 前略~
大きな政治的社会的ショックがあたえられると、きのうまでの権威を平気で捨てて今日からの権威に乗換える。
この凄味は、よろこんでいいのか、かなしんでいいのか、それはいずれであるにせよ、日本人のエネルギーになっていることは確かです。
新装版 日本歴史を点検する
海音寺 潮五郎 (著), 司馬 遼太郎 (著)
講談社; 新装版 (2007/12/14)
P155
一、わが日本の尊厳は、世界に比較しうる国がありません。
天皇の御位は、神代以来連綿として絶えることなく、国民もまた、すべて神々の御血筋をいただいております。
風俗はすなおで美しく、武士は忠義に厚く、清廉潔白で恥辱を知り、農民や商人は質素で実直な気風を持ち、上を尊び、よく法を守っております。
また、下に反逆を企て法に抵触する者少なく、上に身命を捨てて節義を守る人が多いことから、政令や法律は寛大にして厳粛であり、一人一人が自己の職務に精励し、平和な日々を送っております。
書簡
啓発録
橋本 左内 (著)
講談社 (1982/7/7)
P113
早野 うん。でも、その暫定規制値500ベクレルの時代(住人注;事故が起こった当初は、国が定めていた放射性セシウムの暫定規制値が1キログラムあたり500ベクレル以下だった)に、みんあがぎりぎりまで汚染されたものを食べていたかというと、まったくそうではないってことを、ぼくらはよく知っていました。
~中略~ それが、2011年の暮れくらい。
そういう状態でしたから、政府の委員会で「別に500ベクレルのままでもいいんじゃないか。規制値を100ベクレルにしなくても、いま流通している食べ物は十分安全だよ」と発言した方がいらっしゃって、正論といえば正論なんですけど、そのときは叩かれまくったんです。それで、当時の小宮山厚労大臣が「とにかく100ベクレルにしよう」といって規制は厳しくなった。でも、少しでも安心する人が多いほうがいいわけですから、結果的にはそれでよかったのかもしれません。
糸井 その、1キログラムあたり100ベクレルというのは、知ってる人にとっては、驚くほど低い数字ですか。
早野 世界的に見ても、とても低い規制値です。ちょっと勉強された方なら、わかる低さです。
糸井 で、それをみんな真面目に守った、という。
早野 そう。日本人は、基準が決まりさえすれば、厳密に守るんです。これって、実はすごいことですよ。生産者の方々も非常にがんばって、工夫して、その規制値を超えないようにした。農学部の先生方もすごく努力をされて、どうやったらセシウムが入ってないお米が作れるか、研究を重ねてられて、それが非常にうまくいったんです。
ちなみに、福島県産のお米は現在ではすべての米袋についてセシウムを測定しているんですが、2012年度福島県産の玄米で100ベクレルを超えたのは、0.0007%。1000万袋以上測って71袋です。もちろん、このお米は流通していません。
~中略~
早野 しかも、その99.8%のお米が25ベクレル以下です。~後略
知ろうとすること。
早野 龍五(著), 糸井 重里 (著)
新潮社 (2014/9/27)
P84
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