2025年2月28日金曜日

ムスリムとの共存について

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   (住人注;イスタンブールの首席ラビ(ユダヤ教の指導者)の説で)いささか驚いたのは、イスラエルなどというユダヤ人国家をつくったのは時期尚早だったと断言したことです。
しかしそれもユダヤ教の教義に照らせば、ある種、当然の主張なのです。ユダヤ教では、この世が終末を迎え、最後の審判が神によってなされた後に、ユダヤ教徒たちの王国が地上に出現するといいます。 ラビもそのことを指摘し「考えてもみよ、いまだこの世の終わりなんぞ来ちゃいない。なのに、先走ってイスラエルという国家などつくるから、諍いが起こるんじゃ」というのです。
彼は、イスラエルという国家をユダヤ人にとって絶対的存在とは見ていないのです。それどころか、ユダヤ教の神聖な教えをねじまげた政治家たちがつくりだした国にすぎないとうのですから、私も驚きました。

P197
一度、イスタンブールの首席ラビ(ユダヤ教の指導者)と会ったことがあります。そのとき、彼は、ムスリムと共存することに何の問題もないと強調していました。
ラビはトルコで生まれ育っていますから日常会話はトルコ語でした。ユダヤ教のラビというと、何やらひどく堅物そうなイメージを持ちやすいですが、彼は、えらく威勢の良い人で、他の宗教との共存について、共存の歴史のほうがはるかに長く、共存のほうがあたりまえなのだと力説していました。

P198
2千年以上にわたって、西アジアに暮し続け、キリスト教やイスラームが誕生してくるのを横目で見ながら、一緒に共存してきたのです。中東の地に生きるユダヤ教徒は、ムスリムと同じように、異なる宗教との共存の智恵を持っていたのです。

P199
 トルコやシリアにいるキリスト教徒も、ムスリムとの共存について、まったく同じ見解をとります。

イスラームから世界を見る
内藤 正典 (著)
筑摩書房 (2012/8/6)

イスラームから世界を見る (ちくまプリマー新書)

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  • 作者: 内藤 正典
  • 出版社/メーカー: 筑摩書房
  • 発売日: 2012/08/01
  • メディア: 新書

 

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